Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶16「アイドルの夢」

――――――衝撃な発言が飛んでくる。それに驚いたまま固まっていると、隣の巫子が先に声を出した。

 

「――いい夢だにぇ。それで映画いつ行くにぇ?」

 

「ちょおい待てぇ!もっと話を聞かんか!」

 

「えぇー?だって夢の話されてもにぇ…」

 

巫子が困りながら空の方に視線を向ける。

 

「えっ…あっ…」

 

「?どうしたにぇ」

 

反応に困っていると、不思議そうに巫子が首を傾げる。

 

「まぁまぁとりあえず聞いてよ。それに、夢とは思えないくらい鮮明に覚えてるからっ!」

 

「ちょっ…近いにぇ!?」

 

目を輝かせながら彗星が巫子に顔を近づけていく。

空的にも、この話は聞いておきたいと考えていた。

 

「まぁ巫子ちゃん…。将来の夢の話なら誰でも夢中になることだし。聞いてみない?」

 

「うぅ。まぁそうだにぇ。ファンタジーってのがちょっと気になるにぇ!」

 

「よーしよし。それじゃあ長々と語らせてもらうよ!」

 

そう前置きをし、彗星が体験したという――夢のようで夢ではない物語が幕を開ける。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…あれ?ここは?」

 

気がつけば良く分からない森の中で倒れていた。

ついさっきまで様子がおかしかった空と別れ、巫子と話しながら帰宅していたのだ。

そして、家に帰り部屋の中へと入った瞬間に気を失ってしまった。

 

「んー?」

 

「――あ、いたいた」

 

1人で考えていると、横から誰かの声が聞こえた。

 

「…?だれ?」

 

「あまり驚かないんだ。私はAZKi。君をここへ呼んだのは私」

 

自己紹介を兼ねつつ、この見知らぬ場所へと呼んだのは自分だと告白してきたのだ。

 

「何これ?夢?」

 

「残念ながら夢じゃないよ。でも、現実に戻ったらここでの事は夢ってことで片付けられる。ここで出会った人物も名前を忘れて、うろ覚えになっちゃうから」

 

と、今起きていることは事実だということを伝えてくるAZKi。

 

「…現実に戻れるの?」

 

「うん。ちょっと助けてもらいたいことがあって。それが終わればちゃんと帰すよ」

 

「…ふむ。なんか楽しそうだから頑張るよっ。私は星街 彗星。って、呼んだなら知ってるのかな?」

 

「名前までは分からないよ。…よろしくね、すいちゃん」

 

「よろしくっ!あずきっ」

 

初めて会うにしては、意外にも気が合う2人。こうしてAZKiと仲を深めるためか、数十分ここで駄弁っていたのだった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…あっ。何これ」

 

話も一段落つき、動き出そうとした瞬間、自分のポケットに入っている物に気がつく。

 

「…マイク?」

 

それは歌を歌う時などに使うマイクだった。

 

「おー?私と似た系統の能力なのかな?」

 

「ん?能力?」

 

「そう。ここは[気力指数][魔力指数][特殊能力]を参照して生き残るために戦ったりするんだよ」

 

「…気力?魔力?」

 

「そういえば説明忘れてたね。えっとね?」

 

そこから数分。ある程度の能力やバケモノに関しての情報をAZKiから教わったのだ。

 

「へぇー。気力とか魔力ってどうやって分かるの?」

 

「専用の道具があるんだけどね。生憎、今はそれどころじゃなくて」

 

と、さっきから話してる最中も周りをキョロキョロ見回していたAZKi。

 

「…実は悪い奴らに追われててね?その途中で丁度すいちゃんがこっちに来たとこなの」

 

「…要するにタイミング良かったのかな?」

 

「…ある意味ね」

 

その悪い奴らに注意を払っていたと言うこと。

 

「そうだっ!すいちゃん来たばっかだけどもしかしたら戦いのセンスあるかも。武器?能力?みたいなマイクも持ってるわけだし」

 

「あー…確かにそうかもねっ!いやー能力とか使うの憧れてたからね!」

 

それから更に数十分。すいせいの能力について色々試行錯誤する2人。結果は――

 

「…分からん」

 

「同じく」

 

本人が分からないと言い出し、それに同意するAZKi。

 

「うーん…。すいちゃんみたいな魔力が高い人物は、普通なら魔力を応用した技が使えるんだけどね」

 

「魔力の応用?」

 

「そ。例えば、私は魔力を音に乗せることで、周囲に攻撃できる。これは魔力の使い方の応用みたいなもの」

 

先の説明で言葉足らずだった部分を一から丁寧に教えてくれる。

 

「逆に、気力が高い人物は、武器に気力を乗せて、必殺技みたいなかっこいいのが使えたりする」

 

「…それで、私はそのどっちでもない…ってこと?」

 

「そうかもね。後々使えるようになったりするかも…」

 

その時だ。――悪い奴らと言われる集団の声が聞こえたのは。

 

「っ!」

 

「…おい!見つけたぞお前ら!」

 

