Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶19「最後の世界」

――――――それはあまりにも変わり果てた風景だった。

 

「ここは――」

 

「――そらちゃんが5人皆を過去で救ったことで、過去が改変して未来が変わった。本来の歴史に近づいた結果、こうなったんだ」

 

淡々と――またあの時のような恐怖を抱くような口調で話し始める。

 

「…ごめんごめん。ちょっと早口になっちゃった。要するに、まだ終わってないってこと」

 

前のトラウマのことを思い出し、抑えてくれたロボ子さん。そして、そんなロボ子さんから言われた言葉に引っかかりを覚える。

 

「まだ終わってない?…だって5人じゃ…」

 

救う人は全部で5人だったはず。それでも終わってないとはどういう事だろうか?

 

「まだだよ?――最後が残ってる」

 

「最後…?」

 

「5人が死なずに未来へ進むことが出来た過去。その先に待つのは…避けられない死」

 

その隠すことも無く直接発言した「死」。その言葉を聞き背中を悪寒が走るのを感じる。

 

「避けられない死…」

 

「そらちゃんが見てきた過去…あれは本来の過去とは似て非なるもの」

 

「…本来の…過去」

 

「最初に君を選んだ時、やっぱり君で良かったって…ボクが言ったこと覚えてる?」

 

「うん」

 

それは、初めてParallelに飛ばされ、そこで出会ったロボ子さんが私をこの世界に呼んだのだと説明されたときの話だ。

あの時は状況整理にいっぱいで特に何も気にしていなかった。だが、今思えばあれは不自然な言葉だ。

まるで――

 

「…意図的に私を呼んだの?」

 

たまたま「ときのそら」が呼ばれたのではなく、故意に、ロボ子さんによって呼ばれたのだろうか。

 

「…そうだよ。実はそらちゃん以外にも何人もここに呼んでいる。そして、同じようにParallelを救ってもらうために挑戦してもらってた」

 

少し気になっていた謎の1つが明かされる。

 

「…でも、皆ダメだったよ。Parallelで死ぬってどういう事か分かる?」

 

「えっ…」

 

そんな質問をされ、確かに思ったことがないなと実感する。

何度も死にそうな直面に出くわしていた。それなのに死んでいないのは、Parallelでは死なないようになっているのかと勝手に自己解釈していたからだ。

 

「…そらちゃんは奇跡のように生き延びていた。だから、世界を救えた唯一の人物でもあるんだよ」

 

「…他の皆ってのは…」

 

「――世界を救えずにParallelで死んでるよ。全員がね」

 

「――っ」

 

それだけ過去を改変し、世界を救うことは大変なことなのだ。最後まで生き延びているときのそらは正真正銘奇跡のおかげとしか言いようがないだろう。

 

「それでね、少なからずParallelへ送ってるわけだから…少しずつ過去は崩れていくんだよ」

 

「…異分子がその世界にやって来るから?」

 

「そう。だから、そらちゃんが体験してきた過去は本来の過去じゃなく、それに近しいもの。だから、本来の過去で起きた「最後の死」をまだ救えていない」

 

少しずつ過去を改変し、より良い未来へと進める。その結果が、本来の過去に近づいただけとのこと。

そして、最後にやって来る避けられない死を回避させる。それがときのそらの最後の役目なのだろう。

 

「…そらちゃんにこんな重いことを押し付けてるみたいで本当にごめんね?」

 

「あ、全然大丈夫だよ!それに、何だか友達が増えて私も楽しかったから!」

 

「――ぁ。――ありがと」

 

ロボ子さんからの説明が終わり、最後の世界へ行くために、2人で【秘密の丘】へと向かった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…【霧隠れの海岸】と、【妖精の森林】?」

 

道中、話の流れでこのMAINについて色々詳しく聞いた。その際、とても今更すぎるが、【秘密の丘】以外にも地名があることを教えられ、今それについて説明を受けているところだ。

 

「そう。【霧隠れの海岸】は、そらちゃんも見たと思うけど海賊船が砂浜に打ち上がってたでしょ?その付近の事を言うの」

 

そういえば、夜になるとサメが徘徊するとか言っていたような気がする。

 

「そして、【妖精の森林】は、フレアが管理している森の1つだよ」

 

「…えっ。フレアちゃんが…?」

 

だが、意外にも今の言葉には納得できる節がある。

最初から感じていたここでの違和感、それと同じ感覚をフレアの居た世界――ELEMENTの森でも感じていたからだ。

 

「今はきんつばが管理してるよ。…滅多に人前に出なくなったから、たぶんまだ会えないけどね」

 

そんな話をしていると、【秘密の丘】にある祭壇へとやって来た。

 

「…それじゃあ行くね」

 

迷わず、祭壇の前へと進んでいく。

 

「成長したね…」

 

「うん!あっ、1つお願いがあるんだけど」

 

祭壇を囲うように謎の光が集まりだし、力を発揮しようとしている中、珍しくときのそらからロボ子さんにお願いを言い出す。

 

