俺のビジネスアカデミア   作:エニスマン

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この話で本編と合流します。
こんなに長い文章を投稿するのは初めてなので実質初投稿です。


第1話 邂逅、そして入試

言われた通りに日本語の勉強をしているうちに、すぐに1週間経ってしまった。日本語は難しい語彙を除けば意思の疎通ぐらいはできるようになった。俺もやればできるもんである。

「さて、ノージア準備いいか?向こうの時間で午前11時ここにいれば良いと言われたんだが。」

「ああ、大丈夫だ。」

移動方法を指定するのではなくこちらを待たせるのか…向こうには転移系の個性の運び屋でもいるのだろうか?

「!」そんな事を考えていると、いきなり目の前の空間に黒い靄のようなものが滲み出してきた。こちらに対する害意は感じられなかったが、俺は警戒して懐の銃を握りつつ様子を見ることにした。やがて靄の中から何者かが姿を現した。体格や服装から男のようだと言うことはわかるが、首から上が靄におおわれて隠されているため年齢などは分からない。

 「こんにちは、はじめまして。私は敵連合の黒霧と申します。貴方達はセンス警備軍事株式会社の方で間違いありませんね?」

目の前の黒霧と名乗った存在がそのように確認をとってくる。この見た目で喋れんのか、と少々驚いた。

「ああ、そうだ」と父さんが答えると、彼は「では、私たちの拠点まで私の個性で移動します。少しじっとしていてください。」といい靄を広げてきた。俺は靄に包まれ、目を閉じた。

 

───────────────────────

 

 黒い靄を抜けるとbarだった。

一昨日教材として読んだ日本の小説の冒頭に似せた感想を思い浮かべたが、いまいちパンチに欠けるのでやめた。そんなことより、俺の目の前にいるパンチの効きすぎた奴が問題だ。今俺の前には、顔面に手を貼り付けたイカれ野郎がいる。その上そいつは悪意と害意に塗れている。周囲のものに対する無差別な破壊衝動を湛え、物が塵になって崩れてゆくイメージを振りまくそれは俺たちを一瞥すると不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「先生…俺の協力者を用意するって言ってたじゃねえか。オッサンの方はまだ良いとして、このガキはなんだ?俺がガキが嫌いなこと、知ってるだろうが」そんなことを言いながら苛立ちを隠そうともせずに首筋を掻きむしる男を注意深く観察する。おそらく個性は『分解』とか『崩壊』とか、そんなとこだろう。こちらにぶつけてくる悪意だけで崩れそうだが、手のイメージや首を絞められる感覚から、手での接触が発動条件だと予想する。

 それにしても、これは酷いと言わざるを得ない。こんな仕事である。クライアントは大抵誰か、何かを傷つけようとする碌でなしであるが、ここまでストレートに嫌悪と猜疑をぶつけてくる奴はなかなかいない。きっとこいつは癇癪持ちのガキのような頭をした甘ったれなんだろうとその思考回路を推察できた。

 そんな時、カウンターの奥に掛かっていたテレビに電源が入り、一人の人物が映し出された。

「そんなに怒るなよ、弔。彼らの実力は僕が保証しよう。」

その声色、人として認識できないほど崩れ、都市伝説の化け物(スレンダーマン)のようになった顔面、そして呼吸器をつけなければならないほど衰えてなお底の見えない強大な気配を感じ、俺はすぐに理解する。

「…なるほど。彼ではなく、貴方がクライアントなのですね。最近は噂を聞くことも無くなりましたが、どこか遠くにいらっしゃるようで。」

父さんからは今回の仕事に関する交渉、契約の判断は俺がやれと言われている。明らかな巨悪な顔を見ていながら、その悪意を探知できないことから、俺は相手がそれなりに離れた場所にいると推察する。

「いやぁ5年ほど前にね、僕はちょっと平和の象徴に悪戯をしたんだけれど、その時に案外彼が怒ってしまってね。相打ちになって今は療養中なのさ。」

相打ち、ということばを聞いて俺は諜報部から上がって来ていたオールマイトの活動パターンの変化を思い出した。もしもその変化がこの男との相打ちによる後遺症を原因とするものならば、敵連合の目標である『オールマイトの殺害』が現実味を帯びてくる。

