Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶7「決意と選択」

――――――目の前に降りてくる天使の姿をした人物。「天国の管理者」こと天音かなたがこちらを見つめてくる。

 

「…ずいぶん派手なことしたみたいだな」

 

「…っ!」

 

今の発言、完全にトワたちがこの惨状を繰り広げたのだと解釈している。

 

「ま、待ってください!これは別の――」

 

「言い訳はいらねぇ!『天拳』!」

 

ときのそらの言葉に耳を傾けることなく、目の前の天使が技を使う。

伸びてくる光の拳。それがときのそらの目の前にまで迫ってきて――

 

「――待つっすよかなた」

 

直前で、ココが竜化した片腕で防ぎ、そのまま目の前の天使――かなたに視線を向けた。

 

「――お、お前…ココ、なのか…?」

 

目の前のかなたと呼ばれた者が、その声の持ち主の存在に気づき目を見開いた。

 

「…う、嘘だろ…だって急に…」

 

「悪いかなた。私にも事情があって…」

 

「――でも…良かったぁ…生きていたんだ…っ」

 

涙をこらえ、笑顔でココの目を見つめる。それに応じてココも笑みを浮かべた。

 

「――でも、話は別だ…。なんでそいつと…トワと一緒にいるんだ!?」

 

もちろん言及してくる事は予想された。

誰よりも地獄を憎むかなたが、親友であるココが地獄側の人物と一緒にいることを知れば怒り狂うのも当然だろう。

 

「さっきの音…天国に何したんだ!」

 

「落ち着けよかなた!トワたちがしたんじゃなくてここに現れた…」

 

「うるせぇ!」

 

「ぐっ…!」

 

トワの言葉を聞かず、1歩踏み締めトワに殴りかかる。

咄嗟の反応でそれを避けるが、続けて攻撃を仕掛けてきた。

 

「…ど、どうすれば…っ!」

 

乱入できる余地がないことを悟り、ときのそらが1人苦しむ。ココも親友が相手だからだろうか、力づくで止めに入ることに躊躇している。

 

「だから話を聞けって!」

 

「今日こそが決着の日だ!いい加減倒させてもらうよっ!」

 

激しい攻防。トワはあまり反撃をせず交渉をしようと試みる。だが、かなたは関係なしに攻撃を続ける。

 

「これでしま――」

 

しまいにしてやろうとかなたが力を使おうとしたその時だ。

 

「っ!!この視線っ!」

 

一度受けたことのある視線。A+のバケモノ集団を片付けた時に感じた視線と同じだった。

 

「――今だ」

 

遠くから飛んでくる光の矢。それがかなたの心臓を容易く貫いたのだ。

 

「がはぁ!?」

 

「!――かなたぁ!!」

 

その瞬間声を荒らげるのはトワでもかなた自身でもときのそらでもない、親友のココだった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

トワたち3人が矢の飛んできた方向へ視線を移す。そこには1人の男がマントを身につけて仁王立ちしていた。

 

「っ!貴様ァ!」

 

珍しくココが平常を保てず、怒りに身を任せ男へと突っ込む。

ほぼ全身と言っても差し支えないほどに龍の力を身にまとっていた。

 

「――なるほど。秘龍ならばこの前の光景には納得出来る」

 

その男は飛んできたココをかわし、後ろへと引きながら弓矢を放った。

 

「――『神光』!」

 

飛んでくる矢ごと巻き込もうと能力を行使する。

 

「無駄だ。俺の矢は生物以外を封じる矢。能力など受けない」

 

「…ぐっ!?」

 

ココの『神光』に巻き込まれながらも、勢い止まらず弓矢がココの腕へと突き刺さる。

そして飛んでくる攻撃を男はギリギリの所で避けきった。

 

「…これは下手したら俺がやられるな」

 

「ココちゃん!!」

 

ときのそらがココへと近づく。その傍ではかなたが倒れていた。

 

「…か、かなたちゃん!」

 

