ありふれない不適合者が世界最強   作:シオウ

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エヒトはとんでもないものを召喚しました。異世界の魔王です!


3話 魔王降臨

 そして、未知の転移魔法による転移の完了を確認し、俺は周囲を魔眼にて見渡す。

 

 まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。

 

 

 背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。

 

 何者かはわからぬが、どうやらこの場所は聖堂に類するものらしい。ならばこれは神の肖像か。

 

 それはいいが俺はここにきて一つ誤算があったことを知った。

 

「ねぇ、アノス。ここ、どこなの?」

 

 俺の袖を指で掴みながら不安そうに雫が言う。

 

「どうやらどこかに転移させられたらしいが、まさか雫たちまで巻き込まれるとはな」

 

 俺が使う<転移(ガトム)>であれば、対象を細かく設定できるためにこんなことはおきえないのだが、どうやら俺が思っていたより範囲指定が大雑把な魔法だったようだ。あの時間、教室内にいたほぼ全ての生徒。そして四時間目担当だった社会科教師が巻き込まれてしまっている。

 

「ここがどこかについてなら、おそらくあの者達が教えてくれるだろう」

 

 俺達を囲む三十人近い法衣を着た集団の中で、一際歳と覇気を携えた老人が前に出てくる。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 そう言って狡猾な法衣の翁は微笑を見せた。

 

 

 ***

 

 

「おい、これは一体何なんだよ」

「もしかしてどっきり? アノス様が芸能界デビューしたとか?」

「嘘ぉ。もしほんとだったら公式ファンクラブを作らないと」

 

 案の定、不安を抱く生徒達が思い思いに話合い、少しも纏まる気配がない。一部ズレた反応をしているものもいるようだが、それでも不安を抱いているのは間違いないだろう。

 

 そしてしばらく歩かされた後、俺達は十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。

 

 全員席に付いた後、妙なタイミングでカートを押しながらメイドが入ってきた。

 

 それぞれ一人ずつ側に付き、身体を近づけながら紅茶らしき飲み物を入れているが、お世辞にも手際が良いとは言えない。まるで数日前から付け焼刃で習得したような拙さだ。

 

 この時点で容姿優先で集められたと察せられる。現に幾人かの男子生徒は鼻の下を伸ばしていた。ハジメもチラ見しようとしていたが、香織の笑顔で黙らされていた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 そう言って始めたイシュタルの話はどうしようもないくらい勝手なものだった。

 

 

 要約するとこうだ。

 

 

 まず、この世界はトータスと呼ばれている。そして、トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。

 

 

 人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。

 

 

 この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

 

 

 魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。

 

 

 それが、魔人族による魔物の使役だ。

 

 

 魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。

 

 

 今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。

 

 

 これの意味するところは、人間族側の数というアドバンテージが崩れたということ。つまり、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。

 

 

 ここまで聞いた俺はこの世界が千年後のディルヘイドである可能性を消した。いくらなんでも生態系が違いすぎるからだ。

 

 

「あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という救いを送ると。あなた方には是非その力を発揮し、エヒト様の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 神か。

 

 よもや異世界にきてまた神に関わるとは思わなかった。

 

 

 俺にとって神とは世界の様々な秩序を司る機械みたいなものであり、秩序に従った行動以外は基本的に取ることができず、一部の例外を除いて感情が希薄であることが多いつまらない存在だった。

 

 この世界の神が俺の世界と同じ理屈で動いているかはわからないが、前世のこともあり、いい気分ではない。

 

 俺が意思を示そうと行動に移す前に、立ち上がって気炎を上げる者がいた。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 教皇に対し啖呵を切ったのは4限目の授業を担当していた教諭である畑山愛子だ。年齢二十五歳に見えない低身長に童顔ゆえに愛ちゃんなどと呼ばれて親しまれている先生だ。

 

 やる気はあるのだがいまいちそれがかみ合わないという印象が強い。もっとも二十五歳のまだ新米教師ならこんなものかもしれぬがな。

 

