Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶18「失いたくない居場所」

――――――勢いにつられそのまま家をでて映画館へやって来た空たち。

 

「ふぅ。何とか間に合ったね」

 

皆で観ようと話していた映画の上映時刻に間に合い、何とか落ち着くことができた。

 

「ちょっと私トイレ行ってくるね」

 

「あ、みこも〜」

 

「あ、私トイレの前で待ってるね」

 

彗星と巫子が2人で仲良くトイレへと向かう。

いつもなら一緒に空もついて行くのだが、

 

「…すいちゃんは覚えていない…」

 

先程の話を整理する時間に当てようと考えていたのだ。

ここへ来る途中に聞いたが、どうやら人物のことについては何もかも忘れてしまっているらしい。

それでも、彗星の話によれば空と同じくParallelへと飛んだことは確定事項。夢では無いだろう。

 

「もし夢だったら正確すぎて怖いからなぁ…」

 

話の中に空は出てこないものの、行動の流れや知っている国の名前が出てきたことから同じ世界観のParallelだと推測できる。

 

「…ELEMENTか」

 

自分の飛んだParallel。何故MAINに戻らなかったのか。それはまだはっきりと分からないが、何となく気づいた部分がある。

 

「…たぶんAZKiだもんね。ライブをしに行った歌姫って」

 

名前やはっきりとした見た目を覚えていないらしく、薄らとした見た目しか話されていない。

その人物についての記憶を忘れさせられたのか。それとも戻ってきたら忘れてしまうのか。

 

「前者も後者も有り得ない…」

 

前者であれば、なぜ空は忘れさせられていないのか?

そして後者なら、なぜ空は覚えているのか。

 

「――あと」

 

1つ。気になる点について。それはなぜ彗星が能力を使えたのかということ。話の初っ端から能力の事を言われて正直驚いた。

 

「私は何もできなかったし…なんでだろ」

 

AZKiや他の誰かが能力を与えた素振りは話の限りなさそうだった。それなら、なぜ自分は能力が使えないのだろうと考える。

――それとも能力を自覚していないのか。

 

「…おまた〜」

 

「その止め方はあまり良くないにぇ」

 

と、まだ整理しきれていなかったが、彗星と巫子が戻ってきてしまった。

 

「…早いね。それじゃあ行こっか」

 

この考えは一度区切り、気持ちを切り替えて、目の前の映画を思う存分に楽しむとしよう。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

約2時間半の上映。驚きの展開が次々にやって来てどっと疲れた気分だ。

 

「凄かったね!…アイドルも辛いのかな」

 

「だろうね。でも、中々に面白かったよね」

 

「面白かったにぇ!すいちゃんがアイドルになれるの楽しみに待っとくにぇ〜」

 

「おう!期待して待ってろよ!」

 

そのあとはカフェテリアへと向かったが、その間もずっと映画の話で持ち切りだった。

 

「いやー楽しかったにぇー!」

 

「明日も遊ばない?私の家でテトリスしよ」

 

「えっ!?すいちゃんの家で遊ぶのは賛成だけどテトリスやだよ。勝てないじゃん!」

 

「いつもハンデあげてるじゃーん」

 

「実力差があり過ぎてハンデになってないにぇ…」

 

そんな他愛ない話に一段落つくと、丁度よく家付近にまで帰ってきた。

 

「それじゃあ今日はバイバイ」

 

「またにぇ〜!」

 

「また明日っ」

 

彗星、巫子と別れて1人帰路につく。明日は再び2人と遊ぶ日。だが、空は別の心配をしていた。

 

「…今日も寝たらMAINに飛ぶかな…」

 

あっちの世界での出来事はかなり楽しく感じている。それと同じくらい、こっちでの彗星と巫子と一緒に居るのも楽しい。

またParallelに向かうとなれば、こっちではたった一日でも向こうでは何日間にも渡る。しばらく会えなくなるだろう。

 

「…よし。とりあえず向こうの世界も救わなきゃだしね」

 

家へとたどり着いた空。次行くParallelに不安と期待を寄せながら、残る就寝までの時間をゆったりと過ごす。

――そして眠る時間がやって来た。

 

「…うぅ〜ん」

 

瞑りそうな目を擦りながら、電気を消してベッドへと潜る。またいつロボ子さんに起こされるのか。そんな事を考えて眠りにつくと――

 

「…ん。起こされなかったの珍しい…」

 

朝がやってきた。ロボ子さんの催促がなかったことに驚きつつ、目を開ける。その前に現れた光景は――

 

「…え?…部屋?」

 

いつもと変わらない、自分の部屋にあるベッドの上で起き上がっていたのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

いつもと変わらない景色というのはごく普通のこと。決して驚くような出来事ではない。

だが、Parallelへ移動すると確信していた人物にとって、変わらない景色は驚くに値するのだろう。

 

「…前回はたまたまか…」

 

たった一日で世界が切り替わったのは偶然だろうと納得せざるを得なかった。

 

「今日はすいちゃんの家でお遊びか…」

 

早々に身支度をし、彗星の確認を取ってから家へと向かった。

 

