艦隊これくしょんー啓開の鏑矢ー 作:オーバードライヴ
抜錨!
Headquarters of the Saver Group for Midway / Innerspease DECATONCALLⅢ_
Sept.16 2082. 0415UTC. (1315JST.) _
航暉の隣が一瞬光り、タカが舞い降りる。電子の世界では羽ばたいたところで風は起きない。そのタカはふわりと海面に降り立つと銀にも見える薄い金色の目を航暉の方に向けた。
「相変わらず現実世界と同じ姿を使ってるんだなお前らは。せっかくの電子のアバターだっていうのにさ」
「こっちの方が直観的に情報に触れられるんだよ。現実世界の感覚もフィードバックしやすい」
「夢がないねぇ、月刀は」
「ロマンだけじゃ部下は動かせないんだよ。杉田」
名前を呼ばれたタカはくつくつと笑う。
「夢を語れなくなったら人は人としての死を迎える。せめて電子の世界で飛ばせてくれよ。ちゃんと給料分の仕事はするさ」
当然、と返して航暉は目の前に手をかざすその手の下にある海域が拡大され目の前に広がった。いくつもの点が二列に並んで走っていく。榛名を旗艦に据えた打撃艦隊だ。榛名と神通が殿艦を務め、斜め後ろから距離を詰めてくる敵の艦隊から逃げる形だ。
「間もなく敵主力打撃群が交戦域に入る。お前は戦艦の有効射程に入った敵を片っ端から潰してくれればいい。できる限り無駄玉は撃たないでくれよ」
「無茶言ってくれる……観測機は?」
「蒼龍の艦戦を二機つける。こっちは俺が扱う。期待してるぜ“千里”」
ふん、と鼻を鳴らしてタカが舞い上がる。
「生きてる砲で一番強いのはどれだ?」
「榛名の二番主砲、41センチ連装砲の右砲、次点は伊勢の一番主砲、同じく41㎝連装砲の左砲だ」
「……榛名を借りるぞ」
「了解。……こちら月刀中佐、522榛名、
《
「榛名、間もなく敵艦隊が射程に入る。戦艦の射程にを保っている間に時間を稼ぎたい。お前の砲を貸してほしい」
《はい! 榛名は大丈夫です!》
即答した榛名を示すマーカーに向かってタカが翼を畳んで急降下する。そのマーカーをそのタカのかぎづめが触れると同時にタカの姿が掻き消えた。
「榛名、“鷹の眼”を使う。艤装の制御権がガンナー優先になるから気持ち悪いと思うが耐えてくれ」
航暉の周りの情報の質が変化した。全体を俯瞰する視点からその場に立つような感覚。ウェークにある肉体の感覚。リクライニングシートの固めの背もたれの感覚と戦場の潮風のにおいが混在して流れ込む。
まだ“戦艦”という種別の艦が現役で戦場の華であったころ、その艦に求められるの力は圧倒的火力で敵を面で制圧していく能力であったと言える。莫大な質量の物体を大量に撃ちだし、相手にあたるまで撃ち続ける。水上機や電探をフル稼働させて狙いを修正するとはいえ、その精度には限界があった。
では、艦娘ならば?
