新人類観察紀行〜創造主が滅んで用済みになったアンドロイドが新しい世界で自分の生き方を絶賛模索中。   作:T.K(てぃ〜け〜)

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第二十七話 対決

時はすでに宵の口、大西洋を通過して、海中から目的地へと近づいています。

私はマルドゥクの潜航モードを解除して、海上へ機体を浮上させました。

陸地まであと2km、レーダーは魔獣の敵性反応を示すマーカーで埋め尽くされています。

なんという夥しい数…目の前だけでもざっと数えて7000体以上の魔獣が同盟へ向けて行進しています。

 

流石にゾッとしました。

 

ですが、彼等を放っておく事は出来ません。

彼等がそのまま北上を続ければ、どれ程の被害が出るか…

親しい友人達や知り合った人達に、想像もつかないほどの不幸が起こってしまいます。

 

「魔獣さん達、ごめんなのですよ…」

 

マルドゥクを戦闘出力に切り替え、脅威度判定の高い順にロックオンしていきます。

両碗部の大口径レールガンをスタンバイ。

 

その時、陸地から何十もの光線が照射されました。それは未確認の魔獣からのレーザー攻撃でした。

未確認魔獣は大型種で80体、大型種よりさらに大きな魔獣が3体います。

 

数多の光条は狙い過たずマルドゥクへ殺到します。

これだけの数のレーザー照射の直撃を受ければ、マルドゥクといえど沈んでいた事でしょう。

しかし、レーザーはマルドゥクの発する防御用重力場に阻まれ、境界面に沿って湾曲して機体後方へ流れて行きます。 

 

今度はこちらから反撃します。

防御用重力場を0.2秒間隔で間欠開放。

レールガンを連射。弾丸は到達直前で分解し、大量の小口径の弾丸を横殴りの暴風雨のように振り撒きます。

居並ぶ未確認魔獣は対応出来ず粉微塵に吹き飛び、その存在は地上から消えました。

奥にいた三体も全身穴だらけの蜂の巣となって沈黙しました。

 

これで、マルドゥクに対して直接的に脅威となる魔獣はいなくなりました。

防御用重力場はエネルギー消費が激しく、連続使用は機体の稼働時間を縮めてしまうので解除しました。

そしてレールガンを連射しながらそのまま上陸し、魔獣の大群を一方的に蹂躙します。

 

浮遊しているマルドゥクに対して陸上の魔獣はなす術が無く、マルドゥクを浮かせている重力場は、魔獣達のその頭上を通り過ぎるだけで彼等をペシャンコに潰していきます。

飛び交う飛竜やヘルカイトでさえ、レールガンや自動迎撃システムのエーテリックライフルで瞬く間に撃墜されていきます。

 

マルドゥクのあまりの戦闘力、破壊力に恐怖を覚えつつも、私は攻撃の手を緩めませんでした。

魔獣軍団の後詰となるこの群は、なんとしても全滅させておかねばならなかったのです。

 

普段、タカティンには殺すな、傷つけるなと、簡単に言っていた事を思うと自分自身に嫌悪感が湧いて来ます。

 

どうしても、自分の手を汚さないといけない時がある。

 

その事を、今になってやっと理解したのです。

 

「でも…もう、殺したく無いのです!」

 

コクピットで声を張り上げ、涙を流していても…

私は攻撃の手を緩めませんでした。

 

15分後、7000体以上の魔獣の群をほぼ壊滅させました。

この段階でレールガンの弾薬を約7割消費していました。

…後、3割残っています…

 

私はマルドゥクの進路を南に向けました。北上している魔獣軍団の後方から、後追いで北上して来るであろうものへの警戒の為でした。

マルドゥクのレーダーに非常に大きな敵性個体の反応が現れました。

南から距離3kmまで近づいています。

 

マルドゥクの戦術AIが、近づく大型個体の種類を推定します。

50mもの巨体、甲殻類の様な外観と外殻。

大型魔獣サルガタナスと特徴が一致しました。

 

