5/23 丁礼田陽頼
全校朝礼というサブイベントに全校生徒が集まった。そこで繰り出される話では「友達と協力しあって」や「規則正しく」などと言った文言が必ずと言っていいほど出現する。しかしそんな話を真剣に聞こうとする人なんてごく僅かなのがひしひしと伝わってくる。無論俺も綺麗事を真剣に聞こうだなんて思っていない。俺達のいじめを隠蔽しようとした奴らの話なんて聞く必要もない。
しかしここで耳を傾けさせられることになった。
「えぇ~、ここで転校生を紹介します。」
一瞬にして生徒がざわつく。イケメンだったらいいな、可愛い子だったらいいな、などと聞こえてくるが俺には予想つく。予想どころではない。その転校生の顔がはっきりと分かる。
「それでは自己紹介を。」
「はい!作田花矢です!気軽に声かけてくださーい!」
やっぱり転校生はこの前俺達を助けたあの人だった。一見爽やかで誰にでも優しくする人気者に見えるが…俺には怪しさしかない。
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「なんか…凄い印象よかったね。」
「一見するとそうだが…前にも言った通りだ。花音も気を付けておけ。アイツに怪しさしか感じない。」
「あはは…そんなに警戒しなくても良いんじゃないかな…。というか、私達のクラスに一個席があるから来るんじゃないかな?」
「だろうな。…一体何が起きる?」
集会から戻り席で話をしていると担任が入ってきた。まあ、この担任も俺は信用していないのだが。
「お前ら~席につけよ。早速だが転校生を紹介する。」
「やっぱりアイツここのクラスに来るんだな。」
「そうみたいだね。」
アイツ…作田がこの教室に入ってきた。
「作田花矢です!気軽にさくちゃんとかって呼んでくださーい!」
「というわけで皆もよろしくな。休み時間にしろ。」
休み時間になった瞬間作田の周りを大勢の野次馬が取り囲んだ。想像してた通り作田は質問責めにあっているのだがどの質問にも爽やかに返答。あっという間にクラスの人気者になっていた。
だがどうも引っ掛かる点がある。あの爽やかな雰囲気が演技に見えてしょうがないのだ。今まで作田ほど明るい人を見たことがないから違和感を感じているだけなのかもしれない。何か目的があるのか?
「やっぱり…人気者だね。」
「そうだな…。だが俺達には関係無いことだ。」
「おやおやそこのお二人さん!久しぶりだねぇ!」
(あっちから声をかけてきたか。)
野次馬がひしめく中で作田が俺達に近づいてきた。当然野次馬も俺達に注目する。
「うん。久しぶり。お陰様で痛みは結構引いてきたよ。」
「それはよかったよ。心配だったからね。」
「え?作田君松原さんと丁礼田さんと知り合い?」
「この前偶然街中で会ってね…怪我してたから手当したんだよ。」
「えぇ~!作田君やさしー!」
「陽頼君、花音ちゃん。改めてよろしく!」
「うん。よろしくね。」
「…よろしく。」
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昼休みになり俺は教室で花音と過ごしていた。いつもなら花音とおしゃべりして昼休みは終わるのだが今日は事情が違った。
「やあやあお二人さん!ちょっと僕も話に混ぜてくれないかな?」
「ねぇ陽頼君、どうする?」
「…構わない。」
「というか君達、よく二人で行動してるよね。お似合いさ。」
「えへへ。そうかな。」
こんな流れで作田を交えて3人で昼休みを過ごしていた。
最初こそかなり怪しんでいたが作田は俺達に寄り添うような喋りかけをするもので俺も次第に打ち解けるようになった。作田は俺達の過去を聞いて一緒に悲しんだりと今までになかった"救い"がそこにはあった。
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救いを少し感じ取れたとしてもいつか終わりが来る。またどうせ尾関一行が俺達を襲撃しに来るはずだから。その瞬間は下校時の人気のない路地で訪れた。
「おいリーダー!奴らいたぜ。どうする?」
「そうだな…おいそこのお二人。今日も面貸して貰うぜ。」
「陽頼君…私、もう限界だよ…。」
「ああ…。俺も限界だ。だけど花音は俺が守る。」
「でもそんなことしたら陽頼君が!」
「ちょっと待ってくれよ!」
「ん?誰だ?」
「作田…なぜここが分かった。」
「たまたまさ。それより、こいつらが君達を襲うっていう連中かい?」
「うん。そうだけど…」
「なら話が早い。」
「おい、何する気だよ。」
「まあ見てなって。」
尾関のグループへすたすたと歩く作田。尾関の前に立った次の瞬間。
「グホッ!っ!てめえ…」
「お前!リーダーに何しやがる!」
「逆にお前らなんの罪もないこの二人を襲って何したいんだよ。さっさと消えろ。」
「…」
作田の放つ雰囲気に飲まれて尾関のグループはそそくさと逃げていった。意外な一面を見たがまた俺達は救われた。救われたのは身の安全だけではなかった。
「大丈夫だったかい?」
「うん。また助けて貰ったね。ありがとう!」
「手間かけさせてすまなかった、作田。」
「いいさ、友達を守れたなら!」
その明るさと純粋さに守られた事実。少しはこの世の中を生きる勇気を手にいれることが出来たのかもしれない。
この濁った目が透き通る日は来るのか
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湊彩月様
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