ありふれない不適合者が世界最強   作:シオウ

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魔王学院の不適合者完結記念に1話更新
アノス様は最後まで素晴らしい主人公でした。

前回のあらすじ

異世界トータスに転移されたアノス達は地球に戻るための手がかりを探すために、各地に点在している大迷宮の探索の旅に出る。
第二の大迷宮であるライセン大迷宮を攻略したアノス達。
アノスが邁進する中、他の勢力もまた動きを見せ始めており……


第三章
21話 魔王と依頼


 

 オルクス大迷宮最深部の解放者の居住区にて、僕こと南雲ハジメは完成した教会提出用のアーティファクトの調整を終え、一息つく。

 

「よし、これでひと段落かな」

 

 軽く伸びをするだけで身体のあちこちが軽い痛みを発する。ずっと部屋に籠りっぱなしなのでいまいち時間の経過が把握し難いが、どうやら思っていたより長時間作業に没頭していたらしい。

 

 アノス君たちが大迷宮探索の旅に出て約一カ月。

 

 現代で唯一、アーティファクトの錬成が可能な錬成師として知られている僕は、定期的に王国騎士団や教会騎士団に提出するアーティファクトを錬成している。

 

 最初は、基礎的なアーティファクトしか作れなかったが──それでも喜んでくれたけど──錬成魔法、そして神代魔法である生成魔法に対する理解が深まれば深まるほど、徐々に品質の良いアーティファクトを錬成できるようになってきた。

 

「僕も地に足をつけてきたってことかな」

 

 この世界に来た当初は、先生を除いてただ一人の非戦闘職として邪険にされていた時もあったけど、案外なんとかなるものである。

 

 もっとも、それは僕一人の力だとは思っていない。まずこの研究室を提供してくれたアノス君には感謝の念が絶えない。そもそも彼がいなければ僕たちのここまでの過程がこれほど上手くいったとは思えないのだ。

 

 下手をすると最初のオルクス大迷宮で誰かが犠牲になっていたかもしれない。そうなればきっと引きこもって外に出ようとしないメンバーもいたことだろう。自分もそうかもしれないし、その前に当時クラス最弱だった僕こそが大迷宮の犠牲者第一号になっていたかもしれない。

 

 そして、僕にとってはアノス君以上に……

 

「ハジメ君、そろそろご飯の時間にしようよ」

「あ、うん。今行くから」

 

 大迷宮攻略を行いながらも、頻繁に僕の助手をしてくれる香織の力がとても大事だった。

 

 

「じゃーん。魔物料理第三弾。何かよくわからない鳥肉のシチューです!」

「おお……普通においしそうだ」

 

 香織が作った魔物料理が食卓に並ぶのも増えてきた。

 

 本来、魔物は毒であり食べると死ぬというのがトータスの常識だったが、アノス君は魔物の肉の毒抜きに成功して魔物肉を可食にするある種の偉業を達成している。

 

 これはアノス君が発見したことなのだが、この世界の魔物は毒をある程度弱毒化して食べれば肉体の成長を促す効果があるらしい。

 

 現にフェアベルゲンで行われたというハウリア達の一大決戦において、戦う術を持っていなかった彼らが勝利を得ることができたのは、僕が作ったナイフにアノス君が魔法をかけることによって弱毒化した魔物肉を糧にしたからだそうだ。

 

 流石にアノス君みたいにある種無茶な強化はできないながらも、香織もまた魔物肉の毒抜きによるパワーアップ料理の開発に成功し、その甲斐あってかクラス最弱だった僕のステータスも徐々に見栄えのあるものに変わってきている。

 

「ハジメ君、アーティファクトの作成は順調?」

「そうだね。色々アノス君のアドバイスを貰いつつだけど、なんとか形になってきてる感じかな」

 

テーブルに着きながら香織が聞いてきたのは教会に提出するようの汎用的なアーティファクトではなくて、ここでしか研究できないアーティファクトのことだった。

 

「基礎的な部分に関しては大体完成してるかな。後は細かい作業を加えてやれば実験に入れるかも」

 

このアーティファクトは基本的に自分が使うために作っている。錬成師である僕が戦う機会なんて永遠に来ないのかもしれない。けど物事は絶対ではないことをこの世界にきて僕は十分体験してきている。

 

「そうなんだ。もしできたら私にも見せてね」

「もちろんさ」

 

だからこそせめて、目の前の彼女を護れるくらいの力は持っておきたいと思うのだ。

 

 

