少女(♂)の過ごす異世界冒険記   作:未来琴音

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大都市ラズリー

 城壁の前で憲兵達が通行証の確認をしている最中、行列となっている大都市入口付近で俺とヴェルは並んで待っていた。

 そういや、ヴェルはラズリーから逃げた身だから指名手配で顔が割れてもおかしくはない。

 そう思い、隣で緊張している銀髪の子の頭を覆うように三角帽子を被せた。

 大きめのローブで身体も隠し通せてるところから、この子は俺の仲間で冒険者の一人でもあるように見えるだろう。

 

 

 「ヴェル、ラズリー内は私の仲間で見習い魔法使いって体で行くよ。どこかで指名手配とかされてるかもしれないから一応ね」

 「わかりました、ノルン様!」

 

 

 様は付けなくてもいいんだが。

 この子は見習いで俺は大魔法使いだから問題はないか。

 行列が動き出してから時間が少し経つと、ようやく俺達の通行を確認する番となった。

 頭部以外の甲冑を装備している憲兵の一人が必要な物を提示するように指示してくる。

 俺とヴェルはそれに従ってカードを見せ通行許可を貰った。

 ちなみに、ヴェルのカードは水魔法で少しだけカードの文字を霧で上手くごまかして『レブラ・ミストセレー』という名前に変えている。

 城壁を超え一歩ラズリーに踏みいれると、そこはペリトとは違う景色が広がっていた。

  

 

 「……すごい。ここが大都市」

 

 

 あまりの衝撃に思わず呟いてしまった。

 商業や住宅も先進国並みに文化が広がっており、人混みもそれに合わせて賑わいを見せている。

 ただただすごい、それだけしか言葉が無かった。

 

 

 「っと、感動してる場合じゃなかった。宿を探さないと」

 

 

 ここにある都市の物に興味はあるが、本来の目的を忘れないためにも今日の宿を見つけなければ。

 歩きを進めてすぐに大通りへとぶつかり、そこから宿のマークが記された看板を探す。

 ヴェルと手を繋ぎながらも他の物への関心を惹かれつつようやく見つけた宿は木造の形のいい場所だった。

 看板を掲げている扉に入り、すぐ手前にある窓口に進む。

 すると、左側の扉から宿の店主さんが顔を出してきた。

 何やら少しだけ若く見える感じがするのは気のせいだろうか?

 

 

 「いらっしゃいませ、お泊りですか?」

 「暫く滞在するので長期間の泊まりになるんですが、大丈夫ですかね?」

 「大丈夫ですよー!」

 

 

 元気そうで笑顔を絶やさない可愛い子だった。

 

 

 「そうなりますと、前払いで金貨25枚になります」

 「一人25枚?」

 「はい、一人25枚です」

 

 

 そして悪魔の微笑みでもあったようだ。 

 先進国になるにつれて物価や定価も上がるんだろうなというのはこの異世界でも変わらないんだな、と痛感しながらも金貨50枚を支払い部屋に案内された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 2人部屋で間取りも広く、ベッドもちゃんと2人分用意されている完璧な寝室。

 窓際の場所を取りながら、ヴェルと俺はベッドで柔らかさを感じながらこれからのことを話す。

 

 

 「1か月くらいでの滞在はここで出来そうだね」

 「そうですね。それで、ここからどうしますか?」

 

 

 顎に手を添えながら考える。

 ヴェルの奴隷の解放とリカンをぶっ飛ばすことを目的として来てるが、その辺の情報を手に入れなくてはならない。

 だが、ここは一応敵地でもある為、変に行動して目をつけられてしまえば情報を手に入れるのは難しいだろう。

 そういえば、ヴェルからラズリーには騎士養成学校があるというのを聞いたことがある。

 リカンはその理事長を務めているから、もしかするとその学校で手に入るかもしれない。

 

 

 「学校に潜入して生徒達から聞いてみる?」

 

 

 理事長であるならほぼ毎日は学校で執務等をしているはず。

 だから生徒達とかの話で何か重要なものが聞けるかもしれない。

 ヴェルはその案に賛成だった。

 そうと決まれば早速行動しよう。

 

