狂い、不条理   作:zennoo

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今回で折り返しです。
本編どうぞ


8ページ目:地獄の果て

「なぜお前がいるんだ…阿久津!」

 

「まったく、お前らガキのせいで逮捕されてから10年。お前らの事ぶっ殺したくて仕方なかったんだよ!」

 

 

阿久津。10年前の誘拐事件の犯行グループの構成員である阿久津がなぜか作田の号令により出てきた。自分を逮捕した恨みと殺意を俺達にぶつけてくる。

しかし引っ掛かることがある。

 

 

「お前…懲役18年だったはずだ。仮出所だってまだ認められていないのになぜ出所している!?」

 

「そりゃ気になるよなぁ!それものはず、この作田が保釈金を出してくれてな…」

 

「作田が…?おい、全く話が見えてこねえぞ…。」

 

「ここでばらしてやるか!作田や尾関、今ここにいる奴ら全員、俺が再び結成したグループのメンバーなんだよ!」

 

「…嘘でしょ?じゃあ私達ばかりを狙っていたのも全て逮捕された事への復讐だったの…?」

 

「へっ、物わかりが良いじゃねぇか。俺を保釈する条件に作田には金を渡していた。それだけじゃない。尾関達がお前らをいじめる度に報酬として金を渡した。お前らなあ、学生という守られた立場にいたからなぁ。手が出しずらかったんだよ。」

 

「…」

 

「だからお前ら中学校の不良を金で雇って襲わせてたんだよ。金はへっちまうがお前らが絶望に満ちていく様は見てて爽快だったぜ?アハハハハ!!」

 

 

呆れて言葉もでない。阿久津はつまらない復讐心で俺達を襲い、作田、尾関達は金に目が眩んで阿久津に乗った。改めて悟った。本当にいい人なんてこの世にいない。どこかで人を欺くものだと。

 

 

「阿久津さん、俺達に1ヶ月も待たせるだなんて…もう我慢の限界ですよ!速くやらせてくださいよ!」

 

「尾関…そうかい。もう話すことは何もねえ!お前ら!今回はいつも以上に金出してやる!やっちまえ!」

 

「行くぞおまえらぁ!」

 

 

尾関達大グループが俺を取り囲んで俺を滅多打ちにする。今までとは違い鉄パイプやバットで俺の右足と顔面を集中攻撃してくる。声なんて出ない。俺の体に当たる鈍いおとが深夜の閑散とした公園内に響き渡る。もう殴られるのには慣れたと思っていたのに更なる痛みがあったなんて思わなかった。作田の嘲笑と阿久津の怨念が朦朧とする意識の中感じ取れる。

 

 

「もう止めてよ!そんなつまらないことして何になるの!」

 

「つまらないことだと?俺の復讐はまだ終わらねぇぞ!女。てめえは俺が直々に滅多刺しにしてやる!」

 

「阿久津さん。いきなり殺しても芸がない。まずは殴るなりなんなりで痛め付けてからにしませんか?」

 

「それもそうだな…。おい女。腕折られるのと足折られるの。どっちが良い?特別に選ばせてやるよ…。」

 

「あ……ああ…。」

 

「か……のん。手…出すんじゃねぇ…っ!」

 

 

もう花音は恐怖で声をまともに出せてなかった。目には涙が溢れている。それは俺も同じ。花音を助けられない悔しさとクズに手も足も出ない悔しさが頭の中で入り交じる。そこに純粋なまでの痛みが加わる。俺達が何をしたと良いのか。もう今さら疑うこともない。

 

 

「おらよ!」

 

「アアアッ……。何でだ…。なんで俺達なんだ…。」

 

「ああっ!?うるせぇ!」

 

「もう…やめてくれえっ。」

 

 

こんなクズに「やめてくれ」と言うふがいない自分が本当に悔しかった。屈辱でしかなかった。殴られた結果右頬の骨が割れたのを感じた。地面が自分の血で染まっていくのを朦朧と確認した。それと同時に花音を襲わんとする阿久津の右手にナイフを確認した。

 

 

「もう……やめてよ…」

 

「あ?何か言ったか?」

 

 

 

 

もうやめてえッ!!

 

 

 

怖いーその一心で花音は阿久津の手を振り払った。多分目を瞑りながらだろう。俺と違って脅しに屈すること無く抵抗していたが運が悪かった。

 

 

 

ぐちゃあっ

 

 

 

 

不快な音と共にさっきまで威勢がよかった阿久津の動きが急に止まった。不振に思い花音が目を開けると目を背けたくなるような現実が広がっていた。

 

 

 

「ブホッ……て、めぇ…。」

 

 

 

阿久津の腹にはナイフが刺さっていた。

阿久津自身が持っていたナイフだ。花音が阿久津の手を振り払った時にその勢いで刺さったのだろう。

 

花音の焦りは尋常じゃなかった。法的に見れば正当防衛が成立する。この公園には監視カメラもあるため立証するのは簡単だろう。しかし問題は花音が事故とは言え人を刺した事実を受け入れられるかだ。恐らく無理だろう。自分があの誘拐事件で人を撃ったことを今だ受け入れられてないからそう言いきれる。

花音は目を涙で満たして後退りし、その場にへたれこんだ。やはり事実を受け入れられないのだろう。

 

阿久津が倒れた後公園を沈黙が包み込んだ。そりゃそうだ。目の前で意気がっていた命がぱったり消えたのだから。

阿久津が倒れるのと同時に俺も意識を手放した。

 

これは花音からの話だが阿久津が倒れて数分後、警察が数人来て花音に暴力を振るおうとしていた尾関達グループを現行犯で逮捕したらしい。誰が通報したかは分かっていない。

 

わずかに聞こえていたのはパトカーと救急車の、無情に響くサイレンだった。

 

 




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読了、ありがとうございました。
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