新人類観察紀行〜創造主が滅んで用済みになったアンドロイドが新しい世界で自分の生き方を絶賛模索中。   作:T.K(てぃ〜け〜)

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第二十五話 災禍

「リヴル、ソキウスからの緊急通信だ。表紙の裏のモニターを見ろ!」

 

タカティンに言われ、慌てて表紙を廻りました。

 

<緊急通信>

<モーントシュタイン及びゾンネンシュタイン両名に緊急案件あり

速やかにテイキンマテリアル本社事務所に出頭されたし>

 

私達を名指ししての呼び出しでした。

 

「これはどういう事なのです?」

 

「詳しい事は解らん。だがテイキンマテリアルの事務所へ行こう。」

 

私達は、この街(ユーダリル)にあるテイキンマテリアルの事務所へ向かいました。

テイキンマテリアルは、帝国での情報収集やアンドロイド達の援助を行う為に『ソキウス』の作った会社です。

そこに行けば、どういう事なのか判る筈です。

 

数分後、テイキンマテリアルの事務所に到着すると、すでに案内人がロビーで待っている状態でした。

 

「お待ちしていました。こちらへどうぞ。」

 

関係者と思しき女性が私達を奥の一室へ案内してくれました。

部屋に入ると中には一人の人物がいました。

全身をすっぽりとフード付きのマントで覆い隠し、性別も判りません。

壁に背を預け、こちらを見ているようです。

 

「よう、二人とも。久しぶりだな。」

 

その人はそう言いながらフードを取りました。

 

「‼︎…オーニュクス…何故、ここに?」

 

「あー、オーニュクスさん。お久しぶりなのですよ。」

 

オーニュクスさんは『ソキウス』のアンドロイドの一人で、戦闘型アンドロイドの管理をしている人なのです。

……ミカゲの里にいる間、護身術の訓練でみっちりとしごかれたのです。

 

「おう、リヴルぅ、元気そうだな。タカティンは相変わらず本のままか。」

 

オーニュクスさんはニヤリと笑って私の頭をくしゃりと撫でました。

 

「オーニュクス、貴女がいるという事は、ただ事ではあるまい。我々になんの用だ?」

 

「そうだな、時間があまり無いから手短に説明しよう。

単刀直入に言うとだな、()()()()()()。今のままだとな。」

 

「「⁈」」

 

「現在、南米大陸から魔獣の軍勢が同盟領へ向けて北上中だ。その数は推定8万体。魔王級魔獣も確認されている。

300回シミュレーションを行った結果では、このまま行けば遠からず同盟は飲み込まれるだろう。」

 

「それで、何故我々を呼んだんだ?

ただ、それを伝えに来ただけではないだろう?」

 

「察しが良いな。」

 

オーニュクスさんは一呼吸おき、本題に入りました。

 

「で、だ。アタシらとしても、この事態は流石に看過できない。同盟が滅べば次は帝国と聖王国だ。その二国は被害こそ出るが魔獣軍団を撃退するだろう。だが、その後で二国間で戦争が勃発するのは確実だ。

そこで緊急事態対応という事で、今回に限り事態に介入することが決まった、って訳だ。その為にリヴル、お前の力を借りたい。」

 

「どういう事なのです?」

 

「まさか…お前達、今更アレを使うつもりではないだろうな‼︎」

 

タカティンが声を荒げました。

 

「その通り、『マルドゥク』を使う。これは決定事項であり変更は無い。」

 

「お前達は!

我々にセクター07に()()()()()()()と念押ししておいてっ‼︎」

 

「状況が変わったんだ。そこは察してくれ。」

 

タカティンの剣幕にオーニュクスさんは困った表情を浮かべて頭を掻いています。

『マルドゥク』、それは旧人類が創り上げた戦略機動兵器の一つ。

 

………()()()()()()()()でもあります。

 

「………分かったのです。リヴルは協力するのですよ。」

 

「っリヴル‼︎ お前は何を言っているか、判っているのか?」

 

「タカティン、凄く大変な事は判っているのです。それでもリヴルに出来る事があるなら、皆を助けられるなら、やりたいのです。」

 

少しの沈黙。

 

「ふう……状況は判った。

オーニュクス、それで具体的にどうするつもりだ。まさか同盟領内で正面からぶつける気か?」

 

「流石にそれは無いな。そんな事をすれば、例え同盟を救えたとしても、他の二国から同盟は叩かれる。

旧世代の戦略兵器が現れたとなれば、同盟が何も知らなくても二国はそうは思わんだろう。

そこで、大西洋を越えて南米大陸側へ行き、後ろから後続の魔獣を始末する。

だいたい6000〜7000匹、さらに一番後ろにくっ付いている超大型魔獣(サルガタナス)を始末出来れば、同盟は自力で魔獣軍団を撃退出来る試算だ。」

 

「なるほど…それだけの魔獣をどうにかするには、確かに『戦略兵器(マルドゥク)』でも引っ張り出さねば、どうにもならんな。」

 

「そういう事さね。」

 

オーニュクスさんはまじめな顔で言いました。

私はただ押し黙って話を聞いていました。

 

「援護は?」

 

「無い。」

 

「だと思ったよ。」

 

「すまんな、アタシらも支援したいのはヤマヤマなんだが、ディアマントがなぁ…」

 

「仕方あるまい、相手にする数が数だ。LEVや無人兵器が数機ばかり援護についたところでさほどの役にも立たんだろう。」

 

「一応、セクター07に残ってるモノはなんでも使って良いそうだ。タカティン、お前の替え素体もな。」

 

「ふむ…」

 

事態は思った以上に深刻そうです。

急ぐ必要があるようです。

 

「タカティン、今すぐ行くのですよ!」

 

「まあ待て。リヴル、慌てるな。セクター07へ向かうにしても、ルートを選ばなくてはならん。急ぐ余り、目立った行動をするようでは元も子もない。」

 

「ルートならアタシが先導するから心配するな。先に出て準備しておく。街から出て北東1kmの地点で待っていろ。」

 

そう言うと、オーニュクスさんは部屋を出て行きました。

私はタカティンをギュッと抱き締めてから、駐機場へ向かいました。

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