6月1日(火)
あの人からの手紙によればあの人が私をアメリカに特待生として留学させてくれるらしいんだ。特待生だからお金のこととかは心配しなくってイイって言ってくれてる。向こうで本場のレースを学ぶことができる。しかも、あの人と一緒に生活できる。あの人が誘ってくれたんだ。私にとってはこれ以上の幸せなんてなかなかないと思う。ものすごいチャンスなんだよね……。
でも、今までお世話になった人たちを無視して、自分のことだけ考えて動いちゃっていいのかな……。有マ記念に出る夢だってあきらめきれないし。
6月2日(水)
もう、なにがなんだかさっぱりわかんなくなってきた。最近、急にいろんなことが私のまわりであったもんだから、どうしたらいいんだろうって。自分の気持ちだけで決めるわけにはいかない。
友達、監督やコーチ、学校の先生、これまですっごいお世話になった人たち、そして誰よりもお世話になってるお兄ちゃん。
……これまですっごいお世話になった人たちの好意をムダにしちゃだめだよね。
6月3日(木)
心の中があのひとのことでいっぱい。1日の終わりにこの日記をつけるのが精一杯だよ。
今日パープルハートちゃんに「どうしたの? なんだかこの2,3日急に怖くなったよ」って言われたから、思い切ってあのひとのこと話したら、すごく驚かれちゃった。「気持ちはわかるけど少し落ち着いて。日本トレセン学園への編入はどうするの? 散々行きたい、編入したいって言ってたじゃない。それに有マ記念も諦められるの? 出走することがリリーの夢だったんでしょ」って言われちゃった。パープルハートちゃんにしてはすごくまともな意見で少し考えさせられちゃった。
6月4日(金)
月に一度の恒例行事。こんな時に……。考えが全然まとまらないよ。
6月5日(土)
もう、いいや。これが終わるまで何も考えないでおこう、どうせいい考えなんて思いつかないだろうし。
6月6日(日)
あれだけ、あの人にいて欲しいって思ってたのに、皆のことを考えると気持ちが揺れてることに気づいちゃった。でもいくら考えても、いくら悩んでも、絶対に答えなんかだせるわけないよね……。
6月7日(月)
なんで、こうなっちゃうんだろ。
私にどうしろって言うのよ。もちろん、あの人に罪はないんだけどさ。
でも、そんなに簡単に甘えちゃってイイんだろうか? あの人と暮らせることはうれしい。でも有マ記念出場への夢も諦められないよ。
6月8日(火)
色々考えたけど、あの人の下へは自分の力で行くべきだっておもう。私の実力で海外遠征ができるくらい力をつけて、あの人から見て自分の下においても恥ずかしくない特待生として。
その方が、あの人も喜んでくれるとおもう……思うんだけど……。
でも、あの人が来てほしいって言ってくれたんだよ、この私に……。
3日後にはあの人が私に会いに来るらしい。あんなに待ちこがれてたはずなのに、私、どうしたらいいのかわからないよ……。
6月9日(水)
お兄ちゃんと普通に話すのもちょっとツライ。
今は本当は誰とも話したくない。ひとりでいたい。アメリカに行きたい自分と、このままシアワセな生活を送りたい自分……。どちらを選んでも、きっと後悔するんだよ。
もう、どーしたらイイんだろう。なんでこんなことになっちゃったんだろう。
でも、結論を出さなくちゃ。1秒でも早く。そうしないと、みんなが迷惑しちゃうんだから。
6月10日(木)
決めた。自分の気持ちをムリヤリ整理した。でも、それが私の選んだ道だ。後悔なんて絶対しない。私のことは私が決めなくちゃ。
6月11日(金)
あの人に会って、自分の気持ちを伝えてきた。
一緒には行けないって……。
あの人、そうか。って一言だけ。でも、あの人の目は一緒に来て欲しいって言ってた。あの人の目を見たら、一緒に行くって言いだしそうだった。
あのひとから無理やり目を逸らして、ごめんなさい。って。
6月12日(土)
6月13日(日)
あの人がアメリカに帰った。
昨日はあの人が泊まってるホテルまで見送りに行って、そこのレストランで今まで会えなかったときのこと全部話して……最後に一晩過ごして素敵な思い出も貰った。
……さよなら、私の初恋の人。
もう逢えないよ、ね。……でももしまだ縁があって、また逢えるならその時は絶対に……。
……ああもう。こんなこと日記に書くなんて未練、だよね。でも……。
6月14日(月)
昨日までの私にサヨナラして、今日から心機一転がんばるぞ!
……ホント頑張るよ、あの人に申し訳ないもん。
6月15日(火)
いよいよこの学園で最後の記録会が迫ってる。キザ男も何となくしんみりとしちゃって、ついつい茶化しちゃったんだけど、乗ってこなかった。なんか拍子抜けだったよ。