Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶2「名無しの少女」

――――――暗闇の中、絶えず音が鳴り響く。それは、2人の撃ち合いによるものだった。

 

「…これじゃトワがやってる事と変わんなくない?」

 

「うっせえ!実力行使させてんのはそっちだ…ろ!!」

 

激しく、白い光の弾が地上めがけて撃ち落とされるが、自分をトワと名乗った少女は綺麗にそれをかわしていく。

 

「お返しだよ!!」

 

「うわっ!?」

 

空を飛ぶ少女――天使の輪のようなひし形を頭に浮かせ、背中から天使の羽が生えているまさしく天使そのものが、トワによる紫色の闇の弾に追われ逃げている。

 

「それよりかなた。こっちに居ていいの?」

 

「それどーゆう意味だ…よっ!」

 

会話を交わすトワとかなた。だが、それと同時に弾幕合戦が繰り広げられている。

 

「自国を大事にしたら?そっちは有能な右腕いないんじゃない?」

 

「はぁ?…表立って行動させてないだけでいるし!」

 

「へぇ。それで、そろそろ核を教える気になった?」

 

「なわけないだろ!!」

 

空を舞うかなたが弾幕の合間をくぐり抜ける。ふと、弾幕が緩くなったのに気がついたかなたは、トワと同じ地上へと足を降ろす。

 

「今日はお終いだよ。そろそろ帰らないとゲート閉じちゃうし」

 

そう言って、トワが天に向かって指を向ける。その先には、中には宇宙空間が広がっているような、渦巻きの裂け目ができていた。最初の時よりも若干小さくなっている。

 

「…いつも思うけどなんでそんな妙な優しさを見せるんだ?」

 

かなたがそう思うのは当たり前だろう。因縁があるのか、しばらくの間ずっとトワとかなたは戦闘を繰り返している。

その理由の一つはトワたちのいる地獄がかなたの住む天国へ攻撃を仕掛けているから。

 

「…やり合う気があるなら僕を返さないのが賢明な判断なんじゃ?」

 

「えぇ…。トワが慈悲をかけてるのにそれ言っちゃう?…まぁこうやってかなたと遊ぶのが楽しくなって来ているのもある」

 

「うわ。僕は嫌いだけど」

 

「率直だね。とりあえず今日は帰ってよ。…こっちにも色々あるからさ」

 

トワがかなたに引き返すように促す。

 

「――。今に見てろよ。何度もやられっぱなしにはならないからな」

 

最後の捨て台詞を吐き、かなたがゲートを通じて向こう側へと消えていった。一人残ったトワは、そのゲートの裂け目が無くなるのを見てから、ぽつりと一言呟いた。

 

「――ほんと最悪」

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「その助けてくれた天使ってどんな見た目?」

 

「…覚えてない」

 

「そっかぁ…。私たちと同じ目的の人物ならいいね」

 

「…そらちゃんまさかのコミュ強…?」

 

「まぁー船長より遥かにコミュ力高いんじゃないですかねぇ」

 

ハクと命名された少女とときのそらが会話を盛り上げる中、そんなときのそらのコミュ力について語るマリンとココ。

周りの景色は想像していた天国とは程遠いほど違う。何かに襲撃された後のようなものになっている。

 

「…それにしても誰も見かけませんね」

 

周りを見渡しながらマリンか呟く。転移した直後の場所には何人か倒れていたが、そこから移動し家が複数ある方へ向かうと倒れている人すら見かけなくなった。

 

「もう皆避難したとかっすかね」

 

「そうかもね…」

 

家がある所へ向かえば人と会えると思っていたが、避難しているのなら無駄足になっただろう。

 

「――まだ居るか」

 

「っ!」

 

ふと声が聞こえ、一瞬にして全員が肩を跳ね上げる。声の聞こえた方へ振り向けば、そこには2人の男が立っている。

 

「…あれ、こいつら天使じゃなくないすか?無視します?」

 

「ここにいる時点で始末するのが命令だ。行くぞ」

 

突如こちらへ向かって距離を寄せる2人。そのうち、指示をしていた方の男が自身の周囲に小さな光弾を無数に浮かび上がらせる。

 

「…『フルオート』!」

 

その男の周りを回る光弾が、ときのそらたちめがけて猛スピードで飛んでくる。

 

「まずい…っ!?」

 

「っ!『光棘』!」

 

すぐさまココが能力を発動する。目の前には無数の光の棘が壁のように地から出現し、光弾を防いでいる。

――〈輝龍〉との戦いで脅威となった能力だ。

 

「…それ人姿のときでも使えるんですね」

 

「あたりめえよ。それより、敵さん中々強いんじゃないすか?」

 

