Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶13「時空の歌姫」

――――――流れてくる曲のメロディ。不思議なことに、とても惹き付けられる感覚を味わっていた。

 

「…今だ!!」

 

「…っ!?」

 

その時に聞こえてくる場違いの声。

複数の人間がAZKiの立つステージへ向かって走っていく。

 

「なっ!?君たち…ぐっ!?」

 

都市長がステージに向かう人間を抑えようと立ち上がるが、1人の男が能力を発動したのか都市長はそのまま捕縛され動けなくなってしまった。

 

「…邪魔してくるやつには手加減するな!」

 

「ぐわっ!?」

 

咄嗟に道を塞ぎ、ステージへ向かう人たちを止めようとする善意ある者たち。だが、それらも思い切り吹き飛ばされてしまう。

 

「…ひどい」

 

滅多に見れないと噂の生ライブ。それをこんな風に邪魔されるとは思っても見なかった。

 

「今日を待ち望んでいた!お前を拉致できるこの瞬間をなぁ!」

 

1人の男がAZKiに向かって手を伸ばす。だが、AZKiは「フロートステージ」に乗って宙へと逃げる。

 

「…ほんとどこ行ってもこういう人居るのよね」

 

AZKiはいつもの光景と見慣れているのだろうか。すぐに危険を察知し回避した。

 

「悪いが想定内だ!」

 

「うっ…!?」

 

すると何かにぶつかったのか、AZKiはバランスを崩しそのまま特設ステージの上へと落ちてしまう。

 

「っ…か、壁?」

 

後ろを振り向けば、透明だが壁のようなものがドーム状に広がっているのが分かる。

 

「――え。あれって…」

 

そう。ときのそらにとって、その能力には見覚えがあった。――前の世界で。

 

「…同じ特殊能力を持つことってあるの?」

 

「はぁ?あるわけないぺこよ。特殊能力はその人に与えられた力なんだから。…そんなことよりあいつら許さないぺこ!」

 

てことはあの男はフレアを襲った盗賊団の「ボス」という事なのか?だが、あの時はっきりと死んだはず。

 

「…悪いなぁ嬢ちゃん。あんたを捕まえるために今日計画してきたのさ」

 

そう言いその男は、2つの鉈を取り出す。

 

「っ!!やっぱり…!」

 

あの武器の特徴から確定した。だが同時にこの世界の時間軸が分からなくなってしまう。

 

「…ぺ、ぺこら!?」

 

ふと隣を見ればぺこらが戦闘準備に入っていた。

しかも、凄い武器を手にしている。

 

「…ロケラン?」

 

「そうぺこよ。ぺこーらの武器[ぺこットランチャー]ぺこ!」

 

そう言いながら片手で持つのは、全体的に緑色がベースで、先端の発射口付近がオレンジ色という目立つ色合いのロケラン――ぺこランだった。

 

「ちょ、ぺこら!?あの中に行くの!?」

 

「そうぺこよ!許せないぺこ!」

 

あの透明な壁はここにいる観客をも含むほど半径は広くなっている。代わりに天井が低めになっていることから、AZKi対策に使ったのだろう。

この中では「フロートステージ」に乗るのは難しいだろう。

 

「…くらえぺこ![白兎]発射!!」

 

「えー!?それ弾なのっ!?」

 

[白兎]の運用に驚きを隠せず思わず声を出してしまった。中々可哀想な扱い方だ。

 

「…ぐわぁ!!」

 

だが、男に到達する前にその手下と思われる人物2人が盾となる。

 

「…まだ邪魔するやつが居るとはな」

 

その男はゆっくりとこちらに向かって振り返った。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

ステージ近くにいた人たちの多くは逃げており、戦うと決めたものたちは手下たちによって敗れてしまっていた。

 

「…っ、だったらAZKiさんとあなただけを囲えば良かったんじゃないですか?」

 

少しでも挑発をして気を紛らわせよう。ぺこらじゃなくてもいい。誰かが反撃のチャンスを掴めるように。

 

「――ほぉ。お前、俺の特殊能力を知っているのか。面白いな。教えてやるさ。…効果範囲に条件がある。今回は仕方なくってやつだぜ?」

 

相手の反応から、間違いなくフレアを襲ったボスで間違いない。

それから、向こうは私を覚えていない。つまり、この世界観では出会っていないのだろうか。

 

「…なぜそんなに女を狙うんですか?ハーフエルフが貴重だから?」

 

「――っ」

 

ハーフエルフ。その単語を出した時、明らかに気配が変わったのを感じ取る。

 

「良く詳しいな。これから次の標的にしようと考えていたんだが。…どこで漏れたんだろうな」

 

「…次の、標的…」

 

その言葉から確信する。

このParallelは――前回のFORESTよりも前の時間軸だ。

 

「…だから生きている」

 

