艦隊これくしょんー啓開の鏑矢ー 作:オーバードライヴ/ドクタークレフ
初めて予約投稿なるものを使ってみました。
それではウェーク・ウィークポイント編のダイジェスト版抜錨!
「……で、俺がその重要参考人ってわけだ」
「そういうことだな」
高峰が肩を竦めてそう言った。ウェーク基地からわざわざ呼び寄せられた天龍はのは笑いだ。病院の窓には一部青いビニールシートが張り付いていた。
「もちろん俺じゃないことはわかってるんだろうな?」
「当然。ウェーク島から病院を爆破する意味がわからんし、病院の監視カメラに映っていたお前のそっくりさんは重量がお前と合わない。どう考えても別人だ。それに自走爆弾なんかと一緒にされたくないだろう?」
「もちろんだ。あんな張りぼてと一緒にするな。何が悲しくて雷と司令官を吹っ飛ばさなきゃならないんだ……で、そうわかってるのに容疑をかけたってことは……電の方が問題か?」
「あぁ、今回のビル爆破による航暉の暗殺未遂……生死不明を未遂と言っていいもんじゃないが、生きてるとして話を進めるぞ」
「疑いたくもないが、司令官が生きてるっていう確証があるのかよ?」
「あぁ、雷ともども死体どころか衣服の一つも見つかっていない。……俺たち以外にもカズに死んで欲しくない人たちがいるんだ。そいつらがカズと俺にB-Pなんてメッセージを送った」
「意味は分かったのかよ?」
「おそらくはな、ボーイスカウトの創設者、ベーデン‐パウエル卿の言葉で『
高峰は疲れ切った笑みを浮かべた。
「話が逸れたな。電の方は精神的にもう限界を明らかに超えている。一度立ち止まらせないと体がもたないが、立ち止まらせると心がもたない」
「やっぱりか」
「この一連の事件の背景には発端がヒメの存在がある可能性が高い。戦って倒してた相手が講和を望む知的生命体でしたなんて言ったら許せない人もいるのさ。主にはそれに抗議することで自己満足したい方々だがな。で、ヒメを助けたいって言ったのは電で、電は私のせいで司令官さんがって見当はずれの自己嫌悪がノンストップ。こういう時に抑えになるようにって航暉もまとめて横須賀に呼んだつもりなんだろうが、一気に悪化しやがった。俺の言葉じゃ止まりもしねぇ」
「で、俺の出番ってわけか?」
「そう言うことだ……噂のお嬢の登場だ」
電が通常業務を終え、ヒメがいる兵装実験施設を出てきたことを認めると二人は笑みで迎えた。
「天龍さん!」
「おう、電。……大丈夫か、お前。顔色悪いぞ」
「……やっぱりそう見えますか?」
「目元にクマ作ってたらそりゃ言うだろ。そんなんじゃ司令官が帰ってきた時に心配するぜ?」
「はい……わかってはいるのです。でも……」
「でももなにもねぇ、休めるときに休む。軍隊行動の基本だ」
天龍はそう言って頭を撫でた。それを見た高峰は少し笑ってから二人の肩を叩いた。
「とりあえず河岸を変えるぞ、カズの線をたどるととんでもないもんが出てきた」
そうだけ言って高峰は歩き出す。電と天龍は顔を見合わせながらついていく。案内された先は高峰のオフィスにある小部屋だった。そこには青葉となぜか杉田中佐が待っていた。
「俺までなんで呼ばれてるんだ?」
「カズの状況の整理だから。陸軍出身のお前がいた方がいいと思ってな」
高峰の言葉に杉田は肩をすくめた。
「で、司令官の線をたどって出てきたとんでもないものって何だよ?」
「カズの経歴、かなり嘘っぱちだった」
「嘘っぱち?」
高峰がそう言うと天龍が彼を睨む。
「どういうことだ?」
「軍歴が改ざんされてるんだ。書類上は日本国自衛陸軍第二五五歩兵中隊第三強化歩兵分隊に所属したことになっているが、その証拠がどこにもない。で、カズの痕跡をたどると一件だけヒットした」
「一件だけ?」
天龍が聞き返す。部屋の中央にスクリーンが立ち上がり映像を映し出した。白い建物の壁に真っ黒な突入服を着た男たちが張り付き、窓を破って突入していく様子が映っている。
「これは?」
「2072年12月、深海棲艦発現の8か月前、場所はフィリピン、在マニラ日本大使館立てこもり事件における救出作戦の報道映像だ。この映像の1:32の地点に一瞬だけ映る」
高峰が早送りすると建物全景を映したシーンで止まった。屋上の影が拡大され、人の姿を浮き彫りにした。
「……軍用の光学ホロ被ってほぼ壁と同化してんじゃねぇか。よくわかるな」
「見慣れてんだよ、俺はな」