「…船長だって成長したところ見せてあげます![深淵乖離]!」

 

前方の敵2人に向かって[特殊能力]を発動させる。周囲に複数もの渦巻き状の穴が出現し、そこから鎖が2人めがけて飛んでいく。

 

「――やれ」

 

「ういっす。――[透明化]」

 

光弾をまとった男とは別の男が能力を発動する。大柄の男の体に手を触れながら、能力を唱えた瞬間――

 

「――消えたっ!?」

 

目の前から突如姿を消したのだ。マリンの鎖攻撃は2人に当たることなく空を切ることになった。

 

「…『フルオート』」

 

次の瞬間には横へと移動していた2人の姿が現れ、『光棘』のない横方向から光弾を連射する。

 

「…うっ![深淵乖離]!」

 

マリンが再び能力を使い、現れた鎖でいくつかの光弾を受け止める。

 

「…『光棘』!」

 

更にココも真横方向へと『光棘』を出現させ、残りの光弾を受け止めた。

 

「――良い連携だが、すでにそれは対策済みだ」

 

「――がはぁっ…!?」

 

「っ!!――そらちゃんっ!!!」

 

全くの反対方向――背中側から強烈な一撃を受けるときのそら。

そのままの勢いで地面に倒れてしまった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「そらちゃん!!」

 

マリンが駆け寄り、その体を抱き寄せる。背中から脇腹にかけて体が損傷していて、血が流れ落ちていく。

 

「…っ…ぁ」

 

意識が朦朧としているのか、目の焦点が合っていない。

 

「…まずいっ…」

 

「船長はそらちゃんとハクちゃん連れて逃げてください!防ぐなら私の能力のが適任です!」

 

ココがマリンたちを逃がすために『光棘』を再び発動する。

 

「ハクちゃん逃げましょ!」

 

「…えっと…そらは?」

 

こんな状況においても落ち着いた状態でハクが声をかけてくる。いや、落ち着いたというよりもこの状況を理解していないという方が正しいだろう。

 

「…っ。そらちゃんは能力者じゃありません。今のところだけだと思いますけど…このままだとそらちゃんが死んでしまいます!」

 

「死ぬって、どんな事?」

 

「――っ」

 

脳に影響があると予想したココとマリン。その考えは的中しているだろう。常人とは違う感覚をハクは持っている。そのためか、こちらの話は正しく伝わらないかもしれない。

 

「もう会えなくなります。貴方はまだ付き合いが短いかもしれない…でも、船長たちにはとても辛いことです。そして、あなたも死なせたくない。だから一緒に逃げるんです!」

 

ときのそらを抱き抱えながらハクに視線を向ける。

 

「とりあえず逃げますよ!ココさんが気を引いているうちに!」

 

「――それはさせないよっ!」

 

「っ!?」

 

マリンが逃げようとした先に突如、平均的な身長に普通体型の男が現れる。先程も使っていた[透明化]の能力だろう。

 

「くらいな…!」

 

手に持った短剣をすでに瀕死のときのそらへ向けて伸ばしてくる。すでに1歩踏み出していたマリンはそれをかわす術がない。

 

「――っ!!」

 

そんなマリンに迫られる2択。このままときのそらが刺されるか、横へと投げ飛ばし自分が刺されるか。どちらをしてもときのそらは助からなくなるだろう。

 

「――なっ!?」

 

「――っ!?」

 

刺されることを覚悟していたマリンだが、短剣に刺されなかった事実に気がつくと、2歩目でその足を止め目を開いて目の前の状況を確認する。

――『光棘』によって、男の手首から短剣にかけて、その動きが封じられていたのだ。

 

「…ココさん…!」

 

大柄の男と戦っている中でこちら側へ助力してくれたココに感謝をしようと目線を移動する。だが――

 

「――え?」

 

――大柄の男の攻撃を全て止め切るのに精一杯なココは一切こちらを見ていない状況だった。到底、こちらに助力する暇は無いだろう。

 

「え、それじゃ…」

 

誰がやったのか。考えられる可能性は一つだけ。そう考えたマリンは――ハクの方へと視線を向けた。

 

「…そらと会えなくなるのは…たぶん、私も嫌。だから、逃げるんじゃなくて、戦った方が守れる?」

 

ハクが片方の手のひらをこちら側へ向けており、十中八九今の『光棘』を発動したのはハクだろう。

 

「…同じ能力。特殊能力じゃなかったのか…!」

 

まんまとやられたと歯を食いしばる男。だが、悲しいことに男の仮定は微妙にずれている。

事実として、『光棘』は男の言うように特殊能力の部類ではない。だが、だからと言って他の人が使える能力でもなく、あれはココにしか使えない技だ。

 

「先にお前か!」

 