「…ぐっ…っ」

 

心臓に矢を受けながらもかなたは生きていた。それを見てトワが心の底から安堵する。

 

「こいつ幼龍の手下?」

 

明らかにこちらに敵意を放っている。このタイミングでの敵対、他に思い当たるものはない。

 

「…[化物扱]――行けっ!」

 

男が呟くと、どこかに隠れていたのだろうか、バケモノの集団が一斉にこちらへ襲ってきた。

 

「…バケモノ使いか!?」

 

敵の特殊能力を見てトワがそう判断をする。

今現状まともに動けるのはトワのみ。かなりの窮地に追い込まれている。

 

「…私もまだ――っ!?」

 

「ココちゃん!?」

 

ココが戦おうと能力を使おうとして、動きが止まる。

男の言っていた生物以外を封じる矢。その意味は――

 

「っ!能力封じの意味もある…っ!」

 

矢で討たれたかなたとココは今、能力が使えない状態だと言うことだ。

 

「やばい!」

 

このままバケモノに囲まれやられてしまうのか?幼龍の元へたどり着く前に死んでしまうのか?

 

「――『死蝶乱舞』!」

 

だが、不意に聞こえたその声が、ときのそらの迷いを打ち消してくれた。

 

「カリオペさんっ!」

 

『死蝶乱舞』によりバケモノの体を連鎖して斬裂刃が飛び回る。次々とバケモノたちが倒されていく様子を男は遠くから見ていた。

 

「…増援か。さすがにこれ以上ここにはいられない」

 

カリオペとトワが反応するよりも早く、男はこの場を立ち去って行ったのだ。

 

「――2人は封じた。俺の役目は十分果たした」

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…ありがとうカリオペ」

 

「いえいえ。こちらこそ遅れて申し訳ありません」

 

周りを見てもカリオペ以外の人物が見当たらない。トワには戦える者を集めるよう指示されていたはず。

 

「かなたさんの様子を確認しました。大勢連れてくれば話し合いの場につくことが不可能になります」

 

「良い判断だ。…ココ大丈夫?」

 

言葉を投げかけられるココは、矢が当たった腕を見つめながら困り顔をしている。

 

「…能力封じって厄介すね。[特殊能力]も発動しないっす」

 

完全な能力封じ。特殊能力まで使えないとなれば無能力者とほぼ近いものとなってしまう。

 

「…その効果を消す方法は2つだね」

 

前にノエルから聞いたことがある。他者からかけられた力などに対して、正攻法で解除するか強制的に解除するかの2パターン存在するらしい。

 

「あの能力者を殺せば解除されるって訳でもなさそうだけど…」

 

「やってみる価値はあるね。あとは無理やり解除させるか」

 

「今は足でまといになるかもしれないんで一旦サポートに回ります。身体能力までは落ちてないので問題ないっす」

 

そうして、自然と4人の視線が未だに気を失っているかなたへと集まる。

 

「かなた…」

 

トワが優しくその頬に手を添える。何かが顔に触れたことで一瞬体が反応する。そしてゆっくりと目が動き出す。

 

「…ん…ココ…?」

 

かなたが目を開け1番最初に視界に映ったトワを見て――

 

「ぎゃあああ!!?近づくなぁ!」

 

「ぶへっ!?」

 

思い切りトワの頬をビンタして、軽く吹き飛ばしたのだ。

 

「…かなたちゃんっ!良かった…」

 

「ぁ?…誰?」

 

自己紹介がまだだった。その事に気づいたときのそらが慌てて名前を言う。

 

「私の友達っす。仲良くしてくれよな」

 

ココが優しく付け加えてくれたおかげで手を出されずに済んだ。

 

「ふーん、そらちゃんか。とりあえず話を…」

 

「おいコラおまえ何すんじゃ!」

 

「…あ?地獄の住人に聞く話なんてねぇっつーの。ココが居るおかげであんたらに攻撃仕掛けないだけマシと思え…」

 

