狂い、不条理   作:zennoo

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言い忘れていましたがこの小説は20話以内に完結させる予定です。
本編どうぞ


4ページ目:救いかあるいは

5/15松原花音

 

週の後半の木曜日。今日も学校生活が終わりこれから帰ろうって時。相変わらず今日の授業中も勝手な落書きやわざと過ぎる暴力などに悩まされたが先の日記にも書いてある通り誰にも頼ることが出来ない。適当にやり過ごして我が家に帰る。そんな毎日。

速く帰りたい、癒されたい。そんな先走った感情で陽頼君と一緒に帰路についていた。

 

だけど事はそんなにうまく運ばない。今日も"奴ら"が現れた。

 

 

「おいそこのお前ら!…ちょっと面かせよ。」

 

「チッ、またお前らか。しつこいな。」

 

「こーんな場所に呼んだんだから俺らが何するか分かってるよね?ヒャハハハハ!!」

 

「……所詮陰湿なことしか出来ないお前らなど俺達の眼中にない。さっさと消えろ、クズ共。」

 

「なんだと!!舐めたことしやがって!!」

 

「クッ…」

 

 

陽頼君に早速矛先が向いた。大切な人が傷つくのを見ていられないのは当然の事なんだけど私は今日もなにも出来ない。ただ陽頼君と一緒に殴られるだけ。抵抗する力もメソッドもない。もうただただ悔しい。

そう言えば…このグループのリーダーらしき人物の名前は…確か尾関だったかな。前にわざと監視カメラがあるところに誘い込んで警察につきだしたことがあったんだけど「更正の余地あり」なんて言われて結局釈放。学校生活がさらに絶望色に染まっていった。

 

そして現在。怒りに任せた拳でひたすらに私達を殴る尾関を前に耐えるしかない現状。いつもだけど殴られるのに慣れているはずなのになぜか涙が出てくる。なんの涙なんだろう。

 

 

「この野郎!この俺を散々言ってくれたな、ブッ殺してやる!!」

 

「ここで俺を殺してみろよ…ハア…もう今度は塀の中だぞ?」

 

「何言ってんだおめえ!隠蔽するだけだバーカ!」

 

「さっすがリーダー!アハハハハハ!」

 

 

虎の威を借ることしか出来ない連中に一方的にやられるしかないのが本当に悔しい。朦朧とする陽頼君の目から"屈辱"の文字が浮かんで見える。

 

でも今日はいつもと違った。この人気のないところになぜか一人、颯爽と現れた。その人は私達も奴らも知らない。

 

 

「おいおい…こんなところで何やってるんだい?」

 

「あ?誰だお前?」

 

「なあリーダー!やっちまうか!?」

 

「おおそうだな…死ねや!!グホッ!」

 

「突然殴りかかってくるなんて危ないじゃないか。」

 

「グハッ!…おいお前ら撤収だ!」

 

「お、おうそうか。」

 

 

奴らは逃げていった。

助けてくれた人は短めの金髪に少しばかり派手な身なりではあるが奴らが逃げていった後すぐに心配の声をかけてくれた。

 

 

「ハハッ、君たち大丈夫かい?」

 

「う、うん…ありがとう。助かったよ。」

 

「お前こそ、怪我は大丈夫かよ…」

 

「僕は大丈夫さ。それより、君たちの怪我の方がよっぽど凄そうだけど?」

 

「ああ……いつもよりましだが、痛いのに変わらない。」

 

「私…もう腕が動かないよ……。」

 

「そうか…。なら一度僕の家に来ないかい?怪我の手当をしないと。」

 

「せっかく助けてくれたところ悪いがいくぞ花音。怪我の手当くらいなら俺達だけでも出来る。」

 

 

