という訳でライセン大迷宮攻略開始です。
ライセン大峡谷──
俺達が目的とする大迷宮があるはずの場所であり、大昔はライセンという貴族が管理する処刑場だったという曰く付きの場所だ。
常に魔力を分解する作用が働いており、並の技量ではろくに魔法を使えずに、この環境に適応した魔物の餌食になる。
そんな場所に大迷宮を拵えた者の名はミレディ・ライセン。
オスカーの手記や、部屋に残された資料などを読んでわかったことは、彼女こそが彼ら解放者達のリーダーであり、彼女の行動から人類のエヒトへの反撃が始まったという。
その生涯については、あまり記載されていなかったが、オスカーの手記曰く、当代最強の魔法使いだったという話だ。
最強の魔法使いである彼女が、なぜ魔法がろくに使えない大峡谷に大迷宮を作ったのか、考えられる点は多数あるがひとまず置いておこう。
なぜなら、あくまで俺達が知っているミレディ・ライセンの情報は解放者のリーダーであり、当代最強の魔法使いだったことだけなのだ。オスカーの手記にはそれ以外彼女本人の性格などが記されておらず、本人が既に故人である以上、彼女の事は彼女が生前に残したものを頼りに推察することしかできない。
そして、かつて存在した解放者のリーダーであるミレディ・ライセンは……
〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪ 〟
これを見る限り中々どうして、愉快な性格をしていたらしい。
「……ふむ。どうやら光輝や龍太郎は、まだ連れていかぬほうがよさそうだ」
「……同感だわ」
俺の横で雫がなんとも言えない表情で愉快な看板を見ながら俺に同意する。
以前大迷宮を発見した時、光輝達も攻略に呼んでやると宣言した俺だが、旅の途中でこの看板を発見し、雫だけ連れて戻り意見を求めたのだ。
結果、俺と雫の意見が一致した。
この看板を見るだけでミレディ・ライセンが愉快な性格をしていることが伝わってくる。そしてそんな人間が作った大迷宮が、オルクス大迷宮のような王道的な作りをしているとはとても思えぬ。
猪突猛進傾向のある龍太郎や、優等生だが頭が硬く、真面目すぎるきらいがある光輝の真の大迷宮初挑戦に選ぶのに向いているとは言えない。
「光輝や龍太郎がこの大迷宮の製作者に弄ばれるのが目に浮かぶようだわ」
「誰にでも向き不向きはある。あえて苦手な大迷宮に挑戦させる手もあるが、今はタイミングが悪いだろうな」
今光輝達は勇者パーティを筆頭に伸び盛りなのだ。ここに雫がいるのも雫が抜けた程度でオルクスの攻略に支障がない証であり、近い将来オルクス大迷宮の表百階を攻略することになるだろう。
そんな中で、奇抜な大迷宮に挑み、無残な結果に終われば成長の勢いを減じてしまうかもしれぬ。
それが真っ当な大迷宮ではなく、色物な大迷宮ならなおさらだ。
「いや~、ホントにあったんですねぇ、ライセン大峡谷に大迷宮って。でも、入口らしい場所は見当たりませんね? 奥も行き止まりですし……」
ライセン大迷宮への入口を見つけたシアは、テンションが上がっているのか辺りをキョロキョロ見渡したり、壁の窪みの奥の壁をペシペシと叩いたりしている。
「シア……あまり迂闊な行動は控えた方が……」
「大丈夫ですよ、雫さん。ここから私の冒険譚が始まるんですから、気合を入れて行かないと、って、ふきゃ!?」
シアの不注意な行動を諫めようとした雫だったが時すでに遅しだった。シアは回転式の扉に飲み込まれ、一人向こう側に行ってしまった。
「…………先が思いやられる」
「仕方ない。このまま中に入るぞ」
俺はアレーティアと雫を伴い、中に入る。
そこで待ち構えていたのは、黒塗りの矢の雨だった。
「はっ!」
俺が何かする前に、この手の仕掛けに慣れている雫が素早く矢を斬り落とす。
雫が全ての矢を斬り落としたのと同時に、周囲の壁がぼんやりと光りだし辺りを照らし出す。今俺達がいるのは十メートル四方の部屋で、奥へと真っ直ぐに整備された通路が伸びている。そして部屋の中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた。
〝ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ〟
〝それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ〟
