Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶20「イレギュラーな人物」

――――――ボクがたどり着いた時にはすでに5人の死体は消えていた。

AZKiによれば、〈輝龍〉の光に当てられ灰になったんじゃないかと言われる。

 

「――」

 

「ロボ子…」

 

最後にもう一度、死体でも良いから一目見たい。そんな、胸が張り裂けるほど辛い願いさえも、叶うことは無かった。

――この時からだろう。ロボ子さんの心が完全に砕けてしまったのは。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…またダメか」

 

何人目だろうか。過去の改変に失敗し、Parallelにて死亡してしまった。

もう気づいたことだが、Parallelに人を送ること自体がすでに過去改変に関わっており、悪い方向に進むことになってしまう。そこで送られた人が過去を直せれば通常ルートを辿る。

だが、死んでしまえばそこで終わる。強制過去改変となるのだ。

 

「ロボ子…」

 

ロボ子さんの行動を共に見守るのは、ロボ子さん以外に唯一本来の過去を知っているAZKi。

3人ほど過去へ送ってから、壊れた人形のように次々に人物を過去へ送り出している。そして失敗。

それの繰り返しだ。

 

「――次は…」

 

失敗する人間たちを見ていて気づいたことがある。

それは、過去へ送り、失敗して戻ってきた時に記憶がないことだ。

つまり、記憶を保持して再挑戦ができない以上、常に初回攻略ができる人物が求められる。

――そして、送り直す度にも過去が変わり、人物の行動が変わってしまう。

 

「…それのせいで命を落としていっちゃう」

 

そんな日々を繰り返す2人。

――いつしか、過去は本来より絶望な世界になっていた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「――え」

 

長い年月が過ぎた頃。不意に現れたイレギュラーな存在。

 

「…っ!ロボ子っ!」

 

「…どうしたのあずき」

 

Parallelへ送る頻度も減り、2人寂しく過ごす日が増えてきていた時だ。

 

「――っ!?」

 

そこで見つけた人物。

それは、2人が亡くしたとても大切な存在。

 

「…そらちゃん?」

 

それは――「ときのそら」と全く同じ姿の少女。

 

「…呼ぶの?」

 

AZKiが確認をしてくる。

何もここへ呼ぶ人物は手当り次第という訳では無い。

Parallelへの適性が比較的高い人物を抽出している。

――それでも「記憶の保持」ができる人物は居なかったが。

 

「…呼ぼう」

 

ロボ子さんの決断。2人とも、この時点で「ときのそら」では無いことくらい分かっていた。それでも、その姿に惹かれ、適性が少しあるからとParallelへ呼んでしまったのだ。

 

「…一応、あの子の世界を見てこようか?」

 

「そうだね。お願い。ボクはいつものように食材を見つけてくるよ」

 

AZKiが『時渡り』によって、この場から姿を消す。あの謎の少女の境遇を知ればどんな人物かだいたいは分かるだろう。

――そして、続きは物語の序盤、ときのそらとの出会いに繋がる。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…ロボ子さんとの出会いがなければこんな事は無かった。けど、選ばれたならちゃんと救わなきゃ!」

 

目の前にそびえる秘龍を前に、ノエルが攻撃を受け止めている状態。その背後で守られるときのそら。

こんな状況でも、Parallelへ呼んだロボ子さんを恨むどころか、むしろ感謝をしているくらいだった。

 

「…強いな…っ」

 

ノエルが爪を受け止め維持するが、秘龍から放たれる尻尾が横からノエルを襲う。

 

「おりゃあ!」

 

その尻尾に対してマリンの放つアンカーが迎撃する。

上手く弾け飛び、ノエルへ攻撃が届くことは無かった。

 

「…ノエルっ!もう大丈夫っ!」

 

「っ!」

 

フレアの呼び掛け。それに応じて秘龍を抑える力を抜き、その場から回避する。

 

「くらえっ![弓変化]――『力の矢』!」

 

押し潰そうとした相手がいなくなり、がら空きとなった秘龍の腹部に渾身の一撃を与える。

 

「うっ…あまり効いてない!?」

 

よろけはしたものの、決定打には程遠い。再び、秘龍が体全体に光を溜め込み、それを放出してきた。

 

「…っ!?」

 

「っっ!」

 

直撃は避けるものの、全員がその光に当てられ小さな洞穴の地面が崩れ落ち、一緒に下へと落とされていく。

 

「やば――」

 

上手く着地し、周りを見渡すフレアとるしあ。

着地に失敗し倒れているのマリンとぺこら、それからときのそらを庇って一緒に落ちたノエルの姿が――

 

「…っ!ノエルとそらちゃんがいないっ!?」

 

一緒に落ちた2人の姿が見当たらなかった。崖に近い場所故に、崖下まで落ちてしまったのだろうか。

 

〈――ッ!!〉

 

「くっ…こいつ…!」

 

助けに行こうとすぐに走り始めたフレアの道を塞ぐかのように秘龍が地へ降り立ってきた。

 

