Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶6「天国の管理者」

――――――「『刻印・魔的』!」

 

バケモノに直撃するトワの攻撃。攻撃を受けたバケモノの体には何やら不思議な紋様が刻まれた。

怯むことなく、すかさず次の攻撃をしかけたバケモノだが、トワは一撃与えただけで後ろへと引き下がった。

 

「…さて、準備はできた」

 

トワがそう言い、カリオペと交代して見守る側へと戻ってきた。

 

「今ので終わりすか?」

 

「そうだよ。――今のだけで充分。あとやることはカリオペに支援をすること。…『魔恵付与』」

 

トワがカリオペに手をかざした。その瞬間、トワから溢れ出る紫色のオーラがカリオペの身にまとっていくのが分かった。

 

「…今のは」

 

「トワの力、[小悪魔の恩恵]だよ」

 

「…特殊能力っすか?」

 

「それとは別の力。特殊能力は別にあるよ」

 

トワの力の正体――それが魔力や気力を参照するものではない、全く別の力だということを明かした。

 

「…カリオペ、よろしくね」

 

「OK.――『死蝶乱舞』」

 

カリオペが持つ鎌を大きく目の前に振りかざす。途端、鎌から溢れ出る禍々しい妖気がバケモノめがけて波状に飛んで行った。

 

「…グァァ!」

 

だが大きく跳躍し、いとも容易くカリオペの技をかわす。

そして、その勢いのままカリオペに飛びかかった。

 

「危ない…っ!?」

 

上から飛び込んでくるバケモノを避けようとしないカリオペに、ときのそらが思わず悲鳴を上げてしまう。だが――

 

「…Don't worry.私の攻撃が先です」

 

カリオペの不思議な発言。それを聞き返す前に答えが実現した。

 

「――グガァァ!?」

 

バケモノの背後――背中に対して鋭い刃状の衝撃波が打ち込まれた。

 

「な…っ!?」

 

その死角からの攻撃にときのそらが驚く。が、それだけで今の芸当は終わらない。

 

「…ァァァ!!!」

 

バケモノに襲いかかった衝撃波――それが着弾した瞬間、更に衝撃波が分裂し体全身を刻み込むかのように斬裂刃が駆け回ったのだ。

 

「…な…なにあれ…」

 

一瞬にして再起不能に陥ったバケモノは、その場に倒れ伏し動かなくなった。

それと同時にカリオペの生み出したフィールドが解除され、元いた場所へと戻ってきた。

 

「…幼龍が生み出したバケモノを簡単に倒すとは流石ですねえ」

 

ココも今の一戦を見て心の底から感心した様子でいる。

 

「すごいでしょ。今のくらいなら2人にも教えてあげるよ。これから一緒に戦うかもだし、味方の戦力は分からないとね」

 

トワがときのそらとココに近づきながらそう言ってきた。

 

「もちろん2人は教えられるときにでいいよ」

 

「今の私の技は見たままです。特に説明を加えるものはありませんね」

 

相手に着弾した際に細かく分裂する斬裂刃。それが、今カリオペが使用した『死蝶乱舞』だ。

 

「…背中側から当たる技?」

 

「いえ、私のは真っ直ぐ飛ぶだけ。ターンなんてしないですよ」

 

「えっ?でも今見たのは…」

 

「それがトワ様だけに授けられた能力[小悪魔の恩恵]です」

 

「トワがバケモノに使ったのが、紋様が刻まれたものに対して、魔の力が宿った攻撃が必中するってやつ」

 

ここで新たな単語が出てくるが、十中八九[小悪魔の恩恵]で得られる力のことを指すだろう。

 

「…でもそれはトワちゃんにだけしか使えないんじゃ」

 

さっきの話を聞く限り今のときのそらの疑問は最もだろう。

 

「そう。だからカリオペに使った技。あれは自分の魔の力を対象者も使えるように分け与えたの」

 

それにより、カリオペの真っ直ぐ飛ぶはずだった技が魔の力を帯びたことにより、バケモノに付与した技を合わせ、必中となったということ。

 

「すごいっすね」

 

「でしょ。…まぁそこは良いとして。問題が出てきたね。幼龍をどうするかだ…」

 

トワが言う問題とは幼龍の存在だ。天国と手を組みたいトワだが、幼龍によってそれを阻止される。幼龍に従って天国を諦めれば何もしない――

 

「っ!何もしないとは言ってなかった…っ」

 

ここで幼龍の発言を思い出したトワが目を見開く。

 

「――悪いようにはしない。あいつが言った言葉…もしかして」

 

「この地獄には、ってことの可能性がありますねえ」

 

トワの発言を引き継いで、ココがそう発する。

それを聞き、ときのそらも今の状況を理解する。

 

「…まさか天国!?」

 

ここで思い出すのは自分が元のMAINで転移した天国の様子だ。荒れ果て、何もかも更地となっていたあそこは――

 

