常磐ソウゴは魔王である 作:ぬんぬん
ソウゴが目覚めてから、初めてバーテックスが来たのはソウゴが目覚めて二週間ほどが経った頃だった。魔王の力を使えば戦えるかもしれないが、病み上がり故に戦うことは出来ず、結局は歌野に任せる結果となった。
そして今日、ようやく戦えるようなタイミングでバーテックスがやって来たというわけだ。
「ソウゴ、確かあの金色の姿には…」
「うん、なれないよ。アレは未来から無理やり力を引き摺り出しただけだから」
ソウゴは歌野の疑問に答えながら、ブランクの状態になっているライドウォッチをポケットから取り出す。全てが始まったあの日にウォズに渡されたこのウォッチ。未だにブランクだが、ソウゴはそれを力強く握って笑う。
「その時計みたいなので本当に戦えるの?」
「大丈夫。なんたって俺は今、ようやく王様としての一歩を踏み出すんだから!」
そう歌野と水都に笑ってみせると、手に持っていたライドウォッチが白く輝き形状を変える。完全に形状を変えたウォッチ『ジオウライドウォッチ』を見つめていると突如として現れたウォズがソウゴに跪きながらあるものを差し出してきた。
「──我が魔王、貴方は魔王としての一歩を踏み出された。その祝いに、こちらを」
差し出してきたのは赤い台に乗った白いベルト。ソウゴが時の王になるための資格たる『ジクウドライバー』だった。
「よーし!行こう!歌野!」
「OK!少し待ってて!ダッシュで着替えてくるわ!」
「え!?アレ着替えてたの!?」
「あはは…締まらないなぁ」
ダッシュで更衣室へ向かう歌野の姿に驚くソウゴとそんな二人の締まらない様子を見て呆れたように笑う水都。
さて、歌野が着替え終わったため、ソウゴもジクウドライバーを腰元に当てる。
【ジクウドライバー!!】
ジクウドライバーが完全に固定されると同時に、ジオウライドウォッチのウェイクベゼルを90゜回転させるとジオウのレジェンダリーフェイスが現れ、ウォッチが起動状態になる。
【ジオウ!】
ライドウォッチを起動するためのボタン、ライドオンスターターを押し、ジオウライドウォッチをジクウドライバーのD′9スロットへと装填する。
するとソウゴの背後に銀色の巨大な時計が出現し、周囲に時計の針が進むような静かな待機音が鳴り始める。
「なんてビッグな時計!?」
「すごい…」
「変身!」
ソウゴがジクウドライバーを一回転させる。それと同時に、
【ライダータイム!】
【仮面ライダー!ジオウ!】
ソウゴの背後にあった巨大な時計が10時10分を指し示すように停止すると、時計に巨大なライダーの文字が刻まれ、時計が空中で分解しソウゴの周囲を回転する。
時計の部品がソウゴの身を守る鎧となり、黒と銀の戦士の姿に変わったと同時に、顔にライダーの複眼が取り付けられる。
「よーしこれで──」
「祝え!」
「おおう…」
「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え!過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ!まさに誕生の瞬間である!」
少しづつ見えてきたバーテックスの姿を見て、戦いに行こうとしたソウゴの前に出て祝い始めるウォズに勢いを殺されて困惑するソウゴ。それどころか、歌野や水都もウォズの祝いに目を白黒させていた。
「さあ、我が魔王。存分にその力を振るわれよ」
「ああ、うん…行くよ!歌野!」
「お、オッケー!ウォズちゃんの祝いにびっくりはしたけど!なんなら私も祝って欲しいわ!」
「私が祝うのは我が魔王だけさ…多分ね」
「もういいから!行くよ!」
勇者として身体能力を強化されている歌野を超えた速度で駆け出したソウゴはバーテックスの白い袋のような体に拳を叩きつけるとピンク色の衝撃波と共に爆散するバーテックス。
「なんか、行ける気がする!」
「あら、さすが魔王って所かしら?けど、勇者としてのプライドをかけて負けてられないわね!」
歌野の鞭が舞うように振るわれ、バーテックスを吹き飛ばしていく。そんな歌野の姿を指さしてソウゴは叫ぶ。
「いいなー!俺も武器欲しい!」
【ジカンギレード!ケン!】
「うわなんか出たぁ!?…って、剣?」
「…剣ね。書いてあるもの」
何でもかんでも文字が書いてある様子に歌野が完全に呆れた様子で笑う。だが、顔にライダーと書いてる時点で今更かと思い直して鞭を使ってバーテックスを処理していく。
「よっ…ほっ…そこ!」
【ジュウ!】
ジカンギレードをジュウモードにして、鞭や剣が届かない距離のバーテックスを処理していくソウゴ。
「ナーイス!さ、そろそろ終わらせるわよ!」
「オッケー!」
【ジオウ!フィニッシュタイム!】
ジオウライドウォッチをD′9スロットから引き抜き、ジカンギレード・ケンモードのライドウォッチスロットに嵌め込む。すると、膨大な量のピンクのエネルギーが刀身にたまっていく。
「歌野!下がって!」
「了解!パーフェクトに決めちゃって!」
「これで…終わりだ!」
【ジオウ!ギリギリスラッシュ!】
横凪にジカンギレードを振り抜くと、視界内にいる全てのバーテックスを切り裂き、消滅させた。
「ビクトリー!!」
「やったぜ!」
バーテックスが消滅した事を確認した二人はハイタッチをして喜ぶ。二人がハイタッチをした瞬間、ジオウの腕に付けられたライドウォッチホルダーに嵌められた幾つかのブランクライドウォッチが輝いていることには、誰も気がついてはいなかった。
「…やはり、ね」
たった一人。ある預言者を除いては。