途方もない悪意がUSJの各場所に開けられた穴から入り込んでくる。
その中でも一際強い憎しみと殺意を放つ死柄木弔と黒霧がこちらを見据える。
「13号に…イレイザーヘッドですか…
先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが…」
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引きつれてきたのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて…
子どもを殺せば来るのかな?」
「敵ンン⁉︎バカだろ⁉︎ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」
誰かが慌てながらも侮ったように言うが、それは違う。
少々雑な作戦であることは否定しないが、威力偵察と考えればセンサーの無効化や襲撃タイミングもよく考えられている。
まあ恐らく考えたのは黒霧さんだろうが。
「現れたのはここだけか学校全体か…
なんにせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそう言うことが出来る『
校舎と離れた隔離空間、そこに
これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ。」
(コイツ嫌だな…鋭い)
イレイザーヘッドがこちらに避難と連絡を指示し、広場に出てきた敵部隊に向かって単身飛び込んでいく。
その後はもうほぼワンサイドゲームだった。首元の捕縛布と自身の身体を使って次々に敵をのしていく。
敵は射撃担当の一団と異形型の数人があっという間に倒れてからは勢いを失い、防戦とすらも言えないような一方的な蹂躙を受けている。
所詮チンピラではこんなものかと思いながら避難の邪魔にやってきた黒霧さんに向き直る。
「初めまして、我々は
せんえつながら…この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに
息絶えて頂きたいと思ってのことでして
本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが、何か変更あったのでしょうか?
まぁ…それとは関係なく…
私の役目はこれ」
(止めない方がいいな)
爆豪と切島が黒霧さんに飛びかかるが、その行動によって13号の射線が塞がれてしまう。黒霧さんもうまく防いだようだし、これは悪手だろう。
「危ない危ない………
そう…生徒といえど優秀な金の卵」
散らして
嬲り
殺す
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よし、ここに飛ばされたのは俺だけのようだ。誰か巻き込んだりしたら身バレするかもしれなかったのでラッキーだった。
今着ているコスチュームの上からワンサイズ大きい黒装束を着て、グローブもコスチュームの薄いハーフフィンガーグローブの上にタクティカルグローブを着ける。
ナイフとグレネードをいくつかとGLOCK18C9mm自動拳銃を取り付けたベルトをコートの上に巻き付け、グロックの
左足のレッグホルスターに45口径のサプレッサー付きMEUピストルを差し、装填。
右足にはナイフホルダーを取り付ける。
最後にドクターが用意した顔を隠すヘルメットを被る。
これからしばらくの間、俺は───
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「
USJ襲撃の前日、装備の点検中に思い出したかのように死柄木が「敵名を決めとけよ」と言ってきた。
確かに、潜入中なのに作戦時に本名で呼び合うわけにもいかない。
「そうですね…Betrayer、いやもう少し捻りが欲しいな…そうだ、
「本名じゃなきゃ何でもいい。」
ノリ悪いな手フェチマン。
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─UBだ。
俺はワープゲートをくぐった。
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〜飯田side〜
「くそう‼︎」
(13号先がやられてしまった‼︎
ダメだ!迷うな!助けを呼ばなくては!今この場で一番速い僕が‼︎)
「散らしもらした子ども…教師たちを呼ばれてはこちらも大変ですので。」
ワープゲートが飯田の眼前に開き、そのまま取り込もうとする。
(皆を…僕が!任された!
クラスを‼︎僕が‼︎‼︎)
飯田がゲートに飲み込まれる寸前、障子が複製腕でゲートを覆い黒霧を封じ込める。
「行け‼︎」
声が聞こえる前に駆け出す。
(皆‼︎待っててくれ‼︎
必ず僕が助けを呼んでくる。だから…持ち堪えてくれ…!)
飯田の決意を嘲笑うかのようにUSJのゲートの前にもう一つワープゲートが開き、中から真っ黒な敵が現れる。
(皆が作ってくれたチャンスを無駄にするわけにはっ!)
