Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶10「盗賊団のボス」

――――――声が漏れそうになるのを必死にこらえる。

ロボ子さんの説明ではすでに過去が改変しているから、目の前のノエルはもちろん――隣にいるマリンとるしあもときのそらを覚えているだろう。

だが、もしも覚えていなかったら?

――そんな事を考えてしまう。

 

「…あ、あれ。もしかして、そらちゃん?」

 

――そのセリフを聞いた瞬間、先程までの思考は杞憂だったなと悟る。

 

「そらちゃん!久しぶり!」

 

ときのそらの存在に気づいた途端、ハーフエルフ――フレアとの間にあった剣幕は途切れ、マリン、るしあと共にノエルが駆け寄ってきた。

 

「いやー10年ぶりですかね」

 

「あんまり見た目変わってないね」

 

マリンとるしあが次々と言葉を並べていく。

その途中にあった「10年ぶり」と言う言葉が印象に残った。

あの、Parallel World KINGDOMから10年後――つまり、現代の約490年前がここの世界というわけだ。

 

「あれ、そらちゃんこの人たちと知り合いなの?」

 

そんなときのそらの様子を見ていたフレアがそう聞いてくる。

 

「…う、うん」

 

すぐに落ち着きを取り戻すのは難しい。

しばらくは正常を保てないかもしれないが、そこは何とか堪えよう。

 

「…そらちゃん、この子と知り合ってたんだ」

 

ノエルがフレアとときのそらを交互に見つめながら言う。

 

「…ん?それ、聖騎士団のマーク?」

 

フレアがノエルの服装に付いているマークを見て質問する。

 

「そうだよ。私たちは別にあなたに危害を加えに来たわけじゃない」

 

それを聞いたときのそらは、少し安心した。

仲間以上の関係――最早友達と言えるノエルたちと、ついさっき知り合ったばかりだが悪そうには見えず、ロボ子さんが救いたいと言う人物の1人であるフレア。

2人が対立してしまえば世界を救うのはかなり困難になるだろう。

 

「何しに来たの?」

 

「助けに来た。…より細かくいえば、今あなたを狙う「盗賊団」、それの制圧が目的」

 

「ふーん。…まぁ、そういう事なら助かるね」

 

フレアはすぐに納得した様子で、ノエルたちを歓迎した。

 

「私は、不知火フレア」

 

「フレア…良い名前だね。私は白銀聖騎士団団長の白銀ノエル。よろしく」

 

「よろしく、ノエル」

 

お互いに握手を交わす。そのまま、ノエルはマリンとるしあについても紹介をしたのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「ほーん。王国でもかなり噂になってるんか」

 

ノエルが一通りの話を説明し、内容を理解したフレア。

フレアを襲った盗賊団というのは王国でもかなり目立つ動きをしているみたいだった。

 

「とりあえず盗賊団たちを抑えるように指示されてるのは聖騎士団の団員10人と私。それからマリンとるしあだけだね」

 

「ノエル団長は…」

 

「その肩書き言わなくていいよ。呼び捨てでもちゃん付けでも好きにして。私だけ団長はちょっと嫌だもん」

 

「あっ、うん。ノエルちゃんは団長なのに盗賊団関連に?」

 

団長や副団長といった要となる人物をそう簡単に動かさないのが常識だと考えている。

 

「今王国で騒がれてるのが盗賊団くらいだからね。団長である私も自分から率先してやってるんです!」

 

胸を張ってそう言うノエルだが、団長としての自覚を持って慎重に行動してもらいたいと心の中で思った。

 

「でも他の団員見当たらないよ?」

 

フレアが真っ当な疑問を言う。今この場にいるのは、フレアとときのそら、そしてノエル、マリン、るしあの5人だけだ。

 

「団員たちは来てないよ?私たちだけで来たんだもん」

 

「…あんたほんとに団長?」

 

フレアの言い分も分かる。ここまで好き勝手に動かれちゃ団員たちも苦労をするに違いない。

最も、団長だからこそこうやって自由に動けるのかもしれないが。

 

「今日はまず今狙われているという噂のハーフエルフを見つけることだったからね。一先ず目的は達成かな」

 

「そしたら次はどうするの?」

 

ノエルたちが来たという目的。その1つ目が達成されたことで次はどうするのかとるしあが聞く。

 

「今団員たちは盗賊団のアジトを詮索中だからね。報告があるまでこっちも下手に動けないかも」

 

「それじゃあ、一旦ウチに泊まってく?」

 

フレアがそんな申し出をする。

 

「え、でもノエルちゃん団長だから…」

 

「あーそれなら大丈夫。すでに国王に1週間ほど不在になるって言ってあるし。後のことは副団長に任せてるし」

 

「ほんと自由だね。それじゃあ、マリンとるしあも泊まる?」

 

「そうするわ。どうせ船長もやる事特にないし」

 

「るしあも賛成。妖精さんとか凄い気になるし!」

 

「おっけー…って、マリン今船長って言った?」

 

「ん?言ったけどどうかしました?」

 

「…。ごめんねそらちゃん?本当に海賊団いたんだ…」

 

フレアちゃんが何故か私に向かって謝罪してくる。

どちらかと言えばマリンちゃんに対してするのが正しいのでは無いだろうか?

