Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶5「地獄の統括者」

――――――カリオペの発した言葉。その意味を考えている間に次の言葉をカリオペが放つ。

 

「――私の親友に、オーロ・クロニーという人物がいます。彼女の特殊能力は[時針盤錯]。あらゆる時の流れを管理する「時の番人」です」

 

つまり、そのクロニーという人物の能力のおかげでParallel転移ができるということ。AZKiに似たような能力だが、それよりも強力だと思う点。

 

「あらゆる時の流れ…」

 

「はい。彼女は全ての過去、現在、未来を見ることができるため最善の世界を見届けることができます」

 

「そ、そんなに凄いなんて…」

 

その人物なら、このParallelを移動し、世界を救うことができるのではないか。

 

「残念ながら、彼女はその力の使用をこの世界では禁じられています」

 

「この世界?」

 

「はい。あらゆる国が位置する、最も標高の低い場所に位置する大陸。そことはかけ離れた位置に存在するこの地獄と天国。そういった下界での使用はできないのです」

 

完全な観測者となる立ち位置に存在しているということ。

 

「特殊能力の使用が不可能なだけで、こっちに降りてこれますし、普通の力なら使えますがね」

 

「そうなんですね…その、クロニーさんの能力を勝手に話しちゃって大丈夫なんですか?」

 

「問題ないです。そらさんのことは信頼してるので。それにまぁ、クロニーの能力はバレた所で支障はないですから」

 

話が一段落ついたところを見計らい、ココがカリオペに声をかける。

 

「さっきの2人が呼びに行ったのはカリオペさんってことですか?」

 

「Yes.扉の前で2人の姿を確認していたので、すぐにこの場へ来たのです」

 

そう言い、カリオペは2人に立つように声をかける。

 

「早く行った方が私としても助かります」

 

「…どこへ行くんですか?」

 

ときのそらの疑問にはすぐ答えずに、2人をこの建物の外へと連れていく。そこで初めて振り返り、告げる。

 

「――まずは、全ての始まりを防いでみましょう」

 

 

――――――――――――――――――

 

 

カリオペから説明されたこと、それはときのそらたちがあのバケモノのような龍と出会う3ヶ月前に全てが始まったということだった。

地獄に持ち掛けられた約束の条件――それは、天国と関わりを深めるなということ。すなわち、仲が良くなってはいけないということだった。

 

「…普通に考えれば、天国と地獄って正反対ですし、仲が良くなるとは思えないですけどねえ」

 

ときのそらもココと同意見だった。

 

「実際は仲が良かったです。なんなら、トワ様も今でも仲良くしようとしてた」

 

「…仲良くしようとしてたって…」

 

「察しの通り、天国の管理者――天音かなたは地獄を憎んでいます。そのため中々仲良くなることができないのです」

 

ここで出てきた「天音かなた」という単語。お互い反応するが、より大きな反応を見せたのは他の誰でもない、ココだった。

 

「…もしかしてお知り合いですか?」

 

「…そうですね。だいぶ昔からの腐れ縁ってやつっすよ」

 

「…そしてこのあと幼龍が現れます。それに告げられるのは仲良くしないこと。守れなければ地獄も天国も滅ぼすと」

 

「…なんでそんな事」

 

今の話を聞いてときのそらが感じたこと。それは、何のためにそんな約束を縛り付けてきたのかということだった。

 

「理由は分かりません。が、地獄へ接触される前に追い返せればベストです。とりあえずトワ様の元へ向かいましょう」

 

カリオペが率先して2人を引き連れる。その言葉を噛み締め、ときのそらとココがカリオペの後をついていった。

 

「…数分ほど歩きます」

 

「大丈夫です。…それにしても…幼龍って」

 

「間違いなく、あの時襲ってきたバケモノでしたね。雰囲気が似てますし合ってると思いますよ」

 

MAINの世界において、天国で襲ってきた龍のバケモノ。それと幼龍が同一だとココがはっきりと口にした。

 

「幼龍は成長を操る特殊能力を持ってるのでかなり危険です。たぶん、秘龍の中じゃ1番強いんじゃないすかね」

 

「ええっ!?」

 

ココの口から、自分より強いと表現された幼龍。そして、その幼龍の特殊能力らしいと思われる力。

 

「…成長を操る?」

 

「詳しくは私もやられたことないんで分からないっすけどね」

 

それでも強いと言われる幼龍の特殊能力は警戒しておいたほうがいいだろう。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…着きました」

 

目の前にある建物は小さいが、その分丁寧に造られており、他の建物とは一線を画したものとなっていた。

 

「トワ様。客人連れてきました」

 

カリオペが扉越しに声をかけ、数秒後に中から反応が返ってくる。

 

「――客人?トワ呼んでないけど」

 

「私が呼びました。――地獄と天国を繋ぐ重要な人です」

 