そこまで話して、かなたが自分の体に起きた異変に気づく。

 

「さっきの矢か…っ!?」

 

「私もやられた。今は無理に動かずトワたちに守ってもらう方がいいっすよ」

 

「なっ!?よりによって地獄の…」

 

「――かなた。もう昔とは違うんすよ。人が違けりゃ考えも違う。向き合ってあげたらどうすか」

 

「…っ」

 

ココの言葉にかなたが縮こまる。今の発言に対して何か思ったのか、トワが口を開いた。

 

「…かなたの憎しみ、知らなかったんじゃ?」

 

「――騙してすまなかったトワ。でも、かなたの秘密を私が言うのもお門違いと思ったんすよ」

 

ココは知っていたかなたの秘密を、知らないと嘘をついていたのだ。嘘を言われれば誰しもが嘘をついた人物を許すことは無いだろう。だが――

 

「…今回だけは許す。…かなたとトワの話し合いの場を設けてくれたらね」

 

「了解っす」

 

許す代わりにかなたと話せるよう説得しろと条件を差し出した。

 

「…かなた。さっきの音の件について説明したい。聞いて貰えるすか?」

 

「…ココが説明するなら」

 

「相変わらずだなホント…」

 

トワの苦悩も分からないことは無いが、とりあえず話を聞いてくれるだけ有難く思える。

ココがさっきの事について詳しくかなたへ説明したのだ。

――もちろん、幼龍の存在やその脅威も。

 

「――」

 

「かなた。信じて貰えないすか?」

 

一通り説明し終えた後、改めてトワたちと協力を結ぶようココが提案をする。

 

「…っ」

 

「かなたちゃん…」

 

「――ひとまず、だ。幼龍を追い払うまでの協定。それくらいなら許してやるよっ」

 

「こいつ…」

 

「ま、まぁトワちゃん落ち着いて…!協力してくれるだけ十分だよ」

 

何とかかなたの説得を終え、一時的ではあるものの地獄と天国の間での協定が結ばれたのだ。

 

「さてと、悠長にはしてらんないすね」

 

「だね。幼龍を早く見つけること、それからかなたとココの能力封じも解除しなきゃだし」

 

「…」

 

「かなたちゃん?」

 

トワの言葉を聞いていたかなたが動かず、じっとトワの顔を見つめていた。

 

「な、なんでもない…」

 

「とりあえずあの子たちに無事だってこと伝えてくる」

 

あの子たちというのは天国に来て最初に話した2人の住人のこと。その2人に言われ、先のバイオグールの討伐に赴いたのだ。

トワがこの場を離れ、かなたとココ、ときのそらとカリオペの4人が残る。

 

「…トワ様が戻られるまで地獄の様子を確認しに行きますか」

 

「様子?」

 

「一応ゲートの前に戦える者たちを呼んで待機させてます。皆さんを連れてくれば少しでも戦力が増えるはずです」

 

「確かにそうっすね。かなた、良い?」

 

「…好きにしなよ」

 

トワとは別行動で、4人は地獄へ戻るためのゲートへと足を進めた。

 

――――――――――――――――――

 

 

ゲートの中へと入り、天国から地獄へと戻ってきた4人。

 

「――えっ…」

 

その4人が見た光景は、予想にはない現実だった。

 

「…っ」

 

「先読み…すか」

 

ここに集められたであろう100近い能力者たち。それが全て、血の海と化した地面の上に横たわっていたのだ。

 

「嘘…」

 

「…中々に幼龍もイライラする相手ですね」

 

カリオペもこの事は予想出来ていなかったのか、珍しく動揺しているのが分かる。

 

「――」

 

そして1人、かなたはその光景を見るも声を発さず、沈黙を貫いていた。

 

「――地獄は捨てます。トワ様の元へ戻りましょう」

 

「――え」

 

カリオペの発言。それに驚いたのは興味を示していなかったかなただった。

 