高峰がそれを拡大し、顔の骨格を航暉のデータとかぶせた。
「光学ホロの下にフェイスマスク、ホロが中和されたときを考えて対策するほど念の入れようだ。でもたとえ顔を隠していても、骨格は変えられない。照合率は97.3%、間違いなくカズだ。……この作戦には日本の対テロ特殊部隊とフィリピン陸軍の部隊が参加していることになっているんだが、どこにも航暉の名前はない。だが……」
もう一つのファイルが開かれる。
「これに関する自衛陸軍の機密資料にはもう一つ部隊が参加したことになっている」
高峰はさらっとそう言う。電の顔が引きつった。
「そんな危なそうなものを持ち出してるのです……?」
「そうじゃないと捕まらないんだよ、カズの足取りが。……続けるぞ。極秘裏に参加した部隊に正式な名前はない。そもそも存在しないはずだから当然だな」
「どんどんきな臭くなってくなぁ。おい」
そう言ったのは杉田だ。高峰も肩をすくめる。
「途中から吐き気がしそうだったよ。日本国自衛陸軍第九師団特殊殲滅部隊、通称“ネーム-ノウェム”、非正規作戦や非対称戦のエキスパートチームだ」
「部隊名だけは聞いたことある。与太話のレベルだと思ってたんだが……」
天龍がそう言った。杉田も変な笑みを浮かべた。
「俺も眉唾物だと思ってたんだがな。天龍、お前どこまで知ってるよ?」
「日本版デルタフォース、少数精鋭の特殊技能持ちが集まって膠着状態になった戦況を打破したり、裏で暗躍するって感じだ」
「間違ってはねぇな。ノウェムは強行偵察部隊、SRとか呼ばれる任務だ。闇夜に紛れて国境を越え、相手に破壊的な攻撃を仕掛けて、再び闇に溶けるように姿を消す。……ノウェムは電子戦と陸上戦を同時進行で進める義体兵士のオンパレードと聞いていたんだががなぁ」
「だが、そこにカズは所属していた」
高峰はそれを聞いて人事ファイルのようなものを開いた。
「コードネーム“ガトー”。ノウェムに参加した
聞きなれない言葉が並び、電の頭はオーバーヒート寸前だった。
「そのタック要員ってのが司令官さんなのです?」
「カズの能力を考えてもこいつだろう」
高峰はガトーのファイルを見ながら至極真面目な顔でそういった。
「戦術航空管制要員は戦場でお目にかかりたくない敵兵トップ5に間違いなく入る。戦術航空管制要員の一番怖いところはこいつの指示一つで攻撃ヘリや無人爆撃機、場合によっては歩兵を満載した輸送機が飛んでくるところだ。歩兵同士で張り合ってればよかった戦場にいきなり文明の利器で殴り込みをかけてくる。相手にこいつが紛れ込んでるだけで味方の不利が加速度的に増していく。俺が相手だったら真っ先に潰せと命令出す」
そこまで言って溜息をついた高峰。ホログラムを切り替える。先ほどから機密資料のオンパレードだ。
「ここから先はガトーが月刀航暉であると仮定して聞いてほしい。カズが参加した作戦の中で一つ気になる名前を見つけた」
ホログラムに現れたのは何やら作戦の計画書のような書類だ。
「気になる名前?」
「情報提供及び作戦立案協力者の欄を見てほしい」
「……自衛海軍大佐、中路章人。これって!」
電が驚いた声を上げる。高峰が頷いた。
「今の中路中将だ。この時、中路中将は海軍の教育隊の教官をやっていたはずで、ここになぜこの名前がある理由がわからない」
そう言うと高峰が振り返る。
「青葉、頼んでた情報は?」
「ちゃんと持ってきましたよー!」
青葉がホロに手をかざす。
「中路中将の経歴です。中路章人。華渤戦争時などで活躍し、後続のために一度教官として退くもフィリピン内乱への第二次PKFに合わせて前線に呼び戻されています。国連海軍が水上用自律駆動兵装の実用化に成功すると、その指揮官の第一期生として抜擢された水上用自律駆動兵装運用士官の最先任です」
それを確認した直後さらにもう一枚のファイル。セキュリティのかけ方からしてこれまでのファイルよりぐっと重要な資料であることが見て取れる。
「で、中路中将が現場復帰直前に関わっていたプロジェクト。これに関わる人物が今どんどん姿を消している」
「――――――
「中路中将に始まり、合田直樹元北方第二作戦群司令官、風見恒樹元ウェーク島基地司令、鬼龍院彰久元大尉。そして―――――月刀航暉大佐」
「司令官さんが、風見大佐たちと交流があった、と言うことなのです?」