 愛子は俺達生徒を元の世界に返せと言っているがそれはおそらく無理だろう。

 

「気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

 思った通り、イシュタルは帰還が不可能であると俺達に告げた。

 

 かつて暴虐の魔王時代の俺が開発した転移魔法<転移(ガトム)>は発動自体はそう難しくないはずなのに、俺の時代の魔族でも使える者はそう多くなかった。それが何故かと言うと転移先に応じて魔法陣を書き換えなければいけないからだ。

 

 重要なのは転移先の情報だ。転移先の魔力環境に応じて柔軟に魔法陣を書き換えることで<転移(ガトム)>は正しく転移魔法として機能する。この転移先の情報が曖昧だったり間違っていたりした場合は発動しない、もしくは想定していない場所に飛ばされることになる。

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

 異世界に干渉する魔法がないということは異世界の情報が全くないに等しい。これではいくら俺でもすぐに帰還することは難しい。簡単に言えば、トータスから見た地球の空間的な座標がわからないからだ。異世界の存在を知ったのは俺とて地球に飛ばされてからだ。まだまだ異世界の仕組みを理解しているとは言い難い。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

 生徒達はパニックに陥っていた。当然だろう。今まで平和な世界で生きてきて、いきなり別の世界にとばされた挙句戦えと言われたのだ。一部冷静を保っている者もいるが大半は混乱の最中にあるようだ。

 

 

 未だパニックが収まらない中、光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は「待て」ッッアノス?」

 

 このまま光輝に任せてもいいかと思ったがどうやらそれはまずいと判断した。よって俺が変わりに立ち上がり教皇の元にまで歩いていき、座っている教皇を見下ろす。

 

「何やら勝手に話を纏めようとしているようだがな、はっきりと言っておこう。俺達はエヒトの意志などでは戦わない。戦うかどうかは己で決めさせてもらう」

「……どういう意味ですかな?」

 

 周囲に緊張が走るのがわかる。何か言いかけて途中で言葉を止めた光輝も俺に割って入ることはない。

 

「そのままの意味だ。どうしても俺達にこの世界を救って欲しければ、まずはお前達が誠意を見せてみろと言っている。何しろ俺達はこの世界にきたばかりだ。この世界のことを何も知らぬ」

「それは……もちろんあなた方にはこの後、ハイリヒ王国にて過ごす間にこの世界について学んでいただく予定になっておるが……」

「なら話はそれからだな。もし貴様らが救うに値しない者であったと判断した場合、俺達は勝手に帰らせてもらおう」

「なッ……」

 

 何としてでもエヒトの名の下に戦ってもらわなければならないという意思が伝わってくる。魔眼で見ても魔法を行使している気配はないが<契約(ゼクト)>のような魔法がないとは限らない。よってここで何か言質を取らせるつもりはないし、クラスメイトにもさせるつもりはない。

 

「待ってくれアノス。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない」

「戦争だぞ。命がけの戦いになる。平和な時代に生きてきたお前達に戦いができるとでも思っているのか?」

「できるさ。ここに来てから妙に力が漲っている感じがするんだ。だから大丈夫。今の俺は誰が相手でも負けない」

 

 そういう光輝を魔眼で見たところ確かに根源が目覚めている。周りを見回すとここにいる全員が持っていなかったはずの魔力を身に宿しているのがわかった。

 

 異世界転移という現象を前に根源が目を覚ましたのかもしれない。そしてこのメンバーの中で光輝の上昇幅が一番大きい。おそらく今光輝は身を駆け巡る魔力という力が齎す全能感で冷静な判断ができていないのだろう。

 

「そもそもこいつの言っていることが事実である証拠はどこにもない。例えば俺達は、領土拡大のための侵略戦争を仕掛けるための、使い捨ての兵隊として呼ばれた可能性もゼロじゃない。お前は一方的な侵略のための道具として戦えるのか?」

