Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶11「バケモノと成り果てた者」

――――――川沿いを歩くこと数十分。遠くに見えていた城壁は、今ではすぐ間近に見えている。

 

「この城壁はここの姫様が住んでるお城で、【デセール】の中心に建ってるんだよ」

 

歩きながらわためが説明をする。【デセール】には何度か訪れているらしく、思っていたよりも詳しく語っている。

 

「…そういえばさっき自分のこと船長?って言ってたけど…」

 

「あー、実はですね…」

 

道中、くだらない会話を交わしながら、ゆっくりと進んでいく。

 

「着いたね」

 

「うん。あの川、【デセール】の中に続いていたのか。知らなかったなぁ」

 

いつしか敬語も柔らかくなり、親しい間柄の会話となった。お互い仲良くなれたことは嬉しく思っているが、やはりノエルの姿が見つからないことに少しずつ焦りが生まれる。

 

「…それに、なんだかいつもより違う雰囲気がある」

 

「いつもより違う?どんな感じなの?」

 

「普段はここまで殺気立ってないよ。…何かに襲われてる?」

 

そう考えるわため。そして、その言葉を聞き国王に言われた事を思い返すマリン。

 

「…なるほど、危険な目に会ってるっていう状況…かなりマズイですね。ノエルを探さなきゃいけないし、姫様のところにも行かないといけない」

 

どちらも最優先事項であり、そのどちらをより先に行くかを迷ってしまうマリン。 そんなマリンの背後に人影の様なものが突如現れ――

 

「…マリンちゃん!」

 

「…うおっ――っ!?」

 

強烈な攻撃を後ろから叩き込まれ、軽く飛ばされて地面に倒されてしまう。

 

「…人じゃない、これは…バケモノ?」

 

人の様な形をしているが、一回り大きく、何より体をバケモノ特有のオーラで覆い隠され顔が見えないでいる。

 

「…っ!『シープホープ』!」

 

マリンに攻撃を仕掛けた人型バケモノがわために標的を変えるが、わための技により足元を綿毛で覆われ、身動きを封じられた。

人型バケモノが動けない隙を狙って、わためがマリンの元へ近づき手を貸した。

 

「ここで暴れるのはやめときましょ!まずはルーナを見つけるのを優先しよ!」

 

「…うん」

 

聞き覚えのない単語が出てきたが、わための言う通り今この謎の敵と戦っている場合じゃない。

素直に指示に従い、城壁に囲まれる国の中でもずば抜けて大きい城の入口を目指して走っていった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

目の前に大きな門のような入口を見つける。

 

「大抵こういうのって門番とかいる気がするんですが…」

 

周りをキョロキョロと見渡すが、門番らしき人物はどこにもいない。

 

「…っ!あれ!」

 

わためが何かに気づき指を指す。マリンがすぐに反応し指の向く方向へ目を向ければ――

 

「もしかして門番!?」

 

2人の鎧を身にまとった、まるで騎士のような人物が草陰に隠れて倒れているのを見つける。

 

「…っ!これは…」

 

その騎士を見つけた直後、気がつけばマリンとわためは先程襲ってきた人型バケモノのようなモノ数十体に囲まれてしまっていた。

 

「…ど、どうしよう…」

 

幸い城の入口が近いため、急いで走れば入れると思う。

しかし、それでは今度は逆にこの国の人達に敵対されてしまう恐れがある。

 

「…き、きたぁ!?」

 

一斉に人型バケモノが攻めよってきた。

マリンも自分の持つ武器[マリンアンカー]を手にし迎え撃とうとする。その時だった。

 

「――んなぁぁ!」

 

「…っ!?」

 

謎の声と共に空から1人の少女が地へと降りてきた。そして――

 

「――『ハートサーキュレーション』!」

 

その場で小柄な少女が持つとは思えないような、大剣を振り回した。周囲にピンク色のリングのようなオーラが放出され、触れた人型バケモノは次々に爆発を起こしながら吹き飛ばされたのだ。

