狂い、不条理   作:zennoo

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本編どうぞ


11ページ目:異界への入り口(上)

4/9 松原花音

 

昨日は1日こころちゃんのメンバー集めで振り回された。それはもう疲れた。やめようと思っていた音楽に無理矢理誘われ、陽頼君まで巻き込んだ。もうこころちゃんのお転婆が止まらない。本当に皆を…私と陽頼君を笑顔にすることなんか出来るのかな。この事を本気で思っているのなら世間知らずも甚だしい。そんな感想しか思い付かなかった。

でも何故かこころちゃんの考えに乗った人が二人ほど出てきた。一人は無理矢理って感じだったけど…。

 

朝、教室で陽頼君とたわいもない話をしていると千聖ちゃんが私達のもとを訪れた。何かを話したいと思っている顔だった。

 

 

「陽頼、花音、おはよう。」

 

「あ、千聖ちゃん!おはよう。」

 

「ああ、おはよう。」

 

「二人とも、少し話を聞いてくれるかしら?」

 

「千聖から話?なんか珍しいな。」

 

「私で良ければ聞くけど…。」

 

「ありがとう。実は私…なぜかアイドルにスカウトされたの。」

 

「へ?千聖がアイドルに?」

 

「そう。アイドルよ。」

 

「良かったね千聖ちゃん!また人気でるんだね!」

 

「う、うん…そうね。」

 

「どうした?何か乗り気じゃねぇな。」

 

「陽頼には分かるのね…。」

 

「なんか問題あるの?」

 

「私、アイドルに興味があってオファーを受けた訳じゃないから…。とにかくキャリアを積めってスタッフからの指示だったの。半分脅しだったわ。」

 

「そんな…酷いよ!脅してまで千聖ちゃんを引き込むだなんて!」

 

「うふふ。私のことで起こってくれる人がいて嬉しいわ。でも私も楽しみにしてるところはあるの。」

 

「そ、そうなの?」

 

「ええ。アイドルバンドって言って一つのバンドみたいよ。今までになかったから私も楽しみよ。」

 

「ほう。アイドルの歴史を塗り替えるってことか。」

 

「そういうことよ。デビューライブはまた後日お知らせするわ。生放送よ。」

 

「そうなんだ。楽しみにしてるね!」

 

「ありがとう、花音。それじゃ私席に戻るわね。そろそろ時間だからね。」

 

「うん!また後でね!」

 

 

千聖ちゃんは終始笑顔だったけど何処か浮かない顔をしていた。本人は持ち前の演技でごまかしているのかもしれないけど私にはバレバレだった。あのままじゃいつかボロがでる。助けてあげたかった。だけど陽頼君みたいに助言できるほど胆が座っていなかった。このまま千聖ちゃんを見殺しにするのかと自分の無力さを呪った。

 

千聖ちゃんが座っていた椅子から立ち上がった時だった。

 

 

「千聖。」

 

「ん?何かしら?」

 

「あの夏に言ったこと、覚えてるよな?」

 

「…ええ。1日たりとも忘れたことはないわ。」

 

「生き延びろよ。」

 

「……生きて見せるわ。」

 

 

陽頼君は釘を打った。これ以上他人を見殺しにしないように。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

放課後になって帰ろうとした時だった。門をでたところをこころちゃんに捕まってしまった。また何のためにもならない時間がやってくる。動作にはしないものの頭を抱えた。

そして弦巻邸の会議室(?)に入ると既に3人、昨日スカウトした人達が席に座っていた。

 

 

「今日は記念すべき第一回の作戦会議よ!自己紹介から始めようかしら!」

 

「めでたいね!こころん!」

 

「ハア…儚い。」

 

 

もう早速テンションについていけない。

とにかく作り笑顔でやり過ごそうと思ったのだが何せこころちゃんが気付いてくるはず。ある種の地獄かと思った。

 

 