そして香織特製の料理を食べた後、僕は錬成作業の続きに戻るのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 トータス大陸の南方を支配する種族、魔人族。

 

 その種族が起こした国である魔国ガーランドの首都にある魔王城。そこで魔人族軍の将軍であり、魔人族唯一の神代魔法使いであるフリード・バグアーは、部下の報告を受けていた。

 

「では、異世界の勇者達を寝返らせることは難しいという判断なのだな?」

「はい、残念ながらこちらに対する警戒心が強い者が多く、利用することは不可能かと」

 

 フリードはとある目的のために異世界から召喚された勇者達の調査を部下に命じていた。

 

 彼が手に入れた神代魔法である変成魔法は生物に関することならあらゆることに干渉できるという魔法であり、その魔法を使い数多の魔物を支配下に置き、操ることができる。

 

 その力を持って部下に幾らか特殊な能力を持った魔物を預けていた。

 

「心の隙を見破る魔物の力を用いても隙がないか。異世界から召喚された勇者達は戦闘の素人集団だと聞いていたのだがな、一枚に纏まってはいるようだな」

 

 現在、魔人族達にとって優先討伐対象となっている異世界の来訪者は3人いる。

 

 一人は豊穣の女神と呼ばれ始めた作農師、畑山愛子。

 

 魔人族側にも人族の食糧事情を大きく変える天職である作農師を持った異世界人の話は伝わってきている。

 

 戦争において、兵糧がいかに重要であるかなど最早語るまでもない。魔人族達にとっても魔物が生物である以上、その兵力維持のために魔物の食糧を確保するのに難儀しているのだ。

 

 可能なら彼女を寝返らせることができれば魔物に十分な栄養を与えて更なる戦力強化を望めるが、それが難しいなら可能な限り早く始末しなければならない。

 

 同じ意味で対処しなくてはならない討伐対象の一人は、人族に数多のアーティファクトを齎すに至った錬成師、南雲ハジメ。

 

 彼を放置しているだけで、人族の戦力が増強されていくことを考えれば、真っ先に討伐ないしこちらに引き込みたいが、世界各地に旅をしている愛子とは違い、堅牢な大結界で守られた王都にて活動しているハジメに干渉するのは難しいと魔人族達は考えていた。それができるようになるのは魔人族の最終作戦が可能になってからだ。

 

「ならば軍の一部から十分な量の魔物を派遣しよう。当初の予定より準備期間は短いが、豊穣の女神が王都や帝都より遠い北の地にいる好機を逃す手はない。レイスよ、豊穣の女神討伐を見事成し遂げてみせよ」

「御意」

「心配はいらん。神の加護は我らにこそある。例え豊穣の女神だろうと、アーティファクトを錬成できる錬成師だろうと叩いて潰すだけだ。そしてそれは……」

 

 そして最後の討伐対象。異世界から召喚された者達の中で、最も異質な存在感を放つ一人の男。この男に関しては、他二人と違って問答無用で討伐することを決めていた。それは彼らにとって教会の教義に反するが故に。

 

「我らが魔王陛下を差し置いて、魔王を名乗る不届き者も変わらん。この世界に魔王は二人いらぬ。偽りの魔王には、いずれこの世界から退場してもらうことになるだろう」

 

 彼らが神と同一視する魔王を語る者、異世界の魔王アノス・ヴォルディゴード。彼らとアノスが接敵するのは、そう遠い未来ではなかった。

 

 

 ***

 

 

 

 異世界トータスに転移してもうすぐ四ヶ月が経とうとする頃、ライセン大迷宮を攻略した俺達は新たな土地を訪れていた。

 

「初めまして、冒険者ギルド、フューレン支部支部長イルワ・チャングだ。君達がアノス君にアレーティア君、そしてシア君で間違いないね?」

 

 ライセン大迷宮攻略後、ブルックに戻った俺達は、雫を再び勇者パーティと合流させた後、中立商業都市フューレンへと移動した。

 

 そこでシアとアレーティアに目をつけた貴族を適当に対処した際、冒険者ギルドに目をつけられ、支部長とやらの部屋に案内されていた。

 

「そうだが、俺達に何か用でもあるのか?」

「そうだな。君たちに渡されたキャサリンの手紙を読んで、君達が凄腕の冒険者であると書いてあった。彼女はギルド本部のギルドマスターの元秘書長でね。人を見る目は誰もが信頼しているところだ。そんな彼女のお眼鏡に叶った君たちの腕を見込んで、一つ依頼をしたい」

「ふむ……話を聞こうか」

 