「ライ麦計画は日本国自衛海軍教育隊の士官教育プログラムの中の一つだ。ガトー、即ちカズはどうもこれの卒業生らしい」
高峰はそう言うとライ麦計画のファイルに触れる。
「やってることは“限りなくグレーに近い黒”。優秀な人材の青田刈りを行って、エリート教育を受けさせ軍部にとって有能な人材を確保する。これだけなら白なんだが、洗脳に近い思想教育や実弾訓練、果てには実戦投入も行われたらしい。ジュネーブ条約も真っ青の違法行為だ」
「完全に黒じゃねぇか」
「まぁ、それも深海棲艦登場後の特別徴兵法で合法化されたがな。今じゃ後方部隊と水上用自律駆動兵装運用士官に限り10歳以上が活躍できるような世も末な軍隊に成り下がった。カズはそのハシリ、言うなら合田正一郎大尉の先輩だな」
天龍の声に肩を竦めて答えた高峰がファイルを消した。
「そして、問題が一つ――――――これまで死亡したり殺人未遂になってたり失踪している人物の共通点として上がったのが全員一つの作戦に関わってたことだ。その作戦が……」
「サンセット作戦、です」
青葉の声に杉田が補足を入れた。
「フィリピン内乱のきっかけになった作戦で、独立を訴えていたスールースルタン国が秘密裏に製造していた大量破壊兵器の製造工場の情報が全世界的なリークから始まり、フィリピン陸軍と多国籍軍の連合部隊が現場を押さえるまで動いた作戦。フィリピンの内乱に多国籍軍が介入することになったきっかけの作戦だ」
「それにライ麦計画関係者が何らかの形で関わっている。情報提供者として中路中将、支援護衛艦隊の指揮官として合田中将、実働部隊の一つを率いた鬼龍院大尉。DIHから派遣された風見大佐。そして、非公式に参加したと思われる、カズ」
高峰が視線を上げる。
「中路中将の自殺未遂や合田元中将の死が仕組まれた必然であり、カズの爆殺未遂が同一の目的で仕組まれたものだと仮定すると、そのすべての線はライ麦計画及びそのメンバーが参加したサンセット作戦に集約される。俺と青葉はこの線で探ってみるつもりだ」
「探るって言ってもどうする気だ?」
「方法はいくらでもあるが……杉田、お前カズの家族構成聞いたことあるか?」
「ないな」
「電ちゃんたちの話によると住民票に存在しない家族がいる。下に存在しないはずの双子の妹を家族としてカウントしたそうだ。」
杉田がそれを聞いて鼻で笑った。
「そりゃそうだろうな。そんな非合法組織にいたなら身分も全部でたらめだろう。そこの人数が合わないとかザラじゃないのか?」
「カズが嘘を言うにしても、調べればすぐに嘘だとわかるようなちゃちな嘘を言うとは思えないんだ。おそらく……まだハマってないピースがあるんだ」
高峰の言葉に沈黙が落ちる。その合間を警報が埋めた。
「デフコンが切り替えられました! デフコンⅢ“ラウンドハウス”発令!」
青葉の報告を示すように電脳にメッセージが叩き込まれる。
デフコン――危機管理の警戒度がデフコンⅣ“ダブルテイク”から一段階引き上げられたことになる。
「クェゼリン基地が襲撃、未確認種の深海棲艦によって基地を放棄って……おいおい」
「クェゼリンってウェークのご近所じゃねぇか」
天龍の声が険しくなった。
「……ヤバそうだぞ、これ」
高峰がホログラムを映し出した。
「敵艦隊―――――いや“敵艦”は優雅に北上中、ウェーク基地に一直線だ」
「ガトー坊や、ちょっといいかい?」
そう呼びかけられて航暉はのっそりと動き出した。もう夜半といって差し支えない時間帯。椅子に座って銃を抱くようにして仮眠をとっていた航暉だがすでに意識は覚醒していた、視聴覚センサー内蔵のグラスデバイスを外すとベッドで横になり寝息を立てている雷を振り返ってから扉を閉める。
「そんな
「ここだからこそだ、スキュラ」
光度や赤外線の変化、一定距離内の空間の揺れを感知し電脳に直接警告を転送する防犯グラスを胸ポケットに仏頂面で差し込んだ。
スキュラと言われたその影はソプラノの声でころころと笑った。姿は雷よりも小柄でまだ年齢は一桁に見える。だがその中身はチタンの骨格や人工筋肉で構成された少女型の
「仲間じゃないか、ネーム・ノウェムのさ。このスーパーハッカー、スキュラの牙城たるこのセーフハウスで何を恐れることがある?」
「お前を信用するぐらいならカリオストロ伯爵を信頼した方がマシだ」
「酷い言われ様だね。せっかく助けてあげたというのに」