 

「おいコラァ!なんか今かなーり船長を憐れむ目で見たよなぁ!?やんのか!?」

 

「ちょっ!落ち着いてよマリン!」

 

「ふっ!この私に勝てるかなぁ!?」

 

「フ、フレアちゃんまで乗り気になってる…」

 

フレアとマリンの表面上の言い争いは小一時間にも及んだという。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

その日は突然やって来る。フレアの家に泊まって3日目――ノエルたちが来た次の日に、団員から盗賊団の住処が分かったという報告が届いた。

思ったよりも早く進んでいる気がする。

 

「…前回よりもすぐに終われるかな?」

 

そうは言っても、気を抜かずしっかりと役目を果たさなきゃ。

 

「…よし。準備できた?」

 

その報告を受け、ノエルが皆に確認を取る。

 

「こっちは大丈夫だよ」

 

「るしあたちも大丈夫!」

 

各々準備を終え、フレアの家の外へと出る。

 

「それじゃあ行こうか」

 

報告を頼りに、盗賊団たちのアジトへと向かっていく。

森の中の移動に関してはフレアが1番詳しいため、先頭には、フレアと報告を受けたノエルが並んで歩いている。

 

「…ここ分かる?」

 

「あー…行ったことはないけど方角なら。こっち」

 

ノエルの目的地まで書いた地図を、フレアが実際の配置に置き換えて道案内をする。

そして、およそ30分ほど歩いた頃だ。

 

「おっ、森を抜けますね」

 

段々と木々の隙間が広がっていき、やがて荒野のような景色が見えてきた。

 

「いかにも危険な輩がいそうな場所ですね」

 

「そうだね…あ、もしかしてあっちの中とか?」

 

るしあが1つの洞窟へ繋がるような穴を見つけた。

 

「いやさすがにそこは違うんじゃない?」

 

「んー、いや?そこであっとるよ」

 

「まじか」

 

思ったより目立つようなアジトに驚きを隠せないマリン。

 

「まぁ何にせよすぐに見つけられたし。…森を襲ったこと、絶対に許さないよ」

 

フレアは、静かにその怒りを露わにする。

全員の意思が決まったようで、今すぐに乗り込む覚悟をしていた。

 

「せ…せめて団員さん待った方がいいんじゃないの?」

 

ただ感情だけで動いて、いい結果になる所を見たことがない。ときのそらは皆の意思を崩さないよう丁寧に案を言い出した。

 

「…団員さんに周りを見張らせるとか」

 

「…確かにそうかもね。私たちだけで行って、別のところから逃げられたり、追加が来たら面倒だもんね」

 

「それもそうだね。…とりあえずノエルの部下が来るのを待つか」

 

何とかときのそらの言葉は琴線に触れることがなかった様子で、ノエル、フレアが納得しマリンとるしあもそれに賛成をした。

 

「一応団員もこっちに向かってるみたいだから。あと少しそこの茂みで隠れているとするか」

 

「ついでに私があの付近を監視しとくよ」

 

「ありがとうフレア」

 

フレアが代わりに監視をしておくという言葉に1人が疑問を浮かべた。

 

「…あれ、きんつばちゃんは?」

 

最初出会った時、フレアの側近妖精のきんつばが森を見張っていたと言っていた気がする。

 

「きんつば?」

 

もちろん身に覚えのないノエルとマリンとるしあは?を頭に浮かべている。

 

「あー。皆には後で紹介するよ。…きんつばはあの森全体を監視させているから今回はお留守番させてるの」

 

なるほど。だから、きんつばがいない分、フレア自身が監視をする役目を担ったということか。

 

「…あ、もしかしてあれじゃない?」

 

るしあが違う方向からやってくる人物たちに気づく。

 

「…よし」

 

たどり着いた団員に指示を飛ばし終えたノエル。意気込みをいれると、今度こそ全員で乗り込む準備が整ったのだ。

 

「行こう!」

 

そして、揃って穴へ向かって1歩進め――

 

「ぐぁぁ!?」

 

「っ!?」

 

周囲を見張るように指示された団員の内、穴に1番近い者と思わしき団員の呻き声が聞こえてきた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「なんですっ!?」