 荷物をベッドの横に置き、ヴェルを連れて部屋を出る。

 フローリングの床を歩いて階段を降り、宿から外に出た。

 後ろからお気をつけてと見送りをされたのはついでだ。

 

 

 「何処から探そうかな」

 「あそこからはどうでしょうか?」

 

 

 大通りの枝分かれした道の一番右側を少女は指差して案内する。

 地図も何もないからあてずっぽうで行くしかない、その後についてくように歩いた。

 そこから住宅街へ道は出ており、人混みはさっきよりだいぶ少なくなっている。

 

 

 「ここは外れかなぁ」

 「そうみたいですね……」

 

 

 しょんぼりとして帽子を深く被ったヴェルを宥めながら元来た道へ踵を返す。

 

 

 「お役に立てなくてごめんなさい」 

 「大丈夫。ここは広いからマッピング出来ると思えばだいぶ楽だよ」

 「まっぴ、んぐ?」

 

 

 こっちの話。と疑問多そうな顔をする少女に返した。

 大通りへの枝分かれの根元が目の前まで見えてきた時、ふと視線と気配を感じた。

 俺の服とか変で目をつけられたのだろうか、すかさず自分の服装を確認するが何ら変わりなかった。

 

 

 「君達、この都市に来るのは初めてかい?」

 

 

 後ろから声を掛けられたので振り向くと、西洋被れのような長身の男性がそこにいた。

 いつの間にそこにいたんだろう。

 

 

 「ええまぁ、今日来たばかりなので道がわからなくて」 

 「それは大変だ!僕がこれから案内してあげるよ」

 

 

 馴れ馴れしい態度とって俺の手を掴み、引っ張られていく。

 だが、その場で踏ん張りを効かせながら身体を引き止めた。

 何かあやしい、ジト目で男を睨むと目が泳ぎ始める。

 

 

 「若い君達に、ななな何もしないから大丈夫さ」

 「あーやーしーいー……」

 

 

 言葉が不安定で冷や汗も流れているようだ。

 更にずっと睨みつけていると、観念したのかその男は俺の手を離して頭を下げた。

 

 

 「ゆ、許してくれ!君が可愛かったので惹かれてしまったんだ!」

 「へぇ」

 「……へ、へー」

 

 

 こら、ヴェル。

 変に漏れた言葉を真似して威嚇しなくていいから。

 

 

 「可愛いって言っておきながら行動は随分と大胆だったねぇ。何か後ろめたいことあったのかな?」 

 「えっと、それはその」

 「もういいぞ、ダル。後は俺達がやる」

 

 

 物陰や住宅の壁の向こう側から柄の悪い男達が数人、姿を現した。

 そういうことか、ダルと呼ばれた男性を使って俺達のような冒険者や観光客から金品盗る算段だったのか。

 

 

 「随分と強気だねぇ、お嬢ちゃん。だが、一度目を付けた俺達から逃れるとは思わないことだな」

 「下らないことしてないで働いたら?」

 「んだとテメェ?!」

 

 

 その言葉で導火線がついたのか、数人の男は言葉を荒げ問答無用で襲い掛かってくる。

 まぁ正面で考えなしに向かってくるのは知ってたから風魔法で吹き飛ばしてやろう。

 

 

 「ほーら、吹き飛べー」

 「うわぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 両手で指示をして足元から、浮かしてそのまま空の星として飾りをつけたとさ。

 隣で男性が子供のように怯えていたので次はこうだぞ、と見せつける様に空をに指を差すと一目散に逃げていった。

 

 

 「はぁ……全く」

 「ノルン様、たまにえげつないですね」

 「水魔法で窒息させようと思えば出来るんだけど」 

 「思考も容赦ないですね」

 

 

 冷や汗を流して小さくツッコミを入れられつつ、止まっている足を進めて再び目的の学校へ目指した。

 




次回の話は長くなるため少しだけお休み致します。
3編に分かれているので出来次第しっかりと載せます(`・ω・´)ゞ
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