「それは……だけど、俺達を地球に送り返すことができるのは神だけなんだろ? だったら……」

「それも問題ない。なぜなら……俺が元の世界に戻るための魔法を手にするからだ。わざわざ異世界から人を呼ばねば、満足に自分の民一つ守れぬ低俗な神にできて、俺にできぬことなど何一つ存在しない」

 

 俺の堂々とした発現に誰しも言葉を失ったようだ。ただし雫や俺のファンクラブなどは普段と変わらぬ俺の態度に、冷静さを取り戻したようだが。

 

 イシュタルの顔は険しい。なぜなら俺はたった今、この世界の神を侮辱したも同然だからだ。

 

「……今の発言は無知蒙昧故の戯言だと聞き流そう。この世界ではそのような発言は不敬であり異端扱いされる。今後は十分気を付けるがよい」

 

 険しい顔をしていたイシュタルだが、流石にここで軽率な行動を取るほど愚かではないらしい。こいつの言うことが本当ならこの世界は危機に瀕している。増してエヒトとやらに呼び出された俺達を害することも難しいのだろう。子供の戯言と聞き流された可能性もある。

 

 だが何と言われても発言を撤回する気はない。

 

 いつだってどこだって。俺の歩みを遮るものは例え神だろうと蹴散らして進むだけだ。

 

 

 ***

 

 大広間での話し合いの結果。戦争参加については一先ず保留という形になった。とはいえ今すぐ元の世界に帰る方法がない以上、この世界での生き方について学ばなければならないのは確かだ。

 

 そこで俺達は事前の計画通りに神山の麓にあるハイリヒ王国の庇護の元、この世界で生きるための方法と戦闘訓練を受けることになった。

 

 愛子などは戦闘訓練に難色を示したが、戦争参加するしないに関わらずこの世界は常に命の危険がある世界なのだ。イシュタルが言うには異世界から来た人間はこの世界より高い素質に恵まれるらしいので、その才能を引き出すこと自体はやっておいた方がいいということだ。

 

 そのこと自体は俺も異論はなかった。俺一人ならこの世界であろうとどうとでもできる自信はあるが、流石に自衛も碌にできないクラスメイト全員を守りながらでは俺も自由に動き辛い。だからこそクラスメイト全員に自衛の手段は持ってもらうことに越したことはない。

 

 そう言うことで俺達は現在、ハイリヒ王国にて晩餐会に参加している。もうすでに晩餐は出そろい、俺達だけにしてくれという要望により、ここには俺達以外にはいない。盗聴は俺が見張っているから問題ない。遠慮なく内輪の話ができる。

 

「全く、あんなこと言いだすなんて、一時はどうなるかと思ったわよ」

「でもさすがアノス様だよねぇ。異世界でも完璧だよ」

「巨大宗教の教皇相手でもお前が下で俺が上という俺様理論全開がたまらない」

 

 雫は頭を抱えているが、俺のファンはいつもの感じだった。

 

「なに、あの場で断言するのは危険だと思ったからな。あの時も言ったが、俺達はこの世界のことを何も知らぬ。そんな中で戦争参加を断言すれば、後に引けなくなる可能性もあったからな」

「アノス君それって……所謂魂の契約とかギアスとかそういう……」

「流石に詳しいなハジメ。要は魔法で約束を破れないようにすることだな。そうなったら最後、俺達が嫌がっても強制的に戦争参加もあり得た」

 

 香織の隣の席に強制的に座らされたハジメと俺の言葉を聞いたクラスメイトがゾッとした顔を浮かべる。

 もし俺がイシュタルならクラスメイトに<契約(ゼクト)>を使って戦争参加を契約で破れないようにしていた。そうなったら例え相手が無辜の民だろうがそういう契約だからと戦争を仕掛けなくてはならなくなる。

 

「けど……本当に困っている可能性もあるだろ」

「それはこの世界のことを知ってから判断しても遅くはあるまい。本当に困っていたら帰る方法を探すついでに助けてやればよいだけだ」

 

