ありふれない不適合者が世界最強   作:シオウ

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魔王によるハウリア族の改造が始まる


14話 大魔王教練_ハウリア編

「そう言う訳だ。貴様らには今から十日間、戦闘訓練を受けてもらう」

 

 フェアベルゲンから出て、大樹に近い場所に拠点を敷いた俺は、ハウリア達にそう通告するが、ハウリア達の表情は暗い。まるで通夜のような雰囲気だ。

 

「ふむ、何故そんな暗い顔をしている」

 

 俺の言葉に、一番暗い顔をしているシアが俺の方を見て口を開く。

 

「うー。当然じゃないですかぁ。他の亜人族と決闘だなんて」

「そんなの無理だ」

「おしまいだ」

「ああ、我らの命運はこれまでか」

 

 どうやら始める前に怖気づいているようだな。ハウリア族全員が絶望に打ちひしがれている。これではいけないのでハウリア達には置かれた状況を正確に把握してもらう必要があるな。

 

「聞け。ハウリア族達よ!」

 

 俺が声を張り上げれば、十日後の未来を嘆いていたハウリア達も顔を上げて俺の方を注目し始めた。

 

「即時処刑は免れたが、このままでは貴様らに待ち受ける運命は変わらぬ。俺は助けてやるとは言ったが、同時に自ら戦わぬものを救うつもりはないとも言った」

 

 俺はカムに言った。救いのチャンスをやると。ならば今こそがそのチャンスを掴むために動く時なのだ。

 

「ハウリア族は強くならねばならぬ。貴様らにとって、ここが運命の分水嶺なのだと心得よ!」

 

 俺の言葉に顔を上げ始めるものが出始めたが、それでも大半のハウリア達の表情は暗い。

 

「アノスさん……アノスさんが言っていることはわかりますけどぉ……」

「私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません……とても、そのような……」

 

 ハウリア達も頭ではこのままで良くないとわかっているのだ。だが、ただでさえ世界から迫害されている亜人族の中でも最弱の種族だと言われている事実が、兎人族は弱いという常識が、彼らを自ら縛り付けている。

 

 まずはその意識から変えてやらなくてはならない。弱いと自ら思い込んでいる限り、決して強くはなれぬのだから。

 

「何かを成し遂げるために必要なことは力でも技能でもない。必ず目的を遂げんとする強き想いと、未知に対して一歩踏み出す勇気だ。虎人族や熊人族がどうした? そいつらは俺よりも恐ろしいのか?」

「それは……」

「案ずるな。魔王は約束を守ると言ったであろう。お前達が俺を信じて着いてくれば、必ず強くしてやるし、奴らとの戦いで勝利させてやる」

 

 俺の言葉を受け、黙り込み顔を見合わせるハウリア族。しかし、そんな彼等を尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアが立ち上がった。

 

「やります。私に戦い方を教えてください! もう、弱いままは嫌です!」

 

 樹海の全てに響けと言わんばかりの叫び。これ以上ない程思いを込めた宣言。

 

 間違いなくシアが一番自分の弱さを呪ってきたであろう。自分のせいで家族が危険に晒されている現状に苦悩したのは間違いない。だからこそ、ここに来て、シアは自ら立ち上がった。立ち上がって戦う決意をしたのだ。

 

 そしてシアの長年溜め込んでいた想いを受け、ハウリア達もようやくやる気になったのか、次々と立ち上がり始める。

 

 彼らは家族愛が特に強い一族だ。一人立ち上がれば共に立ち上がることができる。

 

「アノス殿……宜しく頼みます」

 

 最後に族長カムの宣言で持って、ハウリア達を強化するための訓練を開始した。

 

 ***

 

「シアに関してだが、ひとまずアレーティアに任せる」

「私に? けど……魔法を教えられる自信がない……」

「大丈夫だ。アレーティアに魔法教導力など期待しておらぬ」

「うう……」

 

 俺とアレーティアはオルクス大迷宮の最深部にてお互いの魔法を教え合ったわけだが、その際にアレーティアは非常に独特な魔法理論を展開した。

 

『ここは……魔力をぎゅんしてパルパルそぉい……てやる』

『ふむ、何もわからぬ。故に魔法陣だけ見せてもらおうか』

 