 そこまで考えたところで、まだ挨拶をしていないことに気がついた。今までのは軽い雑談ということにして、自己紹介と本題に入ろう。

「そういえば、まだ挨拶をしていませんでしたね。私はこの件を担当させていただきます。センス警備軍事株式会社のノージア・センスです。こちらは」

「こいつを推薦した、社長のレオナルド・センスだ。」

「僕のことはいいだろう。どうやらみんな知っているようだ。」

「私も、先ほどお話しした通りです。黒霧とお呼びください。」

視線が先ほど弔と呼ばれた手男に集まる。

「チッ…敵連合リーダー、死柄木弔。」ぶっきらぼうに言う死柄木。

「で?担当だっつっても、ガキがどう俺たちのサポートをしようって言うんだよ?」

来たな、ここからが本題だ。

「それについてはこちらでプランを用意させていただきました。端的に説明するなら、雄英の中に生徒として潜入します。」

そう言うと、黒霧と死柄木が唖然とする。

「…正気か?」「おそらくこれが最も効率的かつ確実な方法でしょう。懸念材料としては、私の個性を偽り、無個性とでも言う必要があると言う点でしょうか。」

そう説明すると、今まで黙って聞いていた巨悪が口を開いた。

「…その根拠を、聞かせてもらえるかな」

「一つは、私の年齢と実力です。私は来年16になるので、高校を受験しても違和感は持たれません。また、私はこういう仕事をしている都合上他の同年代の方よりは戦闘と壊すことにかけては長けていますし、爆薬の扱いや正確な狙撃のために大学課程までの理系科目は押さえています。もう一つは、来年からオールマイトが雄英に教師として勤めるという情報があるからです。」

ここでとっておきのカードを切る。俺の個性や他の社員が力を貸せない理由はまだ説明できないが、重要な情報を小出しにすることでこの契約の有用性をアピールし、待遇を良くしてもらうのが目的だ。

「なんだと…⁉︎」

今度は3人とも驚いたようだ。

ここが仕掛けるべきポイントだろう。

「オールマイトの殺害は生きるために戦場を必要とする我々にとっても非常に重要なものです。彼が確実に雄英にくるならばその懐に潜り込むのが目標達成のための最短経路でしょう。」

そう言って話を締め括る。

 

 

しばらくの静寂の後、死柄木が口を開く

「…こいつが本気でオールマイトの死を望んでいるのは分かった。俺はこいつを使うべきだと思う。」

正直言うと意外な発言だった。オールマイトに向ける憎悪には気がついていたが、目の前のガキに対する不快感が先に出ると思ったからだ。

 

次に口を開いたのはAFOだった。

「分かった。じゃあ、もう一つの本題に入るとしよう。いくら欲しい?」

しばし考え、答えを出す。

「120万、雄英に合格したら前金20万、オールマイト殺害もしくは無力化に貢献する情報の提供やその他雄英の機密を盗み出し、サポートを十分にこなすか3年になって卒業前に裏切るかのどちらかで100万でどうでしょうか。」

「おいおい、いくらなんでも安すぎるだろ、本当に大丈夫なのかよ。」

 

死柄木が口を挟んでくる。俺はその誤解を解くために一つ教える。

 

「ドルですよ、単位は。日本円で1億2000万円ほどです。」

「なっ⁉︎」

「もちろん、それだけの価値がある働きはするつもりです。国家機密クラスの情報の宝庫に入るわけですから、もっと高くても良いのですが、オールマイト殺害は私たちにもメリットがありますし、あなた方のように建前や表面だけの善意を持たない剥き出しの悪は好きですから、お安くしておきますよ。」

金額設定は、まあこんなものだろう。一応安くした方だとアピールしておく。

 

───────────────────────

 

「ふむ、分かったよ」

「では…」

「まあ待ちたまえ。まだ君の個性を聞いていないじゃないか。僕には先ほどから君はその話題を避けているように見えるが?」

 

気づかれたか、さすがは裏の支配者とまで呼ばれた男だ、鋭い。

 

「そうですね、お話ししましょう。私の『個性』は『悪心感知』です。私を中心に町一つぐらいの範囲にいる人間の悪意や害意を知ることができます。

ここは人が多いですね。先ほどからずっと、うるさくてしょうがない。」

 

「なるほど、それが君の個性か。デメリットはあるのかな?」

 

「メリットがそのままデメリットですよ。常に社会のおやくそくの下に隠された悍ましく醜い人の本性を見なければなりません。ああ、本当に

 

吐き気がするほど、鬱陶しい!