なにもそれだけに頼る必要はない。もう古くなり放棄されかけているとはいえ、宇宙空間には世界規模の測位システムが存在しているし、照準に誤差を与える細かい数値だって、デカトンケールのような巨大演算装置があればリアルタイムで反映可能だ。情報をそろえれば、効果が一番あると思われる射線だって割り出すことが可能だ。
戦場を俯瞰し、獲物を捕らえ続ける力指揮官と艦娘にを与える。それが砲狙撃支援システム“鷹の眼”だ。
《敵駆逐艦トラックナンバー34が有効射撃線を超えるまであと55秒。……二番主砲右砲、撃て》
風、気温、湿度……様々な情報の渦の中で、杉田は引き金を引いた。爆音とともに放たれた砲弾を数瞬見送った。
《次トラックナンバー28、軽巡、撃て》
第一射が着弾するよりも先に次弾が放たれる。次、また次と砲弾を打ち上げる。
《ちょ、ちょっと。大丈夫なんですか?》
不安げなのは伊勢だ。誤差は一度着弾して結果を見てからでなければ補正ができない。“鷹の眼”だって直撃を保障するものではないのだ。伊勢の不安ももっともなのだが、それに半分笑みを浮かべながら航暉が答える。
「あいつは外部演算装置のサポートがなくても安定して30キロ先の目標±2メートルに砲弾を叩き込む化け物だ。第二次日本海事変の第三夜戦じゃ電探と視覚情報のみで32キロ先の水雷戦隊を一斉射で黙らしたこともある。この安定した天気で観測機に“鷹の眼”……杉田の腕なら相手に直接銃口を突き付けてるに等しい状況だ」
その言葉を証明するかのように水平線の向こうで腹に響く低い轟と、それに遅れて黒い煙がゆるゆると上がる。数は4つ。撃った弾の数と一致した。
「……駆逐艦轟沈1、中破1、軽巡中破1、重巡小破1ってところか」
《んー。あんまり調子よくないなぁ。軽巡は沈めることできたと思ったんだけど》
観測機からの情報を確認しながら戦果を読み上げるとそういう声がする。それを傍受していたらしい木曾の“マジかよ……”というつぶやきが無線に乗った。
「発砲全弾が何らかのダメージ与えてるだけで十分……よし、敵の速力が落ちた」
《今の間に逃げ切りでしょうか?》
無線に乗ってきたのは赤城だった。
「逃げ切れればベストだが見逃してくれるとは思えないね。だがこれで奴さんもうかつに飛び込めなくなった」
航暉がそういうと横に高峰の姿が現れる。さらにその隣にはタカの姿をした杉田が、最後に第二種軍装に制帽をかぶった中路も現れた。
「飛び込んだとこから撃ち落とされてりゃ、深海棲艦もかなわないだろうからなぁ」
「それで、どうする気だ。そろそろ相手の航空隊の反復攻撃の波がくるだろう。どう捌く気だ」
中路の言葉に航暉は頷く。
「それでも、日没まであと105分……攻撃できて一回です。艦戦として使える機体はすべて出します。551の到着予測時間まであと80分、中路艦隊本隊の到着まであと120分……」
「……夜戦でカタをつける気か」
高峰はにやりと笑った。
「それならお転婆笹原も声かけた方がよかったんじゃないか?」
「夜戦時のアレの手綱を誰が握るんだよ。誰も助太刀できなくなるだろ。いくらアイツでも物量で押されれば危ないはずだ。その時にだれもアイツの支援ができないんじゃ困る」
航暉の言葉にふむふむと頷いて高峰は笑う。
「まぁ、あの夜戦バカなら嬉々として吶喊していきそうだよな」
「それで“カっちゃんヘルプ~”とか言われても夜戦の敵陣ど真ん中にどうやって助けに行けってっていうんだ。日本海事変第三夜戦の悪夢なんて懲り懲りだぞ」
頭を掻きながら航暉がそういうと、ケラケラと笑いながら杉田が口を開く。
「そういえばあの時の“貸し”まだ返してもらってないよな? あとで笹原にたかりに行こうぜ。……まぁ、いないやつの話をしててもしょうもないか。それで俺たちは何をすればいい?」
「杉田は攻略隊の戦艦、重巡による砲支援を、高峰は杉田の支援がメインだ。あとは損傷の激しい艦と空母の誘導、救援隊の交戦域への誘導。水雷戦隊の指揮を俺と中路中将で行います」
