少女(♂)の過ごす異世界冒険記   作:未来琴音

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今回は少し長めです。



騎士養成学校の裏 後

 *

 

 

 鉄柵に必死に掴んで助けを求めているエルフを牢屋から出す策を練る。

 助けてくれと言われて勢いで頷いたのはいいものの、俺の魔法で鉄を裂けるくらいの力があればいいのだが。

 一応を手を前にして風魔法を生み出し、それを圧縮させるように手中に収める。

 

 

 「今からこの柵を吹き飛ばすから、ちょっと離れてて」

 「ああ、わかった」

 

 

 忠告を受けたエルフはそそくさに柵から離れる。

 その後すぐに圧縮した風魔法を両手で二つに分けて、真横に切るように手刀で一閃した。

 鉄柵はその風の刃に成す術なしに真っ二つに折れ、目の前で騒音を掻き鳴らしながら崩れ落ちていった。

 魔法で折った場所から一人すり抜けられるぐらいの隙間が出来る。

 

 

 「これで通れる?」

 「ああ、助かったぜ」

 

 

 アナはその間からすり抜けるように脱出する。

 その後、エルフの身体全体の怪我が割と酷かったので、水魔法でデナが使っていた回復魔法を思い出すように使いながら手当をする。

 蚯蚓腫れや切り傷、擦り傷などがすべて消え、肌も生気に満ち溢れていた。

 

 

 「これでよし、と」

 「詠唱無しで魔法も使えるとか、大魔法使いかよ」

 

 

 一応、大魔法使いであると説明はする。

 アナはジト目で怪しむように聞いていたようだ。

 とりあえず、魔道具も何一つ持ってないことを証明するように両手を上げて確認してもらった。

 確認後に納得いってもらえたのか、エルフの口から安堵の息が零れていた。

 

 

 「そういや、なんで私の名を知ってるんだ?」

 「アナちゃんの父親に会ってさ、探すという約束ついでに教えて貰ったんだ」

 「そうだったのか。じゃあお前はアイツ等の仲間じゃねぇんだな」

 「アイツ等?」

 

 

 リカンの事だろうか。

 しかし、彼女は複数呼びであいつ等と言った。

 リカン以外にも他の人がいるってことなのだろうか?

 

 

 「ああ。大男の他に数人グルでエルフ族の村を襲った連中がいる。そいつらもアイツの元で雇われた傭兵とかなんとからしいぞ」

 「エルフの村を襲ったの?」

 

 

 アナは頷いた。

 そして、リカンの本当の目的を苛立ちを抑えながらも語ってくれた。

 

 

 「そうだ。アイツ等は領地の拡大を狙って私達の村を明け渡せと言ってきてな、父がそれを断ったら私を人質に取り力で捻じ伏せて成立するまで奴隷にする予定だったんだ」

 「ラズリーの領地の拡大……」

 「私のところじゃねぇ、他でもその拡大のためにどんな手段を用いてもいい連中のようだぞ。湖で暮らしてた精霊が悲鳴上げてたくらいにだ」

 

 

 デナは大都市の名前を口にした途端にあんなに憤りを感じてたのか。

 リカンの目的は人身売買で奴隷を買って楽しむ変態の他に黒い手段で領地を広げようとしている。

 じゃあ、身寄りのない人間を奴隷として買ってる半分の目的ってまさか。

 

 

 「他国を脅迫する為の道具?」

 

 

 考えすぎかもしれない。

 だが、これならヴェルが買われて仲間が憲兵に殺されてトーガさんが言っていたこれで救われるという遺言の辻褄が合った。

 なら、尚のことエルフを助けて逃がさないといけない。

 

 

 「アナちゃん、上の階に私の仲間がいるからその子達と一緒に逃げよう」

 「助けてくれた礼もあるし、お前は信用できそうだからその言葉に乗るよ」

 「お前、じゃなくてノルン。私の名前」

 「っと、ノルン。逃げる案には賛成だが、その前に助けて欲しいのがいる」

 

 

 どういうことだろうか?