 どうやら光輝はまだ納得いっていないらしい。元々光輝には思い込みが激しい悪癖があったりするが、普段だったらこの段階で冷静になれている。それができていないのはこの世界に来て目覚めた魔力の影響でハイになっているからだろう。魔力を制御する術を学んでもらうのは必須だ。

 

「だからお前達も今後戦争参加を断言する発言は慎むことだ。それと自分の部屋に俺達以外誰も入れるなよ。あのメイドはそのために用意されたのかもしれぬからな。気が付けば戦争参加が拒否できないようにされていることも十分あり得る」

 

 この世界に契約魔法があるかはわからないが用心するに越したことはない。特に魔法のまの字も知らないクラスメイト達は知らない間に騙されていたなんていう可能性もあり得る。自分のスペースに俺達以外の他人を入れないことが肝心だ。

 

「あっ、もしかしてあの王子様が私ばっかり話かけてくるのもそれなのかな。危なかった、相手が誰でも油断大敵だね」

「いや、あの香織……」

「……それは違うと思うわよ」

 

 香織の微妙にずれた発言でハジメと雫が思わずこけかけた。

 

 

 ***

 

 翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

 俺達に手渡されたのは銀色のプレート。魔眼で見てみると魔法がかけられているが、俺が見た限り根源魔法に近い。根源を探ることで魔力の値などを測る道具のようだ。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 どうやら予想通りの機能に加えて、身分証明の代わりにもなるらしい。

 

 周囲は恐る恐る針で指を指し、ステータスプレートに擦りつけている。

 

「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初にレベルがあるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

 根源を計るということはその人物を知るということでもある。自分のステータスを見る限り限界はあるようだが中々優秀な道具らしい。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

 メルドの言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないという。当然と言えば当然だ。ゲームではないのだから訓練を行わなければ才能があっても宝の持ち腐れだ。

 

 

「次に天職ってのがあるだろう? それは言うなれば才能だ。末尾にある技能と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

 今の言い方だと非戦闘職はあまり歓迎されないようだ。俺の経験から言わせれば、その非戦闘職や生産職こそ、戦時下では真に重宝されたりするのだがな。

 

「ねぇ、アノスはどうだった? 私はこうだったんだけど……」

 

 そう言って雫が俺にステータスプレートを見せてくる。

 

 ===============================

 

 八重樫雫 17歳 女 レベル:1

 

 天職:魔剣士

 

 筋力:65

 体力:76

 耐性:52

 敏捷:148

 魔力:78

 魔耐:78

 

 技能:剣術・縮地・先読・気配感知・隠業・風属性適性・言語理解

 

 ===============================

 

「ふむ、悪くはない」

 

 先程メルドはこの世界の一般人のレベル1の平均値は10そこらだと言っていた。そういう意味では雫は十分に恵まれた素質があるということ。これからの鍛え方次第で更なる力に目覚めることも十分にあり得るだろう。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

「いや~、あはは……」

 

 光輝がステータスプレートを差し出すと周りから称賛の声が上がる。どうやら相当いい数値だったらしい。俺はステータスプレートに刻まれた魔法式を解析し習得した後、魔眼にて直接光輝のステータスを覗いてみた。

 

 

 ===========================

 

 天之河光輝 17歳 男 レベル:1

 

 天職:勇者

 

 筋力:100

 体力:100

 耐性:100

 敏捷:100

 魔力:100

 魔耐:100

 

 技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

 ===========================

 

「ふむ、勇者か。実にあいつらしいではないか」

 

 光輝のステータスは全て高水準に纏まった万能型だった。敏捷だけは雫より劣っているが、それ以外は上回っている。技能の数も雫の倍以上。まだ力をコントロールできていないが鍛えればさらに強くなれるだろう。

 

 

 俺は他にも魔眼にてクラスメイトのステータスを覗いていく。大体がこの世界の平均値の数倍の力が与えられているようだが、ふとある生徒のステータスで目を止める。

 

 ===============================

 

 南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

 

 天職:錬成師

 