「そこをどけえぇー‼︎」
足を振り上げ、全速力で飛びかかり、ハイキックを見舞う。
飯田の脚が弧を描き、敵の頭部に直撃するかに思われた瞬間、
(消えた⁉︎)
直前までその場にいたハズの敵の姿を見失い、焦りを抱いた刹那、飯田は脛に灼熱の感覚を覚えた。
「がっ⁉︎」
軸足であった左脚が焼けるような痛みに襲われたため、飯田はなすすべなく顔面から地面に落ちてしまう。
顔を庇おうと両手を突き出し、目をつぶってしまった一瞬、
ゴキリ
その場の全員の背筋を凍らせるような不快な音が、嫌に大きく響いた。
「ぐう!うぁ、うわあぁぁぁ‼︎」
飯田がひどく痛む自身の足を見て、悲痛な叫び声を上げる。
脛のプロテクターは砕け、足首に至っては明らかに不自然な方向に曲がっている。
「あああああああ‼︎」
しかし飯田の絶望と苦痛の絶叫は倒れ込む彼の顔面に叩き込まれた強烈な蹴りによって強制的に断たれる。
数秒のうちに飯田を重体に追い込んだ敵は、妙に人間味のない格好をしていた。
190cmほどの長身の全てを黒装束で覆い、地肌が露出している部分は一切ない。
腰を中心に身につけられた武器も金属的、機械的なものが多く、まるで付き従うべき主人を失った影が歩いているような雰囲気を纏っている。
極め付けは頭部の全体を覆っているヘルメットで、スリムながら武骨な金属製のそれは顔があるハズの部分にV字型の赤く光る複眼が配置された仮面のようなものがはまっており、昆虫か機械のような面貌が妙な人間味の薄さを助長している。
「遅いですよ、UB。」
ワープゲートの個性の敵に言われて謝罪するように右手を立てた黒装束─UBを見て、真っ先に正気に戻った障子が駆け寄ってくる。
「貴様よくも──」
しかしUBはその行動を予見していたかのように一息にナイフを三本投げつける。
「効くかぁ‼︎」
障子が複製腕を広げてナイフを打ち払う。2本は刺さったが、障子は構わずにUBに向かって行こうとして
バン!
爆音と共に閃光が迸り、他の麗日・瀬呂・砂藤・芦戸が視界を取り戻すと、そこには頭から血を流し仰向けに斃れる障子とこちらに銃を向けるUBの姿があった。
───────────────────────
〜UB side〜
敵意、前方 ハイキック 飯田
(いきなりか…!)
個性でこちらに向けられる敵意と飛んでくる攻撃を把握し、全身の力を抜いてぐにゃりと重力に任せ落下する。
そして飯田が足を振り上げた瞬間、地面に突っ込むように見えるほどの超低軌道で駆け出す。
そのまますれ違いざまに軸足に向けて思い切り拳を振るい、その脛を砕く。手応えからして骨にヒビが入った程度だろう。
増援を呼ばせるわけにはいかない。通信の途絶と連絡手段の破壊は奇襲の基本だ。
すぐさまはね上げられた左足を掴み急制動しながら飯田の足首を
「あああああぁ!」
流石に希望も足もたたき折られたままにしておくのはなけなしの良心が咎めるので顔に一撃入れて眠らせる。
「遅いですよ、UB。」
すまん黒霧さん
片手を立てて謝るジェスチャーをすると、奥の生徒たちの方から徐々に正気に帰って俺に敵意を向けるものが出てきた。
次は障子、まっすぐ接近。掴まれるとまずい。
「貴様よくも──」
非常口の前に残った5人の生徒の中から障子が飛び出してくるのに合わせてナイフを投げつけながら、後ろ手にスタングレネードのピンを抜く。
「効くかぁ!」
障子が複製腕を振るうタイミングでスタングレネードを放る。
彼の腕の間には水掻き部分があり、普段ならば身を守る盾や傘になりうるそれが目隠しになってこの攻撃が見えていない。
スタングレネードが俺の手を離れ、仮面についた複数のレンズにとらえられた瞬間、ヘルメットのインカムから機械音声が流れる。
『スタングレネードを視認しました。遮光・遮音モードに切り替えます。』