 

 

 

失礼、取り乱しました。異形型なのでオンオフもできない、使い勝手の悪い個性ですよ。」

 

「ふむ…だから君は雄英に無個性だと言おうとしているのか。確かにその個性は周りから隠しやすく、隠した方が強力に作用するだろうね。」

「そういうことです。」

 

 どうやら、あちらにはもう質問などは無いようだ。こちらにも、もうこの場で伝えることはないだろう。また黒霧さんが送ってくれるようなので、去る前に挨拶をしておく。

「この度はご契約ありがとうございます。お互いの目的のために誠心誠意、努力することを誓いましょう。」

そう言って俺は再び靄に包まれた。

 

───────────────────────

 

 

 「俺の交渉はどうだったよ、父さん?」

帰って来たところで、父さんに聞く。

 

「悪くなかった。お前の個性はある程度思考が読めているのが強いな。遠距離からの点の攻撃に強いし、相手によっては交渉にも使える。なんだかんだデメリットと同じぐらいの強さがある個性だな。」

 

「…そうか。ハァ〜…日本に引っ越す準備しねえとなぁ、俺の戸籍や経歴については誤魔化しが効くんだろ?」

日本に長期滞在をし、高校に満足に通えるようにするためには日本国籍があった方が良い。幸い、俺の血の繋がった父は日本人だったそうなので、日本国籍は取得できるだろう。

ただ、雄英に通うならば、俺は個性犯罪の被害者であるということにしなければならない。

復讐による殺人歴のあるやつなんざ入れてはくれないだろう。

 

「その辺については心配しなくていい。お前が仕事以外で殺した4人については跡形も残ってない。母親の死後、引き取られて経営を学んでいたがヒーローを目指すことにした、というカバーストーリーでどうにかなるだろ。」

 

そんなんでどうにかなったら流石に雄英のおめでたさ加減に呆れてしまうが、どうにかなられてもらわないと困るのも事実である。

 

俺はまたため息をついた。

 

 

───────────────────────

 

一所懸命に何かに打ち込んでいると、時間が経つのは早いもんである。

というわけで入試当日だ。依頼を受けてからこれまで、日本語の勉強と社会のテスト対策に心血を注いできたのだ。筆記においては負ける気がしない。朝起きて、体とエクステの調子を確かめ、朝飯もしっかり食って自分のベストの力が出せることを確信する。

 そうして試験の荷物もまとめて勇んで出陣する。勢いよくドアを開けて部屋を出ると───

 

─────────黒霧がいた。

 

 「…なんで貴方がいるんですか?」

マジで疑問である。どうして平和の象徴を殺してやろうという悪の組織の一員がこんな朝に住宅地のアパートに来ているのだろうか。

「雄英の入試は今日でしたよね?貴方が受かってくれないとこちらの計画も狂ってしまいますので、ほんの少し応援しに来たのですよ。」

なんてことを言いつつ一つの包みを渡してくる。

やけにおせっかい焼きな悪の怪人である。

俺知ってる!こういうの日本語で「オカン」って言うんだ!

 

「?、これの中身はなんです?」

「お弁当ですよ。」

「…」

 

オカンじゃん。完全に。

俺が学んだオカンの概念にガッツリフィットしてるぜ?

こんな母性に溢れた怪人いねえよ。

まあ、なんだ、あの大人子供(死柄木弔)の世話してたらこうもなるか。

 

 俺の荷物の中には食い物はカロリーメイトとスニッカーズしか無かったし、弁当に見せかけた爆弾は食べられるわけがないのでちょっと助かった。

 

「ありがとう、ございます…」

「頑張ってくださいね」

 

 黒霧さんは俺を激励すると帰っていった。

───────────────────────

 

 気を取り直して雄英に向かう。

途中メチャクチャガラの悪いやつを見かけたが、関わり合いになりたくなかったので急いで移動した。

 