 疑問を投げかけようとした時にその答えは視野に飛び込んだソレを見てすぐに答えが出た。

 アナが入っていた牢の右側に不自然に積まれた煉瓦の壁、それに思いっきり突進をして崩した先に道が続いている。

 そして、その先の景色には幾つもの鉄柵が並んでおり、悲鳴と助けを求める声が急に聞こえてきた。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「ノルン様ー!何処にいますかー!」

 「ノルンさん!いたら返事をお願いします!」

 

 

 さっきまで同じ執務室にいたはずのノルン様がいなくなっていた。

 嫌な胸騒ぎと不安が同時に襲い掛かって来て、レストと共に探した。

 この部屋内で一緒にいて気配もなく居なくなったので、何処かへ出て行ったのかもしれない。

 

 

 「他の部屋に行ったかもしれない。探してみよう」

 「そうですね。他の部屋で手がかり探してるのかもしれません」

 

 

 レストがこの部屋にいないと確認し終わった後に執務室の扉に手をかけて次の案を言ってきた時だった。

 その扉が勝手に開いて、見覚えのある姿と鎧が視界に入り込んできた。

 

 

 「学校内で不審な行動を取っていると案内から聞いたものだが……?」

 「憲兵?何故ここに?」

 「……あ」

 

 

 立ち竦んでその場で動けなくなり全身に悪寒が過る。

 あの鎧と見た事のある武器。

 冷酷で感情があまりない言葉。

 あの時のあの子が死んでしまった前にいたあの憲兵がそこにいた。

 

 

 「……ヴェルさん?」

 「い、いや……なんでここに」

 「ヴェル?……ああ、あの理事長のお気に入りか。そして、主人に逆らって逃げた犯罪者」

 

 

 ニタリと悪事を抱えた笑顔で睨みつけてきた。

 脳内で逃げろと殴りつけてくるように警告してくる。

 だけど、足が震えで動けなくなってへたり込んだ。

 

 

 「ここの生徒さんでいいんだっけ?ちょっとどいてくれないですかねぇ。あそこにいる犯罪者を捕まえるのが我ら憲兵の仕事なんでね」

 「ちょっと待ってください。理事長からの許可は得ているんですか」

 「そりゃもう、顔パスよ」

 

 

 心臓の鼓動がうるさいくらいに早く鳴り出して身体が早く逃げろと信号を送られている。

 声も出ず、過呼吸になり始めたけどレストが口論してる間に背を向いて逃げようとした。

 

 

 「おかしい。貴方達のような憲兵は見た事ないんですが」

 「はぁ?」

 

 

 レストの言葉が扇動的になったのか、手に持っていた三叉の槍の刃先をレストの首元に突き付けた。

 

 

 「アイツを庇うってならお前も犯罪者として捕まえるぞ」

 「僕は事実を言ったまでですよ」

 

 

 このままだと、レストが殺されてしまう。

 でも、私も逃げないと助けてくれたノルン様ともう一緒にいられなくなってしまう。

 

 ーーーーーノルン様なら、なんて言うんだろうな。

 

 

 「……わ、私が目的なんでしょ!!だったら早く連れて行ってよ!」

 

 

 憲兵がゆっくりとこちらを振り向いて、また悪そうな笑みを浮かべた。

 そうだ、ノルン様は逃げずに立ち向かってた。

 恐怖と震えが尋常じゃなく鼓動も酷くあるけど、それでも目の前でもう人を死ぬのを見たくないならきっとこうするはず。

 

 

 「いい子だねぇ犯罪者。なら、これから牢へ連れていくことにするぞ」

 

   

 槍が下がり、そのまま大股で私の前まで近づき、手を取った。

 多分、私はあの男の前で処刑されるのは目に見えている。

 短い間だけど、ノルン様と一緒にいれて楽しかった。

 

 

 「レストさん。ノルン様に伝えておいてください。今までありがとうございました、と」

 

 

 最後の表情は笑顔でいよう、涙を流してレストにそう伝え引っ張られるようについていく。

 そして憲兵が扉のドアノブに手をかけた瞬間だった。

 

 

 「穿て!風の刃!」

 

 