「ふむ、中々ユニークな煽り文句だな。こうやって挑戦者の冷静さを奪っているのだろうな」
「ちょっとアノスッ、そんなこと言ってないでシアを探さないと」
「何を言っている。シアならすぐそこにいるであろう」
入ってきた扉を裏返すと、ギリギリ矢を躱したシアが壁にへたり込んでいた。
「シアよ。ここからは命がけの大迷宮だ。些細なミスが思わぬピンチを招くこともあろう。それを肝に命じるがいい」
「…………はい。本当に、ここに入る前にすませてよかったですぅ」
しばらくへたり込んでいたシアだが、例の石板を見つけると、怒りに身を任せてドリュッケンにて石板を粉々にした。
〝ざんね~ん♪ この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~プークスクス!! 〟
「ムキィ──!!」
シアが怒りに任せて何度も何度も石板を叩いている裏で、俺達はこの大迷宮のコンセプトと攻略の方針を定め始めた。
「どうやら魔法が使えぬ中で、常に冷静な判断で物理的なトラップに対処できるかが主題らしいな。魔法が便利だからと頼り切りになっている者はここで苦戦するという訳だ。おまけに絶妙な精神攻撃で常に挑戦者の怒りを駆り立て、冷静さを削ごうとしてくる。中々合理的なトラップだ」
「……あの石板はここの主の趣味だと思う」
アレーティアはあの石板の文字が気に障るらしい。この程度で心乱されるのは修練が足りないと言いたいが、その前に雫が声を上げた。
「それでアノス。実際どうやって攻略するつもり? オルクス大迷宮と同じようにはいかないわよね?」
「何を言っている雫。何のためにお前をこの大迷宮攻略に連れてきたと思っている?」
「えっ?」
にやりと笑う俺ときょとんとする雫。
「表の看板を見た時からこの系統の大迷宮になることは予想がついていた。だからこそ、ここは雫の出番なのだ。八重樫家での特殊訓練の成果を見せる時が来たぞ」
***
大迷宮の通路を道なりに進んでいくと、俺達一行は大迷宮の中の広大な空間に出た。
そこは、階段や通路、奥へと続く入口が何の規則性もなくランダムにつながり合っており、まるでレゴブロックを無造作に組み合わせてできたような場所だった。一階から伸びる階段が三階の通路に繋がっているかと思えば、その三階の通路は緩やかなスロープとなって一階の通路に繋がっていたり、二階から伸びる階段の先が、何もない唯の壁だったり、子供が自由な発想で迷路を作ったような外観をしている。
そしてこの部屋を中心としてそこら中に大迷宮へと繋がる道が続いているのだが、そこには無数のトラップが設置してあった。
ある時はブロックの隙間から回転のこぎり。ある時はある意味王道の転がる大岩。
それらの共通点は全て魔力を介さない物理的なトラップだと言うことだろう。
クラスメイトには魔眼を習得してもらったが、魔眼はあくまで魔力の流れを見るための物であり、物理トラップを見破ることはできない。
魔法が使えない環境で、いかに身体強化を施しながら周囲を注意深く観察しながら進めるかが重要だ。魔法に頼り切りの者ほどこの大迷宮は堪えることになるだろう。
ならば誰が活躍していたのか。それはシア……ではなく、俺がこの大迷宮攻略に役に立つと連れてきた雫だった。
「シア、そこは危ないから踏まないで頂戴」
「あっ、はい」
シアがトラップを踏みそうになったので雫が指摘する。
「アレーティアもそこの壁に寄りかからないようにね。そのブロックだけ動く仕組みになってるから」
「ッッ」
思わず壁に寄りかかりそうになっていたアレーティアが飛び上がって警戒する。
大迷宮攻略から早数時間。シアはトラップよりも各所に設置してある煽り文句に怒り心頭らしく、常にイライラしていた。
一方戦闘は魔法主体でお世辞にも身体能力に優れているとは言えないアレーティアはこの環境そのものが辛いらしく、魔法もろくに使えないとあって、残念ながらほぼお荷物状態になっていた。
そして雫は、数多のトラップを経験したことで”慣れた”ようで事前にトラップを見つけて回避することができるようになっている。
「雫さん凄いですぅ。どうしてトラップがどこにあるのかわかるんですか?」
「うーん。そう言われても……慣れというしかないのだけど……」