それについては感謝しているがなと吐き捨てるとかなり低い位置から笑い声が漏れる。その声は仄暗いコンクリート一色の廊下に長く反響した。電気屋のバックヤードだったらしいスペースはがらんとしており、いつまでも音の余韻が残る。
「この面子を信頼しているわけじゃねぇ。で、要件は何だ?」
「168分前、軍のデフコンが切り替えられた」
「スキュラにしては情報が遅すぎるな。何してた?」
「リスク計算してたら遅くなったのさ。新種の深海棲艦がウェーク基地に向かってる。捕捉できてるのは一隻だそうだ。その一隻がすでにクェゼリンを壊滅させた」
航暉はそれを聞いて目を見開き、すぐに伏せた。
「で、俺に今から軍に戻れとでもいうつもりか?」
「そんなことしたらこっちの努力が水の泡だ。だから無理」
雷よりも小柄なその少女は葉巻を取り出すとシガーカッターで吸い口を切る。
「でも、無視させるのもあれだと思ってね。私の手元には艦隊へ連絡を付けるための鍵がある。
スキュラはそう言うとジッポライターに火をつける。整った顔が橙に揺れ、すぐに暗い色に戻った。
「……大切な仲間だったらしいじゃないか」
「死なせたくねぇと思う程度にはな」
そう言った笑みは暗く沈み込んでいた。それを見てカカカと笑うスキュラ。
「仲間は否定しないか」
「仲間だって言ってくれるガキを否定できるほど強くないさ」
「……それは違うねガトー坊や」
スキュラの目がすっと細くなった。
「そろそろ自分を騙すのをやめるべきだ。そして贖罪としてその子たちと付き合うこともやめるべきだ」
「贖罪? 何のことだ?」
そう聞くとスキュラは笑みをひっこめた。冷たい目が彼を射ぬく。
「あんた、ライちゃんの記憶、書き換えたね?」
「…………雷の記憶を読んだのか」
それが私の仕事だからね。とスキュラは笑う。
「妖怪スキュラの名は伊達じゃないわよ。そして、あんたの記憶も見せてもらった。恐ろしくノイズが多かったけどね」
「……どこから枝をつけやがった?」
「それを言ったら商売上がったりだもの。言うわけないわ」
やはり笑みを浮かべてスキュラ。その瞳の色だけがどんどん暗く落ちていく。
「ライちゃんの記憶のかけらを元にその時の雷の視界情報を復元した。……書き換えたくなる気持ちもわかるわよ?」
そこで紫煙を深く吸い込んだスキュラは煙と一緒に答えを吐きだした。
「あれはサンセット作戦の時の風景だものね。あんたがノウェムを去るきっかけになった」
「……あの記憶を雷に植え付けるべきじゃない。あのジャングルの風景を、あの饐えた臭いを、あの火薬の味を植え付けるべきじゃない」
そう言うと航暉は背中を壁に預けた。スキュラは彼に向き合ってその顔を覗きこむ。
「スールースルタン国の大量破壊兵器密造工場襲撃作戦。……まだ夢に見るんだろう? そこの兵器と戦った記憶がリフレインする」
スキュラはゆっくりと煙を吐きだした。
「……吸うかい?」
「……禁煙したはずなんだが、な」
自分で巻いたらしい葉巻をもらうと、航暉はゆっくりと口を付ける。スキュラがライターの火を差し出した。
「――――――久々の煙草のはずがちっとも旨くねぇ」
「そうかい……話を戻させてもらおうか。ライちゃんの記憶とあんたの記憶からアンタの部下の情報を抽出させてもらった。電とかいう子にご執心じゃないか。何があった?」
「……さぁな。理由なんているか?」
「正解は理由がないんじゃない。理由が消された。そうだね?」
スキュラの問いに航暉は答えられない。
「……何を言っているんだ? 何を言いたいんだ?」
「生まれた町の記憶軍属の記憶、家族の記憶、私達との記憶、電との記憶、雷との記憶。……あんた、今どこまで思い出せる?」
記憶の釜が開く。
ごめんな、すぐ帰ってくるから。ちゃんといい子にしてろよ?
やだ、いかないで。置いてかないで。
そうだ、帰ってきたら一緒にソフトクリームを食べに行こう
ソフトクリーム?
好きだったろ? 牛乳ソフト
うん。……うん
あたしも!
わかったわかった、三人で行こう。俺が帰ってくるまでいい子にしてろよ?
うん!……やくそく
やくそく!
やくそくだ
――――――暗転。
こんな子に爆弾持たせて突っ込ませるなんて、どうかしてる。ガトー。お前は悪くない。悪くないんだ。
この子も泣いてた、泣いてたんだ。それを、撃ち殺したんだ。
――――――暗転。
あの子は誰だ?
俺は誰だ?
どこまでが俺のキオクダ?
コノキオクハダレノキオクダ?