男は空いているもう片方の手から違う短剣を投げ飛ばしてくる。ハクは避ける素振りを見せず、再び男に向かって手のひらを向け――

 

「――『◾️◾️◾️』」

 

ハクは何かを口に出したようだが、上手く聞き取れず何を言ったかは分からない。それでも何かの能力を使ったのだろうと分かる。そう、分かった瞬間――

 

「――え」

 

「――なっ!?」

 

――男だけではなく、マリンもハクの異常さに改めて気づいたのだろう。

先程大柄の男が使っていた『フルオート』と同じ能力が放たれたのだから。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

敵の男とマリンが驚くが、そんなことで事態は変わらない。男へ真っ直ぐに飛んでいく複数の光弾。

咄嗟に[透明化]の構えを取るが、それより先に男へと直撃し大きな爆発を起こした。

 

「――ん?」

 

「…っ!?」

 

大柄の男とココも、その爆発の音に意識を取られ、お互いの攻防が一度止まる。そして、同時に爆発のした方向へと目を向けた。

 

「――やられたか?」

 

爆発に呑まれ倒れ込んだ仲間の男を見て、ココと戦っていた方がそう呟く。だが、驚きはそれだけでは終わらない。

 

「…ハクちゃん?」

 

ココもマリンも気づいたように、この場からハクの姿が消えていた。大柄の男に関しては、そんな事知ろうとも思っていない。――それが仇となっただろう。

 

「――」

 

「――っ」

 

大柄の男の背後、何も無い空間から突如ハクの姿が現れる。そのまま勢い良く蹴りを男の横腹に加えた。

反応ができず直撃するも、その鍛えられた体にはそれほどのダメージは入っておらず、数メートル飛ばしただけに過ぎなかった。

 

「…今のは[透明化]と似ている。…いや、同じか?」

 

目の前で起きた出来事を分析し、ある一つの結論を導き出す。それは――

 

「――このままでは分が悪いか…」

 

襲っておきながら、自分たちの方が状況は悪いと判断する。そして、倒れている男を抱え、この場から姿を消していった。

 

「…!待って!」

 

その後をハクが追おうとしたが、それをマリンが止める。

 

「今は倒すより、そらちゃんを死なせない方が優先です」

 

「…倒しても、そらは助からない?」

 

「ええ。そらちゃんの傷を塞げば、倒さなくても助けられます」

 

ときのそらへと駆け寄るココが、治癒魔法を使う。次第に顔色は良くなっていくが、ココだけではいずれときのそらが命を落とす方が先になるだろう。

 

「…マリンはやらないの?」

 

「船長は使えないです。ハクちゃんは…」

 

何も手を貸すことができないことに苦しむマリン。そんなマリンがハクは手助けできるかを聞いて――

 

「…こう?」

 

ハクが一度ココへ視線を向けてから、ときのそらに向かって手をかざす。ココと同じように、ハクの手のひらから淡い光が溢れてきてときのそらを包み込んだ。

一人の時よりも速い回復力で、あっという間にときのそらの傷口が塞がったのだ。

 

「そらちゃん!」

 

マリンが肩を抱え声をかける。やがて、全くの無反応だったときのそらの瞼が少しずつ開いていくのが分かる。

 

「…ん…っ」

 

そして完全に目を開け、周囲を見渡した。

 

「…あ、あれ…死んで…ない」

 

「良かったぁ!」

 

「良かったですそらちゃん」

 

ココもときのそらの状態を見て安堵した。

 

「2人とも無事で良かった…あっ、ハクちゃん大丈夫!?」

 

立ったままこちらを見下ろしていたハクに向かって、何とか立ち上がり駆け寄った。

 

「…大丈夫。そらは、大丈夫?」

 

「うん。皆のおかげ。ハクちゃんもありがとう」

 

「…うん」

 

何とか危機を脱したことにより、この場の全員――いや、正確にはハク以外の全員が肩の力を抜いたのが目に見えて分かった。

 

「…それにしてもハクの能力…」

 

「敵の能力使ってたよね。それだけじゃなく、『光棘』も」

 

マリンの付け加えにときのそらとココが一瞬目を見開く。

 

「私以外に同じ技使う人いたんすか」

 

「えっ、偶然とか…?それか似ている能力とか…」

 

「――ねぇハクちゃん。自分の特殊能力が何だか覚えていますか?」

 

ココとときのそらの言葉を遮り、マリンがハクへと問いかける。脳に影響があるのではと予想している人物に対して、今の質問はおかしな事だ。普通に考えればこれまで通り覚えていないだろう。

だが、その質問を受けたハクは今までとは違う態度でこう言った。

 

「うん。――能力のことは覚えている」

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