「フレアっ!敵はこいつしかいねえぺこ!ノエルとそらなら大丈夫!ぺこらたちはこいつと応戦するぺこ!」

 

ぺこらがその手に[ぺこットランチャー]を持ち一歩前へと出る。

 

「そうですよ。…ノエルたちもここへ戻ってきますから!」

 

「…そうだね。るしあ!合わせていくよっ!」

 

「任せてっ!」

 

2人を見失った状況の中、秘龍との第2回戦が幕を開けた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…んん。…痛っ!?」

 

落下の衝撃で気を失ったときのそら。何かが頭へとぶつかった衝撃で目が覚める。

 

「…これって…」

 

【ジュエリーショップ】で見た「輝竜の鱗石」に限りなく似たもの。

 

「…いや、まんまそれじゃん。えっ…てことは」

 

「あの秘龍――〈輝龍〉ってことね」

 

「っ!ノエル、大丈夫っ!?」

 

「うん、ありがと。それより輝龍か…」

 

落ちてきた物を見てノエルがそう答える。

 

「…心当たりが?」

 

「いや。噂だと輝龍ってのは無闇に暴れないって聞いてたから」

 

確かにその噂の通りだとすれば目の前にいる輝龍は不自然と言えるだろう。

無闇に暴れないということはそれだけ大人しい、または冷静でいられるということ。だが、今の輝龍を一言で表すならそう、暴走状態のような――

 

「――っ!!」

 

「…そらちゃん?」

 

その瞬間、引っかかっていた謎が一瞬にして鮮明になる。

 

「もしかしたら――暴走している。…何かに操られていたり…」

 

「…っ!そうか、だから雰囲気が。それなら納得できるっ!」

 

ときのそらの言葉を反芻しノエルもその可能性にたどり着く。

 

「あの黒いもや…あれが原因だろうね」

 

そうしてノエルの中で一つの答えが導かれた。

 

「倒すより先に、操っているものを解こう。…皆に合流して伝えないと」

 

このまますぐ上へと行ければ楽だがあいにくとそんな方法は――

 

「そらちゃんこっち来て。技で上へ飛ぶよ」

 

――無いことはなかった。言われるがままノエルへと抱きつき、落とされないようにする。

 

「…よし。『パワーストライク』!」

 

ノエルの武器[プラチナメイス]を地面へと思い切り叩きつける。その衝撃波によって2人の体が宙へ浮き、そのまま天井を貫いて皆のいる元へ――

 

「…っ!?」

 

「っ!ノエルちゃん!」

 

行くところを光の軌跡によって阻止されてしまう。そのまま2人は再び下の地面へと尻もちをつく。

 

「うっ…何これ…」

 

ときのそらは体勢を建て直しながら上を見て呟く。そこにいるであろう新しいバケモノたちにではない。

天井から壁まで、至る所に模様のように浮き出ている光の残留。そこから伸びる光棘たちが蠢いていたからだ。

 

「…これって、輝龍の能力?」

 

他に考えられることは無いだろう。

そんな光棘たちが一気にときのそらとノエル目掛けて伸びてくる。

 

「っ!?」

 

「そらちゃん!――『パワーストライク』!」

 

気力を溜め込み、一気に解き放つ。襲い来る光棘を一撃で粉砕していく。だが数が多く、キリがない。

 

「…このままじゃ…」

 

『パワーストライク』の力が消えれば一撃で粉砕できるか分からなくなる。輝龍の力なら尚更だ。

 

「…おりゃああ!」

 

必死に振り回すノエルの攻撃が全て当たり、次々へと光棘が消滅していく。

それと同時、光の残留が小さくなるのが分かって。

 

「…全部壊しまくるってこと…?」

 

「やってやる!そらちゃんは必ず守るっ!」

 

これは完全な耐久戦だ。

ノエルの力が途切れるのが先か、光の残留が消えてなくなるのが先か。

 

「っ!ノエルちゃん!!」

 

だが、横から水を差すような光棘が、ノエルの背後から伸びていくのに気づいたときのそら。

それでも言葉を投げかけ、ノエルが反応するまでのタイムラグを考慮すればすでに手遅れだ。

 

「――ぐっ!?」

 

「ノエルちゃん!?」

 

思い切り背中から横腹に抜けるように斜めに貫通した光棘。そのまま壁へと突き刺さり、ノエルを串刺し状態にした。

 

「…がはっ…っ」

 

「っ!」

 

動きが制限されたノエルは、今も必死に光棘を撃ち落としていくが、徐々に拾える範囲が狭くなり追加ダメージを負っていく。

みるみるうちに、ノエルの体が赤く染まっていくのをただ見ているだけしかできないときのそらにとって、これだけ屈辱的なことは無いだろう。

 

「…何か…」

 

何かできないか。そう自問自答するときのそら。

そこに不意にやってきた感覚。

 

「――え?」

 

まるで、自分もすいせいと同じように能力者だと錯覚するような感覚。この力の源が自分にあるのか、それとも突如渡されたものなのか。

 

「――」

 