ようやくそこに納得した。

 

「…お前を先にやるか」

 

「…響け」

 

「…っ!!」

 

背後からAZKiが声を上げる。瞬間、目に見えるように音色が具現化され、それが一気に男に襲いかかった。

2本の鉈で迎撃しつつ、攻撃を避ける。

 

「おいおい…歌姫なのに戦えるとは物騒な女だなぁ!」

 

それでも男はときのそら、ぺこらから目を離さずに先にやると決めたことから優先的にこちらを狙ってきた。

 

「おりゃ!」

 

再びぺこらがぺこランを放つ。

だが、直前で避けられ逆に男の鉈による攻撃が襲いかかる。

 

「!…[白兎]守れっ!」

 

ぺこらの前に一気に9匹もの[白兎]が現れ、ぺこらの前で固まり壁となる。

男の鉈の攻撃を受け弾け飛んだが、代わりにぺこらは無傷で済む。

 

「正面。ぺこー!」

 

「…ちっ!」

 

[白兎]が弾けた後ろから姿を見せたぺこらはぺこランを構えていた。そして、攻撃の後隙を狙い再び弾を発射する。

結果、避けきれず正面からモロにくらってしまい大きく背後へと吹き飛ばされた。

 

「…でも、ダメージが」

 

あまりダメージとしては通ってないように見える。

 

「…思ったより強くはないんだな。…すぐ終わらせてやるさ!」

 

男は一気に加速する。瞬間、ぺこらの前に迫り1本の鉈を振りかざしていた。

 

「…っ!?」

 

ぺこらも反応できずにいた。このままでは――

 

「…やばい!」

 

――救わなければいけない人物を失ってしまう。

本来の過去もこうして終わってしまったのだろうか?だとしたら今回何を間違えたのか。

たくさんの後悔を並べ立てるときのそら。

 

「エンドロールには早すぎると気づいた〜♪」

 

「…っ!?」

 

突如として聞こえる歌声。それはAZKiのものだった。

1曲目が始まった時に流れていた演奏。未だ止まずに流れ続けていたこの曲に乗せて、歌を歌ったのだ。

――だが、その行動に救われた。

 

「…なに!?」

 

「えっ」

 

男の鉈が頭上から真っ二つにぺこらを斬り裂いた。

――はずに見えたが、ぺこらの体には傷1つ付いていない。

 

「…何が起きたっ!?」

 

男もそれには動揺し、次の手を止めてしまった。

 

「…まさか、AZKiさんっ?」

 

突然歌声を響かせたAZKi。この場において、この不思議な状況を作り出したのはAZKiだろうと感じる。

 

「…私特製のマイク[イノナカ]。気力を込めれば普通のマイクのように音を拡張する。…でも、それだけじゃない。私が歌う曲によって効果が変わるっ!」

 

そう言うと、AZKiの後ろに置かれてある「フロートステージ」から出ている4色の光。それらの色が切り替わると同時、そこから流れる曲にも変化が訪れた。

 

「…今のは対象者を完全無敵にするバフ効果。兎さんっ!3分間はその効果を保ちます!私があなたを援護するわ!」

 

そう言い、再びAZKiはマイク[イノナカ]を口の手前へと持ってくる。

 

「…!そういう事ぺこなら、協力するぺこっ!」

 

ぺこらも今自分にかかっているバフの効果を受け取り、協力して男を倒すことを決める。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…すごい」

 

今のAZKiの力を見てそう思った。

あのバフ効果がなければぺこらは死んでいたかもしれない。

そうなっていれば、この世界が救えずに終わっていた。

 

「…今の段階で本来の過去と何が変わってるの…」

 

この場にAZKiが現れたのは、おそらく本来の過去通りだろうと思う。

今ときのそらがいることで何が変わってるのか。

ぺこらを救うためには、この戦いを切り抜けないといけないだろう。

それと同時に、前のParallelにおいてこの後この男と出会ったことを踏まえればここで倒すことは不可能なはず。

――つまり、何とかして追いやることが必要となる。

 

「…今ぺこらとAZKiさんが戦っている。…今のうちに!」

 

何が出来るのか。それを考えなくては行けない。

 

「…やっぱりお前が先だなぁ!」

 

男は標的を変え、元々の狙いだったAZKiに攻撃を仕掛ける。

それと同時、周りにいる手下たちも、AZKiを守ろうと手伝ってくれた能力者たちを倒し終えたのか、男含む合計7人で一気に攻めてきた。

 

「2曲目『ハートビート』」

 

その声と同時、「フロートステージ」から流れる演奏がサビへと突入する。

 

「…満ちてゆく〜胸の奥まで〜♪」

 

「歌って戦うタイプってことか…!」

 

男はAZKiの戦闘スタイルに気づくが、先にAZKiの曲による恩恵が発動する。

 

