新人類観察紀行〜創造主が滅んで用済みになったアンドロイドが新しい世界で自分の生き方を絶賛模索中。   作:T.K(てぃ〜け〜)

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第二十四話 素敵な女性

聖華暦833年 冬 ジルベール領ユーダリル

 

すっかりと旅支度を終え、今日は一日、ユーダリルの街を観て回ります。

ユーダリルは帝国でも東の端の方にある街なのです。この街はジルベール侯爵家の影響で自衛意識が高く、街の人達は自警団を組織していて治安がとても良いのです。

 

明日の朝、この街を出発します。

私達は滞在予定の最終日、必ず一日かけて街を観て回ると決めています。

そうやって色んな[人]達の行動を観察したり、買い物がてらお話をしたり。

 

そして今はお昼時。

 

「ん〜。このお魚のフライ、とっても美味しいのですよ。

衣のカリッとした歯応えと白身のふわっとした舌触り、魚の身のほのかな甘みに軽く振られたペッパーが良いアクセントになっているのです。

それにこのタルタルソースの程よい酸味がぴったりなのです。

リヴルは感動したのです。」

 

「リヴル、お前…

最近は食事の度に感動していないか?」

 

「美味しい物は美味しいのです。これは世界の真理の一つなのですよ。」

 

「また大袈裟な……」

 

美味しい昼食に満足し、デザートのプディングが運ばれて来た時でした。

にわかに騒がしくなり、それはすぐに喧騒に変わりました。

 

「待てぇぇっ、に〜げ〜る〜なぁ〜!」

 

「観念しろォォ!」

 

二人の男の人を、軍人さんが数人で追い回していました。

彼等は見る間にこっちに近づいて来て、追われていた一人が私の首に太い腕を巻き付けました。

あれよという間に私は人質にされてしまったのです。

 

「ゼェっ、ゼェっ、く、来るんじゃネぇ!

この娘がどうなっても知らんぞ!」

 

私の鼻先にキラリと光もの…ナイフをチラつかせて私を捕まえている男の人が叫びます。

 

「はぁ、はぁ…解ったらサッサと道を開けろ!

近づいたら殺すぞ!」

 

「クソっ、汚い真似を…」

 

「逃げられないんだ!これ以上罪を重ねるのはやめろ!」

 

追いかけていた人達の方が()()()()()()()()()見た目でしたが、私を人質にしている人達の方が何かしらの犯罪者のようでした。

それなら、遠慮は無用です。

 

私はふうっと息を吐いて、ナイフを持った男の手を、力一杯捻り上げました。

 

「いっ?あ、アダだだダ!」

 

首に回された腕の力が抜けたので、そのまま振り解き、捻り上げた腕を引き込み、足を払い、腰を使って相手を浮かせて、一本背負いで投げ飛ばします。

 

男は綺麗に空中を一回転。地面で強かに背中を打ちつけ、呻くだけで動けなくなりました。

 

もう一人の男や、軍人さん達も何が起きたか解らず、一瞬惚けましたが、すぐに事態を理解して、軍人さん達が男達を取り押さえに殺到します。

ですが、もう一人の男はとっさに懐から拳銃を抜いて、報復とばかりに私に銃口を向けます。

 

思わず身構えたその時、鋭い銃声が響きました。

 

男の拳銃が弾かれ、飛んでいきます。

そのすぐ後に3人の軍人さんに組み伏せられ、二人とも確保されました。

 

その銃声は男の拳銃からでは無く、一人の軍人さんが撃った銃による物でした。

 

貴女(あなた)、大丈夫?怪我は無い?

危険な目に合わせてしまって、本当にごめんなさい。」

 

その軍人さんはとても綺麗な女性でした。

凛としていて、瞳には強い意志を感じさせます。

他の強面の軍人さん達とはまるで違っていて、気品すら感じました。

ほんの少し、見惚れてしまいました。

 

「どうしたの?」

 

「あ、なんでも無いのです。

危ない所をありがとうなのですよ。」

 

「そう、それなら良かったわ。」

 

その女性はふっと微笑みました。

それはとても綺麗な微笑みでした。

 

「ジルベール隊長、申し訳ありません。我々が取り逃したばかりに、要らぬ騒ぎになってしまって…」

 

「私にではなく、彼女に謝罪をなさい。

彼女は自分で振り払ったけれども、人質にされたのだから。本来ならあってはならない事です。

それと、隊長とは呼ばないで。」

 

隊長と呼ばれた彼女は、部下である強面の軍人さん達を鋭く叱責しました。

 

「……隊長と呼ばれるには……私はまだ。

あの人には届いていない。」

 

それは皆に聞こえない独り言のような、小さな呟きでした。

 

「は、はいっ!

お嬢さん、危険な目に合わせてしまって申し訳無い。」

 

軍人さん達は、私に頭を下げました。

 

「いえいえ、大丈夫なのですよ。」

 

ちょっとビックリしてしまいました。

いつもなら、軍人さんがそんな簡単に頭を下げるとは思っていませんでしたから。

 

「それでは皆さん、お騒がせしてすみません。

私達はこれで失礼します。」

 

そう言って、女性隊長さんは颯爽と行ってしまいました。

他の軍人さん達も、男達を連行して行きました。

彼等が居なくなると、周りの人達は何事も無かったように、また日常へと戻りました。

 

「やれやれ、危ない所だったな。

どうした、リヴル。やはり怖かったのか?」

 

「……タカティン、あの隊長さん、とっても格好良かったのですよ!

リヴルもあんな素敵な女性になりたいのです!」

 

この時、私は本気で格好良い素敵な女性を目指すと決めました。

 

「ふむ、それは興味深いな。

それならば、まずは食事の時は静かにする事だ。

それからお喋りは謹んだ方が良いな。」

 

「むぅ、それはちょっと厳しすぎるのですよ…」

 

「……前途多難だな。」

 

素敵な女性への道は険しいようなのです。

 

「む!」

 

「タカティン、どうしたのです?」

 

「通信が入った。」

 

それは重大な知らせだったのです。

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