新人類観察紀行〜創造主が滅んで用済みになったアンドロイドが新しい世界で自分の生き方を絶賛模索中。   作:T.K(てぃ〜け〜)

18 / 49
第十八話 救い

聖華暦833年 春 ヴァレンティノ大農園への道中

 

野宿をしていた時の事です。

私は泣いていました。

地面にへたり込み、両手で顔を覆い、咽ぶように泣いていました。

 

髪や服は激しく動いた為に乱れており、手足には泥汚れや擦り傷があちこちに。

 

そんな私の目の前に三人の男達…

 

どうしてこんな事になってしまったのか…

 

ただただ、世の理不尽さに悲しくなり、涙が溢れて止まりません。

 

「うう、ひっく…酷いのです。あんまりなのです。そんなの無いのですよ…」

 

私は泣いて、泣いて、泣きました。

こんなにも悲しい事があるなんて。

 

どうして神様はこんなにも酷い仕打ちをするのでしょうか?

 

「お嬢ちゃん、もう泣くのはよしてくれ。」

 

「そうだよ、俺たちが悪かったんだ。」

 

「俺らの事でそんなに泣くこたぁ、無いんだぜ。」

 

男達は口々に言葉を発して、私を慰めてくれます。

彼等は正座をしています、私の前で。

彼等は盗賊でした。

正確には、今日初めて盗賊として活動を始めたようでした。

 

三人とも、あちこちに打撲痕や擦り傷があります。ちょっとやり過ぎてしまいました。

襲われたので、護身の為にボコボコにしてしまいました…

ミカゲの里で護身の為に、WARES式戦闘術を(それはもうみっちりと)教えられていたので、難なく三人を組み伏せる事が出来ました。

 

「リヴル、お前は加減する事をいい加減に覚えるんだ。」

 

タカティンにも何度か叱られていました。加減は難しいのです。

 

彼等が抵抗しなくなったので怪我の治療をし、座ってお話をしました。どうして盗賊を始めたのか、その顛末を聞いたのです。

 

*

 

三人は元は貴族に護衛として雇われた傭兵さんでした。と言っても、傭兵になって日の浅い新人なのだそうです。

4日前、突然、主人である貴族から、盗みの疑いを掛けられて、拘束されたそうです。

無実を訴える彼等に対して、貴族はある提案をしてきました。

 

「私と『()()()()』をして逃げ果せる事が出来たら、その罪を不問にしてやる。」

 

自分達を擁護してくれる者もおらず、彼等はその提案に乗るしか無かったのです。

しかし、その『鬼ごっこ』とは、貴族の用意した旧型従機『ガイストパンツァー』に乗って、貴族の駆る機装兵『ノクス』から逃げる事でした。

 

『ノクス』は帝国軍最新鋭の第七世代機装兵、その性能は第六世代機装兵と比べると圧倒的と評しても良いほどに隔たりがあります。

その上、ノクスは剣と魔導砲で武装しています。

 

対してガイストパンツァーにはクローアームがあるだけ。

もとより機装兵と従機、その差は歴然であり、戦っても勝てっこありません。

 

彼等は森の中、殺されるかも知れない恐怖と戦いながら必死に逃げました。

しかし、貴族の機兵(ノクス)は弄ぶようにジリジリと三人を追い詰めていったそうです。

 

そして、浅い川を渡った辺りで奇跡のような事が起こりました。ノクスが川を渡ろうとした時に、深みに足を取られて転んだのです。

転んだ拍子に気を失ったのか、ピクリとも動かなくなったノクスを尻目に、三人は一目散に逃げたのだそうです。

 

追手が掛からず安堵したのも束の間、手配されているかも知れない為、近くの街には寄り付けず、人目を忍んでここまで逃げて来たのです。

その道中で、三人は自分達の運命を呪い、いっその事こと、本当に犯罪者になってやろうじゃないかと半ば自棄になり、ついさっき目についた私を襲ったという訳だったのです。

 

 *

 

「うぅ〜、三人とも可哀想なのですよ。貴族の人は酷い人なのですよ〜。おじさん達はちっとも悪く無いのです。だから、リヴルは三人とも許すのですよ。」

 

「お嬢ちゃん、ありがとう。俺らの為に泣いてくれるだけで、救われたよ。」

 

「こんなにも俺らの事を悼んでくれたのは、お嬢ちゃんだけだよ。」

 

「俺たち、心を入れ替えるよ。もう一度やり直すぜ。」

 

「ぐすっ、わかったのです。おじさん達、頑張ってなのですよ。」

 

「あ〜、その、せめてお兄さんって言って欲しいなぁ…ア、イエ、ナンデモナイデス…」

 

いつの間にか夜が明け、空が白じんで来ました。

私達は一緒に朝食を取ったあと、別れました。

おじさ…お兄さん達は見えなくなるまで手を振っていました。

 

「良かったのか?リヴル。ああは言っていたが、また罪を犯すかも知れんぞ。」

 

「あの人達はきっと大丈夫なのですよ。リヴルは信じているのです。」

 

別れ際、三人の表情はどこか吹っ切れたような、明るい笑顔でした。

 

「お前は優しいな。」

 

「タカティン、もっと褒めてくれても良いのですよ。」

 

「調子に乗るんじゃない。お前は褒めるとすぐにこれだ。」

 

また叱られてしまいました。片目を瞑って小さく舌を出しました。

タカティンももっと私に優しくして欲しいのです。

 

*

これは後日談になりますが、5年後にあの三人と再会しました。場所はカウシュフェルトという北方の街です。

三人はあの後、事態に決着をつける為に意を決して貴族の元へ戻ったそうです。

戻ってみると、窃盗の真犯人が見つかっており、貴族から三人に謝罪があったのだそうです。

殺すつもりは無く、不届き者を懲らしめてやろうと、あんな真似をしたのだとか。

戻ってきた三人に貴族はいたく感服したと言い、大層な額の慰謝料をもらったのだそうです。

それから4年は貴族の元で仕事をした後、現在はカウシュフェルトの警護の仕事に就き、魔獣ナウマンから街を守っているとの事。

街の人達から頼りにされ、頑張っているそうです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。