メガテン三次創作(カオス転生二次)   作:古井京魚堂

6 / 9
ファミリア

 デビルサマナー星川リリィ(本名:豪正雄)は転生者である。

 

「指揮官さまは悪魔召喚プログラムを使わずに悪魔と契約していらっしゃるのね」

 

 そういえばと彼の契約悪魔(仲魔)であるシキガミが言った。

 彼女の視線の向かう先には、ちゅるんと出てくるタイプのおやつを無心に舐めるネコショウグンの姿があった。常には勇壮にして思慮深き仲魔の秘神も魔性のおやつには形無しである。

 

「そうなるね」

 

 肯定する。

 

 この世界では未だ悪魔召喚プログラムは存在が確認されていないから使う使わない以前の話でもある。

 

 その間もリリィの右手は休まず動き、ハリネズミの悪魔チャグリンの毛をブラッシングしてやっている。うっとりとした表情でハリネズミは丸くなっていた。契約時の内容に含まれているというのもあるのだが、チャグリンの毛繕いはリリィ自身の楽しみでもあった。

 

「よし。お仕舞い!」

 

「ありがとー正雄―」

 

 寝惚け声で例を言うとそのままハリネズミは眠ってしまった。これもいつものことである。そっと寝床に運んでやる。

 

「かわいらしい子たちね」

 

「うん。そうなんだ」

 

 あまり気を許し過ぎてはいけないと頭では分かっているのだが、ついつい甘やかしてしまう。

 

 自分に召喚術を含む儀式魔術を教えてくれた『先生』――前世からオカルト知識に知悉していた文学研究家からは繰り返し小言を貰っていた。

 

 適性を調べて貰った時、直接殴り合うよりもその道が向いているだろうと薦められたからという消極的な理由ではあったが、非常に満足している。今ではその時の決断を褒めてやりたい。

 

「掲示板を見たり話を聞く限り、かなり少数派のように思えるのだけど、シキガミを持とうとは思わなかったの?」

 

「それをキミが言っちゃうかあ」

 

 持とうとして頑張った結果がフォーミダブルなんだけどなあとリリィは思った。

 ハーレム願望は持っていないのと理想の子を入手するまでのつなぎに持たれる子が可哀想に思われたのだ。

 

 だから勉強して一から儀式魔術を覚えた。

 非常に難解だった。フルマラソンをしながら詩を吟じ同時に数学パズルを解くような心身を酷使する特殊技能。

 

「もっとも。これでだいぶ楽をさせてもらってるけどね」

 

 スマホのアプリを起動させる。リリィが小さな手で画面を操作すると、複雑な幾何学模様が現れる。

 

「これをプリントアウトして儀式に使うんだ。修行中は全部自分で計算して手書きで描いてたからさあ。これは神のツールだよ」

 

 手放しで絶賛する。

 

 原作の悪魔召喚プログラムのような儀式手順の全てを代行してくれる都合の良いアイテムは存在しないが、有志の作成による召喚補助ツールを利用している。

 

 GPSと連動して召喚儀式を行う場所の緯度経度、時刻、天文情報――その場から見える星辰の配置、温度湿度天候等の気象情報に基づいた最適を算出し、使用する護符や魔法陣の幾何学模様を自動で描画してくれる。

 

「まあ。面白いわ。ねえ、そのアプリ、私にも使えるかしら」

 

「残念。このアプリ自体はただのオシャレな幾何学模様を自動で作ってくれるだけなんだ」

 

 だからそれだけで悪魔召喚の儀式魔術が使えるようになるわけではない。だが同時に、手順通りに進めれば成立するのが儀式魔術でもある。

 

「呪文さえ覚えられれば召喚自体は出来ると思うよ」

 

 儀式を行う神殿の設営も簡単な物なら日用品をルールに従って配置するだけで成立する。リリィが教えても良いし、汎用的な祭壇の組み方もアプリ内で確認できる。

 

「最近バージョンが上がって、月齢の影響によるGPの変動が最初から織り込まれるようになってさらに便利になったんだ」

 

 召喚維持に必要なMAGの推定量、契約時のマッカの相場、供物のおススメまで教えてくれる。

 