ノイズが重なり、視界すら浸食していく。
「……お れは……」
「しれーかん? どうしたの?」
その声に彼が顔を向ければ、明るい茶色の髪が揺れていた。
「―――――――。」
つながってはいけない線が、つながった。
「さてガトー。もう一度聞こう。デフコンが切り替えられ、ウェーク基地に危機が迫っている。バックドア、使うかい?」
「高峰、状況は?」
「ウェーク艦隊が今代理司令の反対押し切って強行出撃。接敵まで時間もないがぎりぎり補給艦での脱出ができそうだ」
極東方面隊第三戦闘指揮室、急遽あてがわれたその部屋の壁面いっぱいのスクリーンにはたくさんの情報が並んでいる。杉田はそれをぱぱっと確認しながら遠慮なくずかずかと入り込む。
「たまたま補給艦がウェークに入ってたから良かったが、なんでウェーク艦隊は前線待機してねぇんだよ」
「電ちゃんたちがいる状況でそれを言うか? 代理司令が事なかれ主義がひどすぎて動かしてなかったんだよ」
「使えねぇな」
「それでも平時は優秀だよ?」
「軍が活躍するのは非常時だろうが。非常時にカカシじゃ話にならねぇ」
高峰の隣の席についた杉田はバックレストからQRSプラグを引き出すと自分のうなじに突き立てた。
「それでもまだマシだ。島風型が“二隻”使える」
「島風型二番艦?……
「そ。その子がたまたま補給艦と一緒に行動していたからね。島風とも面識があるし心強いのは間違いないな」
高峰が笑えば杉田はそれには答えずに“鷹の眼”用のヘッドギアを装着していく。
「まぁ使えたところでウェーク艦隊の指揮権がなければどうにもならないんだけどな」
「そのための秘蔵っ子だろう?
「……対月刀監視要員だった島風の出番で指揮官を罷免ってことか?」
「今、最終確認させて……おっと、罷免申請をCSCと上層部が即時承認、これで極東方面隊総司令部に指揮権が移譲される。これで大手を振って指揮をとれる」
高峰が案外あっさり行ったな、と言って肩を回していると通信が入った。
《こちら島風、宮迫大佐を確保したよ》
「了解、そうしたらそのまま補給艦に放り込め。補給艦の防衛を551に任せて島風は最大船速で538に合流してほしい」
《わかった。高峰中佐の指揮で戦うのって実は初めて?》
通信の声に高峰が笑う。
「だろうな。俺は後方支援メインだからな。……こっちは焦ったぞ? いきなり島風から緊急通信飛んでくるんだからさ」
《しょうがないじゃん。こっちの司令が遅いんだもん。高峰司令は大丈夫?》
それに噴き出しそうになったのは杉田だ。目だけで睨みながらも高峰は通信を返す。
「言っておくがまったく自信がない。今マーカスの駆逐隊がそちらに急行中、二航戦も出港したが、間に合わないものと思え。守り切れんと思ったら咸臨丸を守りながら撤退しろ」
《りょーかい。でも、負けませんよ?》
「おう」
通信が切れると杉田はくつくつと笑いながらキーボードを高速で叩いていた。
「お前は遅いほうか? 我慢できないタイプか?」
「まずその下品な笑みを仕舞えエロジジィ。それでもこれでやっと動ける状況が整ったが……」
「……この状況になっても月刀の馬鹿は連絡を取ってこないと」
「あぁ、まったく、どこで何してるやら」
高峰がわざとらしく肩を竦めた。
「結局は動かせるのは重巡二隻と空母2隻、二個水雷戦隊か。航空部隊は?」
「龍鳳の烈風が咸臨丸と各艦隊の直掩に入ってる。利根の偵察機からの連絡は23分前に途絶えた」
「落とされたか?」
「この暗闇の中でな。正直めちゃくちゃな精度だ。かなり高精度の電探を積んでるらしい」
「らしいってお前、らしくないな。幻視の名が泣いてるぜ?」
そう言われて苦い顔をする高峰。
「俺でも視えないんだよ。敵が」
「あ?」
「敵が本当に一隻しか視えない」
それを言われて杉田は考え込むように黙った。
「……つまり可能性は二つだろう。高峰の目を欺けるほどのステルス戦隊か」
「120を超える艦載機運用能力と戦艦クラスの長距離高威力の主砲と片舷16門なんてふざけた数の魚雷管を備えるトンデモ深海棲艦の単騎突撃か」
「どっちがトンデモかねぇ」
杉田が笑った。
「どっちにしてもやることは変わらないだろう。……利根と筑摩はこっちで持つ。鷹の目が使えるから何とかなると思うが……」
「水雷戦隊は俺が持つ、空母は……」
「私がやろう」
飛んできた声に高峰は顔を上げ、すぐに立ち上がって敬礼の姿勢を取った。すぐ後に杉田も同じように敬礼の姿勢をとる。
「山本元帥……! どうしてここに!」