 

驚き、足を止めるマリンとるしあとときのそら。

それとは反対に声が聞こえた方へ更に足を進めたノエルとフレア。

 

「っ!これはっ…!」

 

そんなノエルとフレアは、あるモノを前にして足を止めた。

 

「…バケモノ…!?」

 

呻き声を上げた団員を貪るのは、明らかに盗賊団の一員――だが、明らかにそれが放つオーラはバケモノが持つものだった。

 

「…憑依型、もしくは操作型のバケモノ?」

 

「…だとしたらSはあるね」

 

「…つまり親方…奴らが言うボスってバケモノの事?」

 

フレアが盗賊団の言う「ボス」の存在に疑問を持ち始めた。

本来、バケモノに従う人間は存在しない。

つまり、盗賊団たちが現れた理由の一つ。それは――

 

「…バケモノが操ったって事だろうね」

 

一つの答えへとたどり着く。

 

「その場合、私は盗賊団とバケモノどっちを恨めばいいのか分からないね」

 

「両方恨んだら?盗賊団たちの意志に関係なく聖騎士団として、あいつらを裁くよ」

 

ノエルがそう答えると、フレアは変なことに悩んでしまった事を恥ずかしく思ったのか、咳払いを1つ入れる。

 

「それじゃあやりますか!」

 

まずは目の前のバケモノに操られる盗賊団たち。

それからボスであるバケモノを討伐しよう。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

ここからどうするか。ときのそらはそれを悩んでいる。

周囲を見張るように指示された団員たちだが、先の状況を見てしまったため、ノエルたちに援護する形で戦闘の場へと行ってしまう。

ときのそらはただ1人、茂みに隠れたままその戦況を見守るしか無かった。

念の為にと、フレアが森の妖精を何匹か付けてくれたおかげで危険にいち早く気づくことが出来る。

 

「…それにしても」

 

最初から気づいていた事だが、この森の妖精とParallel World MAINで感じ取った感覚が同じ気がしている。

 

「って、そんなこと考えている場合じゃないっ」

 

あとで分かることだろう。今は目の前の状況に集中しなくてはいけない。

 

「っ!?」

 

そう思ったときだ。フレアの背後に謎の黒い手が現れる。

――そして、その手には誰一人として気づいていなかった。

 

「フレアちゃん!!」

 

「――っ!?」

 

もう迷わない。例え、直接の干渉になったとしてもこれくらいは許してもらえるだろう。

精一杯の力を込めて、腰から取り出した――フレアに返された、フレアの弓矢を投げつける。

 

「グガァ!」

 

黒い手はフレアに届く前に、投げつけた弓矢によって阻止された。

間一髪のとこでフレアを守ることに成功したのだ。

 

「おりゃ!」

 

「グゥゥ!!」

 

すかさずノエルが黒い手に攻撃を加える。そのまま、伸びてきた元の場所へと黒い手は戻っていく。

 

「ありがとうそらちゃん!」

 

フレアが礼を言い、そのまま残りの盗賊団たちと応戦する。

 

「…本当に役にたった…」

 

 

――――――――――――――――――

 

 

戦闘が始まって数分が経過した。

前見た時のノエルたちと違い、今では明らかに実力が増している。

見える範囲での盗賊団は全て倒されている。団員の中には、死者や重傷者がいる中、ノエル、マリン、るしあ、フレアはほぼ無傷という状態だ。

 

「さっきの黒い手…」

 

「間違いなくボスのバケモノでしょうね」

 

迷いなく、全員で穴の中へと入っていく。

――穴の中は階段状になっているため、かなりの深さとなっている。

 

――ドォォン!

 

「…うっ!?」

 

「きゃぁぁ!!?」

 

階段を降りる中、一際大きな音が聞こえると、足場が崩され皆同時に下へと落とされていく。

 

「――そらちゃん!」

 

落ちてくるときのそらを上手くキャッチするノエル。

ここで落下死なんてでもしたら笑えない。

 

「まさか敵側から歓迎してくれるとはね」

 

幸先は悪いものの、ようやくボスと呼ばれるバケモノと対峙する。

 

「…盗賊団まとめて、お前を倒すよ!」

 

ノエルが宣言すると同時、るしあが魔力を溜め込む。

 

「…『怨恨』!」

 

目の前にいるのは、体長2mを超える黒いモヤがかかっている人型バケモノ。背中から無数の黒い手が伸びている。

 

「…妖精たち」

 

そしてフレアは無数の妖精をその身を囲うように呼び寄せる。

 

「行けっ!」

 

るしあとフレアが息を合わせる。

人型バケモノに向かって、『怨恨』と妖精が同時に襲いかかった。

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