カリオペの最後の一言に、中の物音が一切聞こえなくる。そしてしばらくしたあと、扉がゆっくりと開かれた。

 

「――っ」

 

「…中々面白いこと言うじゃんカリオペ」

 

中から現れたのは、MAINでの幼龍との戦闘の際に、家の傍らに倒れ込んでいた人物と同じ姿をしていたのだ。

 

「…2人がその重要な人なの?説明は?」

 

「トワ様からされた方が良いと思ったのでしてないですね」

 

「そ。…とりあえず中入りなよ」

 

トワと呼ばれる少女に促され、ときのそらとココが家の中へと入りソファーに座った。

その正面へとカリオペとトワが座り、こちらを見つめてくる。

 

「…まずは自己紹介。常闇トワ。よろしく」

 

簡潔に、自分の名前を口に出す。

 

「トワ様がこの地獄を統括する人物です」

 

付け加えるようにカリオペがそう説明した。

 

「わ、私は時乃 空。よろしくね」

 

「私は桐生ココですう」

 

ときのそらたちの自己紹介が終わると同時、トワがココの方に視線を向けた。

 

「…桐生?何とも勘違いしそうな名前してるね」

 

「勘違いじゃないっすよ。私は〈輝龍〉なんで」

 

誤魔化そうともしないで、いとも容易く自分の正体をバラした。

それを聞いた瞬間、トワの目が一瞬見開くのが見えた。

 

「――ふーん。まぁ仲間になってくれるならこっちも大歓迎だわ」

 

「ところで…」

 

話が落ち着いたとこで、ときのそらが気になっていたことについて話し出す。

 

「…その、トワちゃんの頭の帽子…」

 

「ん?ビビのこと?」

 

トワが被っているキャップ型の黒い帽子。耳や目、尻尾がついており、生き物をモチーフにした帽子と思っていたときのそらだが――

 

「――う、動いてる?」

 

時折動く尻尾を見て、ときのそらは困惑していたのだ。

 

「あー…ビビは帽子ってよりペットだから。あまり気にしないで」

 

そう言われるが、気にするなと言うのも無理な話だった。

しばらくの間、動く帽子に気が散ってしまい、これからの事についての話を半分ほど聞き逃していたのだった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…で、天国の管理者――天音かなたと知り合いってのは本当なの?ココ」

 

「そうですよ。もともと天国に居候してた身ですからね。何かと因縁に近い関わりがあるんすよ」

 

「…かなたが地獄を憎んでいる話。聞いたことない?」

 

「いやぁ、無いっすね」

 

「…なんでトワちゃんは天国と仲良くしようと?…あっ、別にして欲しくないとかそういうんじゃなくて…」

 

「分かってる。トワはね、あまり争いとかしたくないから。地獄と天国が仲良く関係を結べれば、下に位置する大陸も安心できるでしょ」

 

下に位置する大陸というのは、ときのそらたちのいる島や、【プラチナ聖王国】などの事だと説明を受けている。

 

「そうだったんだ。…仲良くするにはかなたちゃんの憎しみの理由が分からないと難しそうだね」

 

「そうなんだよ、分かってるじゃんそらちゃん。とりあえず、明日何かしら動こうかなって考えてる。このままじゃ何も変わらないし」

 

そう言うと、トワの頭にのっている帽子――ペットのビビが勢いよく跳ね上がり、扉を開けて外へと飛んで行った。

 

「ええ!?ビビちゃんそんなこと…」

 

「――おかしい」

 

トワの張り詰めた言葉にときのそらとココが息を飲む。

 

「…何かに引っ張られていましたね」

 

今の状況について、簡潔にカリオペが教えてくれる。

 

「行くよ」

 

いち早くトワが駆け出し、家の外へと出ていってしまった。

 

「え、え…何が起きたの?」

 

「…これはまずいです。――世界が変われば、同じ道を辿ることも無いということですね」

 

「ど、どういうこと?」

 

ときのそらが発言の意味を聞き返すが、それに反応する代わりに外へ出るよう2人を仰ぐ。

 

「トワ様と一緒にビビを追いかけながら説明します」

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…過去が変わった?」

 

トワと一緒にビビを追いかける中、カリオペがときのそらとココにだけこっそりと話をしている。

 

「私はクロニーの影響で未来を見てきただけなので干渉することはありません。ですので、十中八九2人のParallel移動が原因でしょう」

 

カリオペから告げられる言葉。もちろん、Parallel転移することによる、過去改変はロボ子さんから聞いているし、実際にも体験したことだ。

 

「…じゃあ」

 

「幼龍との接触は避けられないかと。…しかも私の知っている通りに世界が進むとも限りません」

 

「大丈夫っすよ。それを救いに来たのが私たちなんすから」

 

ココの強気な言葉には弱い気持ちを助けてもらっている気がする。

ココの言う通り、ときのそらも頑張らなくてはいけない。

 