「うん。…どうしたの?」

 

「あのね。これが終わったら私、元の世界に戻るんだよね?」

 

「そうだよ。またあずきの影響受けたら分からないけど、まぁそうそう無いからね〜」

 

それと同時、今のときのそらの言葉は「次の世界も救う」前提で話していることに気づくロボ子さん。笑みを零しながらそんなからかいをしてくる。

 

「それでね?…またこっちの世界に来ることできる?」

 

「現実世界に?まぁ行けると思うけど」

 

「そしたら来て欲しい。――また、こっちの世界に遊びに来たいから」

 

「――」

 

そんな言葉を予想していなかったのか、驚いたロボ子さんが固まってしまう。

 

「…あれ?」

 

「――。い、いや何でもないよ。――そうだね。また呼びに来るよ」

 

その言葉と同時、一際光が強くなり、そろそろ転移が始まる頃だろう。

 

「次が最後の世界だよね?」

 

「――そう。――Parallel World END。――気をつけて」

 

ロボ子さんの口から告げられるは次の世界の名前。

ENDなどと、最後に打って付けの世界の名前を聞き、今、ときのそらがMAINから消えていなくなった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…そらちゃん起きて!もう行くよ?」

 

不意に聞こえてくる大きな声。それに驚き目が覚めると、隣には戦闘用の服で身を包んだ――白銀ノエルが居たのだ。

 

「んー。これから何かあるんだっけ…」

 

「寝ぼけてないで。…最高級の任務よ。やらなきゃこの国が滅んじゃう」

 

「…滅ぶ?」

 

急に言われた話でもちゃんと冷静に聞いていられる。

ここへ来る前の別れ言葉――ロボ子さんとの約束を覚えているから。

 

「…この近くの無人島みたいな所…なんか黒いもやに包まれて中が見えなくなってるの」

 

「周りから閉ざされてるってこと?」

 

「そう。何があるか分からないけど、もし危険なものだったらここが1番危ないからね。だから調査兼退治に行くの」

 

それだけ説明され、一緒に身支度を終えて外へと出る。無人島ということから船でいくらしく、港まで一緒に歩いていく。

そして、到達すればすでに4人の姿が見える。

 

「…あ」

 

そう。ここへ来て最初に思っていた不安。それは、ちゃんと5人全員がいるのかということ。だが、目の前の人物たちを見ればそれも杞憂で終わった。

 

「あっ!そらちゃん来ましたね」

 

「遅いぺこよ〜。指揮を執るノエルが遅れてどうするぺこ」

 

「ごめんて。…あれ、ロボ子さんは?」

 

ノエルの発言「ロボ子さん」というのに対し目を見開く。

 

「…あれ、ノエルちゃんロボ子さんと知り合い…?」

 

「え?そうだよ。…あー、そらちゃんって会ったことない?」

 

そもそも過去を体験してきた中で1度もロボ子さんとは出会ってない。過去が変わったことでいきなりロボ子さんと出会う世界線があるのだろうか?

 

「…まぁ来れないって言ってたぺこだし。今日はこの6人で行くぺこね!」

 

「…早く行った方がいいんじゃない?マリン舵よろしくね」

 

「はぁ?なんでマリンなんだよ。フレアやれよー」

 

「いやあんた一応船長じゃん」

 

「一応って何ですか!?バリバリ船長ですけど!?」

 

「マリンうるさい。…船長なら舵を取るの普通じゃないの?」

 

「はぁ…。これだからるしあは。船長ってのは上でふんぞり返って指揮する立場なの」

 

「うっざ。…もうノエル行こ?そらちゃんとぺこらも船乗って」

 

「あ、うんっ」

 

5人がわいわいと話しているのが新鮮で――それでいてこれが見たかったわけで。

このために、世界を救って来たかいがあったなと、ときのそらは心から思っていた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

遠くから見えていた黒い球体のもやが目前にまでやって来る。

 

「…近くで見るとかなり迫力あるぺこね」

 

「そういえば、なんでこの5人だけなの?団員さんとか…」

 

最高級任務と言いながら5人しかいないのは不思議だ。もちろん、ときのそらは戦えないため人数にはカウントしていない。

 

「バケモノにランク付けされてるのは知ってるでしょ?」

 

「うん」

 

前にSランクと死闘を繰り広げたり、秘龍は最高級のSSSランクなど、良く耳にしているため知っている。

 

「それと同じように団長たち人にもランクはあるんだよ。その人物がどのバケモノと同等以上かを見極めるためのね」

 

つまり、人もバケモノと同じようにSランクなどの割り当てがされているということ。

 

「今回の任務は最高級…つまり、人で言うSランク以上相当と判断された人物しか送れないって決められてるの」

 

「そのSランク以上に指定されてるのがここにいる5人ってこと」

 

マリンが補足をする。

 

「…でも、なんで私が?」

 

「まぁそらは居ないといけねえぺこだし?」

 

「どんな理論…!」

 

これで死んだらたまったもんじゃない。

――行けないと言われた所で、結局は世界を救うためについてくるのは確定だけども。

 