確かに陽頼君の言うことには一理あった。怪我の手当は自分達でも出来る。別に人の手なんて借りる必要がない。

だけどなぜか私はこの時"安心感"に近いものを感じていた。私は基本陽頼君以外の人間を信用しない。それは今でも同じ。せっかく助けてくれた人だけど信用できない。

でも今日は久々に救いがあった。今まで誰も助けてくれなかったのに今日は助けてくれた。それが嬉しくて嬉しくて仕方なかった。

 

 

「陽頼君、この人の家にいってみない?」

 

「何言ってるんだ花音!確かにこの人は俺達を助けてくれた!だけどそれが安心材料になるとは限らないだろ!」

 

「そうだね…でも行ってみる価値はあると思うよ。そうしたらこの人を少しずつ信用出来るかもしれないよ?」

 

「…本当に良いのかよそれで。」

 

「安心して。私が陽頼君を守るから。」

 

「……分かった。行ってみるか。」

 

 

陽頼君も納得してくれたため私達は助けてくれた人の家に向かうことにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

家に到着後その人はリビングで早速私達に傷の手当をしてくれた。手当をした後その人は私達が座っている席の真正面のソファーに座って話を聞く姿勢になった。

 

 

「なんか…君たち訳アリみたいだけど。まず始めに、なんであの集団に狙われているのかな?」

 

「それが俺達にも全く分からない。中学に入学した当初から狙われ続けている。一応奴らは俺達に嫉妬しているとか言っているが…真相は分からない。」

 

「そうか…。じゃあ次になんで君たちに古傷があるのかな?そこの女の子には火傷跡、男の子には松葉杖?みたいなのがあるけど。」

 

「私達、小学生の頃に誘拐事件に巻き込まれてて…そこで負った傷なの。」

 

「なんか凄い過去だな…。あ、今さらだけど君達名前は?」

 

「私は松原花音だよ。」

 

「…丁礼田陽頼だ。」

 

「花音ちゃんに陽頼君だね。うんうん、覚えた。あ、自己紹介が遅れたね。僕は作田花矢。最近この街に引っ越してきたばっかりなんだ。」

 

「そうだったのか。」

 

「最後に一つ聞いていいかな?」

 

「うん…答えられる範囲でだけど。」

 

「そっか。なら質問するね。なんで君達あんなに他人を信用していないの?特に陽頼君。」

 

「やはり人を信用していないのは伝わってしまったか…。どうする花音、話すか?」

 

「まだ話せないかな。助けてもらった立場が言うのも変だけど、私達、簡単には人を信用できなくなっちゃったから。」

 

「…まだまだ重たい過去がありそうだね。まあ無理に聞こうとはしないさ。」

 

「ああ。こちらとしても助かる。」

 

「あ、君達ってどこの中学校に通っているの?僕は天野中学校に転校するんだけど。」

 

「私達も同じ学校に通っているよ。私達、学校でもほぼくっついているけどね。」

 

「やった!また会うことが出来るんだね。楽しみにしてるよ!…あら、もう外はくらくなってきたな。君達もそろそろ帰った方がいいんじゃない?」

 

「あ、もうこんなに暗くなってる。陽頼君帰ろ?」

 

「…ああ、帰るか。」

 

「私達を助けてくれてありがとう!また学校で会おうね!」

 

「ああ!気を付けてね!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

帰路についた私はさっきまでの事を振り返った。救いがない現実で助けて貰った。少し驚きもあるんだけど私はその事が嬉しくて嬉しくて仕方なかった。きっと私の顔は少し笑ってるのかもしれない。陽頼君以外の事で笑うなんて本当に久しぶりだと思う。

 

 

「陽頼君、帰ったら何食べる?」

 

「……」

 

「陽頼君?」

 

「あ、ああすまない。今考え事しててな。」

 

「考え事?」

 

「あいつ…怪しいところがいくつかある。花音も少し警戒しておけ。」

 

「え?う、うん…。」

 

 

陽頼君はますます警戒心を強めた。まだ私以外の人が怖いのかな?

陽頼君とは反対に私は胸を踊らせていた。どうしようもない場所に一輪の花が咲いたかのように。




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