その集団の先頭にいる男はこちらを舐めまわすように見つめてくる。後ろには2人の男、3人の女の計6人いる。

 

「…もう。しつこいなぁ」

 

「はっ。滅多にお目にかかれねえ歌姫を見つけたんだ。ここで捕まえて早く「ボス」に差し上げねえとなぁ!」

 

計6人もの人がこちらへと歩み寄せてくる。その時、1人の女が立ち止まり声を荒らげた。

 

「…ねぇ!ボスへ連絡がつかないわっ!」

 

「はぁ!?ボスは常に連絡を貰える状態にしとくって言ってただろ!」

 

「でも、電波がっ…!」

 

「電波…?っ!まさかお前か…!?」

 

このおかしな状況にいち早く気づいた先頭の男が勢いよくAZKiに振り返る。

 

「『サウンドカーテン』。…この範囲内での音波は全て自在に操れる。電波とは別の物だけど、応用でこちら側からの音が外へ出ないように遮断すれば似たようなもんだからね」

 

いつの間にか、AZKiを中心に球状に広がっており、波のようにブレている透明な空間に閉じ込められていた。

 

「…まさか、全部お前の仕業か…?」

 

「ボスに私の情報が流れるのは困るからね。でも、全部私だけの力ってわけでもないよ?――イル」

 

最後に一言、何かの名前を呼ぶ。すると、突如悪い奴ら6人の頭上に大きな塊――よく見れば、生物の頭のようなものが浮かんでいた。

 

「――なっ!?」

 

全員がその巨大なものに驚き、中には腰を抜かしその場に尻もちをつく者も。

 

「よろしく」

 

〈――汝ラノ罪。ココデ償ッテ貰ウ〉

 

「う、うわぁぁ!!?」

 

一瞬の出来事。そのまま地面へと落下してきた頭が口を大きく開け、一度に6人もの人間をいとも容易くその体の中へと飲み込んだのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「えーっと…」

 

気がつけば、目の前には大きな生物が佇んでおり、先の6人は姿を消していた――否、その生物により命を奪われたのだ。

 

「ごめんね?いきなりハードな部分見せちゃった気が…」

 

「別に大丈夫だよ?それで、その生物は?」

 

「この子は宝龍イル・ヴォラーレ。まぁ、詳しくはまだ分からなくていいけど私の味方だから安心して」

 

「ほぉーん」

 

目の前の生物、イル・ヴォラーレの体は黄色――黄金に近い色合いをしている。

 

〈初メマシテ。AZKiノ仲間デスネ?〉

 

「うわぁ。すごい、喋るんだ。まぁ仲間っていうより拾ってくれた?みたいな?」

 

「仲間で良いよ」

 

そんな宝龍と会話ができることに驚きを隠せないでいる無邪気な少女――すいせいの反応を楽しそうに見つめているAZKi。

 

〈――AZKi。暫ク会エナクナリマス〉

 

「…やっぱり例のこと?」

 

〈ソウデス。再ビ戻ルマデ気ヲツケテ〉

 

「分かったわ」

 

短く言葉を連ねると、宝龍はこの場から去って行ってしまった。

 

「そういえばさっきの連中は何?」

 

今更感が否めないが、気になったので質問する。

 

「あー。奴らは最近現れた盗賊団たちだよ。まぁ騎士団にも情報行ってるし、いずれは捕まるんじゃないかな?」

 

「…んー?」

 

「今はまだ分からなくて良いよ。とりあえず、この世界はParallel World ELEMENTって言うの。すいちゃんは今このELEMENTに呼ばれて来た」

 

「…他にもあるの?」

 

「Parallelだからね。些細な出来事で未来は幾つにも分岐する。今いるのはその1つに過ぎないから」

 

「そんな簡単に色々行けるの?」

 

真っ当な疑問だ。現にすいせいは、自分の住んでた世界――現実世界しか知らなかった。

 

「まさか。私の能力が関係してるの。それで、自由に行き来できるんだよ」

 

「あずきの能力?」

 

「そ。私の特殊能力[時架者]。ありとあらゆる時間軸に干渉でき、それらの影響を一切受けないの」

 

「んー?」

 

話が難しく、聞き返してしまうすいせい。

理解はできないが何となくどういった能力なのかがある程度分かったので良しとしよう。

 

「それで、話が最初に戻るけども。すいちゃんが現実へ戻る方法」

 

「おっ。それは何?」

 

「私のお手伝いをすること。とりあえず今は、「兎田ぺこら」を救う。それが完了すれば戻れるよ」

 

「兎田ぺこら?人名ってことは人を救うのか」

 

「そーいうこと」

 

これからするべき事を聞き、早速その人物を救うために行動を開始した。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

――あれから約1週間が経ち、変化が訪れる。

 

「…ねぇ何これ?」

 

すいせいは片手に持つチラシを見て声を漏らす。

 

「ライブ。折角Parallelにやって来たし、皆に私の存在をアピールしたいから過去改変の意味を込めてライブをしてるの」

 

「いやそれは良いとして…これ、私も?」

 

「だってすいちゃん歌上手いんだもん。上手く行けばアイドルとして私と一緒に活動できるかもよ?」

 

アイドル――その単語を聞き、すいせいの目の色が瞬く間に変わる。

 

「アイドル!?それは嬉しい!…けど、あずきとアイドルできるの?現実に戻っちゃうんじゃ」

 

「まぁ私がまた呼べば良いし。なんなら私がそっちの世界に行っても良いし」

 

「それもそっか。よし!アイドルやるよー!」

 

乗り気となるすいせい。AZKiに言われたライブを行う場所は【聖歌都市カントゥス】。そこまでの道のりは長いが、2人でゆっくりと向かっていった。――最中だ。

 

――ドゴォォン!!