「…また負けたにぇー!」

 

「はっはっはっ!みこち弱いね」

 

「うぅ!…あ、空ちゃん!」

 

どうやら先に巫子が来ていたらしく、部屋を開ける空に気づき振り返ってくる。

 

「…んーと。…マリカ?」

 

「そうだよ。CPUいるけどね」

 

2人でしていたゲーム。――従来のレースゲームに似てはいるが、強いアクション性やランダム性が盛り込まれていて、その世界観をモチーフにした多彩なコースを走り順位を競い合うゲーム――「マリカー」だった。

 

「んじゃこっからは3人対戦だね」

 

「今度こそ勝つにぇー!」

 

それからかなり長い時間、皆で盛り上がりながらマリカーをしていたのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…負けたにぇ…」

 

「巫子ちゃん…」

 

あまりにも可哀想すぎて言葉がでない。マリカーをやるのは今日初めてということではないが、それにしてもいつもより負けていた巫子。なんと1位の回数は0回、2位になったのは1回のみであとは全部3位だった。

――逆に、彗星は全て1位を取っていた。

 

「やっぱりすいちゃん強いね」

 

「今度は負けないにぇ!」

 

「おうおう!いつでもかかってきな!」

 

後半1時間ほどだらだらお菓子を食べながらお喋りをしていた。そして暗くなる前に解散して、自分の家へと戻ってきた。

 

「はぁ〜。疲れたぁ…」

 

すぐにパジャマに着替えるとベッドの上へ飛び乗り、居心地良さそうに天井を見つめた。

 

「休みの日ってほんと早いなぁ…」

 

すでに日曜夕方となっている。明日から再び5日間の学校生活が始まる。

それでも、2人といれば楽しいとさえ思っていた。

 

「今日はもう寝るか…」

 

いつもの就寝時間より小一時間程早いが、特にすることも無いため電気を消して、布団を頭から被った。

 

「ふぁ〜…明日大丈夫かな…」

 

今日一日でかなり疲れ切っている。このままParallelへ移動しても支障はないだろうか?そんな事を考えながら休日最後の眠りについた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「――え」

 

目が覚め、第一声に漏らした何とも間抜けな声。

それもそのはず。――2度目の現実での起床となったからだ。

 

「――あれ?…Parallelは…?」

 

あれで終わりなのだろうか?

 

「――ロボ子さんは?」

 

全員救ったことにより、ロボ子さんの言う通り本当に現実へと帰ってきたのだろうか?

 

「――みん…な…」

 

まだ分からないことや謎めいたことが残っていたのにも関わらずこれで本当に終わるのだろうか?

あれほどまでに帰りたいと願っていた現実。だが、今となっては現実もParallelも――失いたくない「居場所」になっていたのだ。

 

「早く行きなさい!遅刻するよ!」

 

母親の声。いつものように作られたパンを手渡され部屋を出ていった。

 

「…」

 

とりあえずこのまま居ても何も変わらない。そう考えた空は学校へと向かったのだ。

 

「…なんか暗くない?」

 

「眠れてないのかにぇ?」

 

「あっ…うん、大丈夫だよ」

 

昼休みとなり、いつものように3人でお弁当を食べている。

いつもより暗いと、彗星、巫子から言われてしまう。

 

「…あ、そういえば聞いてほしい事があるにぇ」

 

「あ、大丈夫だよ。気にしないで?」

 

「なんでみこの話をすいちゃんが止めるにぇ!!」

 

いつも通り巫子をからかう彗星を見て、少しだけ心持ちが気楽になった感じがする。

 

「冗談だよ〜。で、何?」

 

「むぅ。それでにぇ、なんかみこの神社が昨日変だったにぇ」

 

「みこちの神社って…あの【電脳桜神社】?」

 

「そうだにぇ」

 

【電脳桜神社】とは、巫子の家の近くに位置する、この地域ではかなり有名な神社のこと。

そして今、巫子はその【電脳桜神社】で母親の元で巫女になる修行を積んでいるのだ。

 

「…それで、何かあったの?」

 

「いや、みこが直接見たわけじゃないけどね?ママが昨日神社が光ったのを見たって…」

 

「えー?それホントなの?」

 

巫子の話を信じずに疑う彗星。正直今までの私なら同じように疑ったかもしれないが、Parallelを見てきた以上、意外にも信ぴょう性はあるかもしれない。

 

「…それで。なんか見たって言ってた?」

 

「んー。影みたいのが見えたらしいけど特には何も言ってないにぇ」

 

「動物の影とか?」

 

「そうかもにぇ」

 

タイミング悪く昼休みが終わる5分前のチャイムが鳴ってしまい、この話はここで終わってしまった。

 

「まー何かあれば頼ってよ。親友だし」

 

「そうだよ」

 

「ありがとすいちゃん!空ちゃん!」

 

もしまた不思議なことがおきたとしたら、そのときは3人で解決していこう。この3人に出来ないことはないからね。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「はぁ…すっかり暗くなっちゃったな…」

 