「じゃあ私から自己紹介ね!弦巻こころ!ボーカルで目標は世界を笑顔にすることよ!」

 

「はいはい!北沢はぐみだよ!体を動かすことが好きだよ!」

 

「私は瀬田薫…。この一期一会な出会い…儚い。」

 

 

この三人は今日集まったメンバーの中でも飛びっきり個性が強いと感じた。あのおとなしそうな子はこれから振り回されるんだろうなぁ…。

 

 

「えーっと…奥沢美咲です。まあ…普通が一番ですね。」

 

「こころんにみーくん、かーくんだね!」

 

「あなた達も自己紹介してほしいわ!仲良くなるためよ!」

 

 

小学校の時から呪いのようにかけられてきた「楽しみ」「仲良く」というワードがこころちゃんの口から止まらない。美咲ちゃんは苦笑いしてるけど私は苦笑いで終わらなかった。

 

 

「松原花音です…。仲良くしてください。」

 

 

苦笑いと共に「仲良く」と言った自分に驚いた。まさか自分の口からそんなことが言うときが来るなんて…と思ったけど生きていればそんな台詞を言うことくらいあるかな。

 

 

「丁礼田陽頼。このバンドのマネージャーをやらせてもらうことになった。そこのお嬢の指示でな。」

 

「そんな嫌みっぽく言わなくて良いのよ?楽しくやりましょうよ!」

 

「花音と陽頼…てことはかのちゃんせんぱいとひよくんせんぱいって呼べば良いんだね!よろしくね!」

 

「そうか…よろしく。」

 

「陽頼先輩。」

 

「ん?どうした?」

 

「どこか具合が悪いんですか?なんかずっとムスッとしてるって言うか…。」

 

「…それを俺に言うのか?」

 

「!ごっ、ごめんなさい!なんか怒らせちゃったみたいで…」

 

「陽頼君、美咲ちゃんを怖がらせちゃダメでしょ?」

 

「そうか?別に怖がらせてるつもりはないのだがな。」

 

「ごめんね美咲ちゃん。陽頼君、いつもこんな感じだから。別に怒ってる訳じゃないから安心してね?」

 

「あ、そうなんですか…。でも陽頼先輩、その…」

 

「なんだ?言ってみろ」

 

「いえ、何でもないです。こころ、今日は何するの?」

 

 

無理矢理話を転換した美咲ちゃん。その判断は正しかったと思う。あのまま陽頼君に本音をぶつけていたら美咲ちゃんは威圧感に押し潰されていたと思う。

 

 

「初ライブは何しようか決めようと思うの!せっかくなら皆を笑顔にさせなきゃね!」

 

「なにそれ面白そう!」

 

「といってもこころ、練習とかしなきゃだしまずはそっちからじゃないの?」

 

「違うわ美咲!まずは楽しいことを考えなくちゃ練習が捗らないわ!」

 

「そ、そうなんだ…。」

 

 

自己紹介し終わって約三十分をかけてバンドのことについての話し合いが進んだ。歌詞のこと、楽器のことパフォーマンスのこと…正直私は話し合いについていけなかった。なんか私が思っていたバンドのイメージとはかけ離れすぎちゃってて。本当にバンドのこと分かってるのかなと声をかけたいけどそんな勇気私にはない。

 

 

会議開始から一時間が経過、ホワイトボードには出てきた案が大量に書かれていたがどれも奇想天外なものばかり。この先が思いやられそうになる。

 

 

「そうだわ!観客を沸かせる前にやらなきゃいけないことがあるじゃない!」

 

「とても面白そうだね…それはなんだい?」

 

「ここにいる皆が笑顔になることよ!」

 

「笑顔で溢れるようになるのか…儚い。」

 

「特に…」

 

「特に?」

 

「花音と陽頼を笑顔でいっぱいにするわよ!」

 

 

いきなり名指しされてビックリした。全く状況が飲み込めなかった。

 




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正宗03698様
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志無様
ありがとうございました

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