少女(♂)の過ごす異世界冒険記   作:未来琴音

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道中に一難は付きもの

 街の出口の草道で、ヴェルにラズリーまでの道順について尋ねると淡々と答えてくれた。

 ラズリーまでの道のりは少し険しいらしく、ペリトの近くから名づけられたペリト草原超え、暗い森を抜けて湖を超える。

 そこまでの距離でかかるのは2日ほどらしい。

 

 

 「途中で野宿とかしてゆっくり行こう」

 「そうですね。歩くとなるとかなり体力要りますから」

 

 

 歩きながらヴェルと先の事を話した。

 ちなみに、ヴェルの服装は、俺が買ってプレゼントした藍色のローブとコリュさんがくれたプレゼントの中身の空色のシャツ、下はスカートではなく布製の青いズボンを履いていた。

 スカートじゃないのには理由があり、ヴェルの顔以外に傷跡が少し目立つところに存在しているのでそれを隠すように服装を選んだ。

 これならあまり目立つこともなく、見た目からした冒険者の仲間の一人と言っても大丈夫そうだ。

 

 草原を抜ける途中、休息がてらに少しだけ魔法の練習もした。

 ヴェルに荷物を任せ、広大な草原の中央辺りで目を閉じ体の奥から湧き出すものを再び引き出すように感じ取る。

 

 

 「今だ!吹き飛べ!」

 

 

 引き出したそれを表に出すように手を前に出した。

 と同時に、突風が訪れ奥に行くように吹き荒れた。

 

 

 「魔力を使って風魔法を生み出したんですね!流石ですっ」

 

 

 後ろで称賛の言葉をヴェルが挙げていた。

 さっきのが風魔法なのか、そして湧き出るこれが魔力というものらしい。

 

 

 「……なるほど」

 

  

 その後は魔力を自在に操れるように練習をした。

 数回風魔法を放った後にコツは掴み、威力の抑制をつけれるようにもなった。

 そこから更に何回かすると、身体に疲労感が急に襲い掛かってぱたんと倒れた。

 

 

 「ノルン様ーー!?」

 

 

 無尽蔵に生み出すとは言え、魔力の生成が追い付かないまま魔力のガス欠を起こすと身体に負担がかかる。

 これも勉強できた証として身に覚えておこう。

 心配そうに顔をのぞかせるヴェルを見ながら瞼が重くなり、そのまま眠りについた。

 

 意識が再び覚醒した頃に瞼を開き、草原で寝込んでいた身体を起こして近くで荷物番をしていた仲間を呼び、再び歩き始める。

 日が少しだけ傾き始めていたので、歩を早めた。

 というか、魔法が使えるのならば空を飛ぶことが出来るのでは?

 

  

 「ヴェル。空を飛んで森を抜けよう」

 「ほえ?」

 

 

 キョトンとしたヴェルをよそに、すかさず魔力を使って試してみる。

 魔力をヴェルと俺の身体全体にまとわせ、浮力を作り出す。

 重力に逆らうように少しずつ地面から足を離していき、不安定ながらも距離を開けていった。

 

 

 「わ、わ。飛んでる、飛んでます!」

 

 

 隣で空まで浮かんでいることに驚いたヴェルの手を取り、魔力の調整をする。

 落ち着いてきた頃には地上から数十メートル離れた距離まで開けていた。

 これなら2日程ではなくもっと早く着きそうだ。

 

 

 「大丈夫?」

 「へ、平気ですっ。ちょっとだけびっくりしました」

 

 

 流石大魔法使い様です。

 と嬉しそうに頬を緩ませて言ったヴェルの手を引っ張り、そのままラズリーの途中にある大森林の上を抜けるように飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 ラズリーの道中の大森林は、空から見下ろしても広大で迷いやすく、緑豊かな木が沢山生い茂っている。

 時々、夜になると狂暴な魔物とか徘徊したり、狼の遠吠えなどが聴こえるのだとか。

 その大森林の上を飛行しながら数時間経過、空が暗く星が輝き始めていた頃は未だにその終着点が見えてない。

 どれだけ広いんだこの森は。

 

 

 「うーん。湖が見えないなぁ」

 「もう少しで森の先が見えてくるはずなんですけど」

 

 

 隣の少女は少しだけ表情を曇らせる。

 道なりは合っているはずなのに、出口のようなものが何一つ見えてこない。

 これな何かおかしい気がする。

 飛行を止め、空から森林の周りを見渡した。

 その瞬間、真下からキラリと光った物が俺に向かって飛んできた。

 

 

 「うわっ!」

 

 

 咄嗟の出来事に回避は出来なかったが、反射神経をフル稼働させてなんとか身体を捻り命中を避ける。

 左足にかすり傷が出来てしまったが、逃げられない程という訳ではない。

 だが、魔力の途切れを感じ2人のまとっていた魔力が切れて、そのまま重力に引っ張られるように地面に落ちていった。

 