 最初は自分の魔法指導の下手さを自覚していなかったアレーティアだったが、クラスメイトが修練に加わり、俺がアレーティアの理論をわかりやすく翻訳してクラスメイトに指導するようになると流石に自覚し始めた。

 

 名プレイヤーが必ずしも名指導者ではないという典型だな。自分の指導下手を自覚してからアレーティアは、クラスメイトの訓練に口を挟まなくなった。

 

「それに魔法の指導はいらぬ。シアを魔眼で見たが、魔法の素質は全くない。だが、身体強化については優れた素質を持っている。アレーティアにはシアに対し実戦訓練を行い、シアの力を引き出してもらう」

 

 シアは俺に追い詰められた時、土壇場で魔力の使い方を直観的に理解した。それを思えばシアは、基本から積み重ねていくよりひたすら実戦訓練を繰り返す方が性に合っているだろう。

 

 習うより慣れろ。それが一番シアが強くなるための近道だ。

 

「ん、わかった」

「あの〜アノスさん。アノスさんは私に教えてくれないのかな〜って」

 

 そこで自分の訓練内容を黙って聞いていたシアが口を挟んできた。

 

「何? 私じゃ不満?」

「い、いえ。そういうわけじゃないんですけど〜」

 

 たしかに俺が強くすると宣言したのに、完全にアレーティアに任せきりでは不安にもなるか。視点を変えれば、些か無責任にも思えるしな。

 

 だが心配せずとも俺にしか教えられぬこともある。

 

「心配するな、身体強化についてはアレーティアに任せるが、その未来視の魔眼の扱いだけは俺が教えなくてはならぬだろう。今は基本の魔力操作を習得しろ。俺の指導はそれからだ」

「は、はい! 頑張りますぅッ!」

「…………やる気があるならさっさといく」

 

 張り切るシアに冷たい目を向けながらアレーティアがシアを引きずっていく。魔法の指導力はないアレーティアだが、女王時代の戦闘経験値からか戦闘指導は中々だ。このままアレーティアに任せれば大丈夫であろう。

 

 だから問題は……

 

「ああ、どうか罪深い私を許してくれぇ~」

 

 まるで互いに譲れぬ信念の果て親友を殺した男のように殺した魔物に縋り付き……

 

「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! それでも私はやるしかないのぉ!」

 

 まるで狂愛の果て、愛した人をその手で殺めた女のように魔物を殺したことを悔やみ……

 

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか……当然の結果だな……」

 

 瀕死の小さなネズミの魔物が、最後の力で己を殺した相手に一矢報いると、倒れながら自嘲気味に呟くカム達ハウリアだ。

 

「ふむ、なるほど」

 

 ここまで徹底しているといっそ天然記念物と言っていい部類だな。物心ついたばかりの幼子でもハウリアに比べたらもっと残酷だろう。

 

「一つ聞こう。お前達が行動中妙なところで跳ねたり飛んだりするのは、もしや地面の花を気にしているのか?」

「いえいえ、まさか。そんな事ありませんよ」

「ほう」

 

 てっきりそうだと思っていたが、勘が外れたか。

 

「花だけでなく、虫達にも気を遣いますな。突然出てきたときは焦りますよ。何とか踏まないように避けますがね」

 

 ふむ、どうやら想像以上だったらしい。

 

 訓練を始める前にハウリア達がどこまで動けるのか見せてもらおうと思ったが、想像以上のものが出てきた。他の亜人族が他所者である俺の提案をたいして考慮せずに受け入れた理由がやっとわかった。たしかにこれではどんな訓練を行おうと無駄だ。

 

 今のハウリア達に戦闘訓練を施しても身になるものなど何一つあるまい。現状の彼らは訓練以前の問題だ。だからこそ、まずは彼らの心持ちを変えなくては始まらない。

 

「ふむ、おかしいな。カムよ。お前は殺した小ネズミや虫達には謝罪しているが、脇腹を深々と突き刺された俺は謝罪された覚えはないが?」

「っ!? それはッ!」

「良く聞け、カムよ……」

 

 集団を変えるためにはまずは頂点に立つものを変えなくてはならない。だからこそ俺は集団の長であるカム・ハウリアに対して語りかける。

 

「今のお前は確かに弱い。それなのにいきなり戦えというのは理不尽に思えるかもしれぬ。だがな、お前はいざという時の勇気の出し方を知っている男だ。シアを守るために、俺に立ち向かった時のことを思い出せ」