「…幼龍によるもので確定っすね」

 

こうしている間にも天国の端から滅ぼしているのかもしれない。

 

「…カリオペは応援で戦える者たちを集めて。戦力を万全にしておいて」

 

「分かりました」

 

トワがカリオペにそう告げると、カリオペは早々にこの場を立ち去って行った。

 

「…すぐに行くんすね?」

 

残ったトワに対してココが問いただす。

 

「…まだ、大丈夫なはず…」

 

だが、トワは中々踏み出せずにいた。幼龍の実力は誰しもが先の件で経験したが、到底じゃないがトワでは勝ち目がない。

それに加えてときのそらが感じたことがある。

 

「…これじゃ元の歴史に近い…」

 

元の歴史では、カリオペの話を聞く限りトワが2週間弱行動せず、かなたがやって来ないことに違和感を持って初めて天国へ赴いたと。

そして、その時にはもう手遅れだったと言う。

それならば今行動しなければ、過去は変わらず同じ未来を辿ることになる。

 

「――行こう!手遅れになる前に!」

 

力強く発言するときのそら。初めてトワがときのそらの言葉に驚いたような表情を見せる。

 

「…そうだね。そらちゃんの言う通りだわ」

 

バカなことを考えたと、トワが一度大きく深呼吸をする。

そして――

 

「――今から3人で乗り込むよ。幼龍の思い通りにはさせない」

 

そう、トワが力強く言い切ったのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

MAINで一度訪れた場所。今回のParallel World ROVINAでは初めてとなる。

 

「まだ平穏?」

 

目の前に現れた光景は、天国の名に相応しく、白を基調に世界が創造されている。

まだ幼龍による攻撃が仕掛けられていないみたいだ。

 

「…ちょっとそこら辺の民家に行ってみるか」

 

トワが迷いなく近くにあった家へと近づいていく。

 

「ちょっと!?迷い無し!?」

 

さすがのときのそらもこの行動には驚いてしまう。

仮にも地獄の住人と天国の住人だ。さらに言えば、天国の管理者――天音かなたが地獄を毛嫌いしているため、住人たちも同じ考えを持ってる者が多いかもしれない。

 

「それならそれで好都合…」

 

トワが扉を開け、中を確認した途端に動きが止まる。

 

「?…どうしたの?」

 

それを見て不自然に思ったときのそらとココが同じようにトワの背中越しに家の中に目線を向ける。

 

「…えっ」

 

「――助けて…」

 

中にいたのは、ボロボロの服で、全身を焼かれたかのような酷い怪我をしている2人の女性だった。

 

「…助けて」

 

トワの姿を見て地獄の住人と悟ったようだが、それでもそのトワに助けを求めた。

 

「――。誰にやられた?」

 

「…外にバケモノが…私たちの力じゃ勝てなくて…」

 

「分かった。トワたちが倒してくるよ」

 

トワがそれだけ言い残し、扉を閉めて外へと出る。そして、ときのそらとココの方を振り向いた。

 

「…倒すよ」

 

「了解っす」

 

「うん!」

 

この周辺に出没したという異例のバケモノ。恐らく幼龍の手駒だろう。

急いでバケモノを止めるために、3人は今も音が微かに聞こえる方角へと走っていった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…あれか」

 

少し高い丘の上に立ち、今も暴れているバケモノの方へ視線を向ける。

 

「…あれ、バイオグールじゃないすか?」

 

そのバケモノを見て、聞いたことの無い単語をココが口にする。

 

「バイオグール?」

 

「そうです…別名は泥喰。SSランクのバケモノっすね」

 

「SSランクからは繁殖型のバケモノじゃなくなるから個別名がついてるんだよ」

 

トワの助言、そしてココの口から発せられたSSランクの言葉。

ココや幼龍たちはバケモノ基準でのSSSランクという最高ランクに位置しており、SSランクはその1つ下だ。

更に、ときのそらがこれまで出会った、ノエルたちや自分自身をも窮地に立たせたバケモノ――Sランクを上回るということ。

その事実が、強くときのそらを動揺させた。

 

「…っ」

 

何度もParallelの中で死んできたノエルたちの仲間。

ロボ子さんに言われた、本当に救ってもらいたい過去の親友では無かったとしても、それを平気で見殺しにはできなかった。

辛い思いを、何度も繰り返したくはない。

 

「…トワが負けるわけ。カリオペが居なくてもやってやるよ」

 

「私も負けらんないですねえ」

 

2人が気合を入れる中、1人妙に落ち着いている人物がいる。

 

「――まだダメなの…っ」

 

何度も使おうと試みるが、一切あの時の力を発揮できないでいる。

 

「――グァ!!」

 

暴れ回るバケモノが一瞬視界の端に映った3つの塊に気づき、視線を向ける。

ときのそらたち3人を見据え、久々に見つけたであろう人に咆哮をあげながら猛スピードで近づいてきた。

 