 

大きな爆発音と共に、今歩く街中にある大きなビルが1つ、勢いよく倒れてきたのだ。

 

「何事っ!?」

 

「くっ…これは、バケモノ!」

 

AZKiがいち早く状況を整理し、舞い上がる土煙の中に捉えた影の正体。それをバケモノと判断する。

 

「あの盗賊団と関わりある?…いや、今は良いか!『サウンドカーテン』!」

 

片方の手のひらを空へと伸ばす。瞬間、盗賊団たちに対して使ったように、AZKiを中心に球状に空間が作られていく。

 

「…すいちゃん!とりあえずこいつを片付けるよ!」

 

「うぇ!?いきなり戦うの!?」

 

驚くのも無理はない。この1週間何もせずにいた訳ではなく、自分の能力を確かめるため毎日特訓をしていた。

そこから分かったこと。それは――

 

「珍しいタイプだったってこと。…[シグナル]!」

 

そう言い、[気力]を込める。突如手の中に現れたのは、最初に拾った武器のようなマイク――[シグナル]と命名したすいせいの武器だ。

この武器の効果は未だに分からないが、気力を込めることで消したり取り出したりを自在に行えるという。

 

「魔力が高いのに気力参照って不思議だよなぁ」

 

誰もが思う疑問だ。これで魔力を使わないのであれば宝の持ち腐れも良いとこ。

 

「ふぅ。行くよっ!――『フェリシア』」

 

AZKiの上空に現る「フロートステージ」。そこから多彩な光が放たれ、曲が流れ出す。

 

「どうして気付いてしまったの〜♪」

 

曲が始まる。対象者2人を7分間強化する歌。この場合の対象者はもちろん、AZKi自身とすいせい。

 

「くらえっ!」

 

『サウンドカーテン』の中、音波を自在に操るAZKi。バケモノに対して魔力を乗せた「音」の衝撃で攻撃を仕掛ける。

 

「ガァァ!!」

 

「効いてないっ!?」

 

だが、音による刃の攻撃によって傷はつくものの決定的な一撃にはならないでいた。

 

「ぐっ…!?」

 

バケモノは巨体な割に動きが繊細かつ速い。的確に避けずらそうなタイミングで攻撃を仕掛けてくる。それを躱すのでいっぱいなAZKiは狙いが定まらず、初撃の音波以外まともに攻撃を当てることができていない。

 

「…もしかして、Sランク…?」

 

「ど、どうしよ…」

 

すいせいも戦えないことは無いが、初戦がいきなりバケモノというのは中々酷すぎる。もう少しAZKiと実戦向けの練習をしておくべきだった。

 

「ぐっ!?」

 

「!あずきっ!」

 

バケモノの攻撃が一撃AZKiに当たり、後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

「あずき――っ!?」

 

「っ…すいちゃん…っ!」

 

倒れるAZKiへ近づこうとするが、バケモノの振り払った腕に当たり、同じように反対側へと飛ばされる。

戦闘の基礎を知らないすいせいにとっては決定的な一撃になっただろう。

 

「…う…そ」

 

流石に死んではいないだろうが、まともにこの後戦えるかは分からない。

 

「…っ!しまった!」

 

そんなすいせいの心配をしていると、すぐ目前にまで近づいたバケモノに気づくのが遅れる。意識を向けた時にはすでに、かなりの気力を纏った拳を振り下ろしている真っ只中だったのだ。

 

「う…っ…」

 

何とか頭を起こしたすいせい。額からは血が流れ落ち、意識が朦朧としている中、AZKiに迫る一撃を目にする。

 

「…っ!」

 

ダメだ。今からでは間に合わない。それでも、絶対に死なせちゃいけない。

 

「…やめてっ…!」

 

そんな声がバケモノに届くのか?耳にもせずバケモノの動きは止まらない。

 

「…止まって…!」

 

それでも必死に声を振り絞る。たった一度だけ、この瞬間にだけ訪れてほしい奇跡。それに縋りながら。

 

「――『止まれぇっ』!!」

 

「…グァ!?」

 

「――えっ!?」

 

目の前で起きた事実に驚くAZKi。そして、それを行った本人でもあるすいせいも驚く。

――呪いにでもかけられたのだろうか?すいせいの言葉通り、バケモノがその動きを完全に止めたのだ。

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