「やれやれ、水雷戦隊の指揮なんぞ久々だ。お手柔らかに頼むぞ?」
「“人虎”の中路中将が何をおっしゃいますやら」
直後に全員が全員の持ち場に意識を飛ばす。大まかな作戦さえわかっていればそれで十分だった。
指揮官たちはお互いの腕を知っている。どこまでできて、どこが苦手か。どういう切り札を持っていて、アキレス腱となりうる場所はどこか。どのような指示が飛び、その中でどうすれば“動ける”か。
このメンバーに“チームワーク”という甘い言い訳は存在しない。それは個々の責任を曖昧にし、思わぬ穴を生み出す可能性があることを知っているからだ。
あるとすれば個々のスタンドプレーの果てに見えるチームプレー。それは信頼によく似た依存や思考の放棄を許さず、個々の能力を最大限に発揮することを強いる。個々が独立し、思考を止めることを許さない。いかなる状況下であっても自身を信じ進むことをやめてはならない。
それを中路は“信頼”と呼んだ。依存とは徹底的に異なる共闘の姿勢を保ち、個々のポテンシャルを最大限に引き出し、それに頼り切らずに艦隊を進める。もしそれができるとしたら。
それが可能になる司令部はここしかあるまい。
「月刀より攻略部隊全艦、対空戦闘用意! 日没前に最後の航空戦が来るぞ!」
《こちら飛龍、全艦載機、発艦はじめっ!》
《瑞鳳、艦載機、あげます!》
まだ発艦ができる二人が弓を構える。航暉は二人とのリンクを高め、艦載機へと意識を向ける。同時に無線を開いた。
「利根、筑摩。三式弾は?」
《あと三斉射ってところかのぅ》
《私の方は20発ほどです》
「了解だ。もうすぐ赤城たちと合流できるはずだ。敵航空隊を10海里手前で迎え撃つ。抜けられたやつの対処を頼む。対空砲火の指揮は頼むぜワンマンイージス」
「変なあだ名をつけるな月刀」
「だれも杉田のことだとは言ってないがな。ともかく杉田、頼むぞ。……日が沈む前に敵艦隊が突撃してきたら、対空戦闘指揮を高峰に移譲して、杉田は砲撃支援に入ってくれ」
飛び出す艦載機。直掩機を16機残して残りは左へ旋回し、艦隊の後方へと差し向ける。航空隊指揮では一機一機を追うのではなく、状況を俯瞰し続けなければならない。そうでなければ意識はあっという間に散り散りなってしまう。航暉がコントロールするのは55機のうちの25機。それだけの数を同時にコントロールするともなればコンピュータのサポートは必須だった。航空母艦の艦娘はこれだけの情報量を捌いているのかと改めて思う。
「敵は空母を主力とした機動部隊だ。夜戦に持ち込めば勝ち目がある。ここが踏ん張りどころだ。行くぞ!」
《了解!》
航暉の声に艦娘たちの声がそろう。淡い黄色に染まった空に艦載機が溶けていく。静かに戦局が動き出す。
Point “MI0416” / The offing of Midway _
Sept.16 2082. 0512UTC. (Sept.15 1612SST.) _
数で押していたはずだった。
相手が撤退を始めて時間が立っているがまだ一隻も“落とせて”いない。数で不利だとわかって撤退を始めたのは敵ながらいい判断だと思うが、見逃すほど甘い我々ではない。追撃戦に移行したが、艦隊の動きが変わったのだ。
転進直前に指揮官が変わったのではないかと思えるほどに対空防衛が厚くなった。時にはふざけているとしか思えないことをしでかしてくる。“プレット”級空母に爆弾を落とそうとした艦爆機が相手の航空機が空中に置いていった何かに突っ込んで爆散したときもそうだった。その機体は攻撃に最適なコースに完全に乗り、旗艦である私が直接指揮していたにも関わらずに、だ。
最初は何があったかわからなかった。だが、同じように防がれた“マッドフォックス”クラス戦艦への艦爆隊の攻撃を見て理解した。敵は空中で増槽を切り離し、その増槽に突っ込まされたのだ。当てるように作れている爆弾や魚雷はともかく、ただ“落とす”ことしか考えられていない増槽を相手が突っ込む位置を狙って切り離すなんて無茶苦茶にもほどがある。理解はしたが納得はできない。頭上から押さえつけられるように敵の戦闘機が迫り海面に突っ込まされた艦攻機に、敵艦爆隊の爆弾を頭上から喰らう艦爆機……ここまで非常識な戦闘も初めてだった。