「…天国が潰される方が最悪の事態になる」

 

「…カリオペさんがそう言うなら」

 

ときのそらとココも、カリオペの判断には口を出せないと分かっている。

だからこそ、カリオペの判断を尊重しようと行動しているのだ。

 

「――地獄も天国も、「核」と呼ばれるものが存在します」

 

「…核?」

 

不意に、カリオペから放たれた言葉にときのそらとココは揃って首を傾げる。

 

「それが壊されれば、地獄天国それぞれが崩壊してしまう。そうなれば、トワ様とかなたさんの持つ恩恵が失われます」

 

恩恵というのは、トワが使っていた[小悪魔の恩恵]のことだろう。

だが、地獄を捨てるのはトワの力を捨てるのと同じなのでは無いだろうか。

 

「…かなたちゃんも恩恵を…?」

 

「――その話は後でいい。カリオペとか言ったな。地獄を捨てるって本気かよ?今の話の通り、トワの恩恵がなくなるぞ?」

 

「かなたさんの恩恵がなくなる方が困ります」

 

「…は?それはどういう…」

 

「――天国の管理者が持つ恩恵の最大効果。それは『創造』です。その力で地獄を戻して欲しい」

 

カリオペの狙い。それは天国の管理者――かなたが持つ恩恵にだけ許された大技。それで今回の幼龍の被害を打ち消そうと考えていた。

 

「はっ!やっぱり地獄のやつらはそういう考えだ。天国を利用しようとしている。そんな奴に協力なんて出来るかよ!」

 

「…っ!かなた!」

 

カリオペの言葉が癪に障ったのか、かなたがこの場から走り去っていき、天国へのゲートへ入ろうとしていた。

 

「二度とツラ下げてくんなよ地獄の住人が!」

 

そうしてかなた1人、天国へと戻ろうとゲートに近づいて――

 

〈――遅イ〉

 

「っ!?」

 

「かなたちゃんっ!?」

 

目の前に現れた幼龍によってゲートが破壊されてしまったのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…1番会いたくないタイミングでやって来ましたね」

 

〈――約束ヲ破ッタ地獄ニ救イハ無イ〉

 

「っ!」

 

ここで幼龍と出会うのは1番避けなくては行けなかったこと。能力が封じられたココとかなたに加え、能力が使えないときのそらがいる。

カリオペの力でさえ、3人を守りつつ秘龍を撃退するのは難しいだろう。

 

「…トワ様…っ」

 

〈――天国ハ我ノ4人ノ使者ガ暴レテイル。モウジキ地獄ノ統括者諸共滅ブダロウ〉

 

「…ここでこいつを倒すしか道はないみたいすね」

 

「でもココちゃん…」

 

「――そらちゃんはMAINへ逃げてください」

 

「…え?」

 

不意にココから告げられる言葉。その真意が分からず、間抜けな声を漏らしてしまう。

 

「…もう一度新たなParallelでこの過去を救ってください。そらちゃんなら…それができる」

 

「でもココちゃんが…!」

 

同じParallel移動をした人物だ。この世界線で死んでしまった場合、他のParallelでココが生きている可能性があるのか。

そもそも、MAINの存在であるココが死んでしまえば、あらゆる世界線から除外されてしまうのではないか。

――これまで考えてこなかった、このParallel転移のデメリットを認識してしまった。

 

「…私は死なないです。かなたと一緒なら生き延びてやりますよ」

 

「…ココちゃん…っ!」

 

「…行ってください。この過去は――」

 

「――捨てます」

 

「――っ!!」

 

過去を救う上で考えてはいけない選択肢。カリオペとココから問われ、ときのそらがひどく驚いている。

 

「――でも」

 

それでも、ときのそらに与えられた使命がある。

 

「――絶対に捨てるようなことはしない!最後まで足掻いてみせる!!」

 

2人の意見に押しつぶされることなく、更に大きな声で自分の意志を宣言したのだ。

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