 

「…す、すごい…」

 

自分よりも2つほど年下に見える少女は、その見た目に反してかなりの実力を持っていた。

 

「…あんたらは敵じゃなさそうのらね」

 

その少女がこちらへ振り向くと、少し印象に残る語尾をつけながら話し始める。ふと、わための方へ向くと一瞬目を見開いた。

 

「おっ、わためちゃなのら!久しぶりなのら〜」

 

「久しぶりだねルーナ!」

 

2人は知り合いのようで先程までのやり合いが嘘のように思えてくる。

 

「…あれ、わための知り合いってことはつまり…」

 

2度目となる単語の響き、それを聞きマリンの中での仮説が1つ立つ。そして、それはすぐ直後に事実となった。

 

「あなたは初めましてなのらね。姫森ルーナなのら〜。この国のお姫様なのら〜」

 

そう言って、マリンとノエルがやって来ることとなった目的の人物が目の前に現れたのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

城の中に案内されたマリンとわため。姫の部屋と呼ばれる、ルーナの使用する部屋へと入ると、ルーナが改めてマリンとわためを見つめた。

 

「わためちゃは何しに来たのら?」

 

「道中バケモノに襲われてる時にマリンちゃんに助けてもらったんだよ。だけどお仲間のもう1人が戦いの中で川に落ちて流されてしまって…」

 

「その川がここに繋がっていたという訳です」

 

わための説明に付け足すマリン。話を聞き、ルーナが分かったように頷く。

 

「つまりそのお仲間さんを探すためやって来たわけなのらね。わためちゃはいつも通りのお人好しが出たのらね〜」

 

「そのおかげで色んな人と仲良くなれるんだよ。この前だってフレアちゃんとかフブキちゃんとか…」

 

「え!?フレアと知り合いなの?」

 

「マリンちゃんもフレアちゃんと知り合いなんだ!」

 

「話ずれてるのら!」

 

意外な共通点を見つけ盛り上がる2人を見てルーナがため息を付き、可愛らしい声で怒っているかのように声を出した。

 

「まぁ理由は分かったのら。で、マリンちゃ?はなんでこの付近にいたのら?初めて見る顔なのら」

 

当然の疑問点にたどり着くルーナ。少し誤魔化すこともできるが、マリンは隠さず話すことを決める。

 

「国王から…つまりは、あなたの父親から任務としてやって来ました」

 

「うげぇ、パパの仕業なのらか!…可愛い子を送ればルーナの気が変わるとでも思ってるのらか?」

 

可愛いと言われ一瞬反応するマリンだが今はそれどころでは無い。

父親とはいえ国王に対する態度から、相当嫌がっているのが分かる。

 

「まぁでも、入っちまったもんはしょうがねえのら」

 

「ん?入っちゃった?」

 

「ここの現状は何となく分かったと思うのら。つまり、一度入ったらこの戦争が終わるまで出れないのらよ。出ようとすれば即殺されるのら」

 

「なんて物騒な!?」

 

とんでもないところに足を踏み入れてしまったなと後悔するマリン。だが、そんな後悔もすでに手遅れだ。

 

「というか…もうすでに戦争が始まってたんだね」

 

早めの行動をしたことが唯一の救いだろう。たどり着いてから、ルーナが居ませんでしたでは話にならない。

 

「もう1人のお仲間さんは、川に流されてここへ来たのらよね?」

 

「うん、そうだよ」

 

「だったらその川の行先は分かるのら。ここに流れる川は1つだけなのらから」

 

そう言い、ルーナはその小さな体で扉へと歩き始める。

 

「ん?どこへ行くんです?」

 

「何言ってるのら。お仲間を探しに行くんじゃねえのらか?とは言っても戦争は始まってんのら。――敵の主将を討ち取るのら」

 

そう言って外へと出ていってしまう。

 

「…ちょ!?姫様直々に!?わため!すぐに後追うぞ!」

 

「う、うん!」

 

