最初にいた場所から飛行でヴェルと精霊の2人とラズリーの城壁がぼやけて見える位置のほとりまで到達して、地面に着地してから魔法を解く。
続くように精霊も大地に着地してため息をついていた。
大都市の近くまで来ると、ここから目的地の面影が見えている。
城壁の高さで内部からの高層部分は見えてないが、拠点としていたペリトよりは遥かに大きさが違うのがわかった。
「本当にラズリーに行くの?大魔法使い」
「目的あるし、情報収集には大きいところがいいでしょ?あと、ノルンでいいよ」
怪訝そうに見つめて問いてきた精霊の隣で返事する。
最悪、何かあれば魔法で吹き飛ばしたり飛行して逃げたりも出来るから問題ない。
強気でそう伝えると再びため息をつかれてしまった。
「まぁノルンがそう言うならいいけど、でも最近あそこから不穏な空気とか感じるのよね」
「何かヤバイものいるとか」
「そこまではわからないわよ」
湖と都市の距離はちょっと離れてるから内部までは分からないみたいだ。
だけど、ラズリーには何か起こってるということは顔をしかめて何かを考えている精霊の姿を見て分かった。
これはちょっとだけ骨が折れそうな雰囲気だな。
「……ねぇ、ノルン」
「何?」
ふと、精霊に呼びかけられた。
振り向いた先の精霊は何か企んでそうな顔を見せ少しだけニヤついて、ヴェルを奪取した。
「えっ」
「えぇ!?」
「ちょーーっと、手伝って欲しいことあるんだけど。いい?」
人質に取られてしまったヴェルは唐突な出来事に驚いて目を丸くしている。
おい、俺の仲間に何をするつもりだ。
にんまりと言い終わった精霊の顔に向かって風魔法の弾を投げつけーー
「あああああ!待って真顔で魔法撃たないで怖い怖い!!私の住処がその空気でやられて大変なことになってるから直して欲しいだけなんです!だから撃たないでぇ!」
ようとして、犯人が一瞬で顔を青ざめて冷や汗流しながら早口で白状したところで身体が止まった。
全く、人騒がせな。
「ラズリーからの刺客かと思ったじゃんか」
「死ぬかと思った……」
やる方が悪い。
そう告げると精霊の腕から解放されていたヴェルも同調してくれた。
悪戯好きなんだろうか、この精霊は。
「で?住処って何処よ」
「案内するわ」
踵を返し、湖沿いを伝いながら小道から少しだけ開けた場所へ着いた。
それから更に歩き、林の間を通って小さな洞穴を見つける。
その奥から少しだけ見えている祀り物というのが見え始める。
神棚のようなものだろうか、小石を積んだ山が3つでその中心に何かの石像が置かれている。
石像の形には三角帽子とマントのような大きいローブを着用したしっかりとした魔法使いの姿のようだった。
一見、なんともなさそうに見える石像だが、脚部辺りから黒ずみが侵食されている跡を見つけた。
「ノルン様、これが祀り物です。ここで精霊さんは住処として生きているみたいですね」
「なるほどね」
洞穴全体が精霊の家としてなっているようだ。
後ろを向くと林で視界が少しだけ遮られているが、湖の中央が見える位置にある。
精霊は、黒ずみがある石像を見ながら眉をひそめた。
「この石像が黒くなると、私がこの場所に留まれなくなって消えてしまうわ」
「そうなると、湖はどうなるの?」
「濁み始めて、魔物達の巣窟になる。大型の魔物とかも現れ始めて大変なことになるわね」
「そんな……!」
ヴェルがそれを聞いて絶望していた。
もう一度、湖の方を振り向く。
あれだけ綺麗な場所で澄んでいるのに一瞬にして汚れた沼のような景色に変貌するということらしい。
そして、魔物がラズリーへ侵攻して戦争になることも想像した。
そうなると必然的に奴隷達が使われるのだろう。
「だからお願い、人助けならぬ精霊助けと思って!」
「ノルン様、やりましょ?ね?」
ヴェルもその話を聞いて同情を誘い始めている。
悲しそう目で見られたら否定できないじゃんか。
仕方ない、ヴェルの為ということにして割り切ることにした。