直後、視界が暗転し音も聞こえなくなる。
(やはりこれは便利だな…確か俺の持ち込んだ武装との同期もできるんだったか…)
そんなことを考えているとすぐにカメラが再起動し、視界が回復する。
俺は左足のホルスターから抜いた拳銃で未だ閃光と爆音の衝撃に背を丸める障子の左脚を撃ち抜き、後頭部から落とすようにしてネックブリーカードロップを仕掛ける。
障子が気絶したことを確認して立ち上がり、視力が回復しつつあるクラスメイト達に銃を向ける。
ようやく目が見えるようになったらしいクラスメイト達の目が見開かれる。
よく考えたら頭から血を流して倒れてる人の隣に拳銃持った犯罪者が佇んでいたら殺人現場だと思うのは当然だ。一応加減はしたんだがな…
「クソッ‼︎」
(そりゃ悪手だろ、瀬呂。)
テープを伸ばそうと右腕を振り上げようとする瀬呂の肘を撃つ。
個性によって相手の行動を読み、自分の行動が相手の判断に与える影響も予測して常に相手の5手10手先を見据えて戦う。
それが俺のやり方、今までの訓練の中で最適化し続けて編み出した俺だけの戦闘論理。
この程度の相手ならば勝負に持ち込まずに一方的に勝てる。
顔はクラスメイト達に向けたまま足元の障子の頭に銃口を向ける。
1秒…
2秒…
3秒経っても動きがないので引き金に指をかけ、ゆっくりと引いていく。
「待ってッ!」
麗日が両手を上げる。
「降参する…降参するから…殺さないで…!」
「ちょっと麗日⁉︎」
芦戸が声を上げるが、砂藤と瀬呂も続いてそれぞれ両手と無事な片手を上げたのを見て押し黙る。
それが賢い選択だろう。酸を放つのも、テープを伸ばすのも飛び掛かるのも、全て俺が引き金を引くより遅いのだ。
4人の戦意が萎れるように無くなっていくのを感じてから頷き、ポケットから救急キットを取り出して放ってやる。
「UB、何のつもりですか…⁉︎」
黒霧さんが怒ったように聞いてくるので顔を寄せて耳打ちする。
「投降者に対する暴行・殺害はハーグ陸戦条約並びにジュネーヴ条約に抵触します。我々は優良企業なんですよ。」
それに、と続けてちらとUSJ中央に目を向ける。
「死柄木と脳無が少々苦戦しています。助けにいくべきでしょう。非常口を塞いでおいてください。」
中央の広場ではイレイザーヘッドが脳無の猛攻から逃げ続けている。
オールマイトがこちらに向かっていることは既に個性で把握したので、彼が着く前にイレイザーヘッドや生徒たちを無力化したい。
状況はあまり芳しくないようだ。個性に集中するが、すでにこちらの駒の反応は半分ほどまで減っている。兵隊の質も数も足りていないようで残念だ。
(死柄木はもうちょっと頑張って欲しかったな。)
特に爆豪・切島の倒壊ゾーンと轟・葉隠の土砂ゾーン、最後に緑谷・蛙吹・峰田の水難ゾーンはもうほとんど決着がついている。
この辺で強い奴を1人2人持っていかないとまずいだろう。
脳無から器用に逃げ回るイレイザーヘッドを見据え、その背に向かって駆け出す。そのまま抱きついて動きを止め、羽交締めにして拘束する。
こんなもの、プロが相手ではたった数秒の時間稼ぎにもならないだろう。
だが、今は1秒あれば十分だ。
(死柄木!)
「脳無!やれ‼︎」
ドズン
(痛ッッッてぇ〜‼︎)
脳無がイレイザーヘッドを殴った衝撃が俺の内臓をひっくり返す。奴が思い切り腕を振り抜いたせいで2人一緒に吹っ飛ばされた。
吹っ飛びながらも腰を落とし、両足を踏ん張る。そしてイレイザーヘッドの顔を後ろから掴み、体を回転させて思い切り地面に叩きつける。
速度に力を加えて投げ落としたのが効いたようでイレイザーはピクリとも動かない。
緑谷達、爆豪達がこっちに来てる。耳郎達も移動し始めた。けど大丈夫、誰も間に合いそうにない。だから──
─ぞぶり、ぐちゃ─ブチブヂブチッ!