「雫の家系は忍者……優秀な間諜の家系でな。幼少の頃からこの類のトラップの作り方や攻略方法を叩きこまれている。むしろ馴染みのない魔法トラップがない分、雫には攻略しやすいだろうな」
雫は以前とは違い、自らの意思で剣道を再開したが、その際に八重樫家の人間にとって一つ誤算が発生していた。
雫は戦闘美少女アニメにド嵌りしたことで、剣道への意欲を見せるようになったが、憧れた戦闘美少女アニメというのは、『女の子だって派手に戦いたい』をコンセプトにしているせいで、やたらと派手なアクションシーンが多く出てくる作品群だ。
当然美少女戦士たちの立体的かつ派手な動きに憧れた幼少時の雫は、とにかくアクロバティックな動きをしたがった。
俺や光輝とのごっこ遊びはもちろんのこと。剣道での稽古ですら王道とは程遠い動きをやりたがる雫に対して、八重樫家の人間は大いに悩んだと聞く。
普通の剣道一家ならすぐにそんなことは辞めさせて、王道の剣道へ雫を促しただろう。だが幸か不幸か、八重樫家は普通の剣道一家ではなかった。
表では名門の剣道場の経営者だが、裏の顔はこの世に未だに存在する忍者の家系であり、戦国時代より受け継いできた剣術や忍術と呼べるものを継承していたのだ。
つまり、雫が望むことを八重樫家は教えることができた。
どうやら最初は雫に教えない方針だったらしい。だが、ただでさえ雫に望まぬ剣道を強いていた負い目がある上に、雫から教えを望んでいるのに今度はこちらから教えを拒否すれば、雫は二度と八重樫の技に興味を示さなくなるかもしれない。
それに素人が飛んだり跳ねたりすることは思わぬ怪我をする危険もある。放っておいてそんな危ないことをされるくらいならと、八重樫家は雫に忍者の技を教えることに決めたらしい。
幼少時の雫はその才能もあり、楽しんで忍者の技を学んでいたが、だんだん物がわかってくると今の時代に忍者というのは時代錯誤じゃないかと思ったらしく、今は少し遠慮したいと以前言っていた。
もっとも、この世界で風魔法を交えた立体機動戦闘ができるのは、その教えあってのことなのでちゃんと身についているわけだが。
そしてその技の一部は現在進行形で大迷宮攻略に役立っている。
雫の活躍により、攻略が進んでくると今までとは雰囲気の違う部屋に出てきた。
その部屋は長方形型の奥行きがある大きな部屋であり、壁の両サイドには無数の窪みがあり騎士甲冑を纏い大剣と盾を装備した身長二メートルほどの像が並び立っている。
部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇のような場所と奥の壁に荘厳な扉があった。祭壇の上には菱形の黄色い水晶のようなものが設置されている。
「これ、もしかして周りの石像が動いたりします?」
「……たぶん」
「お約束でしょうね」
「…………来るぞ」
周囲を見ると、騎士達の兜の隙間から見えている眼の部分が光り輝いた。そして、金属の擦れ合う音を立てながら窪みから騎士達が抜け出てきた。その数、総勢五十体。
騎士達は、腰を落とすと盾を前面に掲げつつ大剣を突きの型で構えた。窪みの位置的に現れた時点で既に包囲が完成している。
「雫、理解できていような?」
「もちろん。怪しいものが現れたら魔眼で見よ、でしょ」
「シア、心配せずともお前は強い。今までの鬱憤が溜まっているならここで存分に暴れるがよい」
「がってんですぅ。暴れまくってやるですぅぅ!」
雫とシアが前に出てゴーレム騎士の相手をする間に、俺はアレーティアに向き合う。
「アノス……私」
この大迷宮にて一番割を喰っているのは間違いなくアレーティアだ。得意の魔法はほとんど使えず、単純な身体能力ではこの中で一番弱いと言っても過言ではないのだ。
この大迷宮で一番お荷物になっているのが自分だと自覚があるのか、俺の方を不安げに見上げてくる。
「心配するな。お前の出番は必ず来る。それでも不安だと言うのなら……俺がいかにして攻略するのかを良く見ておくがいい」
先程から前線でシアがゴーレムを潰し、雫が切り刻んでいるが、一向に数が減らない。どうやらこの場ではこやつらは倒せないらしい。
「アノスッ、こいつらには核がないわ。このまま戦ってても無意味かも!」
「ならば強行突破だな。シアと雫はそのまま前線にて道を切り開け。後ろは気にせずともよいから思いっきりやれ」
「わかったわ!」
「ハイですぅ!」