「月刀君にはマニラで借りがあるのでな。人が足りんのだろう? 飛燕のようにはいかんだろうがやれるだけやらせてもらおう」
「はっ!」
高峰が敬礼の姿勢のまま答えると山本は高峰の隣の卓につく。
「私が指揮に上番するのは実に3年ぶりでな。少々自信がない。全体指揮は任せるよ。高峰君」
「へ? りょ、了解しました!」
背中に汗をかきながらも高峰は無線をオープンする。
「ホテルケベックよりウェーク艦隊、これより高峰春斗中佐が指揮をとる」
《こちら第三分遣隊旗艦利根じゃ。自律運用を終了し指揮権を高峰中佐に引き渡す。どうすればいい?》
「捕捉できるのは未確認種一隻のみ。これを叩く。利根と筑摩は杉田中佐の指揮下に入れ、鷹の目を使った遠距離射撃で前方展開する水雷戦隊を支援。航空隊は山本元帥の指揮下に」
《や、山本元帥!?》
無線の奥で何人もの声が被った。その反応を聞いて高峰は自分の感じる違和感が自分一人のものじゃないことを確信した。
《元帥御自ら指揮をとられるんですか!?》
この声は大鳳だろう。山本も通信をオープンにする。
「久々で自信はないが、協力させてもらうよ。諸君の働きに期待する」
《はっ!》
そして全員が配置につく。電と天龍も管制卓についた。指揮をとることはできないのだが状況を監視する目としての役割を担う。そしてその時を高峰が見極めた。
「ターゲットマージ! 敵艦砲撃態勢!」
「こっちも射程に入った! 利根、徹甲弾!」
《了解じゃ!》
リンクした視界が明るくなった東の空を見る。一条の光が差し込むと同時。
「交戦開始!」
双方の砲が閃いた。
「しれーかんに何をしたの?」
雷は目の前の少女を睨んだ。
「なにも、と言ったら信じる?」
「まっさか。しれーかんの叫び声がして慌てて出てきたら、そのしれーかんが蹲ってて貴女がその横で笑って立ってる。物証がある訳じゃないけど、状況的にはクロよね?」
東京シティ内廃棄区画、秋葉原地区、そこにある部屋で雷とスキュラは向かい合っていた。3階の真っ暗な部屋には小さな非常灯だけが灯っている。その隣の部屋では巨大なコンピュータがフル稼働しており少しでも電力をそちらに回すためだ。その部屋に航暉は何も言わずに入っていった。
「別に彼の精神をいじったとかそういうことじゃないわよ?」
「何をしたかって聞いてるの」
「……アイデンティティ・インフォメーションって知ってる?」
「個の情報……個性を数値に置き換えて電脳で把握させるためのコードだったと思うけど?」
雷がそう言うとオレンジ色の非常灯に紫がかったスキュラの瞳が妖しく光った。
「……まさか、しれーかんのアイデンティティ・インフォメーションに何かしたの?」
「何かをしたのは私じゃない。私はそれをあるべき状態に戻しただけだ」
「あるべき状態?」
聞き返されたスキュラはくつくつと笑う。
「改ざんされてたんだよ、記憶が」
「……」
「言っとくけど私が何もしなくても遅かれ早かれああなってたよ、彼。そしてこれ以上遅くにああなってしまうと、君の愛しい司令官は軍から消されるわね」
「軍、から?」
「そ。まぁそうすぐ殺されるって訳じゃないだろうけどね。今軍に戻っても少しずつ狂っていくのを見る羽目になるよ? 記憶に喰われていく様は悲惨だろうね」
「……どういうことよ」
「ライちゃんなら記憶あるでしょ? 鬼龍院特務大尉の電脳ウィルス」
「……!」
「あれのマイナーチェンジ版。あれ、元は日本陸上自衛軍の電脳ウィルスでそれの亜種を掴まされていた。大本は昔私が作ったやつで、それを元に今の軍属技師がいろいろいじったみたいだけどね」
「……それがどうつながるのか全然見えてこないんだけど」
スキュラが笑う。
「あたしが製作を依頼された時の使用目的は“記憶の短絡を起こさせ相手をコントロールするための簡易洗脳ウィルス”だった。スタックスネット型のウィルスで使い終わったら自己消滅するように組んだから最初の侵入時に検知できなければウィルスの存在にすら気がつけない」
歌うようにそう言ってスキュラは立ち上がる。
「もし、ガトーがそのウィルスに感染していたとしたら、そしてそのウィルスの感染元が軍のサーバーだとしたら、どうする?」
「……どうするって聞くってことはしれーかんは感染してたのね?」
「うん、ばっちり。しかも“起動しっぱなし”でね。いつから起動してたのか知らないけど。私はそれを止めただけよ」
納得して頂けた? と言ってスキュラは微笑んだ。
「なら洗脳が解けたんでしょ? ならなんでしれーかんは……」
「どうしてあたしを無視して行っちゃったの? かな?」