 

 「ヴェル!体をこっちに!」

 「はいっ!」

 

 

 ヴェルの身体を寄せて、地面に向かって風魔法を放つ。

 落下するスピードと相殺しながらゆっくりと降下して森の地面に着地した。

 

 

 「なんとかなった、危なかった」

 「……危うく死ぬところでしたね」

 

 

 魔法を使っていなければこのまま2人で地面に衝突して即死だった。

 息を整え、お互いの安否を確認する。

 それをするの束の間、先程飛んできた物が同じように狙うように飛んできた。

 

 

 「っと。二度目は食らわないっての!」

 

 

 今度はそれを見切れるぐらいの余裕があり、風魔法で跳ね返すようにそれを阻止する。

 威力を失ったそれが地面に落ち、正体を確認すると、鋭い矢尻を持つ木製の矢だった。

 誰かが俺達を狙っている?

 同じような風景の森の周りを見る。

 するとその正体を表すように奥の木から人影が飛んできた。

 

 

 「死ねぇぇぇぇ!!」

 

 

 俺より同じくらいの身長で耳が横長の人物が鉄製の槍を持ち襲い掛かってくる。

 後ろに飛んでその襲撃を避け、ヴェルを俺の後ろに隠れさせた。

 

 

 「危なっ!?危ないじゃんか!!」

 「黙れ!我が娘を攫っていった欲深き人間め!今ここでこの地の肥料としてくれよう!!」

 

 

 間髪入れずその槍の矛先を突き出してきた。

 必死でそれをなんとか避けるが、左肩にかすってしまった。

 怒りにまみれたその表情を見せる人物をよく見ると、RPGやオンラインゲームとか出てくるエルフという種族の類だ。

 まさかこの目で見られるとは思わなかった。

 と心の中で感動しているのも一瞬、ヴェルを匿いながら防戦を繰り広げる。

 凄まじく猛攻する槍裁きに避けることしか出来ず、避けきれない時に次々と身体に傷が出来始める。

 後ろでヴェルが泣きそうに声を上げているが今はそんな余裕はなかった。

 

 

 「防ぐことしか出来ないのか人間め!」

 「そっちこそ、敵意はないのに無差別に攻撃する種族がエルフという物なんですかね……!」

 

 

 その挑発でエルフと思わしき人物の額に青筋が入った。

 そして距離を取り、再び槍を構える。

 

 

 「余程死に急ぎたいようだな。ならば潔く死ね!」

 

 

 地面を蹴って突撃してくるエルフ。

 槍の先に全身の力を籠っているのでスピードはめちゃくちゃ速い。

 だが、俺も無策ではなかった。

 

 

 「その攻撃を待ってた!」

 

 

 ヴェルと俺を纏うように風魔法で壁を作る。

 エルフはその厚き壁に突撃するが、威力を失いその場で止まった。

 そして動き止まり困惑したエルフのその顔にめがけて

 

 

 「食らえぇぇぇ!!」

 

 

 風魔法で威力を乗せた右ストレートをお見舞いし、エルフの身体を思いっきり殴り飛ばした。

 地面にその身体を乱暴に着地して動かないエルフの近くまで来て、身体をつつく。

 どうやらそのまま気絶しているようだ。

 

 

 「勝った……疲れたぁ」

 「ノルン様っ、今手当します」

 

 

 伸びている敵から少し離れた場所で座り込み、ミニバッグから包帯と薬草を手に持って手当してくれるヴェルを見た。

 回復ポーションを魔法店から買えば良かったのだが、資金的に用意できなかった。

 なので、家にあった緊急セットを持っておいてよかった。

 

 

 「ありがとう、ヴェル」

 

 

 気の利いてくれる仲間の頭を撫で不器用ながらも優しい治療を受け、身体を休ませた。

 

 

 「今日はもう遅いからここで休めなきゃね」

 「はい……」

 

 

 流石にあそこで伸びている奴がまた起き上がって戦うとなると死を覚悟する。

 ヴェルもそれを考えていたのか、同じ方向を何度もチラ見しながら不安そうに見てきた。

 

 

 「大丈夫。次は襲ってこないと思うよ」

 「どうしてですか?」

 

 

 顎に手を添えて少し考える。

 考えて数秒後。

 

 

 「女の勘、かな?」

 「勘……ですか」

 

 

 困惑されてしまった。

 手当を終え隣に座り身体を寄せてきたヴェルと共に、程よい疲労に任せながら目を閉じる。

 そこから意識は暗闇の世界へと放り出された。

 

 




ネタ考えで数日かかりました。すみませぬ

ノルン「本音は?」

ソシャゲ楽しいでふぅ

ヴェル「ノルン様、処します?」
ノルン「やってよし」

ぶひいいいいいいいいいい!!!
ってなわけで次から人が増える予定です。

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