「…なんかそらちゃんのこと前に測定したけど判定不可能なんだよね」

 

「不可能?」

 

そもそもいつ調べられたのかも気になるが、そこは触れず判定不可能という言葉を聞き返す。

 

「まー特別ってことぺこね。でもそらが一緒に居てくれて安心するのはほんとぺこよ」

 

「ぺこら…」

 

優しい言葉に思わず涙しそうになるがグッとこらえ、目の前の黒いもやを見つめる。

 

「…入るよ」

 

マリンがそう言う。皆が等しく一度頷いた。

そして、その中へと入るとすぐ目の前には目的の無人島の浜辺を見つける。

 

「――え」

 

そしてその光景を前にときのそらが驚く。

――まさしく、Parallel World MAINと同じ造りになっていたからだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…ここって…」

 

MAINにおいて、海賊船が打ち上がっていた場所――【霧隠れの海岸】だ。

 

「…どう見てもあれだね」

 

フレアがある方向を指さす。目を向ければ、そっちの方角は【秘密の丘】がある場所だ。

そして、その上には大きな黒い影が佇んでいた。

 

「…あれが犯人ぺこね」

 

「…よし。行くか」

 

そうして、6人で黒い影の見える方へと歩き始める。

――約10分後。隠れもせず堂々と佇むその物体を見るため、木陰から首を出すノエル。その反応は――

 

「――っ!?みんな…っ!」

 

「――え?」

 

それは唐突に起きた出来事。ノエルがすぐさま振り向きこちらへ駆け寄ってきた。刹那、つい先程までノエルが居座っていた木陰が跡形もなく消え去った。

 

「…やばい![白兎]!」

 

目の前に10匹の白毛玉を呼び出す。

 

「一旦引くぺこ!」

 

それを盾に来た道を引き返すかのように逃げる5人。未だ状況が分かっていないときのそらも、皆について逃げていく。

 

「ちょ、なになに!?」

 

逃げつつもノエルへ確認をとるるしあ。

 

「――あれ〈秘龍〉」

 

たった一言。されど、この状況が一変して絶望と化していくのを肌で感じ取る。

秘龍――〈五大秘龍〉と呼ばれるSSSランクのバケモノ。

 

「はぁはぁ…一旦ここなら大丈夫…」

 

洞穴のようなものを見つけ、その中に隠れる全員。

 

「相手が秘龍なんて聞いてないよ…」

 

「そもそも秘龍相手じゃ、この人数は難しいんじゃ…」

 

るしあとフレアがお互いに嘆くのも無理はない。

 

「…なんの事前準備なしに秘龍とは戦えない。だけど、逃げることもできない」

 

そう、力強く戦う宣言をしたのはノエルだ。

 

「そうですよ。…もう前みたいな船長たちじゃないんですから」

 

それに賛成するのは、この中でノエルとはかなり古い付き合いとも言えるマリンだった。

 

「まー、逃げるなんて言ってないからね!」

 

それに反論するかのように、フレアが声を大にして言う。

 

「…とりあえずあれがどんななのか気になるぺこね」

 

そうぺこらが言った時、入口付近に光が落ちてきた。

 

「なっ…!?」

 

――光が落ちる。そんな言葉は存在しない。だが、今の出来事はそうとしか表せない。

 

「…っ」

 

入口が大きく崩壊した結果、目の前にそびえ立つバケモノ――ノエルが言う〈秘龍〉と向かい合う状況になった。

 

「…あんた誰」

 

フレアがそのバケモノに言い放つ。

 

〈――。ァ〉

 

だがそれには答えず、代わりにその鋭い爪を振り払って攻撃してくる。

 

「…『怨恨』!」

 

「『パワーストライク』!」

 

その爪に対抗するようにるしあとノエルが技を放つ。

 

「なんか――」

 

違和感を感じる。だが、それの正体が分からず下手に口を出せないでいるときのそら。

 

「…悪いけど反抗してくるなら遠慮なく討伐するよ!」

 

爪を受け止めたノエルが、その〈秘龍〉に対して高らかに言い放った。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「――もし、君が最後の世界を救えたなら…それは本物なんだろうね」

 

独り、目の前からときのそらが消えたあとも、祭壇から離れずじっと立ち尽くす人物がいる。

 

「――そらちゃん向かったの?」

 

そんな人物に声をかけるのは、ロボ子さんの言う大好きな親友であるAZKiだった。

 

「…大丈夫だよ。あの子は…「ときのそら」だから」

 

「…能力を自覚してない?」

 

「可能性はあるね。とりあえず今は私も『時渡り』は止めて、ここで一緒に見守っておくよ」

 

「うん」

 

そう言い残し、AZKiが祭壇から離れ、拠点となる洞穴へと歩いていった。

 

「――本来の過去は、もっと残酷なんだよ。そらちゃん」

 

最後に言葉を残し、祭壇の前から去っていく。――未だ忘れていない、あの時のことを思い出しながら。

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