「アノス殿……」

「優しさを捨てよとは言わぬ。それはきっと他の種族にはない、お前達だけの長所なのだろう。だが物事には何事にも順序がある。周囲に気を遣いすぎて、守れるはずのものを守れなかった時の後悔と絶望は想像を絶する。そうならないために、族長としてハウリアがこれから進むべき道を、まずはお前が先頭に立って示せ。お前が変わればハウリア族も変わる」

「アノス殿……私は……」

 

 カムが何かに気づいたような表情に変わる。もう一息だと思った俺は先程思いついたことを実行することにする。

 

「とはいえそう簡単に変われたら苦労はせぬ。要は周囲に花や虫などのお前達より弱く、愛でるべき生き物がいるから訓練に集中できぬのだろう? ならその問題を解決してやる」

 

 俺は周囲に綺麗に咲き誇っている無数の花達を含めた周囲一体に対して、一つの魔法を行使する。

 

「<魔物化(ネドラ)>」

 

 魔法効果はすぐに現れた。魔法をかけられた植物、側にいたカムが殺した小ネズミの同種がみるみる内に巨大化していく。

 

「ギャァオオ──ッッ!!」

「シャァァァ──ッッ!!」

 

 そして残ったのは、元の何十倍の大きさと鋭い牙と爪を携え、凶暴化したネズミと真ん中にある人を丸呑みするほど巨大な穴から地面を溶かす溶解液を垂れ流している凶暴な植物だけだった。

 

「お、お花さぁーん!?」

「それは違うぞ、小僧。あれはもはやお花"さん"ではない。お花"様"だ。今のお前の立場で馴れ馴れしく"さん"付けで呼んではならぬ」

 

 そんな魔物化したお花様は、自らより下等生物と化したハウリアの子供を今にも丸呑みにして養分にする気満々だ。

 

 それだけではない。先程カムの足元で歩いていた小さき虫達は体長三十センチを越えた鋭い牙を持つ凶暴な危険生物の集団に変化し、ハウリアを餌にするためにわらわらと集まって狙いを定めている。

 

 今これらの生物が襲い掛からないのは俺が仕掛けた結界に阻まれているからだ。

 

「あわわわわ!」

「くはははは。これでもうこの樹海にお前達が気を遣わなければならない生物はいなくなった。たった今お前達は、この樹海における生態系の最底辺の生物となったのだ。今から十日間、周りの生物が全て自分より強い敵という極限状態でサバイバルしてもらう。己が油断すれば大切な家族が死ぬと思いながら必死になるが良い」

 

 怖気づく家族に対し、顔付きを変えたカムが短刀を構え……

 

「おおおおぉぉぉぉぉ──ッッ!!」

 

 自らの弱音を吹き飛ばすために叫んだ。どうやら本当にシアを助けた時を思い出したらしい。

 

 そして自らの長の雄叫びを聞いたハウリア達の顔立ちも、ようやく変わり始める。

 

「いい顔だ。ではいくぞ……大魔王教練、ハウリア極限サバイバル……開幕だ!」

 

 俺が結界を解くと、周囲の危険生物が一斉にハウリアに襲い掛かり、同時にハウリアも覚悟を決めて飛び出した。

 

 ***

 

 それからあっという間に時は過ぎる。

 

 俺はハウリア達に大魔王教練を行いつつも、片方の眼を遠見の魔眼に変え、アレーティアとシアの方の様子も常時観測していた。

 

 そこには野太い樹が幾本も半ばから折られ、地面には隕石でも落下したかのようなクレーターがあちこちに出来上がっており、更には、燃えて炭化した樹や氷漬けになっている樹まである。

 

 この多大な自然破壊はたった二人の少女によってもたらされたものだ。そして、その破壊活動は現在進行形で続いている。

 

「中々派手にやっているようだな」

 

 俺の視界の端にはアレーティアとシアがぶつかり合っている光景が広がっていた。

 

「でぇやぁああ!!」

 

 シアが魔力にて肉体を強化し、直径一メートルもある樹木を抱えるように持ち、根ごと引き抜く。そして向かい側に立ち尽くしているアレーティアに向けて投擲した。

 

 物を投擲するという単純な攻撃でありながら、巨木の質量と投擲時の速度により凶悪な質量兵器と化したシアの攻撃がアレーティアを襲うが、アレーティアはこの程度で倒せる相手ではない。