「正直、最後ら辺は逆に邪魔かなって気もするけどね」

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 フォーミダブルが生まれる少し前。

 リリィは星霊神社境内にある神主の自宅に呼ばれていた。発注したシキガミの最終確認の為の打ち合わせである。

 

 玄関の呼び鈴を鳴らすと、フットワークの軽い本人が「はいはい」と出迎えに来て、そのまま客間に案内される。中はこれまた生活感あふれる普通の民家であった。

 途中の廊下にトイレットペーパーの袋や段ボールが置かれているのに「ああ。この人も生きてるんだな」という不思議な感慨を覚える。また客間に続く道を頓着せず物置にしているのは、普段は身内以外の来客がないのだろうなとも。

 

 外から見ると神秘に包まれたガイア連合の盟主の居城も内に入ればこんなものである。同胞たる転生者以外に見せる気はないだろうが。

 

 リリィは連合結成後に合流した中途入社組なので、神主に対して本人もこれまで気づかないくらいの隔意があったのだが、あんまり超越者として仰ぎ見るのはお互いにとって良くないのかもなとそんな風に思った。

 

 通されたのは最近珍しくなったレトロな洋風の客間だった。一言で言えば「一昔前の田舎の家の応接間」である。

 

 8畳ほどの空間に物がぎっしりと詰まっている。あまり高くない天井にはシャンデリア風の照明が吊るされていて、四方の壁には経年で色のくすんだ壁紙が張られている。部屋の中央のテーブルを挟んでソファが四つ並んでいる。

 入って左側の壁際にはアップライトピアノが設置されていて、その反対側、来客がソファに座った時にちょうど目に入るマントルピース風の飾り棚の上に木枠に収まったダイヤル式のテレビが鎮座している。棚の中に誇らしげに陳列された洋酒の(ボトル)。中でも著名なスコッチ・ウィスキーの黒ラベル(ジョニ黒)は当時の家主の秘蔵の逸品だったのではないか。

 

 田舎のお祖父ちゃんの家みたいだなとリリィは思った。

 あまりショタおじの趣味という感じはしないので、彼の両親か祖父母が建てたものをそのまま引き継いでいるのだろう。

 

 ソファの一つに勧められるままショタおじと向かい合って腰掛ける。その際に、ショタおじの隣に座っていた先客と互いに挨拶をする。相手はシキガミとその装備の製造に携わる技術部の所属の異能者だと名乗った。

 

 基本的には最初は事前に書類で申請した内容に間違いや勘違いはないかの確認をするだけなのでサクサクと進む。

 

「女性器はどうする? 申請書には不要とあるけど」

 

「ダッチワイフやラブドールとして扱いたいわけじゃないから要らないかな」

 

 神主とリリィ。一見すると小学生か中学生に見える二人が交わすには異様な内容だが誰も気にする者はいない。

 

「あれ! そういうことかあ。てっきり」

 

「てっきり?」

 

「パイズリや授乳プレイにしか興味のない異常性欲の持ち主なのかと」

 

「そんな風に思われてたの!」

 

「いや、だって。乳房にはむちゃくちゃ注文つけてくるのに下は不要と言われたらそうも思うよ」

 

「心外だなあ。そりゃあ大きなおっぱいが大好きなのは認めるけど」

 

「あっはっは。じゃあ下は無性型で……」

 

「待ってください」

 

 同席していたガイア連合技術部所属の異能者から物言いが入る。

 

「クライアント。星川さんがシキガミに性的な欲求をぶつける気がないというのは分かりました。ですがシキガミの事を考えるなら、お考え直しいただきたい」

 

 真剣な表情で訴える。

 

「統計上弊社のシキガミは主人に対して愛情を抱く傾向が有ります。抱いてやれとまでは言えませんが、その状態で彼・彼女らが自らを慰める方途を断つのは残酷であるとすら言えるでしょう」

 

 その情熱はリリィの心を動かした。

 ぶっちゃけるとリリィも別に断固たる意志をもって女性器をオミットしようとしていたわけではない。

 ただ、なんというか……。

 

「ズラッとオナホールを並べて一番好きだったのを選べって言うのはやめた方が良いよ」

 