純粋な数なら5倍以上で攻撃を加えているはずなのだが、一機も攻撃可能エリアに行き着かないまま落とされるか転進するかを迫られる。
それならとずっと後方で控えさせていた重巡や軽巡を前に出してみたが、戦艦の射程に入ったところでものの見事に“狙撃”された。
まさか、航空戦主体に見えたのはブラフか。
そう勘ぐらずにはいられないほどに正確無比な砲撃だった。あれでは敵艦隊を捉える距離に入る前に全艦落とされる。それならなぜ、対空戦の距離に艦隊をとどめておいたのだ?多少の損傷を受けたとしても最速で詰め寄ってしまえば空母主体の我々は危険だというのに。
戦闘中の艦載機からの報告によれば、“狙撃”してきたのは“ルーニー”クラスの戦艦一隻のみ。残りの船も、もう一隻の“ルーニー”クラスも撃つ素振りすら見せていなかったという。
もし、戦力を温存しているとしたら。
もし、彼女たちがもし全力で撃ってきたら。
もし、撤退ではなく、戦術的な転進だとしたら。
艦隊に不穏なさざ波が満ちている。数で押しているはずの我々が一隻も沈められないまま相手の撤退を許している。その状況がまるで毒にやられた貝を食べたかのように急速に戦意を犯していく。まるで水面に立てた波紋が広がるように毒が回り、勝ち戦を進めているはずの艦隊が急速に空気に呑まれていく。
それでも、我々は守らねばならない。
あの島を守らねばならない。
「……! ………!」
「……?」
「…………!」
もうすぐ日が落ちる。
航空攻撃を防ぎ、正確無比な狙撃ができることを見せておきながら相手が攻勢に転じてこないのはなぜか。
答えは二択。
防戦しかできないほどに弱っているか、時間稼ぎ。
もうすぐ日が落ちる。
そういえば、敵の水雷戦隊は対空戦ばかりで魚雷はまだ一発も使っていない。
そういえば、敵の戦艦も主砲の砲撃を“ルーニー”クラス一隻しか行っていない。
そして、敵の増援が来ないという保証は一つもない。
艦爆、艦攻、艦戦。出せる限りの艦載機を出す。同時に戦艦と重巡を前へ、空母の直掩を除いた水雷戦隊はその後方で待機。
勝ち戦をしていたはずなのに、なぜだ。なぜこんなにも必死になって指揮を執らねばならない?
夜戦に持ち込まれればこっちの空母はほぼ沈黙してしまう。夜闇にまぎれて接近できてもまともにあてられるとは思えない。そしてこちらは夜戦をあまり想定せずに部隊を連れてきた。
日が沈み切る前に落とさなければ、勝負はいきなり劣性となりうる。
増援が来る前に、航空戦でまだ押し返せるうちに、一隻でも多く母なる海へと敵を引きずりこめ。
もうすぐ日が落ちる。
Point “MI0432” / The offing of Midway _
Sept.16 2082. 0526UTC. (Sept.15 1626SST.)
「きたきた、来たでぇ!」
「こちら神通、敵艦載機を電探で補足。……方位0-6-0、5時方向、すごい数です。150機は超えています」
黒潮と神通がほぼ同時に敵の航空隊を捉えた。黒潮が焦ったように声を上げる。
「司令官! ほんとにこれ迎え撃てるんかいな……!」
《総力戦って感じだな。……こちらでも補足した。数172、高度2500、おそらく艦攻隊はもう低空に下りているだろうから200オーバーだ》
さらっと無線の奥が怖いことを言ってくる、天津風がごくりとつばをのんだ。
《全艦、対空砲火の指揮権を杉田に預けてくれるか?》
「……私たちを捨て駒にする気ですか?」
神通がそういうと航暉が何か言う前にもう一人無線に割り込んだ。
《安心しろ、神通。月刀中佐がそういう指揮をしないのは君もわかっているはずだ》