スキュラは腕を組む。非常灯の明かりは彼女の輪郭だけを映し出した。
「それをしっかり説明するにはかり時間がかかるんだよね。まぁ一言で言うと……」
スキュラの輪郭がぐにゃりと揺れた。笑みを深くしたのだろうか。
「君と電の存在が彼にとって悪夢そのものだからだよ、雷ちゃん?」
「爆弾一発ではどうにもならんか……。CVL-ZH02龍鳳」
《は、はい!》
山本五六元帥は小さく舌打ちをして無線を繋いだ。
「制空権何とかならんか?」
《これでも可動機全機投入しての全力です! これ以上は……!》
「CA-TN01利根、三式弾で防げるか?」
《やってみるが、保証はできんぞ》
「ならやってくれ。532の直掩3機を前線の支援に回せ。もう一度同じ場所を叩く」
《りょ、了解!》
高峰は涼しい顔で指示を出していく山本に内心舌を巻くと同時に困惑していた。
(なんだこの攻撃一辺倒な指示。攻めしか考えてない)
攻撃は最大の防御というような指揮にわずかに手を止める。
(艦爆艦攻の直接指揮による高精度航空攻撃……艦戦重視のカズとも違う方向性の“天才”か)
三個戦隊使って戦況は拮抗―――――いや、若干こちらが不利。相手の底が読めない。相手は一隻のみ、そこから航空機が発艦するのを確認し、同じ船から戦艦クラスの砲撃が飛び出し、雷撃も確認できた。
「551睦月、ソナー波の解析は?」
《こちら睦月、砲撃と雷撃の嵐で海面ひっちゃかめっちゃかなんで細かいところまではわかりませんけど……海中に怪しい影は無いです》
睦月がそう言うと高峰はひとり頷いた。
高峰は水中からの魚雷攻撃を警戒していた。もし潜水艦が潜んでいたとして魚雷を撃って当てるには深度を調整しなければならない。その時には必ず動きが出る。その音を聞き取るのがソナーだ。そして水中探索、そこからの対潜戦闘に明るいのが睦月だ。
「了解、睦月はそのまま対潜警戒を続行。551はそのまま咸臨丸を護衛しろ」
《551阿武隈了解です!》
睦月を咸臨丸から離すことはできない。潜水艦が襲ってくるとしたら咸臨丸のような輸送船を狙ってくるだろうと予測できるからだ。その時に対潜指揮をとれる睦月が必要になる可能性が高い。
それと同時に睦月を最前線に向かわせたいとも考えてしまう。
(もっと正確な海中データがあれば……)
距離が延びれば伸びるほど、ソナーの結果は誤差を生じさせ、難解になっていく。海中の音波の進み方は反射したり屈折したりと一定ではない。それを修正することは非常に難しい。
(それでも、何とかするしかないよな)
ひとりそうこじると高峰は意識を前線に戻した。同時にチリッとした痛みを感じる。誰かが被弾した。非常用スイッチがまとめられた
「島風!」
セーフティを無視して感度を最大まで上げる。それでも繋がるはずの戦術リンクの反応はフラットな波形を返すだけだ。戦域を示した海域図からも島風のシンボルが消え去っている。高峰の手が強く強張った。
「落ち着け高峰、てめぇが焦ってもどうにもならねぇ」
落ち着いた声でそう咎めるのは杉田だった。鷹の目用のヘッドデバイスを付けたままそう言って引き金を引く。敵艦に向かって吸い込まれていく砲弾は過たず敵艦にあたるが、わずかに敵を揺らしただけだった。
「くそ! 微風! 島風は見えるか!?」
《こちら微風、お姉ちゃんは……え?》
通常無線に一気にノイズが走る。
「微風、おい! 誰でもいい、538応答しろ。おいっ!?」
高峰の焦った声が戦闘指揮所にこだまする。同時に警報が鳴り響いた。
「不正規アクセス警報!? なんでこんなタイミングでハッキングされるんだ!?」
同時にマップから指揮下にあった艦の情報がどこかに転送されていく。転送された艦から通信回線がクローズに移行されていく。微風、暁、響、龍田、利根…………。
「おい、どうなってる? 戦術リンクの通信コードが書き換えられてるぞ!?」
「俺が知るかよ!? ハッキングの迎撃が追いつかない」
高峰は叫びながら
「高峰君。クラッカーの迎撃はできるかね?」
「迎撃よりも艦娘との指揮系統を奪われないことを優先します! このままじゃ、艦娘全員乗っ取られる!」
「了解した、現在使用しているコンピュータ群ネットワークを独立運用に、CTC、CSCオフライン」
「助かります」
高峰は短く答えてからキーボードを叩く。
「杉田、一度オフラインにしろ! 全員乗っ取られるぞ」
「了解。オフライン」
「なんだこの尋常じゃないパワー、デカトンケールクラスのスパコンがバックにいるぞ。個人レベルでできる攻撃じゃない」
防壁の再構築も間に合わない。