雄英に着くと受験者への案内があったので順路に従って試験会場まで行き、試験を受ける。手応えとしてはまあまあだった。

母国語である英語と、得意教科である理科数学は余裕と言っても大丈夫だろう。

国語と社会もまあ、本気で対策すればなんとかなるレベルだろう。

 

 

 そしていよいよ実技試験の番がやってきた。説明担当はプレゼントマイクのようだ。彼は壇上に立つと俺たちに向かって…

「今日は俺のライブにようこそー‼︎!エヴィバディセイヘイ‼︎!」

勢いよくシャウトをかましてきたが、当然返答はない。馬鹿なんじゃ無いかこの人。プレゼントマイクは何事もなかったかのように説明を始めた。

メガネを掛けた体格のいい男子が説明の途中で質問となかなか過激な文句を挟んでいたが、学校をなんだと思っているのだろうか。

人が群れている時点で汚らしい澱んだ場所はあるだろうに、雄英を神聖視して自分の理想を周囲に押し付けようとする姿はひどく滑稽に見えた。

 

 その後俺たちは会場別にバスに乗り、試験会場まで移動した。試験内容は対ロボット戦なので、荷物の中から装備を取り出す。

今回の装備は防弾仕様のトレンチコートと安全靴仕様のブーツと投げナイフを何本か、腰にマチェーテと手斧、ベルトにチャフグレネードを幾つか、背中に応急手当てキットのぎっしり詰まったサブザックを背負っている。そして懐には3つ対0ポイント用に必要だと判断した弁当型爆弾を忍ばせている。

バレるつもりはなかったとはいえ、簡単にこんなものを持ち込ませてしまうのはどうなのかとも思ったが、爆弾そのものを作れるような個性もある以上科学的なものへの警戒は薄いのかもしれない。

 

 試験会場の街に着くと、俺は出来るだけリードを取れるよう、集団の前の方に待機した。そして試験の開始時間を待っていると…

 

「ハイスタート!」

 

その声が耳に入った瞬間、俺は全速力で駆け出す。

 

「どうした⁉︎実戦にカウントなんざねえんだよ!

走れ走れ!賽は投げられてんぞ!」

 

早速2ポイント仮想敵の頭にマチェーテを叩き込みながら、プレゼントマイクの言葉に内心首肯する。

実戦などそもそも始まる瞬間誰か斃れるものだ。

当然それが自分ではない保証などない。

流石は日本最高峰のヒーロー科だ。取るべき心構えというものを理解している。

 

最初の2ポイントの勢いのまま、目についた路地裏に飛び込む。ラッキーなことに3種の仮想敵が1体ずついたのでそのまま襲い掛かる。

 

「標的補そ…」

遅い

 

「シィッ!」

裂帛の気合いと共にマチェーテの切っ先が2ポイントの頭に突き込まれる。

動かなくなった2ポイントから得物を引き抜くついでに、1ポイントにその残骸をぶつけてひるませる。

そのまま目潰し代わりのナイフを投げつけるが、俺の予想を裏切ってナイフが1ポイントのカメラに深々と突き刺さるとそのままそいつは動かなくなった。

 

(2ポイントより脆い⁉︎)

恐らく、1<2<3ポイントの順番で頑丈に作られていると予想して、3ポイントへの攻撃方法を変える。

 

路地に面しているエアコンの室外機や換気扇の枠を足場に、3ポイントの頭上まで飛び上がる。

落下しながら腰の斧を抜き、その運動エネルギーを込めて振り下ろす。

 

「っらァッ!」

 

ズガアアアァンッ!

 

派手な音を立てながら、3ポイントの頭をかち割る。

これで合計8ポイント。順調な滑り出しではないだろうか。

そんなことを考えていると、路地の奥の曲がり角から1ポイントが2体姿を現す。

 

「標的捕捉!ブッ殺ス!」

「うるせえよ、ガラクタども。」

悪態をついて突貫する。

 

───────────────────────

 

 試験も残り時間が半分を切った。俺はここまで個性を使って、

戦闘中の受験生を探知→手柄を横取り

の流れを繰り返しポイントを稼いできた。

怪我人を見つけ次第応急手当てキットを投げ渡すか、動けなさそうなら治療を施したりしてきたので、雄英への印象も悪くはないだろう。

前方に3ポイントを発見し、その頭に斧を叩き込む。

その時、大きな揺れが起きた。

 

(地震か…?いや、違う!まさか!)