 外性器の見た目と使い心地を自分で選べと言われても困る。羞恥心以前に数量と露骨さに圧倒されて眩暈がして来たからだ。

 

「なんと! もしや回答で2番がもっとも多いのは皆さん具合の善し悪しで選ばれたわけではなかった?」

 

 意想外の事実に技術部員は甚大なショックを受けていた。

 

「ボクからもいいかな」

 

「……なんですか神主」

 

「ボクは知っての通り童貞なんだけど」

 

「はい」

 

「自分の恋人のマ〇コの形が既製品の流用で、同じ形の持ち主が他の男に抱かれてるかもしれないっていうのはあまり良い気分ではないんじゃない? NTRとまでは行かないにしろ」

 

「……ある程度ランダムになるようにします」

 

 そういうことになった。

 

 ちなみにこれは余談だが。その後オーナーのチ〇コの型を元に作成する案が浮上して、過去のオナホール事件と併せて、シキガミを相棒や我が子として愛するオーナーを中心に抗議運動が勃発した。

 なおシキガミたちは多くが抗議運動に抗議して事態はカオスを極めたという。

 

「ねえ。シキガミの戦闘能力について話さない?」

 

 話が妙な方向に転がって、おかしくなった空気を払拭するためにリリィは提案した。なにより、もともとそちらがこの会合の本命である。

 

「空母の航空攻撃はペーパークラフトの飛行機で簡易式神を作ってザンを連発させるなりマハザンストーン辺りを投下させる形で再現できると思います」

 

 息を吹き返した技術部員が説明する。

 

「実際の運用では、少し機能を強化した中級のシキを班長として、下位のシキたちを統括させるのが現実的でしょう」

 

「なるほど。フォーミダブルには特定の装備をさせていると追加効果が発動するスキルがあったんで、じゃあそれを宛てようかな」

 

「ええと。ああ、ありました。資料によるとフェアリーアルバコアという攻撃機の装備で【フォロワーウィング】というスキルが強化されるんですね。あってますか?」

 

「あってます」

 

「おや。フェアリーアルバコア、実在の航空機なのですね」

 

 その場でググった技術部員が納得した様子で頷く。

 

「でしたら資料も十分ですね。そういうのが得意な奴がいるんですよ。非転生者なので前世絡みの仕事は任せづらいんですけどね、こういう場合は頼りになる奴ですよ」

 

「分かります。ウチの事務所のスタッフさんたちも凄いんですよ」

 

 それからしばらく非転生者の中の才人たちの話題で盛り上がった。少しだけ打ち解けた。

 

「次は第2スキルの【じっとしてなさい!】ですか……これは少し難しいですね。先に第3スキル【ボックスハンガー】に行っても?」

 

「いいよ」

 

「こちらは分かりやすいですね。自分が受けるダメージを常時軽減し、攻撃行動をトリガーに味方にも一定時間の軽減を付与するスキルですか」

 

 少し考えた後で言う。

 

「全門耐性は……できなくもないのですが、流石にコストが重いのでパッシブの物理耐性と防御力上昇の魔法ラクカジャで再現しましょう」

 

「僕も落とし込むとしたらその辺りが妥当かなと思ってたんで異論はないかな。でも全門耐性ができなくもないって本当なの?」

 

「はい。既にスキルカードの生成に成功しています」

 

 全門耐性とは物理・万能以外のダメージを50%に軽減する非常に強力なパッシブスキルである。上位に更に物理も軽減できるようになる真・全門耐性が存在する。

 

「問題の一定時間相手の速度を0にしてその場に停止させる【じっとしてなさい!】ですが。これは一番近いのは獣の眼光ですね?」

 

「そうかな? そうかも。えっまって、まさかこれもできるの?」

 

「ふふ。……不可能ですね。今のところ生成には成功していません」

 

「だよね! 敵専用スキルだから驚いちゃった」

 

「敵専用とかはないです。すべては純粋に技術的な問題です。理論上は用途に合致した貴重な素材と潤沢な予算、十分な試行回数さえあればより高位の真・全門耐性だろうが龍の眼光だろうが再現できるはずなんです。なのでここは賭けに出ましょう。ショタおじ! 飽きてスマホで掲示板見てる場合じゃありませんよ、ショタおじ! 例の呪物をください。ほらハリー! ハリー! 我々で星川さんの夢を叶えるんだよ!」

