新人類観察紀行〜創造主が滅んで用済みになったアンドロイドが新しい世界で自分の生き方を絶賛模索中。   作:T.K(てぃ〜け〜)

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第十一話 異郷

聖華暦830年 秋 カミナの里

 

私がこの里の事を知ったのは、()()()()この春先の事だ。

聖王国から同盟へ渡る際に同乗させて貰ったキャラバンで聞き及んだのである。何度も、それこそ何十回も同盟へやって来ては国中を周って来たと言うのに、この『カミナの里』の事を見聞きしたのは()()()()()()()()()のだ。

この事が実に度し難く、不可解で興味深かった。

 

世界には、まだまだ私の知らない事が幾多もある。

その事を改めて思い知らされたように思う。

このような物言いをすると、まるで世界の全てを識っているかのような物言いだが、それは傲慢というものだ。

 

世界の全てを識るなど、ありとあらゆる方法を持ってしても、それこそ旧人類の科学力を総動員したとしても到底成し得る事では無い。

 

そうであったなら旧人類は滅ぶ事も無く、新人類も争いを続ける事も無く、もっと違った世界になっていた筈だ。

一体どのように違っているものか、それはそれで興味深い。

 

話が逸れてしまった。このようなifを夢想したところで詮無い事だ。

ともかく、旧都ナプトラに程近い場所に有ると聞いたからには行かない訳にはいかなくなった次第だ。

 

目的地は定まっているが、もとより急ぎの旅では無い。速いに越した事は無いが、その為に、途中経過をすっ飛ばすのも違う気がする。

何より、リヴルが好奇心を大いに刺激されたのだ。

 

「タカティンが知らない街があったのが驚きなのです!そこは是非行かねばならないのですよー‼︎」

 

この始末だ。

まぁ、私としても興味深い事には変わり無い。だからこそ、今現在、この街に立ち寄っているのだ。

 

実際、この街は大変興味深い。

まさに『異郷』である。

 

規模はそれ程大きくは無いが、意外と長い歴史を持つ。同盟の中にあって、街並みはカナド様式で統一されている。

建物は珍しい木造建築が軒を連ねており、それだけで特異であるのだが、同盟内でもそれ程知られていないのが不可解だ。

 

知る人ぞ知る隠れた観光地、だと言うが、街の雰囲気は街の存在を隠そうとしている訳でも無い。

他所者を排斥しようとしてもいない。

寧ろ街の住人は皆気さくで親しみ易く、親切だ。

 

この街で露店を出すことはすんなり許可が出た、というより歓迎された。

 

他所から来る人、物が珍しいらしく、露店を開いてすぐに人集りが出来た。

街の外の事を皆聴きたがり、リヴルの事も皆珍しがって、多くの人が、特に子供達がリヴルとの会話に華を咲かせている。

 

「この街は『チノヨリヒメ』様をお祀りしているんですよ。」

 

「その、『チノヨリヒメ』様、と言うのは、聖華の三女神とは違うのですか?」

 

「ええ、この土地の守神様です。ご主人も十日前に来られれば、ちょうど『チノヨリヒメ』様を祀る『カンナヅキ祭』があったんですよ。」

 

「では来るのが少し遅かった訳ですな。それは惜しい事をした。」

 

この土地には、他では余り見られない土着宗教が根付いているようで、『チノヨリヒメ』信仰は人々の生活に溶け込んでいるようだ。

帝国は兎も角、聖王国などは聖華の三女神教を国教にしている為、こうはいかないだろう。

信仰とは土地によってはこの様に違うのだなと認識を改める。

実に興味深い。

 

「スズちゃんとチコちゃんは親友なのです?仲良しなのは良い事なのですよ。」

 

「うん、スズ、チコおねえちゃんだいすき。おおきくなったら、チコおねえちゃんとけっこんするの。」

 

「バカッ、スズ、人前でそれを言っちゃダメって言ってるでしょ。」

 

「ハァ……スズ、女の子同士で結婚は出来ないぞ。」

 

「ううん、それでもチコおねえちゃんのおよめさんになるんだもん。」

 

「「「「ヒューヒュー」」」」

 

十にも満たない、元気で可愛らしい女の子二人を中心とした子供達とリヴルが屈託無く会話している。

スズという名の子の告白に周りの子供達が囃立て、チコと呼ばれた子の方は顔を真っ赤にして火消しに躍起だ。

微笑ましい。

 

さて、人集りになってはいるが、他所の話を聴きたくて集まってきているだけの様で、こういうあたりは田舎街では何処も同じ様だ。

それでも人が集まれば、[本]に興味を持って買っていく者もおり、この街での滞在中は予想よりも多く[本]が売れた。

 

同盟の中の『異郷』。

風変わりなその街の事を、リヴルは随分と気に入った様だ。

私も新たに観察する場所が増えた事を嬉しく思っている。この街は実に興味深い。

事が成った暁には、再びこの街に立ち寄って、心ゆく迄観察を行おうと思う。

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