「所詮はSS。知能は秘龍に劣りますね!」

 

突っ込んでくるバイオグールにココが迎え撃った。

鋭く振りかざされるバイオグールの攻撃、それをかわし顔面へと大きな拳を打ち付けた。

 

「…ほう」

 

だが、その攻撃のダメージが通る素振りがなく、そのままカウンターの攻撃を仕掛けてきた。

 

「――[人竜変異]」

 

ココの特殊能力が発動する。ココの、〈秘龍〉としての力が発揮される。

 

「…すごいっ!?」

 

ときのそらが思わず声を出し、トワも口を開けて驚く。

その姿はまさしく龍に近い。だが、全身ではなく一部分のみ。

バイオグールの攻撃を防ぐため、両腕が龍の鱗をまとい、容易く受け止めたのだ。

 

「これは相性悪いっすね!」

 

そのまま攻撃に使われたバイオグールの腕を掴み、遠心力を加えて遠くへと投げ飛ばした。

 

「…あいつメタル系のバケモノっすね」

 

「えっ!?」

 

「メタル系」という単語は前に教えてもらっている。気力を参照する攻撃――いわゆる物理攻撃に耐性が強いという特徴がある。

 

「…なにもメタル系は見た目が硬そうってだけじゃないから。逆に、柔らかく力の衝撃を吸収するタイプってことね」

 

ときのそらの思っていたメタル系のイメージとの違いを、トワが分かりやすく説明してくれる。

 

「…これはトワの方が相性良さそうね。援護頼むよ」

 

「了解っす」

 

飛ばされたにも関わらず、一直線にこちらへ向かってきているバケモノ。ココとは違い魔力指数を参照するトワが前へと一歩踏み出す。

 

「――『魔眼』!」

 

途端にトワの体から溢れんばかりの禍々しいオーラを感じ取る。

恐らく[小悪魔の恩恵]による技の効果だろう。

 

「自身の大幅強化。さてと、いっちょやりますか」

 

再び目の前までやってきたバイオグールに対し、構えを取る。カウンターで沈める考えのようだ。

 

「…っ!トワ!」

 

ココの力強い叫び声。急な声に反論もせずトワが反応し、咄嗟に後ろへと引いた。

そして次の瞬間には――

 

「――っ!?」

 

トワが立っていた場所の数メートル範囲が泥に埋もれ、溶けてしまっていたのだ。

 

「…バイオグールの能力っすね」

 

「ちっ…厄介だな」

 

一瞬でも反応が遅れていればトワは跡形もなくなってたかもしれない。それを考えただけでも血の気が引いていく。

 

「…『魔弾』!」

 

近づくリスクが高まったことで、遠くからの攻撃に切り替えるトワ。

『魔弾』を次々にバイオグールに向かって飛ばすが、その半分近くは特殊能力による泥の影響で溶けてしまい、残りの弾も綺麗にさばかれている。

 

「…ジリ貧だな」

 

「私の攻撃で足止めくらいならいけますね。サポート全振りで行きます!」

 

トワとの連携を試みるココが、バイオグールに向かって技を放つ。

 

「――『光棘』!」

 

バイオグールの周囲の地面から伸びる無数の光の棘。それらが、四肢を拘束し動きを封じた。

 

「体内の泥が能力っすね。そして、体のどこからでも取り出せるって訳じゃない」

 

普通の体の構造のように、耳や口、鼻といった体外と体内の行き来が自由な管を通してでないと特殊能力の泥は排出されない。

 

「まずはそこを抑えるか!」

 

泥を封じてからバイオグールを倒す戦法だ。

 

「…『神光』」

 

バイオグールの足元に大きな光の円が浮かび上がり、次の瞬間に一気に光が放出された。

凄まじい一撃、光が分散し中の状況が見えるようになる。

 

「…っ!耐えてる!?」

 

「私の攻撃はホントに相性悪いっすねえ」

 

気力を参照する攻撃、例えそれが秘龍が放つ攻撃だとしてもかなりの耐久力により、傷は負うものの倒れる様子ではない。

 

「でもいい時間稼ぎ![闇淵源]――『暗黒螺旋』」

 

トワの強力な一撃。バイオグールを囲うように漆黒の稲妻が螺旋状に渦巻きながら飲み込んでいった。

 

「…これが特殊能力っすか」

 

「…はぁ…そう。滅多に使わないけどね…」

 

かなりの体力を消費したのか、息が上がってるのが目に見えて分かる。

 

「――ずいぶん派手にやってくれたじゃねえかおい」

 

「っ!?」

 

不意に聞こえる声。3人とも一斉に声のした方へと振り返る。

 

「――地獄の統括者さんよ…」

 

「…かなた」

 

ココの漏らす声。目の前にやってきた人物が、ときのそらたちがParallelへ足を運ぶ最大の理由となった――その人物だったのだ。

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