 

 目を爛々と輝かせ早口で捲し立てるので気持ち悪いなとリリィは思った。自分が使ってみたいだけだよなとも。黄金の沈黙を保った。

 

「ああ。あれか。それは別に構わないけどさ。君それリリィ君のことは出汁にしてるだけで、絶対キミが使いたいだけだよね」

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

「こいつはイケるな。婆さんの庭で喰った桃を髣髴(ほうふつ)させる結構な味わいだ。品種改良ってのか? 重畳重畳。人界の果実もここまで来たか」

 

 フォーミダブルが机に向かって本を読んでいると、どこからともなく陽気な男の声が聞こえた。巌のように重厚でそれでいて若芽のような活力と稚気とを感じさせる妖しい色気のある声だ。

 フォミ子は目を丸くした。

 室内には誰もいないはずだった。出入りした気配も感じなかった。いつからそこにいたものか。絨毯の上で太々しい表情の猿猴が肘を突き右手を枕に寝そべっていた。目の前に置いた盆から満載にした果実を貪り食っている。

 

「いよう。こうしてツラつき合わせるのは初めてだな」

 

 目が合うと悪びれもせずにそんなことを言う。

 

「オレ様が誰かなんてこたあ言うまでもないよな」

 

 瞳に宿った見鬼の力(アナライズ)を使うまでもない。自分の力の淵源は眼前の悪魔にあるという確信があった。よしんば、それがなくとも中世中国の貴人を思わせる服を着たサルの神魔に心当たりは一つしかない。道行く人を捕まえて、この偉そうに喋るサルは誰ですかとたずねれば十人が十人正答するだろう。

 

「当然ですわ。斉天大聖。孫……行者様とお呼びしても?」

 

 気を取り直したフォミ子は尋ねる。

 念のため実名を避けておく。日本にもあった風習だが中国はより厳しい。なにより神魔の逆鱗はどこにあるか知れたものではない。

 

 斉天大聖 孫悟空。『西遊記』に名高い天の宮を大いに(さわ)がせた妖仙にして仏法の守護神。

 例の合体事故で爆誕顕現した邪神アリオクに敗けず劣らぬ大物悪魔である。

 

「悟空でも構わねえぜ。オレ様とオマエの仲じゃねえか」

 

「どんな仲ですか」

 

「んー? そうさな。兄弟は悟能悟浄のスカポンタンで間に合ってるから、親子とってとこかねえ。どうよ父様(ててさま)! 娘よ! ってな具合にハグでもするかね?」

 

「父様!」

 

 その間わずかコンマ1秒(慣用表現)。ネタの命は瞬発力、フォーミダブルは考えるより前に飛びついていた。

 

「うおう。ギャハハハハっ! 躊躇なく飛び込んでくるとか嘘だろオマエ。信じられねえ! テメエ、さてはその場のノリで生きてやがるな?」

 

 斉天大聖はゲラゲラと笑いながらフォーミダブルを抱き返す。

 フォミ子の身を挺した行動は、終始にやけた笑みを浮かべていた猿面を一瞬とはいえ戸惑わせた。してやったりとガッツポーズする心の中のチビフォミ子。フォーミダブルの心の中に住んでいるのはオッサンではなかったのか。

 

「くかか。世辞抜きで気に入った。どうだ子の一人でも授けてやろうか?」

 

 偉大なる仙猴が狒々爺の表情で一発アウトのセクハラをかます。

 

「まあ。孫悟空様が狒々だっただなんて新発見ですわね。それで親子設定はどこに行ったんです?」

 

 悟空と呼んでから、父娘の間柄ならその辺りの礼儀はより厳格なのではとちらりと考えたが、所詮はお互い様の戯言である、気にしないことにした。

 

「冗談だ。冗談。第一、オレ様もオマエさんのような足のデカいアマっ子は好みじゃねえ」

 

「纏足した女がお好みで?」

 

「ほれ。足の小さな女のアレは具合が良いと言うだろう。誰よりも足の小さなシンデレラを必死こいて国中探し回った王子様はありゃあ見上げた好き者だな」

 