このタイミングで総力戦を仕掛けてくるということは、相手がこちらが夜戦に持ち込みたいことに気が付いたと見ていいだろう。それなら夜戦に入る前に魚雷を満載した水雷戦隊を潰そうとするのはある意味当然だ。
それを踏まえて水雷戦隊を丸腰で置いておけばそこに攻撃を集中させることも可能だ。時間的に相手の空母にもどってもう一度攻撃ができない以上、本隊を守るなら十分有効な作戦になるだろう。
《そんな作戦はわしの眼が黒いうちはさせんよ》
中路の柔和な声に神通は押し黙る。彼女は僚艦をみやる。初風は神通を信頼しきった目で見返し、黒潮は対空砲を空に向けて不安そうだ。天津風は不安そうにしながらも頷き返した。
「……いい風が来てるよ」
「……了解しました。対空装備を杉田少佐に渡します」
《こちら伊勢、打撃艦隊の対空装備指揮権、移譲します》
《木曾だ、対空管制を移譲する》
《感謝する。杉田!》
《“鷹の眼”をマルチサイティングに切り替える。オンラインチェック。イルミネーターリンクス、オールウェポンスフリー》
杉田の声に合わせて艤装の対空装備の安全装置が解除される。ひとりでに動き出した対空砲に初弾が装填される。“鷹の眼”の効果か、電探に映っていた敵の航空機の像がはっきりと映った。それにナンバリングが施されそのそれぞれに高度などの情報がタグで表される。それぞれの艦の射角と有効射程がレーダーにオーバーレイ、味方の艦載機の位置がさらに重ねられる。
「……これ、二人で捌く気?」
初風があきれた顔でつぶやいた。200機を超えるであろう敵航空隊相手に、艦戦55機、水雷戦隊2つと戦艦4隻の対空砲、あとは重巡の三式弾、これを指揮官二人で捌き切る。傍からみたら曲芸以外の何物でもない。
《ほかに捌ける人がいないようだ。……航空隊、エンゲージ》
敵の出鼻をくじくように航暉の操る飛龍の艦戦12番機が敵の先頭に飛び込んだ。遠くで爆炎が響く。敵艦載機トラックナンバーE-003ロストコンタクト。その時に目視で確認したのかその付近を飛んでいた敵機の情報が電探の情報タグに追加される。E-001, E-004は爆装、E-009は追加武装なしのクリーン、E-012とE-005は爆装。
反転して上昇するように飛龍12番機は飛行隊の中央に突っ込んでいく。敵は左右にブレイク、爆弾を抱いた機体を守るため、敵艦戦が急降下してくる。飛龍12番機が放たれた曳光弾の合間を縫うように上昇、艦爆機E-075を撃ち落とす。同時にエアブレーキ展開、エンジンをアイドルへ絞りプロペラのピッチをゼロにして推進力をゼロへ。後ろから追ってきていた艦戦機を
それをかわして艦爆機が緩降下しながら全速でキルゾーンを抜けようとする。だがそれを真上からの銃撃で瑞鳳の4番機が撃ち落とした。
「見くびらないで! 数は少なくても、先鋭だから!」
E-102の撃破を見届ける間もなく瑞鳳4番機が次の敵へとラダーを蹴る。あっという間に乱戦にもつれ込んだ航空戦。いたるところで爆炎が上がり、黒煙が空を汚していく。
優先度別に色分けされた敵マーカーの色が目まぐるしく変わっていく。
《55機でよくやるよ。さて、こっちも行くぞ》
杉田がつぶやくと同時に舞風の対空砲が起動する。発砲時間は半秒あるかないか。連射速度を考えれば20発前後の弾が吐き出される。それだけで射程ぎりぎりを飛んでいた艦爆機が黒い煙を吐いて落ちる。同時に全艦に向けた警告スクリプトが送信される。味方の艦載機が一斉に反転する。
「それじゃ、行こうかの!」
利根の主砲が斉射される飛び出した弾丸が空中で花開き無数に煙を吐き出す。ドッグファイトに気を取られていた敵の艦載機が中隊単位で消し飛んだ。
《杉田! 警告遅い!》
《全弾かわしておいて何言ってんだ?》
「かわせてないですっ!」
杉田の飄々とした声に叫び返すのは瑞鳳だ。尾翼を一部損失し急激に高度を失っていく瑞鳳7番機。その上空を飛び抜けた敵艦戦機に撃たれて反応が消える。
《……マジですまん》
《マジで頼むぜ》
「こちら木曾! 敵艦攻隊三時方向数16!」
