東方恋亡霊   作:うどんげあき

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やんわりと幻想入り

どの位歩いたんだろか?

 

行け度も行け度も変わらぬ景色、変わらぬ道、ここに来てから二時間弱はあるいたはずだ。さすがに愚痴が少しこぼれた。

 

「はぁ・・・一体どんだけ歩けば・・・と言うかなんで俺はここにいるんだっけか?」

 

そう、俺は何故ここに居るのか把握出来ていなかった。自分の記憶だと自宅から勤務先の会社に出勤する時、近道のために普段は誰も通らない細い神社の裏道のトンネルくぐりぬけたとこまではギリギリ覚えていたがその先は全く覚えていない。気がつけば随分と桜の綺麗な道の脇に倒れていて今に至るというわけだ。

 

「はぁ・・・近道なんてするんじゃなかったな…」

 

俺は20年生きて来て初めて「急がば回れ」と言う言葉が身にしみた瞬間だった。そんな時だった、目の前に他の桜の木とは違って、まだ咲いていない大きな桜の木が目に入って来た。藁おも縋る思いだった俺には願っても無い物だった。このまま目的もなく歩く訳にもいかずとりあえずその桜の木に向かって歩くことにした。だが、どうしても頭からこのことだけが離れない。

 

このまま帰れなかったらどうしよう

 

こんな状況になると普段は考えないようなことを考えてしまう物だ。だが、俺は帰ろうとは思わなかった。特に何か才能がある訳でもなく目的も夢も無い自分が居なくなったところで世界は動く、ただ人が一人消えたってだけでそれ以上でもそれ以下でもないのだから、それにここはすごく落ち着く、ずっと歩いているのに周りの桜が疲れを和らげてくれているのだろう。そんなことを考えていると、いつの間にか大きな広場に出ていた。そこには先ほど目印にしていた大きな桜の木が立っていて、そこには木を悲しそうな顔で見あげる女性が立っていた。女性は自分と同じ歳位で薄い桃色の髪の毛に青を基調している着物?と言うには奇抜な姿だった。けどその姿はとても美しいくどこか悲しげだった、俺は自然とその女性を見つめていた。その視線に気が付いたのか、俺の方を向いた。

 

「誰?」

 

とっさに俺は頭を下げて謝った。

 

「あ、えっと、ゴメンなさい!盗み見るつもりはなかったんだ、ただその…不可抗力で」

 

そう言うと女性は少しずつこちらに近ずいて来た。 そして、丁度俺の一歩手前で止まった。

 

「別に構わないわ、気がつかなかった私がいけないのだし、それより顔をあげてくれないかしら?」

 

女性の声はとて優しい物で怒ってはいないようだったが、俺は恐る恐る顔をあげた。その時、初めて女性の顔を見て思わず口にしてしまった。

 

「うわぁ…その、すごく綺麗…」

 

その発言に女性は少しだけだが照れた様で、ほっぺたを紅くしながら

 

「///あら、有難う。それより貴方は何者?見るからにこちら側の人間じゃ無いわよね」

 

女性は俺の姿をじっと見つめた。母親以外の女性に見つめられたのが初めてだったので目をそらしてしまった。数秒ほど見つめた後に女性は耳を疑う様なことをさらっと言ってのけた。

 

「貴方…死んだってわけじゃなさそうだけど…それとも外来人?」

 

え?死んだ?俺が?女性のその発言を理解できなかった俺は確認の為にもう一度訪ねた。

 

「えーっと、俺が死んだって言ってましたけど、ここは天国なんですか?」

 

女性は表情を変えない俺を不思議に思い

 

「あら、貴方死んだかも知れないのに驚かないのね」

 

別段、自分が死んでしまっているかもしれないことに対して驚きがなかった。此処にいる時点で薄々そうじゃないのかと思っていたしこの場所に来る記憶も曖昧だったからだ。

 

「えぇ、まあそうじゃないのかなと思っていたところなので、それよりここ天国なんですか?後、外来人っていうのは?」

 

その時、俺の空気を読まない腹の虫が泣いた。

 

 ぐぅー

 

そういえば朝から何も食べていない、見知らぬ土地に気を取られていて空腹なのに気がつかなかった。腹を抑えて恥ずかしくなった俺は顔を伏せた。

 

そんな俺の姿を見た女性はふふっと笑いながら

 

「あらあら、お腹が空いてしまったのねぇ、この近くに私の屋敷があるのだけど、一緒に来ます?」

 

流石に、ここのことを教えてもらう上にご飯までご馳走になるわけにも行かず俺はつい

 

「そんな、迷惑じゃないですか?見ず知らずの俺なんて」

 

と断ってしまった、だがまた空気を読まずのお腹が

 

 ぐぅー

 

鳴った、また鳴ったよ俺の腹の虫、どうして場所を選ばない、そうすると女性はまた少し笑いながら

 

「あなたのお腹は正直みたいだけど、まだ意地を張る御つもり?」

 