ボーナス、狙いに行こう。
───────────────────────
奪った目玉をすぐに保存液の入った瓶のなかに放り込み、コートの内ポケットにしまう。
緑谷はもうすぐそこにいるようだが、こちらの様子を見てビビったのか手を出そうとはしてこないようだ。あとは脳無に任せて死柄木に報告に行こう。
死柄木の後ろに黒霧さんが姿を現す。俺も歩いてそちらに向かう。
「死柄木 弔」
「黒霧、13号はやったのか」
「行動不能にしました。生徒の方もUBが処理して戦意を喪失させました。」
「……ふーん。アンノウン・ビトレイヤー、お前は?」
声が周りに聞こえないようにヘルメットを寄せて耳打ちする。
「イレイザーヘッドの目玉を回収しました。あと、オールマイトがもうすぐ来ます。人数が減ってきてるのでそのうちジャミングが解けます。」
その報告を聞いた途端、死柄木は愉快そうにその
まるで悪戯を思いついた子供のように、怯えてこちらを覗いている生徒たちに向けて。
「ああ、そう…お前結構やるじゃん。
そうだなぁ…オールマイトがくる前に、生徒たちが死んでいたら、自分が遅かったせいで誰かが死んだと知ったら!彼はどんな顔をするのかなぁ!」
死柄木が蛙吹に向かって飛び掛かる。ヒョロい感じだが、彼はなかなか身体能力が高い。
死柄木の五指が蛙吹の顔に触れ、崩壊が発動──
起きたのか、
──しない。
「本っ当かっこいいぜイレイザーヘッド。」
イレイザーヘッドが死柄木の個性を消していることを見て取ると、緑谷は蛙吹から死柄木を引き剥がそうと拳を固めて振りかぶる。
「UB」
緑谷が握った拳を振るう前に、上から足で拳を押さえ込む。
「くそっ…!」
緑谷が力むと、彼の腕の周囲に緑色の稲妻が走る。
『個性』の発動の合図だ。自身の体を壊すほどの超パワー。彼曰く『ワン・フォー・オール』
しかし、無駄だ。そんな無駄の大きい、頭の後ろまで拳を振りかぶったような構えからではろくな力は出せない。
その状態のまま腰からグロックを抜き、
「ッ!クソがぁ‼︎」
「かっちゃん⁉︎」
爆豪達がもう来やがった。
銃口を見た瞬間に爆破で銃弾の軌道を逸らしたようだが、いくつかは体にかすり、食い込んでいる。
しかし骨や内臓は無傷なようでまだ動けそうだ。銃の効かない切島にカバーに入られても不利になってしまう。
しかも峰田が緑谷から一瞬遅れて死柄木を拘束しようとしている。
とりあえず死柄木と峰田の間に入るついでに押さえつけていた緑谷の足元にグレネードのピンを抜いて落とす。
「うわあああー‼︎」
峰田が泣き叫びながら死柄木に放ったボールをいくつかジップロックで受け止めて確保する。
そのまま死柄木を抱き抱えるように水際から引き離すと、直後、爆音と共に水柱が立った。
(死んだかな…あ、生きてるなこれ)
どうやら緑谷が2人を庇って個性で爆発を防いだようだ。これで奴の右腕は使用不能。先程使っていたデコピンも左手の4発分しか打てない。
「すみません死柄木、仕留め損ねました。」
「まあ、良いよ。オールマイトは?」
「今の爆発で気がつきました。来ますよ。」
「さッきから何をコソコソとしてやがるクソ仮面野郎共‼︎」
爆豪が突っ込んでくる。死柄木は下がったので、周りを気にせず相手をしてやる。
彼の戦法は派手で個性的、三次元的な機動と高威力の爆破とそれに伴う視界の悪化による思考の阻害が厄介だ。それこそ、たとえ今の状態であっても並の敵相手ならば完封できるほどに。
しかし、だからこそ彼は対等な相手との戦いや格闘の基本を知らない。彼の戦い方を知らない相手にはそれでもなんとかなるだろうが、俺との相性は悪い。
「死ねぇ!」
爆破はあえて食らう。
所詮圧力も破片も伴わない爆風だ、掴まれたりしなければ耐えられる。
爆炎を抜けて正面から殴りかかる。
爆破による方向転換で回避、甘い。
手と身体の制御に意識を割いたせいで下半身への警戒が疎かになっている。
振り向きざまに裏拳で金的を殴る。嫌な手応えと共に目に見えて爆豪の動きが鈍る。
隙を晒した爆豪の襟首を掴んでこちらに駆け出したばかりの切島に投げつける。
「おわっ⁉︎爆豪!大丈夫か⁉︎」
彼は慌てて爆豪を受け止め、一瞬だけ俺から目を離してしまった。そして目線を前に戻した時、そこに俺はいない。
外からの衝撃に強い個性を持っているなら、内側にダメージを与えるだけだ。切島の髪を掴み、足をはらって後頭部から地面に投げ落とす。
無力化できていないと困るので、テルミットグレネードをプレゼントしておこう。
それだけやって、死柄木の隣まで下がる。と言っても、彼がこちらに近づいてきていたため、テルミットグレネードの有効射程から少し出た程度の位置だ。
俺は、USJの入り口に視線を向けた。
ついに『彼』がくる。ここからが本番だ。
「もう大丈夫」
「私がきた
UBの姿は、メイドインアビスのボンドルドの格好から籠手と脛当てを取って銃などを装備した感じです。
身長は厚底のブーツとヘルメットでごまかしています。
ヘルメットはVRのような装備で、カメラで見た映像を内側に投影します。かなり高性能で、暗視やサーモグラフィーなどの機能もついています。
いくつか原作との相違点がありますが、次回の後書きで解説しようと思います。