6/10丁礼田陽頼
作田のお陰でここ1ヶ月近くが平和に経過した。そして中学三年生ということもあって高校入試にまっしぐらな雰囲気が教室を包んでいる。俺が目指している高校は花咲川学園。少し前に共学化したらしい。理由としては2つ。花音と同じ高校であること、いじめが絶対起きないところ。
もう暴力で満たされた毎日は俺も花音もたくさんだ。もう絶望なんかしたくない。
「あ、模試の結果返ってきたね。陽頼君はどうだった?」
「このまま行けば花咲川に行けそうだ。」
「やった!私も行けそうだったよ!」
「そうか。もう絶望なんかしたくないからな。」
「そうだね。高校行ったらどんな人に会えるのかな。いい人に恵まれたら良いなぁ~。」
「それは俺も同じだ。」
今いる中学に未練は無い。それが俺達のぶれない信念だ。
「やあやあお二人さん!」
「作田か。どうした?」
「模試で今回なかなか良い結果でさ~それを言いふらしたかったんだよね~。」
「あはは。そうだったんだね。」
「あ、そうそう。今日の帰りに二人に用があってさ。街の公園で待っててほしいんだけど良いかな?」
「公園で?私達に何のようなの?」
「それはその時のお楽しみだよ~。じゃ、ばいばい。」
「おい作田!…って行ってしまったな。」
「まあまあ、その時を待とうよ。作田さんの事だから何か良いことじゃないかな?」
「…そう信じたいけどな。」
去り際の作田の笑顔は普通ではなかった。楽しみにしているというよりは何かをたくらんでる時の不気味な笑顔。
警戒心が久しぶりに高まった瞬間であった。
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放課後になって俺達は作田の言う通り公園で待っていた。公園に着いてしばらくすると作田がやって来た。
「いやぁ~お待たせ!」
「待っていたぞ。」
「で、用事って何?」
花音が楽しみそうに作田に聞いた瞬間だった。
「それはね~」
「グッ…アアア…作田…なんの真似だ!」
「陽頼君!作田さん…これはどういう事!」
突然作田が俺の右足を全力で蹴ってきた。当然俺の右足は完全には治っていないため激痛が走った。怒り混じりに花音が作田に叫ぶも作田は飄々とした態度を貫いた。
「いやあのさ、これはまだ前菜にすぎないんだよ。メインはこれからだよ。」
「は?…どういう意味だ…?」
「君達ー!出ておいでー!」
作田が突然号令をかける。ここで俺達は驚愕した。なぜなら作田が呼んだのは俺達が忌み嫌う物だったからだ。
「おいおい作田ー。1ヶ月もこいつらを殴れないだなんてこっちももう我慢の限界だぜ~?」
「アハハハハ!!リーダー!奴らの顔を見てみろよ!すげえ顔だぜ!」
作田の号令により呼び出されたのは尾関のグループ。この時の俺は何がなんだか分からなくてどうしようもない感情になっていたと思われる。自然と涙も出た。なんの理由で涙が出たのかは分からないが。
「おい作田…。何で尾関達が出てきたんだ…。何で俺を襲う真似するんだよ!答えろ!」
「まだ気付いていないの?鈍いなぁー陽頼君。なら種明かししようか。僕と尾関はグルだったってことだよ!」
「は…?作田と尾関が手を組んでいたってことなのか…?」
「アハハハハ!そう言ってるじゃん。」
「だったらあの時俺達を尾関から助けたのも俺達と交流を深めたのも全部演技だったって事かよ!どうなんだ!」
頭の中が失意で満たされて俺は感情の赴くまま作田に疑問をぶつけた。もう何を信じたら良いのか分からなくなっていたのだと思う。
「君の言っている通りさ!僕が転校してきてからの一ヶ月間は全て演技だったって事だよ!いやーこの日のために演技し続けるの結構大変だったんだよ?」
「…ふざけないで。」
「ん?何かな?」
「陽頼君も私もようやく希望が見えてきたって言うのに!これまでずっと暴力に耐え続けてきてやっと報われると思ったのに!なんで…なんで私達を見放すの!なんで私達がこんな目に遭わなきゃいけないの!」
「だってさ…ここまで君達が尾関に殴られ続けたのも僕に騙されてたのも、全部あの事件がきっかけだったんだよ?」
「あの事件…?おい、なんでお前らがあの事件に巻き込まれていたことを知ってるんだよ!どうなってんだ!」
「そこでさ、君達二人に会わせたい人がいるんだよね。来てくださーい阿久津さーん!」
もう俺も花音も悲しくて悲しくて何がなんだか分からなかった。展開が早すぎて何がなんだか分からない。でもこのとき分かっていたのは俺達はずっと騙され続けてもうこれ以上の地獄はないということだった。
だがここで一人の大人が現れた。それを見た瞬間俺は余計頭が混乱した。
「なぜお前がここにいるんだ…阿久津。」
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