まあ、お腹が空いているのは事実だし俺には行くあてもない。もしこのまま断ったら餓死しかねないので俺はその提案を恥ずかしながら承諾した。お礼のつもりで俺は名前を名乗った。

 

「親切にしていただいてありがとうございます。俺は幽矢木明貴(ゆうやぎあき)って言います」

 

俺の紹介に対して彼女もお返しにと言う感じに

 

「私は西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)と申します。ここ白玉楼の主人ですのよ」

 

こうして、一通り自己紹介が済んだ後に俺は幽々子の案内で屋敷に向かった。どうやらあの大きな桜の木が立っていた場所はここ白玉楼の庭らしく屋敷自体は歩いて数分の所にあった。

 

「着きましたよ、ここが我が家、白玉楼よ」

 

屋敷は俺が想像していた大きさの二倍は大きく、俺は空いた口が塞がらなくなっていた。屋敷は古めかしいがすごく立派で例えるなら、江戸時代の貴族の屋敷と言えばしっくり来るだろう。

 

「ほぉ〜見事な屋敷だなぁ、んでもってすごく広そうだな、うちのじいちゃん家の3倍はあるな」

 

これ程の屋敷だ、庶民の家庭と比べるのは間違いだったな。

 

「ふふっ、あらそうなの?そんなことより、どうぞお上がりになってくださいね」

 

そう言うと幽々子は玄関の扉を開け、にっこりと笑っていた。その笑顔に俺は一瞬ドキッとしてしまい、顔が少し熱くなってしまった。その後履物を脱ぎ、広間へと通される途中に幽々子が嬉しそうに

 

「此処に客人が来るなんて久しぶりだわ、何も無い所だけどゆっくりしていってね。あと、私に敬語を使わなくてもいいわよ、そう言う堅いの苦手だから」

 

幽々子の言葉で俺は少しほっとした、慣れない敬語など使うものではないな。俺は幽々子の言葉に甘えて、いつものしゃべりで何気ない質問をした。

「それじゃあお言葉に甘えて。此処には幽々子以外に誰か住んでいるのか?誰も居ないみたいだけど?」

 

「いいえ、他に妖夢って言う此処の庭師兼私のお世話係の子が住み込みで居る位ね、でも今は買い物に出てるから今はいないみたいね」

 

幽々子の返答に俺は驚きを隠せなかった。こんなに広い屋敷にたった2人で住んでいるとは幽々子は中々のお嬢様のようだ。まあ屋敷を見た時には薄々思ってはいたが

 

「此処で待っていて、何か適当に食べれるものを持って来るわね」

 

そう言って幽々子はそのまま廊下を歩いていった。とりあえず待てと言われたので廊下の淵に座り月を眺めて待つことにした。

 

「ふぅ、凄く落ち着くなぁ」

 

「貴方そんなに落ち着いている場合?」

 

不意に後ろから女性の声が聞こえて俺はゆっくりと後ろを振り向いた。これまた奇抜な和風なドレス?を着ている、髪の長い綺麗なお姉さんが居た。その姿に俺は正直に

 

「お綺麗ですね、此処の人ですか?」

 

俺のゆっくりとした態度に呆れた様に答えた。

 

「ちがうわよ、私は八雲紫(やくもゆかり)貴方を元の世界に送り返しにきた…と言うより頼まれて来たのよ」

 

元の世界…まあ何と無く分かっていたがここは俺が居た元居た世界じゃないらしい、そしてこの八雲紫と名乗る女性は俺を元の世界に帰してくれる為に来た様だ。

 

「そうですか、それはわざわざご苦労様です。と言うかどうやって帰れるんですか?」

 

その質問に紫は慣れたように答えた。

 

「私の力で送り届けるのよ、貴方の居た元の世界にね」

 

予想より早く巡ってきた元の世界に帰るチャンス、普通ならすぐに帰る選択をするのだろう、だが俺はこの世界に少しばかり興味が出てきていた。

 

「せっかくですが遠慮しときます。まだこの世界のことを幽々子から聞いてませんし、それに元の世界に帰るよりこっちに居た方が何かと面白そうだしね」

 

「貴方、今の状態が不安じゃないの?帰りたいとか思わないわけ?」

 

帰りたくないのか?と聞かれ、俺はこのまま元の世界に帰ったことを思い浮かべた。

 

「そうだねぇ、今は思わないな、少なくともこの世界の事を知るまではね」

 

「なら、知れば帰ってくれるのね?」

 

「おまたせぇ、あら?紫、来ていたのね」

 

後ろから、おにぎり三つとたくあんが二切れが乗ったお皿を手に幽々子が現れた。

 

「お邪魔しているわ幽々子」

 

「あれ?お二人は知り合いなんですか?」

 

「そうよ、古くからの友人なのよ」

 

古くからの友人…か、恐らくは幼馴染か何かなのだろう。そんな事を考えていると紫が

 

「・・・ってそんな事はいいのよ!貴方、この世界の事を知りたいのでしょ?」

 