 ブルックの町で出会ったキャサリンが予想以上の大物だったことを頭の片隅に置きつつ、大都市のギルド長が何の用があるのか興味が出てきた。

 

「依頼の内容は簡潔に言うなら、護衛任務になる」

 

 イルワの話を要約するとこうだった。

 

 つい先日、北の山脈地帯で魔物の群れを見たという目撃例が何件か寄せられ、ギルドに調査依頼がなされることが決まった。北の山脈地帯は、一つ山を超えるとほとんど未開の地域となっており、大迷宮の魔物程ではないがそれなりに強力な魔物が出没するので高ランクの冒険者がこれを引き受けた。ただ、この冒険者パーティーに本来のメンバー以外の人物がいささか強引に同行を申し込み、紆余曲折あって最終的に臨時パーティーを組むことになったそうだ。

 

「その飛び入りの名前はウィル・クデタ。クデタ伯爵家の三男だ」

「伯爵といえば上位貴族。その三男が冒険者?」

 

 アレーティアの当然の質問にイルワは頭の痛みを抑えるような顔をする。

 

「実はまだ若い彼は冒険者になると言って家出同然に飛び出していてね。もちろん彼に連絡員は付けてあるんだが……」

「それでも不安が残るから、俺たちに護衛して欲しいというわけか」

「話が早くて助かる。もちろん調査依頼を引き受けたパーティーもかなりの手練でね。私も余程問題ないと思うからこそウィルを参加させたわけだが、万が一のことがあってはならないと思ってね。他にも有力な冒険者に声をかけるつもりだが、あのキャサリンのお墨付きとあれば声をかけずにいられなかった」

 

 どうやら件の伯爵とイルワは個人的な付き合いもある友人同士であり、ウィルのことも知らない仲ではないらしい。つまり友人の息子が冒険者になりたいと希望するのであれば叶えてやりたいが立場上、過保護にならざるを得ないらしい。

 

「魔物の目撃例があった場所は北の山脈地帯のちょうどウルの町が近くになる。引き受けてくれるのであればもちろん報酬は弾ませて貰うが如何だろうか?」

 

 イルワの話はわかった。後はこちらが受けるかどうかだが。

 

「どうするの、アノス? 私達の目的地とは反対方向になるけど」

 

 俺達が当初目指していたのは西の大陸にある大火山だ。中立商業都市フューレンに訪れたのは<転移(ガトム)>の範囲を広げるためだった。だがアレーティアの言う通り北の山脈地帯を目指すのであれば方向が逆になる。

 

 だが俺の答えはもう決まっていた。

 

「いいだろう。その依頼、引き受けよう」

 

 ***

 

 イルワと契約を結び、フューレンの宿を取った俺達は宿の部屋にて依頼のことについて話し合っていた。

 

「アノス、本当に引き受けて良かったの? 結構面倒な依頼だと思うけど……」

 

 アレーティアが面倒だと言うのはイルワが最後に付けた条件のことだ。

 

『申し訳ないがウィルに君達が護衛として雇われたことは言わないで貰いたい。初めての冒険者としての大きな活動で護衛付きと知れば臍を曲げてしまうかもしれない。元々冒険者になるというのも過保護な両親に対する反発という面があったのでね。もちろんウィルの安全が第一であるから緊急なら仕方ないがそれまではあの子の望みを叶えてあげてほしい』

 

「あの人も結構過保護ですよね。そんなに甘やかされて冒険者なんかになれるんですかね?」

「さてな。その辺りの事情は深入りすべきではなかろう。それに依頼の件については俺達にとっても都合が良かった。ウルの町ではちょうど愛子たちが活動しているからな、そろそろ様子を見に行ってやらねばならぬと思っていたところだ」

 

 ローテーションで各チームを巡回している俺だが、定位置にいない愛子達は他と比べてどうしても訪れる頻度が下がってしまう。定期的に連絡は取ってあるが直接見に行ってやることも必要だろう。

 

「それに、俺にとってはある意味大迷宮よりも重要な用があの場所にはある」

「アノスが大迷宮以上に優先するって……」

「それって、一体……」

 

 ほう、そんなに俺の目的が気になるか。ならば教えてやろう。

 

「ずっと前からあの地方には注目していたのだ。あの地方には……美味いキノコ料理がある」

「えっ?」

「へっ?」

 

 何故かは知らぬが、乾いた空気が流れたような気がしたな。

 

