Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶11「金唾の矢」

――――――バケモノに攻撃の隙を与えないよう、るしあとフレアが交互に攻撃を仕掛け動きを封じている。

その間にノエルとマリンが最大の一撃を叩き込む準備をする。

 

「…よしっ!」

 

マリンとノエルの掛け声を合図に、るしあとフレアがバケモノから距離を空ける。

 

「いっけー!必殺!『ロマンス・ホロイズム』!!」

 

マリンの持つ武器[マリンアンカー]の先端と持ち手を繋ぐ鎖がピンク色に光だし、普通ではありえない、螺旋状に渦巻きながらその鎖が伸びていく。

そして、持ち手から先端までを鎖が回りながら覆い尽くし、その中から先端の碇にパワーを貯めるかのように赤色の波動が飛んでいく。

波動に押し出されるように急加速する先端の碇が、バケモノの心の臓を捉え、勢い止まらず直撃する。

 

「…『メテオドライブ』!!」

 

マリンに続くようにノエルも技を使う。前の世界で見た無数に光を叩き落とす技――だが、今回は使い方が違っている。

[プラチナメイス]を自分の体の前へと突き出している。そこから無数の光が、砲撃のようにバケモノ目掛けて発射されたのだ。

2つの技を正面から受けるバケモノ。大きな爆発音が鳴り、かなりの土埃が舞い上がった。

 

「…すごい」

 

ときのそらは改めて皆の実力に驚かされる。そして、ついさっき会ったはずのフレアともすぐに連携が取れていることに、何かしらの絆があるのではとさえ感じていた。

 

「やったか!?」

 

「マリンそれフラグ」

 

ついつい口走ってしまったマリンにノエルが釘を刺す。

周りにいる盗賊団は、未だにバケモノに操られたままなのだろう。バケモノが操るために力を割くことができていないのか、盗賊団たちは倒れたまま動かずにいる。

 

「…さすがはS想定のバケモノだね」

 

フレアの反応からも分かるように、バケモノはかなりのダメージを負っているように見えるが、まだ倒れる素振りはない。

 

「私のとっておきも見せてあげるよ!」

 

そう言い出し、フレアが取り出すのは1つの弓。

 

「…一気に倒すよ![弓変化]…『弱の矢』」

 

フレアの手の中で光輝くは紫色の矢。それが一点集中、バケモノの胴体を狙って放たれた。

 

「グゥ…グァァ!!」

 

「かわされたっ!?」

 

かなりの至近距離。わずか十数メートルしかない距離で、フレアの放つ弓矢をかわし、直撃を避ける。

特別フレアの弓矢のスピードが遅かった訳では無い。

それだけ、バケモノの身体能力が高いということ。

 

「大丈夫だよそらちゃん。想定内さ」

 

「グァァ!?」

 

途端にバケモノの体に黒いモヤがかかり、著しく動きが鈍くなるのが分かる。

 

「掠っても当たれば、能力は発動する。『弱の矢』は、当たった相手の身体能力、[気力]、[魔力]全てを一時的に弱体化させるのさ」

 

「おお。フレアの能力強いね」

 

フレアの説明を聞く一同。特にノエルが感心していた。

 

「よし!」

 

バケモノが弱体化している今が狙いどころ。

マリン、ノエル、るしあ、フレアが一気に攻撃を仕掛けた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

Sランクバケモノ。そうは言えど、弱体化に加わり4人の総攻撃を受ければやがて限界を迎える。

 

「グァァァァ!!!?」

 

ついに決定的一撃を受けたのか、バケモノは悲鳴を上げながらその場に倒れ込んだ。

 

「…今度は?」

 

「だ、大丈夫じゃない?」

 

4人ともかなり疲労をしただろう。それだけの間戦っていたように感じる。

 

「…盗賊団たちはっ!?」

 

バケモノを倒したことにより、能力が解かれ、盗賊団たちは解放されただろう。

 

「…うっ。す、すまねぇ!俺たちもボスの命令であのバケモノに操られておけと…」

 