母親に頼まれおつかいに出た空。

すっかり日も暮れて、そろそろ電灯頼りに歩かないと道が見えなくなりそうだ。

 

「あ…」

 

ふと気がつけば、今日の昼に話していた【電脳桜神社】の前までやって来ていた。

 

「…行って…みようかな」

 

気になるところもあり、好奇心を隠せず向かおうとする。

少し丘の高い部分にあり、神社に向かうまでには石階段を登る必要がある。

そして1歩、石階段の始まりの部分にある鳥居をくぐり抜けた――瞬間に事が起きた。

 

「――え?」

 

力強く足を地に着けると、周囲が何かの透明なバリアで囲われた。

 

「えっ…」

 

もしかしてこの現実にまで盗賊団のボスがやって来たというのか?いやまさか、そんな訳がないだろう。そう思いつつ、目の前に起きた出来事に驚いていると石階段の少し上の方に影が見える。

 

「――あの」

 

「うぇっ!?」

 

驚きすぎて変な声が出てくる。それもそうだろう。

――突然背後から声をかけられたのだから。

 

「…あっ、この声そらちゃん?」

 

逃げようと思っていた所に再び声をかけられる。そして、その声が知り合いに似ていることに気づき、足を止めゆっくりと振り返った。

 

「…ロ…ロボ子…さん?」

 

「そーだよ?」

 

そこにいたのは、ずっとParallelに呼ばれるのを待ち望んでいた――そのParallel World MAINの管理者ロボ子さん本人だったのだ。

 

「良かった!」

 

「…ぁ」

 

思い切りロボ子さんに向かって抱きついた空。

その際、ロボ子さんが声を漏らしたが、それが驚いてなのか、はたまた嫌がってたのか――他の感情が混ざりあってたのかは空には知る由もなかった。

 

「あっ…ご、ごめんね急に」

 

「――ううん。大丈夫。それよりそらちゃんを探してたから丁度良かったよ」

 

「丁度良かった?」

 

「そう。ここはなんか不思議な場所だね。まさかParallelと繋がるだなんてね」

 

ここと、ロボ子さんが言うのは【電脳桜神社】のこと。つまり、今日の巫子の話の謎の影というのはロボ子さんの事なのだろう。

 

「それと、中々そらちゃんを呼べなくてごめんね?とりあえず今からこっち来れる?」

 

そう言いロボ子さんは神社の上を指す。そこにはまるで空間に直接裂け目ができているかのように、謎の黒い空間が見える。

 

「…話はそっちでしよ?」

 

「うん。あ、でもおつかい…」

 

そう言いさっき買い物した食材を見て空がそう言う。

 

「あっ。じゃあ、夜中にまたここに来よ?」

 

「うん。…あれ、来る?」

 

「来て」ではなく、「来る」。自分も含めての言い方だ。

 

「もちろんっ!…そらちゃんの家にお邪魔するよ?」

 

堂々と言い放つロボ子さん。そんな清々しさにこっちもむしろ気軽に接することができる部分があるのも事実だ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「おかえり…あれ?お友達?見ない顔だけど…」

 

出迎えてくれる母親。隣のロボ子さんを見て首を傾げた。

 

「えっと…ロボ子さんだよ」

 

「ロボ子…さん?」

 

「あー。それはボクが友達から呼ばれているあだ名みたいなものです。気軽にロボ子って呼んでください」

 

「そう?…ロボ子ちゃんも一緒にご飯食べる?」

 

「ぜひ!」

 

そう言って一緒に夕飯を食べることになった。

 

「いや〜美味しかったよ!」

 

「それはありがと…」

 

食べ終えたあと空の部屋へと入る2人。

 

「今出るのはまだ早いよね?」

 

「そうだね。どうせだから今説明しちゃうね」

 

そう言われ事の成行を説明してくれる。

 

「…まず、そらちゃんがELEMENTに直接行っちゃったやつ。あれはあずきの力の影響で一緒に連れていかれたみたいだね」

 

「…え?あずきって…AZKiさんのこと?」

 

「そうだよ。…隠すことじゃないから言うけど、前に言ってたボクの大好きな親友。それがあずきのこと」

 

今初めて知らされる事実に驚く。あそこで出会ったAZKiとロボ子さんが知り合い。

 

「…てことはあのときのAZKiさんって…」

 

「あの時代のじゃないよ?今そらちゃんがやってるように――Parallelを移動してるんだよ」

 

「…そうだったんだ」

 

「さぁ、とりあえずMAINに行こうか。ここまで呼べずにいた理由も分かるから」

 

そう急かされ、焦りつつも一緒に窓から出て再び神社へと戻ってきた。

 

「…緊張してる?」

 

「少しだけ。…でも、大丈夫。改めて気持ちを切り替えたから!」

 

「よしっ」

 

そして、3日越しのParallel World MAINへと、今一歩前へ進んだ。そしてそのまま体が光に呑まれ――

 

「――」

 

――そこは、緑豊かな自然、海賊船が打ち上げられた砂浜、他のParallelと繋ぐ【秘密の丘】。

それらの面影が一切見れない――廃れた無人島と化していたのだ。

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