ここまで読んでいただいた方もそうでない方も最後までお付き合いください
本編どうぞ
8/1 丁礼田陽頼
「いよいよ今日か……多分成功するんだろうがなんだこの落ち着かない感じは。」
夏真っ盛りのこの時期。東京は雲一つない晴天だったがこれは俺がこれからしようとしていたことを応援してくれているという解釈でいいのだろうか。ベッドから窓の景色を見てそんなことを思う。
大学も卒業して俺も花音も23歳になった。相も変わらず俺の身長は花音を越しておらず、ロフストランドクラッチが手放せない。これらは俺が不条理にも付けられた傷ではあるがもうこの傷で悩むことはない。ハロハピに入ってからというもの高校生活が目まぐるしく変わり忙しいなんてものじゃなかったが確かに楽しかった。15歳くらいの俺だったら考え付かないだろうな。
「陽頼君!速くしないと遅れちゃうよ!」
「フッ、楽しそうだな。」
「だって久しぶりに皆と会えるんだもん。陽頼君だって楽しみでしょ?」
「ま、まぁな。」
「そういう時くらい顔に出してもいいのに…恥ずかしがらないでよぉ。」
「仕方ないだろ。」
「速く朝御飯食べよ。皆と会えるんだね~。えへへ。」
ハロハピに入ってから花音にも変化は当然ある。よく笑うようになった。それも仮面での笑顔でなく本当の笑顔に。生まれたときから苦楽を共にしてきた俺でさえ花音の笑顔には一つ感じるものがある。文字にするのもなんか抵抗があるのであえて書かないが。まあ……あの笑顔、俺は好きだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ!かのちゃんせんぱいとひよくんせんぱいが来たよ!おーい!こっちこっち~!!」
「あはは…。はぐみちゃん、高校の頃と変わってないみたいだね…。」
「なんか安心した。もう皆集まってるな。」
「久しぶりね!花音!陽頼!」
「はあ……あの出会いが今この瞬間を産み出したなんて…なんて儚いんだ…。」
「薫さん…やっぱり全然高校の頃と変わってない…。」
この日はこころの、山奥にある別荘でかつてのハロハピメンバーが集まった。プチ同窓会、とでも言うべきか。皆大人びていながらも変わらないところは変わっていなくてなんか安心した。あの頃のハロハピに帰ってきた帰属意識というものか。
「さ、中に入りましょ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「改めて、皆!久しぶりね!」
「5年ぶりの再会なのか。なんか早いのか短いのか…」
「あ、早速なんだけど美咲ちゃん。」
「え?何ですか?」
「旦那さんとはどうなの?」
「え!?それ今聞くんですか!?」
「どうなんだい?高校時代から実は仲良かったじゃないか…」
「あたしも気になるわ!教えて!」
「えーっと、そのぉ…まあ何というか…」
「どうなの?」
「こころちゃん…すごい前のめりだよ…。」
「上手くやってますよ。はい。」
「えーそれだけ~!?みーくんもっと聞かせてよー!」
「あたしも人に話すの結構恥ずかしいから!」
「あはは…それ以上聞くと美咲ちゃんがもっと赤くなっちゃうね。」
「薫!今も劇団は続けてるのかしら?」
「ああ。今は後輩の指導で大忙しさ…」
「今度かーくんの劇見に行くね!凄い楽しみ!」
「はぐみ…また来てくれるんだね…儚い。」
「口癖が変わってなくて何か安心…」
「毎回劇場が満員になってくれてね…嬉しいね。」
「すごいわね薫!努力の賜物よ!」
「ありがとうこころ…はあ…なんて幸せなんだ!」
「はぐみ。実家の店継いだのか?」
「うん!いつもお客さんの列ができて大忙しだよ!」
「そうか…皆幸せそうでいいじゃねえか。」
「陽頼さんはどうなんですか?花音さんとラブラブですか?」
「いや言い方…といっても反論できないな…。」
「うん。仲良く暮らしてるよ。周りからも私達の仲の良さが目に見えてるんだね…//」
「とーっても仲良かったわよ!周りが羨むくらいだったわ!」
「そうなんだ…意識してなかったから分からなかったね…。」
「ところで陽頼。」
「何だ?」
「何かさっきからそわそわしてるけどどうかしたのかしら?」
「え!?べっ、別に…」
「こういう時のひよくんせんぱいは何かあるからね!」
「陽頼君…朝から何か緊張してたみたいだけどどうしたの?」
やっぱりこの時バレてたみたいだ。何せ今日が俺の人生の一つの区切りみたいになるからだ。緊張しないわけがない。花音の決断でこの先がどうなるか決まる…大袈裟に言ってる訳じゃないからな。
「スゥー、フゥ……花音。」
「何?」
「あそこのひまわり畑に行かないか?」
「え?う、うん…いいけど…」
(これで…全て決まる。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「綺麗なひまわりだね。」
「ああ。」
「それで…なんでここに?」
雲一つない晴天の下、互いの目を合わせて言葉を紡いでいく。
「俺ら…生まれた時から今日までずっと一緒だったよな。」
「そうだね。陽頼君がいない日の方が少なかったね。」
「あんな誘拐事件に巻き込まれてからというものろくなことが続かなかった。あのままずーっと暗い道を共に歩かなければいけないとまで思った。」
「そうだね。」
優しい目の花音。その目はどこか遠くの過去を見ているようだった。
「でもハロハピに出会って…いろんな個性的な人達と出会って…笑顔になった。どんな不条理でも立ち向かう勇気ってものが手に入ったようだったよ。」
「…うん。」
花音の目に俺はどう写ってたのだろう。
「俺はこれからもその不条理の中歩き続ける。でもその前に……やることがあるんだよ。」
「やること?」
俺はポケットから小さい小箱を取り出してた。
「ん?なにこれ。」
「開けてみろよ。」
「うん。…………!!これって……!」
「婚約指輪だ。しかも2つ。俺と花音の分だ。」
「そうなんだ…この指輪、はめてほしいな。」
「よっ、と……これでどうだ?」
「凄く綺麗……ひっ…ひっぐ………」
「急に泣き出して……どうしたんだよ。」
「これからも…私の隣にいてくれるんだね…。それで嬉しくて……。」
「ああ……俺も泣けてきちまったな…。」
「陽頼君も…嬉し泣きするんだね……。」
「これが人生初だがな…。」
「陽頼君、」
「……なんだよ。」
「一生、よろしくね。」
「一生なんてもんじゃない。」
「え?」
「どこまでもだ。」
「えへへ……嬉しいな。」
このときの花音の抱擁が言葉に言い表せないくらい優しくて、嬉しくて…
俺の右腕、いや、心臓とまで言える花音とこれからも狂っていて不条理に満ちたこの世界に立ち向かっていける。依存なんかじゃない。本当の意味で愛し合って、笑い合う。死が俺達を引き裂いても必ず二人でこの先を進む。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だから俺は/私は
貴方を/君を
「「信じて愛する」」
狂い、不条理 終
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「陽頼、花音……良かったじゃないか。私まで感動したじゃないか……。」
「あの二人、とってもお似合いね!」
「二人ががががが……はぐしてるよ!」
「はぐみ!こういうのは静かに見守るものなの!」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
20話ほどで完結させる小説を書くのはこれ後初めてで、私の創作力の欠如のせいで途中読者の皆様を退屈させてしまったかもしれません。
それでも最後までついてきてくださったあなたに心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
こんなに序盤が暗い話を作るのはこれが初めてでして、小説を書ききって反省することもたくさんありますが、しっかり今後にいかしていきます。
それでは最後に
読了、ありがとうございました。