新人類観察紀行〜創造主が滅んで用済みになったアンドロイドが新しい世界で自分の生き方を絶賛模索中。   作:T.K(てぃ〜け〜)

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二人の居候 その4

私達は昼食を済ませて店を出ました。

 

リディアの普段着や雑貨など、思いの外沢山のものを買ってしまいました。荷物を抱え、帰路につきます。

帰った後にディジィとダリアがリディアを着せ替え人形にする気なのがアリアリと見て取れ、軽く溜息が出てしまいました。

 

帰り道の途中、聖導教会の前を通りかかった時に人集りが出来ています。

少し気になったので私達はそれを遠巻きに観察をしました。

集まった人達はそれぞれに着飾り、楽しそうにソワソワと落ち着かない様子です。

 

教会の鐘が鳴り響き、それと同時に正面の扉を三女神教の助祭が恭しく開いて、中から真っ白なウェディングドレスを着た花嫁と、真っ白な燕尾服を着た花婿が花嫁をエスコートして現れました。

 

「あぁ、今日は結婚式があったのですね。」

 

新郎新婦が出て来ると、人集りは一斉に歓喜して拍手を打ち鳴らします。

そして助祭から花束を一つずつ渡された新郎新婦は、参列者の群れに花束を投げ入れました。

 

湧き起こる感嘆と嬌声。

花束を掴んだ女性はとても嬉しそうに笑い、周りの女性達はそれを羨ましそうに見つめています。

 

「いやぁ、めでたいな。」

 

「ええ、とても良いものが観れましたわね。」

 

新郎新婦の姿を見て、微笑ましい光景を見つめます。

 

いずれは自分もあの人と式を挙げる姿を想像してしまい、なんとも気恥ずかしい気持ちが湧いてきました。

表情が緩んでいないか心配です。

 

「さて、この次は誰が…」

 

<三人とも、リディアのバイタルが急激に変化しています!>

 

ディジィがニヤついた顔で何かを言いかけたその時、スクルドの突然の警告に私達は一斉にリディアを見ました。

 

リディアは自分を掻き抱き、ガタガタと震えてその場に膝を突いています。

顔色は青く、目の焦点が合っていません。

 

「リディア、どうしました? しっかりして!」

 

「カトレア、ダリア、荷物を持て! アタシが連れて帰る!」

 

ディジィは私達に荷物を押し付けると手早くリディアを抱え上げ、彼女に負担をかけないように気を配りながら駆け出しました。

 

私とダリアも両手いっぱいの荷物を持ってともに駆け出しました。

 

いったい何が?

あぁもう、何が起こったというのですか!

 

 

激しく狼狽え、震えるリディアに鎮静剤を打ち、彼女を眠らせました。

 

リディアの額から浮かぶ汗を拭き取り、彼女の身体のチェックを行います。

身体的には特にこれといった異常は認められず、ひとまずは安堵しました。

 

『心拍数は安定してきました。ですが脳波にノイズを検知……、これは、夢を観ているようですね。』

 

「夢……ですか。」

 

『ええ、それも残念な事に悪夢と呼ばれる類のもののようですが。』

 

彼女の内面、精神的な面ではどのような変化が起こっているのか、予想ができません。

 

「スクルド、引き続き彼女のバイタルチェックをお願いします。」

 

『わかっています。他にやることもありませんし、お願いされるまでもありません。』

 

私とディジィはその場をスクルドとダリアに任せて退出しました。

何かを殴りつけて叩き壊したいという衝動が湧き上がり、すぐにそれを押さえつけて消し去りました。

 

「あぁ、くそっ! なんか出来る事は無いのかよ!」

 

ディジィは感情を吐き出して自身の平静を保っています。

[人]では無い私達『アンドロイド』には、所詮は[人]の内面をどうにも出来ないのでしょうか。

 

なんとも言えない無力感を感じ、深く溜息をつきました。

 

 

<リディアが目を醒ましましたわ。>

 

ダリアからの通信を受けて、私達はリディアのもとに集まりました。

 

彼女の表情は幾分かは落ち着いていましたが、激しく打ち沈んでいるのはあきらかです。

彼女の額にそっと手を当てます。

 

「……熱は無いようですね。気分はいががですか?」

 

「私……、私、夢を観たの。とても……とても、嫌な夢。」

 

「大丈夫、それはただの夢、現実ではありません。」

 

私の言葉に、リディアは突如豹変しました。

 

「……違う、違う違う違う違う! 夢なんかじゃ無い! 夢なんかじゃ……無い……。」

 

最後は力無く呟くように、彼女は項垂れてしまいました。

 

私はベッドに腰を下ろして彼女を抱き寄せ、そっと優しく頭を撫でました。

 

リディアは大粒の涙を流し、咽ぶように泣きじゃくります。

私は、彼女の気が済むまで彼女抱きしめ続けました。

 

ひとしきり泣きじゃくったリディアはようやく落ち着いて、疲れてまた眠りました。

 

私達はこの事態をどう対処するべきか、悩みました。

 

「リディアに夢の内容を聞くべきでしょうか。」

 

「だけどなぁ、さっきの様子だと考えてる以上に深刻じゃないかなぁ。」

 

「ですけれど、このままという訳にはいきませんわ。そっとしておいても何の解決にもなりませんもの。」

 

そんな事は分かりきっている事です。

ですが………

 

『人間は厄介ですね。我々のように不要な記憶を削除したり、傷んだパーツを取り替えるようにはいかないのですから。』

 

「そこなんだよ。」

 

スクルドの言葉にディジィが同意します。

本当に、そう出来れば誰も苦労なんてしないのです。

 

私は決断しました。

 

「やはりリディアに話を聞きましょう。今は辛くても、早期に解決なり対策なりをしなければ、彼女の為になりません。」

 

私の言葉に三人は沈黙のまま同意しました。

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