シアと雫が先ほどよりも前にでてゴーレムを薙ぎ倒し始める。雫達の狙いに気付いたのかゴーレムが後ろから攻撃しようとするが、俺が適当に拳を振るえばまとめて吹き飛んでしまう。
「ふむ、所詮は再生すること前提のゴーレムだな。さほど強度はない」
「……シアと雫は必死に倒してる」
「確かに頑張っているな。この環境にも慣れてきたようだし、このままいけば不覚は取るまい」
「……そういうことじゃない」
なにやら俺の返事に納得いっていないアレーティアを横に、奥に見えた扉に到達した俺達は、その扉が封印されていることに気付く。
「どうやら扉はパズル形式になっているようだな。無限に現れるゴーレム達を倒しながらこれを解けと言うことらしい」
「アノスッ」
「そうだな。ここはアレーティアに任せよう」
「うんッ、任せて!」
魔法でなくても頭を使うのが得意なアレーティアが集中して扉の封印の解除を始めた。
「わわわわわ、アノスさん。ますます一杯出てきたんですけどぉ!」
どうやら封印を弄ると攻撃が激しくなるらしい。雫とシアが徐々に押し込まれ始めた。
「今アレーティアが封印を解いている。もう少し粘るがよい」
「了解ですぅ!」
「私も、もうちょっと頑張るわ!」
シアと雫が気合を入れ直し、再度前線に戻る。シアもこれが本格的な初戦闘になるが、どうやら戦場の空気に慣れてきたらしい。そうなれば身体強化に優れているシアをこの程度のゴーレムでは止められない。
それでもシアが敵を討ち漏らせば、それを雫が打倒する。それなりの強度があるゴーレムの比較的強度が低い関節部を的確に切り落として倒す姿はこの世界基準でなら既に一流の領域にいるだろう。
「解けたッ!」
「よし、雫ッ、シアッ、速やかに撤退せよ!」
「「了解!」」
アレーティアが封印を解いた扉の中に雫とシアが滑り込んできてそのまま扉を閉めた。
部屋の中は、遠目に確認した通り何もない四角い部屋だった。
厳重に隠してあったにしては何も無さ過ぎる。
「まさかこれは……ここまでして……何もなかったってオチなんじゃないでしょうね……」
「……ありえる」
「うぅ、ミレディめぇ。何処までもバカにしてぇ!」
本当に何もないのであれば引き返すしかないが、その懸念はいらないらしい。ほどなくしてこの部屋自体が動き始めた。
「ッ!?」
「うきゃ!?」
しばらく横に移動していたが、今度は真上からGがかかる。急激な変化に、アレーティアが足を崩して顔を強打したのか、涙目でぷるぷるしている。シアは、転倒してカエルのようなポーズで這いつくばっていた。
「アノスッ、どこに向かってると思う?」
「そうだな……どうやら望ましい方向ではないらしい」
頭の中で今まで攻略してきた道筋と、今の進んでいる方向を照らし合わせれば見えてくるものがある。
そしてそれはこの攻略において望ましくないものらしい。
「やっと、やっとゴールですぅ!」
動きが止まり、開いた扉の先にいち早く向かうシアは、まもなくその部屋がどこかで見た光景であることに気付いたのか、動きが止まる。
「アノス……まさか……」
「答えはあの石板に書いてあるだろうな」
扉の先の光景が見たことがあるところだったことで、皆は中央の石板に一斉に注目する。
そこには、以前とは違う別の煽り文句が書かれていた。
〝ねぇ、今、どんな気持ち? 〟
〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち? 〟
〝ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ〟
「「「……」」」
雫、アレーティア、シアがその文字を読んで沈黙する。
そして文字はまだ続いており、雫達の精神に増々負担をかけていく。
〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟
〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです〟
〝嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいよぉ! 好きでやってるだけだからぁ! 〟
〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟
〝ひょっとして作っちゃった? 苦労しちゃった? 残念! プギャァー〟
