日本代表に選ばれる予定だったのに、なんで俺は小学生なんだ… 作:とうふ
今回の話だけど、無理あるかもしれない。怒らず読んでいただきてぇっす。
「《後半開始のホイッスル!雷門は逆転することができるのか!》」
前半が始まるが、天馬くんは動かなかった。ただ、フィールドで立っているだけ。心ここに在らず。そんな言葉がぴったりだった。
「天馬くん!楽しくサッカーだよ!」
「!?」
俺は大きな声で天馬くんを応援する。そのセリフはきっと天馬くんからしたら気持ちを思い出させるものになり、信介くんを省く雷門メンバーからしたら神経を逆撫でするような言葉だろう。
「なんで楽しそうにプレーしないの!楽しく楽しく!」
「まだ逆転できるよー!」
「こんなチームに負けんのかー?」
そして、とことん煽っていく。そしてブチギレる雷門メンバー。うぉ怖い怖い。
でも知らねー、だって俺はフィフスセクターの勝敗指示なんて知らない小学生なんだもーん。どうしてみんな怒ってるんだろぉ?
フィフスセクターのこと、久遠さんが教えてたでしょって?あんなのは空耳だよ。
「あ、あのね、成結くん。実は今の少年サッカーは……」
「しっー、内緒内緒。オレ、ゼンゼンシラナイ」
春奈ちゃんに教えられそうになったが、この作戦を実行するためには俺はフィフスセクターの勝敗指示を知ってはならない。俺は顔の前で1を作って春奈ちゃんの話を区切った。
「イケイケ!おーい、ドンマイドンマイ」
「まだまだ後半始まったばっかりだよー」
そして、俺が声掛けを始めて5分が経った頃。
「パーフェクトコース‼︎」
「バーニングキャッチ!」
「《ゴール!栄都学園3ゴール目!雷門また離されてしまった!》」
とうとう、勝敗指示通りの3-0になる。そして、ちょうどこのタイミング。ここで俺の応援のおかげか、天馬くんが動き出した。
「こんなの間違ってるよ……!うぉー!!」
ホイッスルが鳴ってすぐ天馬くんはボールを取りに行く。やっぱりすぐには上達しないから、転んで、痛そうで、でもまた立ち上がってボールを取りに行く。そんな姿に、みんなのプレーも引っ張られてるのかキレが出てきた。
「成結くん。準備運動をしておくんだ」
「か、監督!?」
それは、「成結くん。この後試合に出すから準備運動をしておくんだ」という意味ですか?
それとも、「成結くん。写真撮影の準備運動をしておくんだ」ですか?……後者だな、しっくりくる。
「はい。でも、僕が持ってきたカメラはスマホだからなんの準備運動すればいいですか?」
「体操をすればいい」
撮影するための体操ということは、どんな体操がいいだろうか。
まず、写真を撮るときの動作として①スマホをかざす。②シャッターを押す。
じゃあスマホをかざすときに腕を曲げるから、体側と背伸びの運動。シャッターを押すから手首足首の手を重点的に。
と、気づいたらフィールドでは天馬くんがボールをとって神童くんへのパスを繰り返していた。おぉ、すごい。頑張ってるね。うぅっ。泣けてくるよ。
「天馬くーん!足の向きに注意してみてー!」
「わかったー!ありがとう!」
是非とも、すぐパスが通って欲しいからアドバイスをバンバン送る。天馬くんも素直に答えてくれてこっちも嬉しくなる。
「神童くんー!応援してるよ!」
「—————ッ」
そして俺のアドバイスのおかげか、天馬くんのパスは神童くんに届く。原作は天馬くんのパスが届いてゴールを決める。時間は確か試合終了間際だったから、原作より早い段階でパスが届いたことになる。
「神童くん!いけ!」
俺のその声は神童くんに届いたかわからない。俺は少し警戒していた。この試合からフィフスセクターの指示を無視して勝てればいいなって思ったから雷門メンバーを煽って、それに対する怒りでゴール決めてくれないかなという希望で。
でもそれが原因で冷静になった神童くんがゴールを決めるのをやめてしまう。そんなの困っちゃうよね。
だけど、そんな心配はいらなかったみたいで、神童くんはシュートを打った。
「ムーンサルトスタンプ‼︎————!?」
「《ゴール!雷門中キャプテン神童、決めたー!》」
「「「————!?」」」
神童くんのそのシュートは全力という言葉がふさわしく、ノーマルシュートにも関わらずゴールネットを揺らした。
その一点は神童くんにとっても、雷門メンバーにとっても衝撃の一点だった。
「おい!神童、どうしたんだよ!」
「なんでシュートをうった!」
チームメイトの言葉に神童くんは自分に問いかけるように答えた。
「あいつのボールが、そして成結くんの応援が。シュートをうてと言ったんだ」
うんうん、天馬くんのパスは何度も諦めずに繋げたボールだからね。
で、俺の応援?っしゃぁー!おらおら!俺の作戦は成功してたってわけだなぁ!さすが俺、知将なんだから!
心の中で安堵と嬉しさのダンスをしていると、久遠さんが俺に聞いてきた。
「成結くん。何点取れる」
ベンチに座っていた俺は冷静に、焦らず、そっと頷く。
さぁ俺、落ち着こう。まず何点取れる?と聞いた。そしてさっき(写真撮影の)準備運動をしろと言った。と、いうことは?写真の評価において何点取れるくらいの実力だ?と聞きたいのだろう。
正直にいうと、俺は写真専門家ではない。何点なんて評価を出されたこともない。でも、どんなものにも才能溢れちゃう俺だからきっと100点だって取れるだろう。結論、何点でも。
「何点でも取れますよ」
俺がそういうと、フッと久遠さんは笑ってベンチから立った。何をするんだろうと視線を追いかける。
「選手交代、松風天馬に代わって響木成結」
「「「「「————!?」」」」」
その一言は、神童くんの一点より大きな衝撃だった。
響木成結。小学五年生。得意なポジションFW。好きなポジションDF。できるポジション全部。
成結はサッカーの才能に溢れていた。ぶっつけ本番で稲妻KFCの入団試験に臨み合格。わずか一年でレギュラー入り。オールラウンドプレイヤーとしてどのポジションとしても機能する万能。
FWをやらせれば、時に単身で突破し得点を取る。MFをやらせれば、フィールド全体を見回して的確な指示とプレイヤーコントロール。DFをやらせれば、柔軟な動きでボールを奪いキーパーは形だけになってしまう。GKをやらせれば、祖父に教わったとゴッドハンドを使い無失点。
「俺、確かにおかしいなって思ったよ!?写真撮影に体操いらないしさ、点数だってなんのことだよって。でもさぁ小学生試合に出すかなぁ!?思わないでしょ!!」
「頑張って、成結くん!」
「天馬くんー!なんでそんなに疲れてるのさあ!」
成結が天馬に変わり場所についた。ぐちぐちと口は減らないがやる気はある。
そして成結は久遠に言われたことを思い出していた。
『逆転だ。宣戦布告は目立って損はない』
それは、逆転させろという久遠からの指示。久遠を排除したがっているフィフスセクターからすれば、この試合で一点取ってしまってる時点で監督解任は確定。久遠はこの際と、ここで勝利することにした。
「成結くん、だっけ?サッカーできるの?」
「浜野くん!大丈夫、僕はみんなの士気を高める役目だから」
意気込む成結の言葉と同時にホイッスルがなった。
久遠「どうせ俺クビだし、成結入れときゃ勝てるっしょ。小学生?いや、練習試合だから誰も気にしないって」
が、私の言い訳です。