このままではノエルがやられてしまう。それを阻止するには、一か八かこの力を使うしかない。

 

「――ノエルっ!!」

 

「…っ!?」

 

ノエルに向かって両手の平を向ける。

使い方など分かってはいない。これで発動するかも分からない。

――でも、発動しなかったら困る。

 

「…ありがと、そらちゃん。っ!!」

 

賭けには成功したようで、ノエルの一振りが自身を貫く光棘ごと周囲の光棘を一瞬にして消滅させていく。

 

「…すごい…!」

 

自分の力の正体は分かっていない。

この状況だけ切り取ればバフ効果のようなものに思える。

 

「…おらぁ!!」

 

ノエルの動きが先程までと段違いに良くなり、次々と光の残留を消滅させ、ついに全ての残留がこの場から消えてなくなったのだ。

 

「…窮地での覚醒。なんか主人公みたいだね」

 

「あはは…とりあえずノエルちゃんが動けそうで良かった」

 

Parallelにて過去を救っている点では、ある意味主人公かもしれない。

 

「…上から音がなくなっている。どっかへ移動したかも」

 

戦っている途中から、激しい爆発音が鳴り止んでいた。まさかやられたとは思っていないため、どこかへ移動したと考えるのが無難だろう。

 

「探しに行こう。――必勝法を伝えなきゃ」

 

その意見に反対するはずもなく、ときのそらはノエルの後を追って島の中を移動することになった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…うっ」

 

「ぺこらっ!『ロマンス・ホロイズム』!」

 

〈――ッ!〉

 

秘龍による猛攻に防戦一方を強いられる状況。周囲には光の残留がいくつか存在し、そこから伸びる光棘の対処も迫られている。

 

「…埒が明かないよっ!」

 

秘龍本体へ攻撃するのはぺこらとマリン。そして、周りの光棘はるしあとフレアが相手している。

次々に迫り来る光棘により、秘龍本体へ攻撃できないことが徐々に押されてきている証拠だ。

 

「…これ、容赦なくやるしかないのか」

 

「フレア?」

 

そう呟くフレアの声を聞くるしあ。だが、それには反応せずに行動に移す。

 

「…[弓変化]――『金唾の矢』!」

 

「っ!それ…」

 

容赦しないフレアの一撃。きんつばの力を借りる、最大級の攻撃。

大きな光が残留に向けて放たれた。

 

「…っ!!」

 

その威力は凄まじく、一瞬にして周囲の残留を巻き込み、消滅させるほどだ。

 

「…ぐっ…」

 

「フレアっ!」

 

その威力の反動か、その場に膝をつくフレア。るしあがすぐに傍により、魔力による回復を行う。

 

「…これで…4人で秘龍を――」

 

「――え」

 

フレアとるしあ。体力が回復すれば、秘龍と4対1で戦えると、そう思った時には遅かった。

――2人に飛んでくる物体。それは背後の壁にぶつかり倒れるが、その姿は言うまでもない――ぺこらの姿だった。

 

「っ!ぺこらぁっ!」

 

るしあとフレア、2人でぺこらの元へ駆け寄る。横腹を思い切り損傷しており、血がものすごい勢いで流れ出てる。

 

「…ぺこらっ!まだ大丈夫っ!」

 

必死の思いでるしあが回復をかける。

 

「…っ、マリンはっ!?」

 

フレアがぺこらの安否を確認しつつ、未だ戦ってるであろうマリンの方へ目を向ける。

体中から血が滴り落ち、マリンもぺこらまでとは言えないがかなりの傷を負っている。

 

「…マリン――がぁっ!」

 

マリンの助太刀に入ろうとするフレアを遮るように、秘龍から光棘が放たれた。

 

「…フレアっ…!?」

 

秘龍の意識がマリンから外れたことに気づいたマリンが、その方向へ視線を向けた。

――フレアが、光棘に腹を貫通された瞬間を目の当たりにした。

 

「――っ!」

 

そんなフレアに意識を向けた瞬間、横から秘龍の爪による攻撃をもろに受け、吹き飛ばされてしまう。

 

「…ぐぁぁ…っ」

 

意識が朦朧とする。そんな中、視界に映るのは膝を付いたフレアに迫る秘龍の姿。

るしあはぺこらを癒すのに集中し、こちらへ意識が裂く余裕がない。

 

「…かっ…ぁ」

 

このままではフレアがやられてしまう。

――ダメだ、それだけは何としても阻止しないと。

 

「がぁっ…ダメだ…死なせちゃ…っ!!」

 

溢れ出る力の深淵。操れるか分からないそれを、今発揮する以外に道はない。

 

「こいっ…!――[深淵乖離]!!」

 

底から無理やり力を引っ張り出してくる。

 

〈――ッ〉

 

その瞬間、秘龍の足元に渦巻きができ、それに両足が囚われ身動きが取れなくなった。

 

「…絶対に…船長が死なせませんっ!!」

 

今にも倒れそうな状態で、最後の力を振り絞ったマリンが改めて秘龍と向き合ったのだ。

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