狂い、不条理   作:zennoo

19 / 20
本編どうぞ


18ページ目:楽天地

6/9 松原花音

 

 

「こころちゃん、準備できたよ。」

 

「皆良さそうね。じゃあ、いっくわよ~!!」

 

 

ライブ本番。私と陽頼君が加入してから一週間しないうちに決まったから最初はすごく困惑した。一応ドラムは出来るけどこれが人生初ライブだから緊張する。もともと私が緊張しがちな面もあって言葉で言い表せない。

ステージへ立とうとする瞬間陽頼君に肩を軽く叩かれた。

 

 

「花音。」

 

「ふえっ?」

 

「楽しんでこいよ。」

 

「……うん!」

 

 

口角を軽く上げた陽頼君の一言に背中を一気に押された。そうだ。練習から楽しかったんだもん。ライブだったらもっと楽しいことが待ってる。この空いた心を一気に埋める気でスティックを握った。

 

 

「さあ!早速一曲目いくわよ~!!」

 

 

自分の"楽しい"を、"忘れかけた笑顔"を、ドラムに乗せて観客に届ける。私の演奏技術は他のバンドに比べたらいまいちだったかもしれない。それでもいい。何と言われようと私はドラムを叩き続ける。私を笑顔にしてくれたように、今度は笑顔じゃない誰かを笑顔にする番。

 

ここ数日で感情がコロコロと変わった。内面的にもすごく忙しかった。けど自分が笑顔になると誰かを笑顔にしたくなる。不思議だよね。それとも私がおかしいのかな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ライブ終了後楽屋に戻って衣装から着替えると陽頼君が待っていた。かなりの数のおかしを用意して。

 

 

「お疲れ様。」

 

「陽頼…君?これって…」

 

「何って…俺からのささやかな初ライブ成功のお祝い。」

 

「これ全部陽頼が用意してくれたのかしら?」

 

「ああ。ライブだけやって終わりってのもなんか寂しいだろ?そういうことだよ。」

 

「陽頼!あなた最高ね!あなたをハロハピに入れて良かったわ!」

 

「陽頼…君って人は…儚いね。別人のようだよ…。」

 

「別人か…まあ確かにそうだな。ライブ、楽しかったぞ。」

 

「それは良かったわ。陽頼!」

 

「なんだ?」

 

「あなた、今笑ってるわよ!」

 

「俺が……?」

 

「やったねこころん!ひよくんせんぱいを笑顔にしたんだよ!」

 

「今日はいいことだらけね!それと…花音!」

 

「わ、私……?」

 

「あなたもライブ中心の底から笑っていたわ!とってもいい笑顔だったわ!」

 

「えへへ…笑ってたのがバレちゃったかな。」

 

(花音先輩も陽頼先輩も…あんな風に笑うんだ。何かこっちまで笑っちゃうな。)

 

「陽頼君!……えい!」

 

 

体が勝手に陽頼君の方へと動いた。

そして私は陽頼君の小さい体を優しく、思いっきり抱き締めた。

 

 

「おい花音!皆見てるじゃねえか!」

 

「あわわわわ…かのちゃんせんぱいが…」

 

「はぐみ!こういうのは静かに見守るものなの!」

 

「あの時、声かけてくれてありがとう。やっぱり私には陽頼君が必要みたい。」

 

「そ、そうかよ……。」

 

 

パシャ

 

 

「こころ!い今写真撮っただろ!」

 

「だってとってもいい画だったんだから。後ようやく私の事名前で呼んでくれたわね!」

 

「あ、ああそうだな…。」

 

「こころ、皆での写真を残そうよ。私、自撮り棒持ってるし。」

 

「そうね!さ、皆集まって!」

 

 

このときの写真が今までで一番いい笑顔の写真だったと思う。本物の仲間と呼べる人達にあえて幸運だった。あの頃の私達じゃ考えられないくらいのキラキラがこの瞬間に詰まってる。陽頼君、もう雲一つない晴天なんだね。




次回最終回です
読了、ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。