 筋力:10

 体力:10

 耐性:10

 敏捷:10

 魔力:10

 魔耐:10

 

 技能:錬成・言語理解

 

 ===============================

 

 一人だけステータスが低い。俺はハジメの根源を覗いてみるが、どうやら他の根源と異なり、この世界に降り立ってなお、あまり目覚めてはいないらしい。土地の魔力に根源が合わなかったのか、あるいは逆にこの世界に馴染みやすいからこそ目覚めるのが遅いのか。

 

 とはいえこの程度なら大したハンデにもならないだろう。土地の魔力に合わなかったのであればこの世界で過ごしていく内に慣れていくだろうし、後者であれば、むしろこの世界に一番適正があるのはハジメかもしれぬ。

 

 技能も一つしかないが、こういうタイプは万能型の光輝とは逆に一点特化型のスペシャリストになり得る素質がある。< 創造建築(アイリス)>の魔法を教えれば、いずれ俺を超える希代の使い手になれるかもしれない。

 

 

 だがどうやら、周囲にはハジメの価値がわからないらしい。

 

「おい、南雲。ちょっとステータス見せてみろよ。ぶはっ、なんだこいつ、雑魚すぎるだろww」

「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」

 

 ハジメのステータスプレートを見たメルドの微妙な表情から内容を察しているだろうに、わざわざ執拗に聞く檜山。それに便乗して取り巻きの三人もはやし立てる。強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ。

 

「そこまでにしておけ、小物四兄弟。いつにもまして小物臭が酷くて見るに堪えんぞ」

 

 俺が前に出ると、小物四兄弟は反発してくる。どうやらこやつらも体に巡る魔力によって気が大きくなっているらしい。

 

「誰が小物四兄弟だこらっ!」

「誰一人血なんて繋がってないわッ!」

「ふぜけんなよアノスてめこらぁ。いつもいつも俺達を一纏めにして馬鹿にしやがって」

「そういうお前のステータスはどうなんだ、あん? 自慢できるような数値なんだろうな?」

 

 ふむ、俺のステータスの開示を希望するか。周りを見て見ると他の者達も全員俺を注目していることがわかる。

 

「ああ、俺のステータスか。あいにくだが自慢できるものではない。この程度の数値しか出せないとは遺憾の限りだ」

 

 もっとも俺の場合は周りに誰もいない時にもう一度確認する必要があるが。

 

 そう言いつつ俺は皆の希望通り、ステータスを開示した。

 

 

 ===============================

 

 アノス・ヴォルディゴード 17歳 男 レベル:1

 

 天職:魔王

 

 筋力:1000

 体力:1000

 耐性:1000

 敏捷:1000

 魔力:1000

 魔耐:1000

 

 技能:全属性適性・全魔法適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・魔法解析・術式改竄・魔法生成・魔力操作・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・即死無効・状態異常無効・瞬光・格闘術・剣術・豪腕・豪脚・縮地・無拍子・先読・威圧・魔眼・魔言・言語理解

 

 ===============================

 

「アノス、あんた一体どれだけ技能があるのよッ! それに全ステータス四桁って……あんたは魔王か!」

「何を言っている、雫。しっかり天職に魔王と記載されているであろう」

「わー、ほんとだー。天職魔王とか、子供の頃から魔王役ばっかりやってきたアノスにお似合いじゃない。それになんで王城アノスじゃなくてアノス・ヴォルディゴードなのよ。ヴォルディゴードってアノスが魔王ごっこする際の厨二ネームでしょ?」

「くはは、この世界ではこちらの方が合っているということではないか」

「まあ、いいわ。あんただし、いつも通り何でもありよ」

 

 光輝を超えるステータスに周りが唖然とするが本当に大したことがない。やはりステータスプレートは根源の表層を読み取るにすぎず、限界があることが伺い知れる。俺のできることを全て記載したらステータスプレートに書ききれないだろうからな。

 

「魔王……それに魔力操作……いや、しかし。アノスは神の使徒だし問題はないのか?」

 