盗賊団たち数名は次々に許してもらおうと目的や今回したことについて白状した。

 

「まぁもちろん許す気は無いけどね。団員たちに連れてってもらうか」

 

ノエルがそう判決を下すと、盗賊団たちは後悔をしたとばかりに顔を伏せていた。

 

「――待って」

 

先程の件について、1つの疑問を持った。

 

「どうしたんですかそらちゃん」

 

「…あの」

 

1人の盗賊団のメンバーに話しかける。

 

「さっきボスの命令でバケモノに操られたって言いましたよね?」

 

「あ、あぁ。そう言ったぞ」

 

今の問いかけを聞いて違和感に気づいた人がもう1人。

 

「…っ!さっきのバケモノはボスじゃないっ!?」

 

「なっ!?」

 

フレアがそれに気づき、その発言にマリンたち3人が驚く。

 

「…まだ他にいるってこと!?」

 

もしかしてここへ誘導されたのか?そうとも思えてきたが、ボスの狙いはフレアだったはず。

 

「…っ!【フルーフ大森林】はっ!?」

 

そのフレアの一言を聞き嫌な予感をしてしまう。

 

「…まさか」

 

「とりあえず森に戻ろう!」

 

盗賊団たちは団員に任せて、落下してきた箇所にある階段から再び地上を目指して走り出していく。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「――っ!」

 

外へと出て、すぐさま森へと振り返るフレア。

その光景を目の当たりにして絶句する。

――面影が無いほどまでに、森は火の海と化していた。

 

「…燃やされている」

 

「…おそらくボスってのがした事だよね」

 

「――許さない」

 

フレアは森の中へと足を踏み入れていく。

 

「ちょっ!?」

 

その後を続いてノエルも入り、マリン、るしあ、ときのそらも一緒に森へと入っていった。

 

「…あれはっ」

 

少し奥へと進んでいくと目の前に人影が1つ見えた。

 

「…くっくっ。待ってたぜ不知火フレア」

 

その人物はボロボロのフードを深く被っており、腰には2本の鉈を備えている。

 

「…っ!?きんつばっ!」

 

すぐ側に寄ってきたパンダの妖精を見て、フレアが表情を変える。

その姿は少し傷がついており、若干薄く淡い光を放っているように思える。

 

「交換条件だぜ?貴様が俺の奴隷になるならこの森を戻してやる。今すぐ燃やすのを止めてやるさ」

 

「話にならない。お前は許さないっ!」

 

フレアがすぐに臨戦態勢へと入る。

 

「…まさか、人と戦うなんて」

 

あわよくば起こらないと思っていた人同士の対決。生憎にも、その夢は叶うことは無かった。

 

「1対5。例え女だろうと多けりゃ勝てると思ってないか?…甘いぜっ!」

 

ボスである人物が鉈を取り出し、片方の武器を振りかざしてくる。距離はあり、物理攻撃が届くとは思えないが――

 

「…っ!」

 

「ノエルっ!?」

 

正面に居たノエルの横腹を薄く、斬られた傷ができる。

 

「今のは俺の特殊能力の披露さ」

 

そう言い、男は高らかに自分の能力の説明を始める。

 

「俺は[密閉圧縮]の能力を持っている。指定範囲を決め、出入り不可能の密閉を作り出す。そして、触れたものを極限まで圧縮させるのさ」

 

「…森を燃やしたのは圧縮で空気の温度を上げたのか」

 

「ご名答。そして今のは、鉈で斬った直線上を圧縮して、その白銀の女を直接斬ったのさ」

 

「…別にあんたが強くても構わない。こっちの実力を舐めないでほしいね」

 

「威勢がいい女は好きだぜ。――っ!」

 

突如、男の横に現れた霊が攻撃を振りかざす。だが、すぐにそれに気づき攻撃を避けた。

 

「…ネクロマンサーとは怖い女もいるんだな」

 

「気持ち悪い。消えて?」

 