「おお!!傷が治ってく!?」

 

「ちっ!」

 

その光景を見て男が舌打ちをする。

――先程手下たちが抑えていた能力者たちの傷がみるみる癒されていくのが分かる。

 

「…回復か。いくつ能力があるんだか興味がそそられるっ!」

 

それでも攻撃の勢いは衰えず、男は必死にAZKiへ対して鉈を振り回す。

 

「…危ないっ!」

 

一瞬AZKiのバランスが崩れる。そこを狙い男が一撃を叩き込もうと――

 

「まだバフは消えてねえぺこ!ぺこーらを忘れんなぺこっ!」

 

3分間の完全無敵。それを利用し、自らの体でAZKiに降りかかる攻撃を代わりに受け止める。

 

「ちっ!邪魔だっ!」

 

「[白兎]!発射!」

 

ぺこランに一気に10匹を装填し、連射をする。

ダメージとしては低いものの、当たった際の押し出しが強く、連続でくらう男は徐々にその距離が遠ざかっていく。

 

「…くっ!」

 

「…ボス!あの兎女は俺たちが…」

 

「いやいい。歌姫の能力が分かったぜ。恐らく、曲を歌わなければ効果は発揮されねえ。歌う隙を与えなきゃいい」

 

「で、でも。あの兎に邪魔されるんじゃ?」

 

「まとめて相手するさ。お前らはもう一度周りの能力者を抑えとけ。回復の歌を歌われようとこっちに被害はねえ。ジリ貧に持っていくぞ」

 

「はいっ!」

 

手下たちが完全回復した他の能力者たちと再び戦闘を行い始めた。

 

「…みなさん頑張って!」

 

皮肉にも祈ることしか出来ないときのそらは、何としてもこの状況を切り抜けようと頭をフル回転させていた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

――1対2の状況の中だが、中々決定打を与えることができずにいる。

それもそのはず。すでに、ぺこらにかかっていた完全無敵のバフ効果は切れている。

男から重い一撃を受けないように立ち回れば必然と守りの姿勢に偏ってしまう。

 

「…もう一度…」

 

AZKiが曲を流す。1曲目の『オーバーライト』。対象者を完全無敵にする効果だ。

 

「させるかよっ!!」

 

男はその場で鉈を振る。AZKiとは距離があり到底当たるはずがない。

 

「――っ!AZKiさん避けてっ!風の刃が飛んできますっ!」

 

男の能力を知っているときのそらには今の攻撃はAZKiに当たることが分かる。故に、いち早く分かりやすいようにAZKiに伝える。

 

「…っ!?」

 

それを聞いたAZKiがちゃんと避けてくれるかは分からなかった。だが、ときのそらの言葉を信じてくれたのだろう。歌いかけていたのを止めて、その場から大きく離れる。

AZKiの後ろにあった特設ステージが今の一撃で大きく崩壊した。

避けていなければ死んでいたであろう一撃だった。

 

「…ちっ、あの女。どこで知ってるんだっ…」

 

おそらくときのそらの助言が入らなければ、今の攻撃でAZKiは戦闘不能になっていた。

――そういう意味では何とか過去の1つを変えられただろうか?

 

「…見た感じ能力者には見えねえし後回しか」

 

「くらえぺこー!」

 

男が立ち止まっている隙を狙い、再びぺこランによる5発連射をする。

2本の鉈を使い上手く受け止めるが、当たれば後ろへの反動があるぺこラン。3発目で体勢を崩し、残り2発を正面からくらってしまう。

 

「…ぐっ」

 

再び一瞬の隙が生まれる。そこを見逃すことなくAZKiが曲を流し始める。

 

「…『フェリシア』」

 

「…っ!今度こそ歌わせねえぜっ…!」

 

歌を阻止しようとAZKiに向かって距離を縮める男。

 

「やばいっ![白兎]!!」

 

5匹生み出し、AZKiの元へ行かせまいとその道を塞ぐ。

 

「…さっきから鬱陶しいんだよっ!!」

 

男は目の前に現る能力の壁を消し飛ばそうと鉈を振る。

 

「人知れず響く胸の鼓動〜♪」

 

その鉈が届く前にAZKiの歌声が響く。

 

「…っ!?また新しい効果かっ!」

 

男の鉈による一撃は、本来なら軽くぺこらの壁を消せただろう。

――だが、まるで鉄壁のように鉈が弾き返されてしまった。

 

「くらえぺこ!」

 

反動でバランスが崩れた男に対し、ぺこランを向け、即座に発射する。

 

「…邪魔――ぁ!?」

 

――いつも通り痛くもない攻撃に鬱陶しさを感じながら弾き返そうとする。

だが、勢いよく飛んできた弾に触れた瞬間、まるで核爆弾を落とされたかと思うような強烈な爆発が巻き起こったのだ。

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