新人類観察紀行〜創造主が滅んで用済みになったアンドロイドが新しい世界で自分の生き方を絶賛模索中。   作:T.K(てぃ〜け〜)

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EX-1-2 カンナヅキ祭 当日

午前5:30

遠くどこからか聞こえてきる鶏の鳴き声と共に、

 

「ぅう〜ん……」

 

布団の中で伸びをして、

 

「おはようなのですよ。

今日も素敵な1日の始まりなのですよ。」

 

そう言って、リヴルは起き出した。

 

「ああ、おはよう。」

 

私も横になったまま答えた。

 

リヴルは窓辺へ行き、薄く明るくなってゆく街並みを見下ろしている。

私も起き上がると、その横へと並んだ。

 

徐々に溢れ出す朝の光に合わせるかのように、街の人々も少しずつ動き出している。

 

「今日はカンナヅキ祭か……」

 

「タカティン、リヴルは今から待ち遠しいのですよ。」

 

満面の笑みでリヴルが言う。

 

「気が早いな。まだ日が昇ったばかりだぞ。」

 

「楽しみなものは楽しみなのですよ。」

 

実に楽しそうだ。

とは言え、まだこんな時間だ。朝食にも早すぎる。

 

「タカティン、リヴルはまた温泉に入りたいのです。」

 

「朝風呂か……

時間もあるし、そうするか。」

 

「リヴルは先に行ってるのですよ。」

 

そう言って、洗面用具を持ってさっさと部屋を出て行ってしまった。

忙しないな、アイツは。

 

私も旅館の客や中居の観察がてら、温泉へ行く。

 

流石に時間が早いので、人は少ないだろうと思っていたが、案外と早起きしている客は多いらしい。

脱衣所の籠は半分近くは埋まっており、浴場にも思いの外、人はいた。

 

客達は思い思いに温泉を楽しみつつ、今日の祭を待ち侘びているようだ。

そこかしこで祭についての話し声が聞こえる。

 

ゆっくりと湯舟に漬かり、彼等の様子を観察しながら、今は私達も彼等と同じ『カンナヅキ祭』を観に来た客なのだな、と考える。

 

今すでに、祭は始まっているのだな。

雰囲気でそう感じた。

 

………おっと、長考したようだ。

昨日も遅いとリヴルに怒られたところなのだ。

これくらいにして部屋へと戻るとしよう。

 

 

 

 

部屋に戻るとリヴルはすでに戻っており、また窓辺から、賑やかになりつつある、朝の街並みを眺めていた。

 

「むぅ、遅いのですよ。アンドロイドの癖に長風呂なのですよ。」

 

私に気が付いたリヴルが頬を膨らませて叱責してくる。

 

「ああ、すまない。」

 

「もうすぐ朝食を持って来てくれるのですよ。食べたら着替えて、街を散策するのですよ。」

 

「そうだな、そうしよう。」

 

そう言って、私もリヴルの側へ行き、窓の下を眺め始めた。

 

と、リヴルが腕にしがみ付いてくる。

 

「どうした、リヴル。」

 

「なんでもないのですよ。」

 

そのまま頭を私の肩に預けるように寄りかかってくる。

空いている方の手で、リヴルの頭をそっと撫でた。

 

「おはようございます。失礼いたします。」

 

中居が朝食を持って来たようで、戸を開き、中へと入って来た。

 

「あぁ、申し訳ありません。これは失礼致しました。

その、朝食を運んでもよろしいでしょうか?」

 

何が失礼なのか?

一瞬考え、今の私達が寝衣姿で寄り添っている状況から、そういう風に受け取ったのだろう……

 

一応、念の為、私とリヴルは肉体関係は持っていない。

そもそも、機械であるアンドロイドには性欲というものが存在しない。

LCEがどうであるかは、これからのリヴルを観察する事で解ってくるだろう。

そしてそれ以前に、アンドロイドもLCEも生殖能力を持っていないのだ。

 

なんにせよ、私達の間にそういった情事など無縁なのだ。

………だが、もう面倒になったので、いちいち訂正はしない。

 

「ええ、お願いします。」

 

「どんな朝食か、楽しみなのですよ。」

 

リヴルは朝食がテーブルに並べられる様を間近で見るように、席へと座り込む。

私も向かいに座り、程よい量の朝食が並ぶのを眺めた。

 

 

朝食後、再び窓から街が活気付いてくるのをひとしきり観察した後、私達はまた街へと繰り出す事にした。

 

リヴルは寝衣を脱ぎ、下着姿となったところで寝衣を胸の前で抱きしめてから、こちらを見て、

 

「タカティン、エッチなのです。」

 

と、言った。

 

「いいから、サッサと着替えろ。」

 

「ムフ、照れなくても良いのですよ。」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべている。

本当に、コイツはこういう事をどこで覚えて来ているのだろうか……

度し難い……

 

リヴルの行く末が心配だ。

 

 

私達は通りを抜け、真っ直ぐにある場所を目指した。

町外れの山へと向かうその道を辿って行く。

 

「この先の山に『威之地の社』という、この土地の神である『チノヨリヒメ』を祀る場所があるそうだ。」

 

「そこが今日のお祭の要なのです?」

 

以前、この街に立ち寄った際に、その社の場所は教えてもらっていた。

 

「まぁ、そういう事になるな。だが関係者以外の立ち入りは禁じられているそうだから、せめて麓まで行こう。」

 

「むぅ、神様の住まいを拝見出来ないのです?

それは残念なのですよ。」

 

そんな話をしながら歩き続け、目的の山の麓、山道の入口が見え始めた時、数人の男達に呼び止められた。

男達は護身用程度の武装をしている。

だが、山賊の類などでは無く、カミナの里の自警団の者達であった。

 

「あんた達、観光客か?

申し訳ないが、この先は立ち入り禁止なんだ。引き返してもらえるかな。」

 

「あぁ、やはりそうですか。

いや、申し訳ない。つい好奇心で来てしまったのだが、ご迷惑をお掛けししました。

私達は街へ戻ります。」

 

自警団の者達に詫び、私達は踵を返した。

 

「ご苦労様なのですよ。」

 

戻り際、リヴルが笑顔で言い、男達も笑顔で手を振った。

男は大概、女児から笑顔を向けられると警戒心を解いてしまう。

リヴルが微笑みかけると、ほぼ例外なくそういう態度になるのだから、実に興味深い事だ。

 

「さて、残念だが仕方ないな。街へ戻ったら昼飯とするか。

リヴルは何が食べたいんだ?」

 

「リヴルは『テンプラソバ』と『ソバガキ』というのを食べてみたいのですよ。」

 

聞くと間髪入れずに返答して来た。食べ物の話には異様なレスポンスを見せるな……

 

「蕎麦か……ではそうしよう。確か通りの中程に蕎麦屋があったな。」

 

「いっぱい歩いたからお腹ぺこぺこなのですよ。楽しみなのです。」

 

「リヴル、この街に来てから食べてばかりじゃないのか?……太るぞ?」

 

「むぅ、リヴルは燃費が良いから太らないのですよ。」

 

「そういう事では無いぞ。」

 

さてさて、祭りが本格的に始まるまでには、まだまだ時間があるな。

昼食を済ませたら、また里を一回り巡るとしよう。

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