「北の山脈地帯は美味いキノコが取れることで有名らしくてな。さらに近くには稲作をやっているウルの町があって料理も上手いという評判を事前に手に入れている。特に『七種のキノコを使ったグラタン』が上手いと聞いたらなおさらだ」

 

 地球に転生した時もそのキノコの種類の豊富さや料理の多さに感動したものだが、それに加えトータスにも未知のキノコがあるというではないか。これは堪能しなければ損だろう。

 

「アノス……キノコ料理が好き?」

「うむ。好物だぞ。母さんが作ったキノコグラタンならいくらでも食べられるくらいな」

「へぇ、なるほど。アノスさんはキノコ料理が好きっと

 

 意外な表情をするアレーティアと何やら思案しているシアを横目に、俺は未知のキノコ料理を食べるために、北の山脈地帯を行くことを決めたのだった。

 

 ***

 

 数日後、フューレンの正門の前で今回の依頼を受けることになった冒険者が勢揃いしていた。

 

「お前達が最後か」

 

 そこに集まっていたのは複数の男女。パーティーごとで固まっているところもあれば、一人でこちらを伺っているものもいる。どうやら本当に複数のパーティーに依頼を出したらしい。

 

 そしてその中で、屈強な男たちに囲まれるような形で若い青年がいるが、彼が護衛対象だと当たりをつける。

 

他にも冒険者がいるがパーティを組んでいたり、一人で周囲を観察しているものがいたりと様々だ。

 

俺が周囲を観察するのと同時に周りの冒険者達も俺達に視線を集める。

 

「あれ……兎人族の奴隷か? おいおい、これから依頼だってのに」

「物見雄山の素人か。他にもちっこい嬢ちゃんを連れてるし。全くギルド長にも困ったもんだ」

 

見た目で侮られやすいシアとアレーティアを見てこちらを素人だと判断している冒険者達。俺も観察してみるが、逆にそれほど大した実力者には見えん。

 

「よ、色男。ちょっといいかい?」

 

俺に対して声をかけてきたのは護衛対象のパーティらしき人物の一人だった。

 

「俺の名前はゲイル。黒薔薇の友愛というパーティを率いるリーダーだ。そっちは?」

「アノス・ヴォルディゴードだ。パーティ名は特にないな」

「アノス……つまりお前さんがイルワギルド長が言ってたやつか

 

護衛対象であるウィル・クデタに聞こえないように小声で話すゲイル。同じ護衛として話は通っているらしい。

 

「凄腕だという話は聞いている。これからよろしくな」

「ああ、よろしく頼む」

 

手を差し出してきたので握手で返す。その様子を見ていた護衛対象が俺に興味を示したのか近づいてきた。

 

「あなたも冒険者ですか? 良かった~、歳の離れた人ばっかりでちょっと不安だったんですよ。あ、僕はウィル。駆け出しの冒険者です」

「アノスだ。そしてこの二人が俺の仲間だ」

「シアですぅ」

「……アレーティア」

 

元気良く挨拶をするシアに対し、俺の後ろから警戒しながら挨拶するアレーティア。人見知りのアレーティアの態度にも悪い顔をしないウィルはこちらこそよろしくと返事を行い、パーティの元に戻ってくる。

 

「では、全員揃ったところで、これから行う依頼の説明を行う」

 

今回の依頼を出したギルド職員らしき人物が改めて俺達に向かって依頼の説明を行う。

 

その中身はイルワから聞いた内容と同じだった。

 

つい先日、北の山脈地帯で魔物の群れを見たという目撃例が何件か寄せられ、ギルドに調査依頼がなされることが決まったという内容だ。

 

「目的は魔物の調査と可能なら討伐だ。現状の調査は必須だが魔物の討伐は実力と相談して行ってくれ。決して無理はしないように頼む」

 

初めてであろう任務にウィルは興奮気味だ。周囲のパーティーは冷静に話を聞いている。

 

 

最後に依頼を受ける旨の最終確認を取った後、俺達はウルの町に向かって出発した。

 

 

 

***

 

そして、あっという間に夜になる。

 

夜でも耐えることのない明かりがそこら中にある日本と違い、中世レベルの文明であるトータスでは日が落ちれば真っ暗だ。必然、日が沈む前に野営の準備に入ることになる。

 

「アノスさんのアーティファクトを使えばすぐに辿りつくのにぃ」

「護衛対象を置いて先に行くわけにいかぬのだから仕方あるまい。しばらくは野営が中心になるだろうから早くこの環境に慣れることだ」

「はぁい」

 