るしあが次々と『死霊術』を使い、霊を複数呼び寄せていく。

 

「…『怨恨』!行けっ!」

 

前の世界でも使った応用、『怨恨』を付与した霊を男に向かって突撃させる。

 

「おうおう、いきなり厳しいなこりゃ!」

 

鉈で迎撃しつつ、るしあの攻撃をかわしていく。

 

「…『弱の矢』!」

 

「おっと…!」

 

完璧なタイミング。るしあの攻撃を避けるために動き、足を着地させた瞬間を狙い、フレアが弓矢を放つ。

足を地面につける行動。これは、戦いの場において、最も反応が遅れる瞬間でもある。

だが、それを分かっていたかのようにもう片方の鉈で弓矢を叩き落とした。

 

「…っ。武器が重い?」

 

「…この『弱の矢』の効果は物にも適用されるからね。代わりに武器としての機動力を弱化させた」

 

まだ片手で持てるようだが、先程までのように身軽に振り回すことができずにいた。

 

「やってくれるな」

 

「団長たちのことも忘れないでもらいたいねっ!」

 

「ぐっ!?」

 

背後に迫ったノエルが、その重い一撃を頭上から振り下ろす。咄嗟の判断で、男は弱化を受けた鉈を投げ捨て、残りの1つの鉈を両手で支えてその一撃を受け止める。

 

「判断力が凄いね。でも…!」

 

両手と鉈はノエルの一撃を受け止めることに使われている。つまり、胴はがら空き状態だ。

 

「…『力の矢』!」

 

最も攻撃力が高まる『力の矢』。代わりに速度は低下するが、パワーと飛距離は増える。

この至近距離において速度低下はほとんど痛手とはならない。

 

「――ふっ。『密閉』!」

 

弓矢が男へと届く前に、男の特殊能力が発動する。

 

「っ!!?」

 

自身とノエルまでを囲った約数メートル範囲の透明な壁が箱状に生まれる。

その壁に弓矢は衝突するが、貫通することは出来ず男には当たることが無かった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「さあ銀髪の女よ。2人きり、楽しいことしようぜ?」

 

「…くっ!」

 

ノエルは囲まれた箱の中でできる限り男から遠ざかり、内側から箱に対して攻撃を叩き込む。

 

「無駄さ。ちょっとやそっとの攻撃で壊れるほど俺の能力は甘くねえ」

 

男は一歩ずつノエルへと歩み寄っていく。まだ男の手には、1つの鉈が握られている。

このままでは単純な力勝負となってしまう。

 

「ノエルちゃんなら…」

 

勝てるかもしれない。が、相手は男なだけあって油断することは出来ない。

 

「…1人忘れてませんか?」

 

「…っ!?」

 

不意に聞こえてくる声。いつの間にか見失っていたマリンちゃんのものだ。

 

「…『ロマンス・ホロイズム』!!」

 

木に隠れていたマリンがオーラを溜めて放つ技。先程Sランクバケモノに対して使った技だ。

だが、男の能力によって完全に塞がれている。

 

「無駄だってのを聞いてなかったか?」

 

「…そっちこそ詰めが甘いんですよっ!」

 

マリンは武器の先端――碇部分を地面へ思い切り叩きつける。『ロマンス・ホロイズム』によって強化された先端がそのまま地面の中へと潜っていった。

そして――

 

「…ぐはっ!?」

 

――地面を通して、箱の中にいる男の横腹に碇が直撃したのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

予想もしない箇所からの突然の攻撃。男はそのまま血を吐きながら地面に膝を付けていた。

 

「ぐぁ…っ」

 

中々のダメージだろう。男とノエルを囲う箱型の壁が消えたのが何よりの証拠だ。

 

「次からは地面も覆うように能力を発動した方がいいんじゃないですか?」

 

マリンが敵に塩を送るかのような発言しながら男を見下す。

 

「…すごい。よく気づいたね」

 

「へへーん。これは俗に言う野生の勘――いや、海賊の勘ってとこですかね!」

 