 

「……〝緋槍〟」

 

 迫り来る脅威に対しても動揺を見せず、真正面から迎え撃つアレーティアが展開したのは豪炎の槍。かつて帝国兵が使った炎の槍と比較して数十倍の威力があるその魔法は砲弾と化した巨木を丸ごと消滅させる。

 

「まだです!」

 

 巨大な熱量と質量が激突した際に齎された衝撃波で払われた霧の向こう側から、シアが間髪入れずに投げ込んだ巨木が高速で迫り大地に突き刺さった。その二段構えの攻撃を後退することで対応したアレーティアは再び〝緋槍〟を放とうと構えるが、アレーティアが攻撃に移る前にシアが巨木を蹴りで粉砕しアレーティアに対し目眩しを行う。

 

 魔眼でシアの動きを追っていたがやはり実戦形式にして正解だったようだな。日が経つにつれ、アレーティアと戦うにつれ、シアの魔力操作はより洗礼され、全体的な動きの無駄が無くなっていく。

 そしてそれは恐らく俺よりも実際に戦っているアレーティアが一番実感しているであろう。最初は余裕の表情を浮かべていたアレーティアだったが、日が経つにつれ顔に余裕がなくなっているのがわかる。

 

 そして最終的に技後硬直のわずかな隙をついてシアを氷付けにしたアレーティアが勝利した。

 

「……私の勝ち」

「うぅ~、そんな~、って、それ! アレーティアさんの頬っぺ! キズです! キズ! 私の攻撃当たってますよ! あはは~、やりましたぁ! 私の勝ちですぅ!」

 

 シアの喜びの声を聞いた俺も確認するが確かにアレーティアの頬に傷がある。最初は攻撃が掠りもしていなかったことを考えればかなり進歩したと言えるな。

 

 だがそれを認めたくないのか、アレーティアは素早く自動再生で傷を治してしまった。

 

「……傷なんてない」

「んなっ!? 卑怯ですよ!」

「……なんのことかわからない」

 

 氷漬けのシアがアレーティアに文句を言うが、アレーティアはどこ吹く風だ。

 

「いや、誤魔化しは良くないなアレーティア。此度はシアの勝ちであろう」

「!? そ、そうですよね、アノスさん! 私、ついにやりました!」

 

 俺はアレーティア達の元まで転移し、シアの氷を溶かしつつシアの勝ちだと宣言する。

 

「…………むぅ」

 

 氷が溶けてできた水溜まりの上で喜ぶシアを見て難しい顔をするアレーティア。アレーティアはシアに自分に一撃加えられたらシアの同行を認めるという話をしており、その結果、シアはアレーティアに一撃入れることに成功した。

 

「さあ、アノスさん。アレーティアさんに勝ちましたよ。私をあなたの旅に連れて行って下さい!」

「断る」

「即答!?」

 

 まさか即答で断られるとは思っていなかったのかシアが驚愕の面持ちで目を見開いた。

 

「確かにお前はアレーティアとの戦いに勝った。だがそれはアレーティアが認める理由であって、俺が認める理由にはならぬ」

「そんな~」

「だから俺に認められたくば、今度は俺の前でお前の力を示してみよ!」

 

 そして俺はシアの前で抑えていた魔力を解放する。シアに向けて魔力を向けるのは初めてだが、抑えているとはいえ、どうやら俺の威圧を受けて立てるくらいには根性がついたらしい。良い傾向だな。最初出会った時の泣き喚くことしか出来なかったころからもう変わり始めている。

 

「うぐぅ、魔力と言う物がわかってきたからか、アノスさんがいかに凄いかがよくわかりますぅ」

「アノスは規格外」

「何もお前だけで勝てとは言わぬ。アレーティアとシア、二人掛かりでこい。ついでにお前に余裕があれば、戦闘中にお前に魔眼の使い方を教えてやろう」

「ッ! 本当ですか!? う~~いいですぅ、ここまで来たらとことんやってやりますよぉ。ね、アレーティアさん!」

「……別に」

「冷たい!?」

 

 シアはやる気十分だが、どうもアレーティアはいまいち乗り気ではないらしい。

 

「どうしてですかぁ。この戦いには私が旅についていけるかどうかが掛かっているんですよ!」

「……別についてこなくてもいい」

「そんな~」

 