ソキウスが鋼魔獣(ウォッチャー)を利用したネットワークを使って長年観測して来たデータによれば、魔王級魔獣バフォメットと同等の戦闘力を備えた、文字通りの化物です。

そんなのが魔獣軍団に追従して北上して来ていたのです。

アレが魔獣軍団に合流すれば、同盟は間違いなく壊滅してしまいます。

 

「……サルガタナスをここで倒すのです!」

 

私はサルガタナスを迎え撃つ事を言葉に出して決意しました。

 

マルドゥクを微速前進させ、サルガタナスとの距離を1kmまで接近させます。

向こうも、マルドゥクの存在に気付いたようです。こちらに正面から向かって来ます。

 

私はサルガタナスとの距離をさらに詰めます。

サルガタナスは非常に頑強な外殻を持っている為、遠距離では十分なダメージを与えられないからです。

距離500mまで接近してから、レールガンを連射します。

命中した部分の外殻が削れ、吹き飛び、確実にダメージを与えていきます。

 

サルガタナスが咆哮を上げ、両腕を前面に出して防御の構えを見せた直後でした。

 

『警告、魔導障壁の展開を感知、射撃兵装が相殺されます。至急、後退する事を進言します。』

 

レールガンの弾丸が、空中で弾けたのです。

まるで目に見えない壁が存在していて、弾丸が阻まれているようなのでした。

それはサルガタナスが魔導障壁を発生させたからなのです。

 

戦術AIが警告を発します。

私は一瞬迷ってしまいました。そして、この迷いが仇となり、防御用重力場の発生が遅れてしまったのです。

 

次の瞬間に、サルガタナスが両腕の器官から高速で弾丸を射出したのです。それも何発も。

それは外殻と同じ硬さを持った弾丸で、高圧圧縮した空気で打ち出して来た物でした。

推定質量は30kg、時速500kmで飛来し、尽くマルドゥクに命中します。

 

「きゃあぁぁあ!」

 

衝撃でマルドゥクが大きく揺れます。

体勢を立て直してマルドゥクのステータスチェックを行なって愕然としました。

防御用重力場発生装置が被弾により破壊されていたのです。

もう防御用重力場を使用出来ません。

右側レールガンも損傷して使用不能。自動迎撃システムも前面の2門が潰れていました。

 

左側レールガンで反撃しようとした時です。

サルガタナスはその巨体からは想像出来ない様な瞬発力で一気に距離を詰め、鈍器と化した右腕を叩きつけてきました。

左側レールガンの基部にまともに打撃を受けて、レールガンが損壊します。

残った自動迎撃システムがエーテリックライフルのビームを浴びせますが、魔導障壁に阻まれて、サルガタナス本体に届きません。

 

もう1発、薙ぎ払うような左腕の一撃を受けて、マルドゥクは後方へ押し飛ばされます。

機体ダメージが想定よりも大きく、システムダウンを起こしてしてしまいました。

浮遊用重力場も停止。その場で半ば擱座しました。

 

どうして?私一人ではダメなのでしょうか?

私一人では、マルドゥクを持ち出しても、誰も護れないのでしょうか?

 

「…リヴルではダメなのです?…タカティンみたいに、誰かを護ることが出来ないのです?」

 

もう目前に大型魔獣(サルガタナス)が迫っています。

恐怖で体が震えて、身動きが出来ません。

私は絶望に打ちのめされ、大粒の涙が溢れて止まりません。

 

私はこれから殺される。

でも、その事が怖いのではありません。

結局、私は誰も護れず、誰も救えず、このまま消えてしまう。

その事が悔しくて、悲しくて、でもどうする事も出来なくて……

 

サルガタナスは半ば擱座したマルドゥクを警戒しつつ近づき、遂に目の前に到達しました。

止めを刺さんとゆっくりと腕を振り上げています。

 

私は覚悟して目を瞑りました。

その時、通信機から聞こえたのです。

 

『まだ諦めるな、リヴル!』

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