ここに来るまで馬車を数台用いて移動していたが、すでに自動車の乗り心地を知ってしまったシアは、馬車の遅さと乗り心地の悪さに辟易していた。一方で王族時代に馬車での移動は体験済みなのかアレーティアからは特に文句は出ていない。

 

「さて、これから野営に入るわけだがせっかく出会ったんだ。少し自己紹介でもしようではないか」

 

野営の準備をしていた者達に対して声をかけた男は一際目立つ男だった。

 

金髪の優男という風貌だが、その後ろにはパーティーメンバーであろう女性冒険者を四人引き連れている。

 

「まずは言い出した僕からだ。僕の名前はアベル。閃光の旅団のリーダーであり金ランクを持つ冒険者だ」

 

その一言で周囲がにわかに沸き立つ。

 

「金ランク……それにアベルって確か”閃刃”の……」

 

どうやらそれなりに名の通った冒険者らしい。後ろの四人娘も名乗るがその名前も周囲の冒険者には聞き覚えのある名前らしいのでパーティー自体が優秀な部類なのだろう。

 

「では次は俺だな。俺はゲイル。黒薔薇の友愛のリーダーで黒ランク冒険者だ」

「ほぅ、黒薔薇の友愛といえば最近名が通り始めたパーティーじゃないか、頼りにしているよ」

 

それからも順番に冒険者達の自己紹介が始まり、その冒険者達に対してアベルが一言付けていく。どうやらすっかりこの集団のリーダーになったつもりのようだ。

 

次々と冒険者名やパーティー名と冒険者ランクが明らかになっていくが皆、緑以上の色を言っていく。

 

冒険者ランクは全部で青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金があるとキャサリンから聞いているので、ここに集まった冒険者は全員中堅以上の実力者なのだとわかる。手辺り次第依頼したと言っていたがちゃんと厳選しているらしい。

 

そうこうしている内に俺達の番が回ってきた。

 

「俺はアノス・ヴォルディゴード。パーティー名は特にないな。冒険者ランクは……青だ」

 

俺の言葉により、アベルの時とは逆の意味で沸き立つ。

 

「青ランクって……まじか」

「うわ~。絶対受ける依頼間違ってるじゃん。ご愁傷様」

「元々怪しいとは思ったんだよ。やっぱり素人か」

「ちっ、雑魚が」

 

青ランクと言っただけでこの扱いである。どうやら冒険者ランクというのは想像以上に重要なものらしい。

 

「青ランクぅ~? 君ねぇ、受ける依頼を間違ってるんじゃないの~? 困るんだよねぇ~、優れた冒険者パーティーだけの依頼に足手まといが混じるのは」

 

にこやかに毒を吐くのは金ランクだという冒険者であるアベルだ。俺が青ランクだと知って明らかにこちらを見下す視線に変わったのが分かる。

 

「冒険者ランクなど飾りにすぎぬ。足手まといかどうかはこの旅の中でわかることだ」

「はっ? 粋がるなよ。お前みたいな雑魚はみっともない姿さらして……ふむ」

 

さらに毒を吐こうとしたアベルだったが、その眼にアレーティアとシアを映したことで態度を変える。

 

「君と、そこの兎人族の君。……後で僕のテントに来なよ。僕が本物の冒険者というものを教えてあげよう」

「……必要ない」

「同じくですぅ」

「照れるなよ。まぁ、いいさ。君たちもこの旅で付いていくべき男というのがどんな男かわかるだろうからね。僕はいつでも大歓迎さ」

 

どうやらアレーティアとシアの態度は照れていると認識したらしい。まるでアレーティアとシアが自分に靡くのは当然という確信があるようだった。

 

「では最後は貴方だレディー、ぜひお名前を聞かせてもらいたいね」

 

調子ずいたアベルは最後に誰ともパーティーを組んでおらず一人で付いてきた女冒険者に声をかける。

 

 

「うん? 妾かの?」

 

 

見た目は20代前半くらいの黒髪金眼の女だった。この世界では珍しい着物のような服を纏う彼女は、凛とした声を張りながら答えた。

 

 

「妾はティオ・クラルス。腕に覚えはあるが、冒険者としてはまだ駆け出しじゃ。迷惑をかけるかもしれぬがよろしく頼むのじゃ」

 

 

この旅に集った最後の冒険者、ティオ・クラルスは周囲に自己紹介を行った。

 




アノスがいることで時系列と展開が徐々に変わってきています。今回の話はとある生徒の運命が変わったことによるバタフライエフェクト。

生存報告のための更新みたいなものなので次回がいつになるかは現状不明です。
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