「わかった。それで、その石像を綺麗にするにはどうしたらいいの?」
ヴェルがラズリーでちゃんと解放された後で住む時に魔物が近場にいられても困るだけだ。
精霊は顔を明るくさせ、その方法を伝授される。
その前に疑問を投げかけられた。
「えっと、ノルンは水魔法を覚えてる?」
「覚えてないと思う」
「条件に水魔法を覚えておかないといけないのよね。ってなわけで、はい」
目の前の精霊は、右手を指し伸ばしてきた。
何かをするんだろうか、それにつられるように右手でそれを掴む。
すると、俺の周りが光が少しだけ強み始め、同時に頭の中に水魔法の一覧がリストとなって記憶され始めた。
「水の精霊デナ、大魔法使いのノルンに従い、契約することをここに誓います」
「すごい……これが契約なんですね」
ヴェルが憧れの目でこっちを見てきた。
その後もデナと呼ばれた精霊の呪文のようなものが少しあったが、やがてそれも終わり周りに出ていた光も力をなくしつつあった。
手を解き、早速水魔法を実践してみることにする。
両手を空気を包み込むような形で前に出し魔力を使って念じる。
少しだけ集中し魔力を外に出したことを確認すると、両手の内側に水の球体が完成されていた。
「これが水魔法ね」
「契約完了したわ!さて、次はその水魔法を使って石像に魔力を送って欲しいの」
石像に指を差して頼みごとをしてきたので、それに従うがままに水の球体を石像にぶつける。
すると石像はそれに反応して発光し始め黒ずみを少しずつ溶かしていった。
光がなくなったころには石像は真の姿を現し、綺麗な傷一つない別物となっていた。
これが本来の姿なのだろうか。
「ありがとう。これで私もここに居続けられるわ」
「流石ノルン様です」
頭を下げられて感謝される。
ちょっとだけむずがゆく感じ頬を掻いた。
*
日が昇り、真上から少しずれた場所で太陽が止まってる頃。
さっきの立ち話してたところまで戻り、デナは改めてお礼を言ってくる。
それを受け止めながらラズリーへ向かう出発を告げ別れようとした。
「あ、待ってノルン」
呼び止められたのでその場所に止まり、向かってくるデナを待つ。
駆け寄ったデナを見ていたヴェルの所まで来ると、何やら呪文を呟いた。
すると、ヴェルの身体に残っている傷が腕や脚から垣間見えていた場所から消え始めた。
「回復魔法よ。これで傷跡もなくなってるわ」
最初の場所に戻る時、デナが道中でヴェルの身体の傷跡を気になっていたので本人に了承を貰い、事情を話した。
ノルンって鬼畜よね、とか冗談めいたことも言われたが終始ちゃんと聞いてくれて理解してくれた。
誰が、鬼畜奴隷魔法使いだっての。
そこからなのだろうか、回復魔法を使って傷を治してくれた。
ヴェルも腕の傷がないことに驚き、デナに何度もありがとうと言っていた。
「いってらっしゃい、ノルン、ヴェルちゃん」
手を振って見送ってくるデナを背に俺とヴェルは本来の目的地である大都市ラズリーへ出発した。
◆
豪邸内の執務室。
私は、目の前で退屈そうにしている大男を睨みつけていた。
そして両側で甲冑の憲兵が私を逃がさないように拘束している。
「くっ……!離せ!離せと言っている!」
「少しは落ち着いて欲しいものだが」
「敵地で落ち着くようなことがあってたまるか!」
殺意と怒りを込めた目で睨みつつも、鼻で笑われてしまう。
そして両側の憲兵に視線を送ると私の身体に数発殴りをいれた。
「かはっっ……!」
「もう5日目だというのに、未だにお前ら魔物達の拠点を言わないとは、強情な女だ」
男は冷えた目で睨みつけ、床に顔を伏せている私の髪を掴み無理やり頭を上げさせた。
「お前らの誇りとでも言うのか?なぁ?」
ニタっといやらしく笑ったその表情は目が座っている。
そしてその口から私の名前を汚すように零してきた。
「エルフを治める族長の娘
次回。ラズリー事変が始まります。
2章長くね?