 

顔を上げ、大通りのほうに砂埃と大きな影を認識する。そこに居たのは

 

(所狭しって、こういう意味なのかよ!)

超巨大な、0ポイント仮想敵だった。

 

 とりあえず音に寄ってくるプログラムが確認できている1ポイントと2ポイントの残党を狩れないかと思い、大通りへ向かう。すると、

受験生達が必死に0ポイント仮想敵から逃げているところだった。

「おいやべーって!あんなデカイなんて聞いてねえよ!」

目の前を走っていった受験生がそんなことを喚いていた。

うん、サイズについては言及されてなかったしね。

 

その時、ふと閃いた

(他の人を逃すために強大な敵に立ち向かうとか、いかにも綺麗事好きな奴らには効くのでは?)

 

人の流れに逆らって、0ポイント仮想敵に向けて走り出す。腰を抜かしている緑髪の少年と転んでいる少女の横を駆け抜け、砂埃の中に突入する。

赤外線カメラや設置型のセンサーを警戒してチャフグレネードを思い切り上方の0ポイント仮想敵の頭部に向かって投げ上げる。

こいつの足はキャタピラになってるから、片方だけでも壊れれば他の奴らを逃すには十分なはずだと判断して、大きく左側に回り込み、右側のキャタピラに向かう。

そのまま走りながらキャタピラの履帯部分に爆弾を貼り付けていく。

キャタピラは履帯さえ切れれば役立たずになる。そのまま走って安全圏まで離脱し、スイッチを押した。

 

カチッ

 

バアアアァーン!

 

爆炎と共に巨大な履帯がたわみ、そしてちぎれ飛んだ。

爆炎と音は拾えているだろうが、砂埃のせいでこちらの状況は理解できていないはずだと考え、ひとまず安心する。

 

 

ゾッ

 

 俺は今やってきた方、少年と少女がいた方から強い暴力の意志を感じ、慌てて振り向く。

 

もうもうと上がる爆炎の隙間から見えたのは、先ほどの少年が足をためている姿で、

次の瞬間、少年は砲弾のような速度で飛び出す。

その蹴りから生み出される速度は尋常なものではなく、余波だけで周囲の煙が晴れるほどだった。

少年は0ポイント仮想敵の頭部を殴りつけ、粉砕した。

 

(ああ、駄目だこりゃ、完全に手柄を取られた。)

内心そんな諦めすら出てくるほど完璧な一撃。

 

踏ん張ることすらせず、完全に素人丸出しの大ぶりなパンチだったが、その姿は呆れるほど英雄的だった。

 

 おこぼれでアシスト判定ぐらいもらえないかなーと、倒れていく巨体をボケーっと見ながら考えていると、少年の様子がおかしいことに気づく。

右手と両足が妙にぐにゃぐにゃとしているし、間抜けなほどにジタバタとしながら落下している。

(まさかあいつ、着地のこと考えてねえのか?)

 

受け止めるために落下地点へ向かって走り出す。

落下の途中で先ほどの少女が少年にタッチしたが、瓦礫に乗って飛んでいることから物の重さを無くすとかであろうとあたりをつけ、さらに加速する。

少年が地面にぶつかる直前にギリギリ間に合い、その体を受け止める。

 

重さは無くなっていて、崩れた体勢でもなんとか止めることができた。

 

「ありがとう…ございます…!」

少年が言う。

「あ〜…どういたしまして?」

とりあえず、お礼を言われた時の定型文だと教わった言葉を言っておく。

 

「!…ああ、ダメだ!…

せめて…!1Pでも…!」

もがく少年。て言うかこいつまだポイント持ってないんかい⁉︎

「無理に決まっているでしょう!動ける状態ですか⁉︎」

 

『終了〜!』

 

試験は終わった。俺の腕の中の少年は絶望した顔をして気絶してしまったので、やってきたリカバリーガールに任せて、俺は帰路についた。




いきなり長くなってしまい申し訳ありません。
さて、ノージア君は今回初めて日本語を喋ったのですが、彼はテキストに載っているような日本語しか知らないので、まだ敬語や丁寧語でしか喋れません。しかし英語を喋っているパートではそれなりに口が悪いです。
次回は意外な人物との接点が明らかになります。
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