「――っ!?」

 

ふと目の前を走るトワが急に足を止めたのが見え、慌てて残り3人も止まり前を見る。

 

「――っ!!」

 

「…幼龍っすか」

 

目の前には小さいながらも凶悪なオーラを放っている龍の姿をしたバケモノ――何度も名前を聞き、一度出くわした〈幼龍〉がこちらを見据えていたのだ。

 

「…ビビがいない?」

 

ビビを追いかけていたはずが、目の前から突如姿を消してしまった。

 

〈――ソロソロ動クツモリダッタナ〉

 

「…何が?」

 

〈地獄ト天国ノ和平。ソンナモノ必要ナイ〉

 

まるでトワの考えを見透かしているように淡々と語りかけてくる。

 

「…っ、てめぇ」

 

〈――天国ト関ワルナ。約束ヲ守レバ悪イヨウニシナイ〉

 

そう、幼龍が条件を突きつけ、この場を去ろうとしている。

 

「っ!逃がすかよ!『魔弾』!」

 

トワが手のひらから紫色の弾を幼龍に向かって連発する。

 

〈――無駄ナ事ハシナイ〉

 

そう言い、幼龍の足元から新たなバケモノが一匹生み出された。

 

「…手下!?」

 

「いや、幼龍の能力っすよ」

 

新しく生まれたバケモノもかなりの力を有しており、幼龍と大差ないオーラを放っている。

そのバケモノに『魔弾』が防がれ、次の瞬間には幼龍の姿は消えていたのだ。

 

「ちっ…!」

 

「まずはバケモノを倒しましょう」

 

トワとカリオペがバケモノを倒すことに意識を向ける。ココも加わり、3人ならすぐに倒せると思うときのそら。

 

「――でも、あのバケモノなんか変?」

 

「幼龍と同等の力と思った方がいいっすね」

 

不意に、予備動作なしにバケモノが目の前に現れる。最初の標的として狙われたのはカリオペだった。

 

「――[命断]」

 

カリオペが言葉を発した瞬間、その周囲が薄暗い空間に閉じ込められる。

周囲にいたときのそらたち全員を含んで、その空間が広がった。

 

「っ、これって…」

 

ときのそらは一度この空間を体験したことがあった。

 

「この能力は世界からこの空間内のものだけを分離するものです。もちろんここで起きたことは元の場所へ戻った時に同じ影響を受けることになります」

 

カリオペがこの不思議な空間について説明をいれてくれる。そのおかげで慌てずに済んだのかもしれない。

 

「…そして、この空間内に切り取られたのは私たちの存在という形だけ。本来の肉体は元の場所に残っています」

 

「えっ…?」

 

「――ここでの1分が元の場所での1秒に等しい。思う存分、相手できますわ」

 

そう、カリオペが告げた能力の詳細。それを聞き、ときのそらが元の場所に戻った時に数秒の出来事と感じたのは実際のことだったと知る。

 

「…こっからはカリオペのフィールド。とりあえずトワたちも援護に回るよ」

 

「わ、私戦えない…」

 

「…は?まじ?」

 

トワの視線が鋭くなったのを感じ、ときのそらが縮こまってしまう。

 

「…私いるんで問題ないすよ。それに支援はできるんでサポート要員ってことすよ」

 

「…なんだ、無能力者かと思ったわ。とりあえず了解」

 

ココがそう助け舟を出してくれたおかげで何とかトワも納得してくれた。

だがあの日以来、上手く力が使えなくなってしまったことをココも知らないでいる。

 

「…どうしよ」

 

そんな心配を他所に、戦況が動き出す。

カリオペが大きく幼龍の生み出したバケモノ目掛けて一歩踏み込み、懐から取り出したしまえない程の大きさの鎌を横に一閃、体を真っ二つにする勢いで切り裂く。

 

「…なにあの武器…」

 

「カリオペの武器[デットビート]だね」

 

本人の代わりにトワが答えてくれた。

 

「…中々なようですね」

 

だが、その攻撃では倒れず、反撃に目に見えないほどの速度で拳を振り下ろした。

ときのそらが認知したときにはすでに地面が抉れていた。

 

「嘘っ…」

 

更に驚くのは、今の攻撃を綺麗にかわすカリオペの姿だ。

余裕の笑みを浮かべるカリオペからは不思議なオーラが溢れ出ているように思える。

 

「…耐久力が高いバケモノですね」

 

「ならトワが援護してあげる」

 

そう言い、今度はトワがバケモノへと近づいた。

それに反応し、バケモノが片腕を伸ばしてくる。真っ直ぐ伸びた腕を姿勢を低くして避け、懐へと潜り込んだ。

 

「――『刻印・魔的』」

 

トワがバケモノに触れた瞬間、眩い光に周囲が包み込まれたのだった。

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