慌ただしく、2人もルーナの後を追って城の外に向かったのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

ルーナが身につけている武器は細く伸びた剣のようだった。

 

「…剣を扱うのか」

 

「まぁ色々あるのらよ…とりあえず川の流れ着く先に向かうのら」

 

異彩な空気を放っていた国【デセール】の中、森のようになっている地形を進んでいく。

 

「それにしても戦争…してるんだよね?」

 

「そうなのらよ?」

 

「…何も変わってない…気のせいか?」

 

マリンが不思議に思うこと。――それは戦争が起きていると言っているのにも関わらず、地形が――もっと言うならこの国の中の至る所に、なくてはならない「戦闘の跡」と言うものが全く見つからないこと。

音は色々な所から聞こえるため疑ってはいないが、何かと違和感を感じていた。

 

「…もうすぐでつくのらよ」

 

ルーナの言葉で気を引きしめる2人。木々を掻き分け、現れる光景は――

 

「…ァァ!」

 

「うおっ!?」

 

唐突に何者かの攻撃が飛んでくる。ルーナは直前でかわし、マリンはわためを抱き上げながら横へと回避した。

 

「ありがとっ」

 

「…今のは?」

 

「敵が使役しているバケモノなのら」

 

「っ!?使役!?」

 

本来、バケモノが人の言葉を聞くことなどない。それに加え、人の持つ[特殊能力]でさえもバケモノに対する強制効果は存在していない。

その上で、バケモノが使役されていると。

 

「よーくかわしたな。褒めてやるよ」

 

バケモノが飛んできた方向から1人の男が歩いて近寄ってくる。

 

「…なんだ、可愛いおこちゃま1人と女2人か。この国の長はどこだよ全く…」

 

べらべらと語る男に対し、ルーナが剣を構える。

 

「おいおい…やる気?」

 

「襲ってきた以上見過ごせねえのら」

 

「そうかよ。――[使役]…『タイラント』!」

 

男が能力を発動し、手から形代のようなものを投げ飛ばす。瞬間、その形代が破れ、中からバケモノが――

 

「…なっ!?」

 

――そう、先程マリンたちを襲ったSSランクのバケモノ「タイラント」と同じ見た目をしたモノが現れたのだ。

 

「…はっ!通常のタイラントと同じ強さだと思うなよ」

 

強く乱暴に言葉を重ねる男。その隣に立つタイラントがルーナめがけて襲いかかった。

 

「…っ!ルーナ!」

 

マリンが叫ぶ中、ルーナはその細い鞘から剣を抜き取り――

 

「――[姫ノ国]…『戦姫』!」

 

瞬間、周囲にピンク色の光が膨れ上がる。数秒も経たない内に光は解け、ルーナの方を見ると、そこにいたルーナは光に呑まれる前と姿が変化していたのだ。

 

「…な、なにそれ」

 

マリンも想像しなかったことなのか、ルーナの見た目に驚きを隠せない。

先程まで腰付近まであった長い髪の毛は、今では肩の上まで短くなっている。

更には、細くリーチもそこまでないに等しかった剣が大剣のように長くなっている。ルーナの見た目では持つのが難しそうに見えるも、それを片手で軽く振りかざしているのが分かる。

 

「…はっ!見た目が変わったから何だってんだ!」

 

ルーナの変貌を見てもバケモノは止まらない。その勢いのままルーナの頭を噛みちぎろうとして――

 

「――甘いのら」

 

横に一振り。ルーナの顔に届く前にバケモノはその体を真っ二つに斬られ倒れてしまったのだ。

 

「――っ!?」

 

その光景を目の当たりにした男は表情を曇らせる。

 

「…ばかな…っ!まさか…お前がこの国の――」

 

「消えるのらよ」

 

男が何かに気づいた時、すでにルーナは男に接近し、その頭と胴を繋ぐ首を容易く斬り裂いた。

 

「ふぅ…危ねぇのら」

 

ルーナを光が包み込み、光が解けると同時、ルーナの姿が元に戻っていた。

 