レーダーにマーカーが現れる。表示は赤、最優先攻撃対象。
もっとも近距離にいた飛龍9番機が反転、エンジン全開で
「くっそ!」
直後に木曾と巻雲の対空機銃のリンクが解除され、主導権がそれぞれの艦に戻された。俯角をつけて打ち込むが依然として白い筋が近づいて来る。
《慌てるな》
中路の声がすると同時に爆雷投射機が作動した。遠くへ投げられた爆雷が起動する。海面を白く染め、盛大に水柱を立てる。それを超えてくる線はなかった。
《こんなのは慌てて機銃を撃っても落ちんぞ?》
「……だからって爆雷の水圧で誤作動させるのもどうかと思うぜ、提督」
《防げればいいんだ、防げれば》
「さっすが司令官さま!」
巻雲が笑顔でそういうと無線の奥で笑い声が漏れた。
《褒められるのは嫌いじゃないが、後にしょう。方位0-3-5、艦攻隊。天津風、押さえろ》
「はいっ! 連装砲くん、頼むわね!」
天津風の砲撃を支援するように初風が前に出る。
《突出しすぎるな!》
航暉の叫びと共に直掩機の一機が初風の上空をカバーした。艦爆隊が初風の方に向かいだす。そこに杉田のコントロールする神通と黒潮の分の対空機銃が加わり艦爆隊をすべて叩き落とす。艦攻隊は天津風と瑞鳳の5番機が爆散させた。息つく間もなく警告スクリプトが来て、数瞬あとに筑摩の主砲が閃いた。敵を数機巻き込んで三式弾が燃え尽きる。
「利根姉さんに負けるわけには参りません」
「そうは譲らんぞ、吾輩は筑摩より少しだけじゃが、お姉さんじゃからの」
どんどん日が落ちていく。夕日をバックに動けるのは幸運だった。こちらは順光で相手を見やすいが相手にとっては逆光になる。太陽の光の中に入った機体を狙うことが難しいようにシルエットになった艦や機体との距離感をつかむのは難しくなる。少しずつだが状況は有利に、戦力は拮抗へ向かう。その時、敵の艦載機よりも大きな反応が飛び込んできた。敵と撃ちあってる左舷とは反対側の右舷側、方位2-8-5、数5。
「挟撃された!?」
《いや。これは……!》
慌てた声を上げる榛名だが航暉はそれを否定する。レーダーマーカーがUnknownからVFA-102に変更される。
《
高速で英語が飛び込んでくる。クスリと笑う声がした。高峰が無線を受ける。
《
国連空軍第102戦闘航空飛行隊――――通称“ダイヤモンドバックス”。ジェット戦闘機を駆り、空をかける部隊がやってきた。
《
無線が入った直後にダイヤモンドバックス各機のマーカーから二つずつマーカーが現れれ、超音速で艦隊を飛び抜ける。航空隊の交戦域も飛び抜けると敵艦隊の頭上で炸裂した。大量の子弾が吐き出され艦隊を面で痛めつけていく。――――――クラスター弾頭を推進部に乗せた中距離ミサイル。
《
《
衝撃波と共に低空をジェット戦闘機が飛び抜ける。そのまま翼を二度振って挨拶をするとインメルマン・ターンを決めて飛び去っていく。
《
《
高峰がそう返すと無線がつながる。
《こちら電! 電以下14隻到着しました!》
《早いお着きでなにより! カズ、救援隊の指揮をハンドアウトするぞ!》
《予定より20分以上早いな。どんだけ飛ばしたのやら》
夕日に紛れてティルトローター機が高度を上げる。その足元では電を先頭に艦隊が走る。空の色が茜に変わる中でセーラー服の藍が光る。
榛名の、霧島の、伊勢の、日向の……艦隊の主砲が一斉に回りだす。神通の指示で水雷戦隊が一斉に回頭した。制空権は劣性だがほぼ艦爆隊は落とし切った。
《さて、
日没まであと30分。初めて艦隊が攻勢に出た瞬間だった。
英語、適当です(汗)
思いっきり攻殻機動隊の影響受けてます。
攻殻機動隊の映画見てきたので(わざわざ名古屋まで行って)、その影響かも知れません。影響を受けやすいなぁと思いますが、後悔はしてない!
感想・意見・要望はお気軽にどうぞ。
次回、夜s「何、夜戦!?」
ごめんなさい、あなたいま南方にいることになっているんで出番ないんです。
川内「」
それでは次回お会いしましょう。