 後ろから吹き荒れる突風、その突風は両側にいた憲兵を扉に叩きつけた。

 予想外の事で驚いた。

 吹いた先を振り向くと、レストが片手剣を引き抜いて攻撃した後だった。

 

 

 「やれやれ、本当は潜入中に問題を起こしたくはなかったんですが」

 「え?あ、あの」

 「お、お前!公務妨害だぞ!国を敵に回したぞ!」

 

 

 立ち上がり、槍を構えて戦闘態勢に取った憲兵達が叫んだ。

 呆然と見ていると、レストがこっちに来るようにと指示をしていたのですかさず従った。

 途中、憲兵の手が捕まえようとしていたけどその手は少し開いている扉の隙間から出た女性の手で捕まった。

 

 

 「正体を出さない約束だったんじゃないの?面倒事はごめんよ?」

 「すまない、サリ。仲間を見捨てる訳にもいかなかったので」

 

 

 そして堂々とその姿を現したサリと呼ばれた女性の顔をよく見る。

 あの時の案内所にいたガイドの人だった。

 

 

 「貴様等、国の反逆罪としてここにいる全員犯罪者と見なす!」

 「それは貴方達ですよ、偽物の憲兵」

 「そうね。雇われの傭兵がこの紋章を持った武器を持っているはずがないから」

 

 

 サリは憤慨している二人の憲兵に鋭利で切れ味抜群であろう短剣を見せた。

 その柄の部分に刻まれているのはラズリーの国の紋章。

 憤慨していた二人はやがて恐怖に満ちた声を絞るように出した。

 

 

 「……ま、まさか、王女護衛率いる本物の精鋭部隊!?」

 「護衛隊の他にも憲兵達を纏めて率いているあの人がすべての司令よ」

 「レスト・エメル・フェルディリア。フィア王女様を守り、この都市の秩序を統べる司令塔。それが僕です」

 

 

 偽の憲兵から、兜の隙間から空気の漏れたような怯えた悲鳴が上がっていた。

 そして、この後すぐに部屋の奥側から人が現れたのはサリが偽物を捉えて部屋から出た後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 「これで10人目、と」

 

 

 牢屋の鉄柵を魔法で次々と壊し、アナと捕虜となっている人達を助けに回りながら蝋燭の火だけが頼りの坑道を進む。

 学校の下では長く広い牢屋と道があるとは思わなかった。

 一体どこまで続いているのだろう、それにこの先に出口はあるのか?

 アナが言うには、ここは何処か別の道と繋がっているようで、俺達が突き破った壁がある学校の地下は、そこから緊急用の出口としての経路の為と牢屋内で小耳に挟んだらしい。

 

 

 「それで、この先って何処に繋がってるんだろう?」

 「さぁな」

 

 

 アナが肩を竦める。

 その光景を尻目に、周りを見渡す。

 薄暗く見えづらいが、助ける人もこれで全部のようだ。

 さて、後ろに集団となっている助けた人達をどうするか。

 

 

 「とりあえず、来た道を戻って上にいる私の仲間と合流してから脱出しよう」

 

 

 解決策を皆に伝え、踵を返して突き破った壁の元へ戻る。

 そこから、足を滑らせて落ちるように降りてきた階段の元まで案内した。

 アナを先頭で俺が一番後ろになり、その間に助けた人達を挟みながら階段を上がる。

 塞がっている出口の隙間から光が漏れ始めているのを見かけると、皆にそこが出口と伝えた。

 

 

 「回転式の扉っぽいから、下からくぐるように出れるよ」

 

 

 最後尾にいるので、少し大きめに伝令するとアナが着き、先に扉の下側を押し込んで開ける。

 2番目の子から順に外へ出し俺の前の子まで外に出ることが出来た。

 後はアナだけ、そう言おうとした時。

 地下から、大きな足音を立てながら上がってくる音が聞こえてきた。

 この場所を知って、この階段を余裕で上がってくる人物は一人しかいない。

 そして、その正体は俺の視界でまっすぐに捉えることが出来た。

 怒りに満ちた顔で見上げて睨みつけ、今にも食いついてきそうな態勢を取っている大男。

 

 

 「リカン・フェイアス……!」

 




次回、ノルンがまともな戦闘へ。
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