 何故かはわからぬが、どうやらアレーティアはシアが俺の旅に着いてくることを素直に認められないようだ。見たところシアを嫌っているわけではないようなのでプライドが邪魔をしているのかも知れぬ。ならアレーティアにもやる気を出してもらおうか。

 

「ふむ、それではアレーティア。もしお前が俺に傷を負わせることができれば、いつもより多めに血を分けてやろう」

「ッ!? 本当!?」

「二言はない。だから全力でこい」

 

 俺の言葉を受けたアレーティアが、急速に魔法を組み立て始めたのがわかった。どうやら吸血鬼であるアレーティアにとって俺の血は非常に美味らしい。俺のご褒美に対してやる気を出したようだ。

 

 まだ滅びの根源がほとんど眠っているとはいえ、俺の魔力を多量に摂取するのは本来ならあまり良くない。だが当然アレーティアの力が増していけば一度に摂取できる血の許容量も増えていく。俺に一撃与えられるくらいに成長できれば、もう少し量を増やしても問題ないだろう。

 

「シア、前に出てアノスを食い止めて。その間に魔法の準備を進めるから」

「了解ですぅ」

「そしてシアごとアノスを魔法で貫く」

「了解ですぅ……て、あれ? それ私巻き込まれてません?」

「気のせい。じゃあ、始める!」

 

 アレーティアの言葉に疑問を浮かべつつもシアも魔力を身に纏って準備を始める。

 

 さて、今の段階で二人がどこまでできるのか、しっかりと見させてもらうとしようか。

 

「でりゃぁぁ──ッッ!」

 

 身体強化を施して威勢よく飛び出してきたのはシア。手には巨大な岩を持っておりそれを俺に叩きつけようとしている。

 

 なので俺はその振り下ろされた大岩ごとシアを受け止め、投げ飛ばす。

 

「ひゃぁぁぁ──ッッ!」

「その程度の小石を持ち上げたくらいで満足して貰っては困るな。俺ならそれよりも何千倍も巨大な城でも持ち上げられる」

 

 シアの身体強化は中々のものだが、まだまだ甘い。もっと魔力をコントロールできるようになればもっと巨大な物でも持ち上げられるようになるだろう。

 

「”緋槍”」

 

 そしてアレーティアは俺にできたわずかな隙をついて魔法で攻撃してくる。前衛のシアに後衛のアレーティア。連携が習熟してくれば、必勝の組み合わせになるかもしれぬな。

 

「”炎球”」

 

 だが、そもそもまだ未熟だ。アレーティアとて魔力操作は我流。それゆえに魔法の深淵にはまだ到達していない。それゆえに最上級魔法を最下級魔法で迎撃することが可能だ。

 

「ッ、理不尽……」

「もっと魔法の深淵を理解せよ。お前ならもっと魔法を強力にすることができる」

「どりゃあぁぁぁぁ!!」

「そしてシアはその叫ぶ癖をどうにかしなくてはな。不意打ちもそれでは意味はあるまい」

「へ? きゅぅ!」

「ちょッ!?」

 

 後ろから迫ってきたシアの頭を掴み、思いっきりアレーティアに向けて投げる。流石にシアが砲弾になって飛んでくるとは予想いていなかったのか、アレーティアは魔法を発動する間もなくシアの巻き添えで吹き飛んだ。

 

「二人に共通して言えることだが、まだまだ魔力の操作が甘い。もっと魔力を見つめ、その深淵を理解せよ。さすれば、お前達は今よりもっと強くなれる」

 

 アレーティアもシアもそれだけのポテンシャルは秘めている。あとはキッカケさえあれば二人の根源はより強くなるだろう。

 

「アノスさん……」

 

 そして、二人は俺との力の差を理解していながらも、その闘志を減じることはない。

 

「もう一回」

「いいだろう」

 

 

 俺は上空に浮かび、その背後に数多の魔法を展開して、アレーティアとシアに向き合う。

 

「さあ、訓練の続きだ。案ずるな、例え死んだとしても、何度でも蘇らせてやる」

 

 

 俺の言葉を受けてなお、アレーティアとシアは覚悟を決め、俺に挑んできたのだった。




蘇生(インガル)が使えるようになったので遠慮がなくなったアノス様。いずれクラスメイトもこうなる
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