 オレ様もあやかりたいものだ、とどこまで本気の言かは定かではないがこれまた最低の答えが返ってくる。

 

 フォミ子は吹き出した。不覚にもこんなしょうもない下ネタで笑ってしまった。

 

「お。笑いやがったな。結構。そろそろ腹割って話そうぜ。オレ様はあんまり腹の探り合いとか好きじゃあねえんだわ」

 

 首をポンポンと叩いて、肩が凝ってかなわんという振りをする。

 

「あれだろ? オマエさんが知りたいのはオレ様のような超大物が『どうして人間世界に顕現できているのか』。違うか?」

 

 フォミ子はこくりと頷いた。

 

「いつだって抜け道と裏技は存在するもんさ」

 

 懐から取り出した鍵を見せびらかしながらそんなことを言う。あっと小さく声を上げる。見覚えのあるキーホルダーのついた鍵だった。

 

「ああ。なるほど。どういうカラクリか分かりましたわ」

 

 ピンと来た。屋敷の中の気配を探る。ビンゴ。メイドの数が一人足りない。

 

「私が使い魔を作ったことで文字通りの『抜け道(バックドア)』が出来たんですわね? 縁ある器にこれ幸いと憑依されているだけで、そのお姿も変化の術で化けてらっしゃるだけ。そうではなくて?」

 

「御明察!」

 

 呵々と笑うと、斉天大聖は宙返りを一つ、不敵な笑みを浮かべる美しいメイドが姿を現す。フォミ子は苦い顔でそれを見ていた。

 

「その子には悪いけれど違和感が凄いわ。申し訳ないのだけどもう一度変身してくださいます?」

 

「任せよ。変化幻術は悟空様の大のお得意。地煞七十二般の変化術、その真髄をば御覧じろ。十八番の四倍だぞ四倍」

 

 軽口を叩き。瞬くうちに貴人然とした猴になる。

 

「さあて。オレ様が使った抜け道に気がついたオマエさんだ。オレ様が降りて来た理由も分かるよな?」

 

「ええ、ええ、よおく分かりましたとも。心配して損をしましたわ」

 

 何のことはない。脆弱性への警告がてら、本当にただ遊びに来たのだこの神様は。

 子供が小道を見つけて入り込むような刹那的な冒険心の命じるままに、面白そうだったからそこを通って来た。

 

「やれるからやってみただけで、確たる理由はもとより無し。神託も、使命も、地上への野心も何の意図も存在しない」

 

「正解だ。強いて言えばオマエさんの顔を一度見てみたかったってのはあるか」

 

 しげしげとフォミ子の顔を舐めるように見る。

 

「ケケケ。まさかまさかよな。オレ様の抜いた毛の一本がオマエさんのようなゲテモノに化けるたあ。千里眼の野郎でも、いやさお釈迦様でも御存知あるまい」

 

 孫悟空の使う代表的な術に身外身の法という物がある。引き千切った毛を吹き飛ばして無数の分身を生み出す、いわゆる分身の術である。

 

 それに使われたという霊毛を、とある道教教団が相伝していたのだが、清代の末年に起こった義和団事件の渦中の混乱で国外に流出する。その後の百年間、欧米のオカルティストと好事家の間を転々とした末に、ガイア連合の所蔵する所となった。

 

 そしてそれがどれだけ歴史的な重宝だとしても、使用を躊躇しないのがショタおじこと神主であり、ガイア連合の技術開発陣である。良い触媒が手に入ったばかりに即日消耗品として使ってしまった。

 

「入手困難な貴重な素材は強力なアイテムを合成するのに使う。常識だろう」

 

 とは某神主の言。

 

「そして生まれたのが私だそうですね」




一旦ここでフォーミダブル、フォミ子とリリィのお話は完結です。お付き合いいただきありがとうございました。
1話。出オチの単発のつもりで書いた短編でした。それを「あ。ここ掘れるな。あ。ここもだ」と掘り下げるうちにオマケのエピソードが5話増えました。
作者にとってもお気に入りのキャラクターとなりました。もし機会があれば二人の別のお話も書いてみたいです。

なお「次の話」は別の主人公たちによるお話となりますので御了承ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。