「くはははは。どうやら思っていた以上にミレディとやらは愉快な人物だったようだな。中々面白いではないか」
「笑ってる場合ですかぁ、アノスさん! おのれぇミレディィィィ──ッッ!」
「これは……流石に……心に来る」
「そうね。入口に戻されたんだし一度撤退も考えた方がいいかもしれないわね」
シアが怒髪天を衝きながら例の石板を壊し続けるのに対し、アレーティアと雫はここで疲労が押し寄せてきたらしい。
「どうするの、アノス? 私としては一度仕切り直すのもありだと考えるわ」
このまま進むか、それとも体勢を立て直すために撤退するか。その答えなど俺には一つしかなかった。
「むろん。このまま進む。中々愉快な大迷宮で色々利用できそうではあるが、そろそろシアの精神衛生上、このまま真面目に進むのも良くないだろう。それに……こちらは十分楽しませてもらった。ならば今度は、こちらが相手の度肝を抜く番だ」
この大迷宮は真っすぐ進めば最奥まで到達できたオルクス大迷宮とは違う。おそらく仕掛けを吟味し、わずかなヒントを頼りに、正しい手順で攻略しなければいけない仕組みになっているのだろう。
だがそれでは時間がかかりすぎる上に、些か面倒だ。
なのでここは手っ取り早く攻略させてもらう。
「先ほどのゴーレム戦で俺はほとんど手を出さなかったが、何もしていなかったわけではない。あの場に核がなかったということは誰かが操っているということだ。そして魔法で操っている以上、その糸を辿っていけば操縦者に行きつく。この時点で俺は、この大迷宮に存在する俺達以外の根源を捕捉した」
魔法を辿り、根源を捕捉した以上ゴールは明白だ。いくら道中の道を変えようとも根源を隠せぬのなら、俺から逃げることはできぬ。
「そこでお前達に質問だ。お前達が仮にこの地に大迷宮を作った主だと仮定して、絶対にできるわけがないと思う攻略方法は何だと思う?」
「えっ、えーと……」
「そうねぇ……」
「……」
各々考えているようだが、中々答えは出ないらしい。そもそもこの大迷宮の主の思考回路なんて理解したくないと考えているのか特にシアは嫌な顔をしている。
皆が考えている内に、俺は対象となる根源の位置を探し、斜め上方向に手を翳す。
「時間切れだ。答えを言おう。それは……魔法によるごり押しだ」
「魔法って……けどアノス、ここでは魔法が……」
「アレーティアの言うことは最もだ。この大迷宮自体に強力な魔力分解効果が張り巡らさせているせいで、この大迷宮では魔法はほとんど使えないというのが大前提だ。だからこそこの大迷宮には魔物はいないし、物理トラップしか存在しない。魔法トラップは仕掛けたくても仕掛けられぬのだ。だがな……」
だからこそ、魔法を使った攻略はこの大迷宮の主の意表を必ず突くことができる。俺は魔法陣を展開し、魔法を完成させた。
「魔力が分解されるからといって、魔法が使えぬとでも思ったか!」
「<
アレーティア達には言っていなかったが入り組んだ迷路を攻略するのに最も手っ取り早い手段がある。
それは……壁抜きだ。
俺が放った<
「な、な、な……」
「……攻略の手順完全無視ね」
「おっしゃぁぁぁぁッ、ざまぁぁですぅ!!」
「<
驚きすぎて口をぽかんと開けているアレーティアに、何故か頭を抱えている雫。そして散々自分達を苦しめた大迷宮が破壊されていく光景にシアが歓声を上げる。それを尻目に俺はすぐさま囲い付きのエスカレーターを魔法による破壊痕に創造した。
「さて、ここからは創造主のところまで直通だ。シアも鬱憤が溜まっているなら直接本人に言うといい」
「本人って……そういえば根源を見つけたって。アノスの言う根源って魂みたいなもののことを言うのよね? ということはまさか……」
エスカレーターに乗りながら、雫がある答えに行き当たったらしい。驚愕の表情で俺を見てくる。
「ああ、聞いて驚け。この大迷宮の主、ミレディ・ライセンは、どうやらまだ生きているようだぞ」
そして俺達は、この大迷宮の主、ミレディの元へと真っすぐに駆け上がっていったのだった。
Q:迷路を一番早く攻略する方法はなんですか?
A:壁を壊してまっすぐ進む。
>雫の変化
原作とは違い、八重樫家が忍者の家系だと既に知っている。幼少の頃から忍者の修行を行なっていたので、物理トラップの攻略なんかは習得済み。風魔法を使った立体的な戦闘術にも役立っている。