「あぁ、それなら私も彼に教えてあげる所だったところなのよ、はいこれ、妖夢が作り置きしてくれてたおにぎりよ」

 

「ありがとう、それでは聞かせてもらえるかな?ここがどこなのかを」

 

それから幽々子達に色々とこの世界のことを教えてもらった。この世界は幻想郷と言うところらしく、俺の元居た世界で忘れ去られたものが行き着く楽園、そして俺が今いる場所は冥界(厳密に言えば幻想郷じゃないらしいが)、冥界は死んだ人間の魂がいきつく場所で、いわゆる死後の世界らしい。どうして俺が死んでもいないのに冥界に来たのかはどうやら二人にも分からないらしく、外の世界から幻想郷に迷い込んで来る人はたまにいるが、冥界に直接迷い込んで来たのは俺が初めてとのことだった。

 

「ーーーーとこんなところよ、さっこの世界の事を知れたでしょこれで帰ってくれるのよね?」

 

俺は最後のおにぎりを食べ終わり

 

「そうだな、まあ一通り把握したよでも、俺は帰らないよ」

 

「そう、なら好きにするといいわ」

 

 

紫は随分と素直に引き下がった。何か裏があるのかと思ったがその答えたは直ぐに分かった。

 

「あれ?さっきは帰れって言ってたのに随分しおらしいじゃないか」

 

「建前上は帰ることを進めないと口うるさい巫女がいるのよ、今日だってその巫女に頼まれてきたんだから」

 

「霊夢に頼まれたのね、あの子も彼が迷い込んだの気づいてみたいね」

 

巫女と言えばおしとやかなイメージがあるが、口うるさい巫女は想像しただけ嫌だな。紫は話を終えると席をたち上がると、何もないところに切れ込みのようなものがいきなり出現した。

 

「!?こ、これはいったい?」

 

「私はスキマの妖怪だから当然よ、それじゃ私はここらへんで失礼するわ、説得が失敗したことを霊夢に伝えないといけないし」

 

「あらそう、霊夢によろしくね」

 

この世界に来て始めて非現実的な現象を目撃した。思えば紫がどうやって屋敷に入ってきたのか疑問に思っていたが、こんなことができるのなら突然現れたのも納得がいく。そんなことを考えていると不意に紫に声をかけられた。

 

「二つだけあなたに聞いていいかしら?」

 

「はい?なんでしょう?」

 

「まずは名前を聞いておきたいのだけど、まだ聞いてなかったしね」

 

「俺は幽矢木明貴といいます、以後お見知りおきを」

 

「幽矢木明貴ね、それならこれからは明貴って呼ばせてもらうわよ、それともう一つ」

 

「貴方、一体何者?普通の外来人だったらすぐに帰りたがったり、ひどく混乱したり何かしら異常があるはずなのよ、けど貴方、全くの平気ですって顔してるから気になってね」

 

その質問に少々困惑しながら俺は答えた。

 

「何者と尋ねられても、ただのしがない人間の青年ですとしか言えないけど?」

 

紫はやっぱりねと呆れる

 

「まあいいわ、なんにしろここで暮らすなら気をつけることね、ぼーってしてたら野良の妖怪に食われて死ぬことになるわよ」

 

「ご忠告、ありがとうございます」

 

「どういたしまして、幽々子また今度ゆっくり飲みましょうね」

 

紫はそう言うと消えるように帰ってしまい幽々子と二人だけになってしまった。幽々子はくるりと振り向くと

 

「夜ももう遅いですけど、貴方はどうするのですか?どこかに行くあてでも?」

 

あっ、そういえばここで生きると決めたはいいが住むところがないんだった。

 

「・・・もし行くあてがないのならここに置いてあげれるけど?貴方がよければの話だけど・・・」

 

幽々子の提案は今の俺にとっては願ったり叶ったりだ。

 

「えっ!いいのか?迷惑じゃないのか?」

 

「構わないわよ、さっきも言ったように此処には私と妖夢しか居ないから空き部屋は沢山在るわよ。」

この規模の屋敷なら余裕で部屋が余っているみたいだな、この廊下に着くまで見て来たがほとんどが飽き部屋だったしな。

 

「そうなのか?なら、お言葉に甘えさせてもらうよ」

 

幽々子は俺の返答を聞くとにっこりと笑いながら答えた

 

「そうしたらいいわ、ついて来て」

 

幽々子に部屋を案内してもらうついでにお手洗いや浴場の場所を軽く教えてもらった。その後程なくして部屋についた。

 

「はい、今日から此処が貴方の部屋よ、自由に使ってくれて構わないわ」

 

案内された部屋はものすごく風情のある和室で、お金持ちの家の和室と言った方が分かりやすいかもしれない、そんな部屋だった。

 

「おう、ありがとう、それじゃ直ぐに休ませてもらうわ」

 

「そう、それじゃおやすみなさいまた明日…ね」

 

幽々子はおやすみの挨拶をした後にそのまま自室に戻ったのだろう、そう思った俺は疲れきったのか、そのままその場で雑魚寝することにした。

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