新人類観察紀行〜創造主が滅んで用済みになったアンドロイドが新しい世界で自分の生き方を絶賛模索中。 作:T.K(てぃ〜け〜)
ユーダリルから北東1kmの森の中、彼等は待っていました。
「いたのです。」
オーニュクスさんがこっちだと手招きをしていました。
「来たな、こっちだ。」
キャラバンでよく使われている旧式の輸送船が2隻、目立たぬよう森の木々の合間に停泊させてありました。
「マーチヘアを船へ入れろ。パラジウムリアクターを交換する。
補給が済んだら、すぐに飛ぶぞ。」
「なるほど、空路を行くのが一番速いな。」
「そういう事だ。こっからは強行軍になるから、リヴルはちょっと寝とけ。」
そうは言われても、気持ちが焦って落ち着きません。
「寝てなんていられないのですよ。」
「いいから、ちょっと横になって体力を温存しとくんだよ。
この後は休んでる暇なんぞ、無くなんだからな。」
「そうだぞ、リヴル。ここで焦ってはいかん。」
「むぅ…判ったのですよ…」
二人から促され、私は仕方なく従いました。
輸送艦の一室、簡易ベッドの上で横になります。
交換作業は後1時間20分かかります。
横になっても目は冴えて、気持ちも落ち着きません。
「落ち着かないか?」
「…タカティン、なにか話を聞かせて欲しいのです。」
「そうだな………
『髑髏の騎士』の第4巻がまだ途中だったな。
続きを音読をしてやろう。」
「ありがとうなのですよ。」
タカティンが、以前読みかけていた小説を音読してくれている間に、気持ちも幾分か落ち着きました。
物語が一区切り付いたところで、ちょうど交換作業が終わったと連絡がありました。
私は一度、深呼吸をしてから表に出ました。
輸送艦の甲板には、整備を終えたマーチヘアと共に、もう一機の機体が存在感を示していました。
「ヴェルクート。コイツを出して来たのか。」
ヴェルクート、それはWARESが開発した第4期LEVです。
その性能は、以前にタカティンが搭乗していた第3期LEVワールウィンドⅢを遥かに凌駕しています。
『急ぎだと言っただろ?
すっ飛ばすから、サッサとマーチヘアに乗れ。』
私達は促されるままマーチヘアに乗り込みます。
『ルートはすでにインプット済みだ。指示に従って付いて来い。』
「了解なのです。マーチヘア、噴射システムのリミッター全面解除なのですよ。」
『了解です。ロック解除。
システム、オールグリーン。起動します。』
マーチヘアの背中の噴射システムが唸りを上げ、蒼炎を吹かして機体を持ち上げます。
程なく高度30mまで上昇しました。
先に飛び上がっていたヴェルクートから通信が入ります。
『ようし、それじゃあ行くぜ。遅れんなよ。』
「オーニュクスさん、了解なのです。
マーチヘア、頼んだのですよ。」
スロットルを全開にし、一気に加速します。
二体のLEVは時速700kmで一路東へと突き進みます。
聖王国を横断する際、途中の人里や街道、山などの丘陵を避ける以外は一直線に東へ、ひたすらに東へと突き進みます。
飛行距離はざっと2400km、時間にして約3時間半の間、ただひたすらに東を目指して飛びました。
すっかりと日が暮れた頃に、ケイブ・セクター07を擁するWARES軍事基地跡に到着しました。
『ようし、到着〜。アタシの役目はここまでだ。後は上手くやってくれ。
頼んだぞ、リヴル、タカティン。』
そう言うと、オーニュクスさんはそのまま進路を北に取り、行ってしまいました。
ヴェルクートの姿が見えなくなると、私達は地下への入口へ向かいます。
「またここへ来る事になるとはな……」
「…タカティン、行くのです。」
「うむ。」
エレベーターシャフトを降り、私達は再び、暗闇の支配する地下施設へと降り立ちました。
以前の施設内での戦闘の影響でしょうか?
施設内は幾らか浸水していました。
それでも、施設の機能は損なわれていないようです。
タカティンが施設のネットワークへリンクし、必要な設備を稼働させます。
中央のドックに光が灯り、駆動音を立てて目覚めました。
「マルドゥクの発進準備に入った。今から50分後には出られるだろう。だが、その前に一つ、やっておく事がある。」
「なんなのです?」
「私も身体を手に入れる。ちょうど研究棟に素体があるからな。
アレに記憶を移して、ここにある機体を使う。」
「……判ったのですよ。」
研究棟は前にいた場所なので、どこにあるかは判ります。
私達は研究棟内に入り、素体保管設備の前へとやって来ました。
「ではリヴル、データ移送を頼むぞ。やり方は以前に教えた通りだ。
……移送完了まで、ちゃんと待ってるんだぞ。」
「了解なのです。」
コントロールパネルを操作し、すぐにデータ移送を実行します。
データ移送完了まで1時間28分……
「……タカティン、リヴルは行って来るのです。
きっと帰って来るから、心配しないで待ってて欲しいのですよ……」
私は、そのまま振り向かず、マルドゥクのあるドックへと向かいました。
タカティンが再び身体を持ち、一緒に死地へと赴く。
それはとても心強い事ではありましたが、同時にとても恐ろしい事でもありました。
いざとなったら、きっと……
私に危機が及んだら、きっと、また……
そうで無くても、万が一……
タカティンを失ってしまう事がどうしようもなく怖い、怖くて怖くて堪らない……
……だから、私は一人で行きます。
きっと、きっと帰って来ます。
マーチヘアをマルドゥクのコントロールユニットにドッキングさせ、戦略機動兵器を目醒めさせました。
「マルドゥク、システムチェック。
各ステータスクリア、重力場発生確認。
……すぅ、はぁ……
マルドゥク、発進‼︎」
行ってきます。