「防壁042突破ってことはネットワーク丸々乗っ取る気かクソっ!」
「高峰中佐! 電がハックされてる!」
前方にある予備の管制卓から声が上がった。天龍の慌てたような声に交じって、少女の呻き声がかすかに響く。
「だめ……しれいか さ……」
「コードを引き抜け! 早く!」
「ダメっ!」
電が叫ぶのとほぼ同時、天龍が電のうなじから伸びるQRSコードを引き抜いた。同時にスクリーンが一瞬ブラックアウトし、消える直前の画面が戻ってきた。しかし全艦のコントロールが奪われていた。
航空隊が作戦を開始するように動き出す。数機の烈風が恐ろしい勢いで加速し、一気に敵機の陣形を崩し、蹴散らしていく。
「まさか……」
無線は途切れ、戦闘の推移だけが送られてくる画面をただ茫然と見上げる高峰。あれは、あの動きは……。
「カズ……?」
「……しれーかん」
ドアを開けて出てきた彼を見て雷はただそう言うことしかできなかった。
「終わったかい?」
「あぁ、とりあえずはな。島風が沈みかけてたが何とか安全圏まで逃がすことができたよ」
「よくやるね」
スキュラがどこか呆れたような賞賛を送る。
「まぁ、その代償としてこっちの位置が割れた訳だけど、どうしてくれるんだい?」
「わざと通したくせに」
航暉はそう答えると肩を竦めた。スキュラはそれには答えない。
「……しれーかん、しれーかんよね?」
ふらふらと航暉の方に歩いてきた雷は彼の服の袖をきゅっと握った。彼は彼女の質問には答えない。
「しれーかん、なにがあったの? 辛そうなしれーかん見てるのはもういやだよ」
それを聞いた航暉がそっと膝をついた。雷の肩に右手を乗せる。
「大丈夫だ、大丈夫だから安心しろ」
「うそだよ、しれーかん無理してるもん。少しだけ聞いたよ、記憶書き換えられてたんでしょ? ずっと戦ってきたんでしょ? しれーかんもうボロボロじゃない……!」
彼の顔から表情が抜け落ちたように見える。その顔が歪んで雷は初めて自分が泣いていることを理解した。
「私がいるじゃない、しれーかん。お願いだから、お願いだから一人で行こうとしないで……!」
「大丈夫だ、雷。一緒にいるから」
そう言って航暉はそっと彼女を抱きしめ、動きを止めた。
「し、れ……か……!」
「電によろしく伝えてくれ」
首の後ろに回った手を外すと雷の体からかくんと力が抜けた。袖の内側を通したQRSプラグがその手元に光る。雷の体はロックされ彼にもたれるように倒れ込んだ。航暉は雷を壁にもたれさせるようにそっと座らせるとその手に何かを握らせた。国連のマークに錨を重ねた国連海軍の徽章だった。
「……行くのかい?」
その背中に声をかけるスキュラ。その声は慈愛の色が感じられた。彼女は持っていた
アタッシュケースを彼に投げ渡す。
「今日の2230、横田から北京経由でクラークエアベース行きだ。国連空軍の函南少尉殿?」
アタッシュケースの中身を見ると空軍の制服に軍IDやミッションナンバーまで交付された異動命令書などが収められていた。IDには函南友一とある。
「クラークに下りたら私の弟子が待っているはずだ。頼るといい。武器ぐらいは入手できるだろう」
「恩に着るよ、スキュラ」
「……この子は置いていくんだね?」
「あぁ」
「……それでいいなら何も言わないさ。動くなら早めに動きな。猛スピードで軍の検問を抜けた車がある。到着まであと15分ってところだろう。おそらくあんたのお友達だ」
航暉はそれに答えずに停止したエスカレーターに足を乗せる。
「ガトー」
呼びかけられて振り返った。
「記憶と思い出を分かつものはない。そしてそれがどちらにあったにせよ、評価されるのは後になってからのことだ。あんたの記憶が導き出した行動が評価されるのはずっと後のことだ、あんたにはそれを背負う義務がある。……それまで死ぬなよ」
それには答えずに航暉はエスカレーターを降りて行った。
「さて、最後の詰めだ。後は頼むよ、スクラサス」
東京はようやく日の出の気配が近づいてきた。スキュラはラッカーのスプレー缶を取り出すと雷が背にする壁に大きく書きつけた。
B-P
「さて、高峰君は止められるかね、これを」
あたりの電気が落ちる。スキュラの背中はどこか寂しそうだった。
1万5千字近くありますねこれ。ダイジェスト版って名前やめた方がいいかな、これ。
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それでは次回はフロムマニラ・ウィズラヴ編のダイジェスト版と参ります。
それでは、次回お会いしましょう。