 一方メルドはハジメの時とは違う意味で悩んでいるようだった。

 

「先に言っておくが、魔王だからといって魔人族など知らぬぞ」

「あ、ああ。だが、あまりステータスを見せびらかさないようにしてくれ」

 

 メルドの思考を先読みして言っておく。まだ魔人族のことなどわからぬのに、勝手に向こうのボスと勘違いされても困る。

 悩んだメルドはどうやら内々で留めることにしたらしい。一見俺のステータスは魅力的に見えるからな。是が非でも戦ってほしいこの世界の住人にとって手放し辛いのであろう。

 

 ***

 

 その日の夜。俺は一人訓練場に来ていた。

 

 周囲に秘匿用の結界を張った後、押さえていた魔力を少しずつ解放していく。

 

 そして、現在安全に使える魔力上限に達した後、ステータスを見る。

 

 ===============================

 

 アノス・ヴォルディゴード 17歳 男 レベル:1

 

 天職:魔王

 

 筋力:10000

 体力:10000

 耐性:10000

 敏捷:10000

 魔力:10000

 魔耐:10000

 

 技能:全属性適性・全魔法適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・魔法解析・術式改竄・魔法生成・魔力操作・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・即死無効・状態異常無効・瞬光・格闘術・剣術・豪腕・豪脚・縮地・無拍子・先読・威圧・魔眼・魔言・言語理解

 

 ===============================

 

「やはり……ここでも力は出せぬか」

 

 俺が地球に転生して、一つ問題となっていることがあった。

 

 本来<転生(シリカ)>とは自身の血に連なる者を媒体として転生する。だからこそ俺は元の世界で七人の眷属を生み出し後の世に己の血を残したのだが、異世界では意味がない。だからこそ<転生(シリカ)>で想定外の転生をした影響か、以前ほどの力を出せないのだ。

 

 

 地球ではほとんど戦う必要がなかったため気にする必要はなかったのだが、この世界ではそうはいかない。この世界で地球より濃い魔力に触れることで滅びの根源が目を覚ますことを期待したのだがそう上手くは行かないらしい。

 

「やはりクラスメイト達にも、自衛の手段を持ってもらわねばならぬな」

 

 今の力でもこの世界で一人生きていくだけならおそらく問題ない。だが戦う力のない者を守りながらでは思わぬ不覚を取ることもあるかもしれない。

 

 そうならないためにも、俺は仲間の修練に手を出すことを決めた。




>お前が下で俺が上
もうひとつの作品だといくらイシュタル教皇が怪しくてもこの世界のことを何も知らないので不興を買うわけにはいかないというスタンスでしたが、アノスくらい万能なら関係ありません。むしろ契約(ゼクト)のような魔法を警戒してクラスメイト含めて戦争参加の言質を取らせませんでした。

>アノスの天職
当然魔王。これ以上に相応しい天職が他にあるとでも?

>雫の天職
魔剣士。抑えようとも膨大な魔力を纏っていたアノスの近くに幼少の頃からいたため変化。ありふれのアニメサイトにて判明した剣士の上位職であり一応公式に存在する天職。通常の剣士に高い魔法の素質が加わった天職であり、攻撃特化の魔剣士に対して防御特化の聖騎士(メルドの天職)らしい。

>小物四兄弟
作者的にはアイシールド21のハァハァ三兄弟みたいな扱い。つまりアノスから名前で呼ばれる(認められる)かは彼らの今後の頑張り次第。

>アノスのステータスプレート
「うわ、なんやこいつ。技能どんだけあるねん。こんなん全部書ききれんわ。わいには理解できん技能もてんこ盛りやし、わかりやすいところだけ記載したろ。そんでレベルは……うわぁ、潜在能力の底が見えへん。ひくわー。ん? けどこいつ潜在能力のわりには全然力出せとらへんやんけ? よっしゃ、とりあえず今がレベル1ということにしたろ。あとはしらん」

次回は楽しい楽しい、大魔王教練_入門編

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