「あ、たまたまね」

 

「ちょフレア!?冷めないで!?」

 

2人でちょっとした茶番をしていると、男が何とか立ち上がった。

 

「…っ。甘く見てたぜ…っ」

 

貫通はしなかったものの、その横腹には重い一撃を受け、生々しい傷跡が破れた服の中から見える。今も血が滴り落ちていた。

 

「さぁ。あんたの方がピンチな状態。大人しく捕まる?」

 

ノエルが満身創痍となっている男に対してそんな提案をした。

 

「…それは甘いよ」

 

「フレア?」

 

だが、捕まえようとしたノエルの言葉をフレアが否定した。

 

「こいつは許さない。森の分…それから、妖精たちにしてきたこと。償わせるっ!」

 

フレアが再び弓を構える。

 

「…邪魔しないでね」

 

ノエルは今のフレアの行動を止めようとした。

いかなる場合でも、例えどんな極悪人でも、王国を通して判決を下さなければいけない。

それ以外での殺しは全て禁止されている。

 

「…けど」

 

ノエルも1人の人間だ。団長だからと全てを完璧にこなすことは出来ない。

故に、今フレアが男に対してトドメを刺そうとしているのを黙認していた。

 

「…詰めが甘いのは…そっちだぜっ!…っ!!」

 

「なっ!!?」

 

その時だ。この場の状況が一変したのは。

――男が残る1つの鉈を自分に向かって突き刺したのだ。

 

「…もういいさ。お前らごと終わらせる…っ」

 

男が自害したと思われたが、心臓が光輝いたと思うと、その男を中心に大きな爆発が巻き起こる。

そして、周りの木々を飲み込みながらその爆発は徐々に広がっていく。

触れればひとたまりもないだろう。

 

「…やばいっ!?」

 

男の爆発に巻き込まれずにここから逃げることは可能だろう。

 

「だ、大丈夫かな…」

 

逃げ切れるかの心配をするときのそら。

だが、ノエルたちはこの場を去ろうとしない。

 

「…森を守らなくちゃだもんね」

 

「…ノエル」

 

「この爆発物理で押し返せるんですかね?」

 

「よーし。やっちゃうぞ!」

 

「…マリン、るしあ」

 

フレアが大切にしていた森。ここを守るため、逃げるという選択肢は無かったのだ。

 

「きんつば…?」

 

するとフレアの手元に突如淡い光と化したきんつばが現れた。

 

「そうだね。――挫けられないね」

 

フレアが一歩前へと歩みでる。

 

「…ここは私に任せて。皆の力を少し貸してほしい」

 

「――分かった。最後はフレアが決めないとだもんね」

 

フレアの一言に、ノエル、マリン、るしあがそれぞれ気力を分け与える。ノエルとマリンの気力はそこまで多くはないが、あるだけマシだろう。

 

「…[弓変化]…っ!『金唾の矢』!!」

 

オーラを溜め込み、淡い光のきんつばを抱き、特殊能力を発動する。

特殊能力によりきんつばが1つの弓矢へと姿を変えた。

 

「…すごいっ」

 

ノエルたちの感嘆を聞きつつ、フレアが新たな力――『金唾の矢』を構えて爆発地に狙いを定める。

 

「――いけ」

 

そして、その手を離す。

弓矢は真っ直ぐに爆発地へ飛んでいき、やがてその爆発の中へと飲み込まれて行った。

 

「…だめだった…?」

 

「いや、見て!」

 

すると内側から新たな光が漏れだし、広がる爆発を飲み込んで綺麗に弾け飛んだのだ。

 

「――やった!」

 

ノエルたちと同じようにときのそらも声を上げて喜ぶ。

男の姿は爆発に飲まれ跡形もなく消えていた。

だが、その中心地には今さっきフレアが放った『金唾の矢』が地面に垂直に突き刺さっていたのだ。

 

「――ありがとう、きんつば」

 

王国をも巻き込んだ、嵐のような盗賊団。ついに決着がついたのだ。

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