「ありがとう!助かったよ」

 

「いいのらよ」

 

「…強いんだね。わざわざ心配する事でも無かったのか」

 

「そうのらよ。全くパパはしつこいのらからね。さあて、早くお仲間を見つけるのら」

 

再び、ノエルを探すべく目的地に足を運ぶのだった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

――そして、目的地周辺で探すこと10分。

 

「…見つかんねえのらぁ」

 

流れ着いた先で、ある程度歩き回ると想定した中の範囲で尚且つ人が行ける場所を隈無く探すが、ノエルの姿はどこにも見当たらなかった。

 

「…それどころか足跡も何もない」

 

少しぬかるんでいる地面。川で濡れた靴で歩けば尚更足跡がつくだろう。だが、その足跡すらどこにも見当たらない。

 

「ルーナ、ホントにこの辺に繋がってるの?」

 

わためも色々な場所を探しながらルーナに問いかける。

 

「そうのらよ。あの川はこの貯水池に繋がってるのら」

 

そう言うが周囲に人らしき気配を感じない。

 

「早い段階でどこかへ向かったか、そもそもここにたどり着いてないとか?」

 

「マリンちゃの考えが合ってるかもなのら。強いて言うなら、あの川からは一本道でここに来るから早い段階でどっかへ行った可能性が高いのらよ」

 

そうなれば入れ違っている可能性も出てくる。

早々にノエルを見つけるため、3人でこの場所を離れ別の場所を探すことに決める。

――そう思った時だった。空から激しい紫色の光がこの国の至る所に落ちてきた。

 

「…っ!?」

 

激しい爆発音を立て、至る所で煙が舞い上がる。

 

「なになに!?」

 

「ルーナ!」

 

「分かってるのら…!絶対許さないのら!」

 

再び『戦姫』を発動し、光が落ちてきた中で最も集中していた場所――つまり、姫の城に向かって走り出した。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…っ!」

 

城へ戻るなり目にした光景は、至る所で血溜まりの上で倒れているルーナの騎士たちだった。

 

「…酷い…っ」

 

わためもその様子を見て激しく動揺する。

――それでも、城、道、木――国の中に建築された物が何一つ壊れていないことに再びマリンが違和感を感じる。

 

「――はっ!おれの影を良く倒したものだ。だが、遅かったようだな」

 

ふと城の上から聞こえてくる声。目を向ければ、ついさっきルーナが一振りで倒したはずの男が立っていた。そしてその背後には仲間と思わしき人物が4人いる。

 

「…あれは偽物…っ!」

 

「…はぁ…ここの長を見つけたし話は早い。――やるぞ」

 

男の命令で4人の仲間が地上へと降りてくる。そしてそのままルーナに襲いかかってきたのだ。

 

「まずい!援護しなきゃ…!」

 

マリンが慌てて武器を手に取る。だがそれよりも早く4人がルーナを囲った。

 

「――姫様!」

 

少し遠いところから聞こえる声。そのまま1本の矢が4人の内の1人に命中する。

 

「ちっ…!まだ騎士さん居たんかよ」

 

「…っ!皆っ!」

 

ルーナも声の方を振り向き、国の中でも遠い位置にいた騎士たちがやってきたことに驚いている。

 

「…隙ありだっ!」

 

1人の女がルーナの視線が逸れた瞬間に攻撃を仕掛ける。

 

「っ!」

 

「…ぐっ!?」

 

だがすぐに反応したルーナが大剣で返り討ちにする。

 

「――お前たち…許さないのら!」

 

「…はっ!これからお前らが見るのは――地獄さ」

 

未だ城の上に立つ男。その男が掌を空へ向けると、詠唱を始めた。それは――

 

〈――[狂愛]〉

 

「――っ!?」

 

――ふと空から響き渡る謎の声。それは城の上に立つ男に向けられたもので。

 

「…ァァァ!!」

 

「な…何なのら…」

 

ルーナでさえも驚愕する程に、男の溢れ出る力がみるみる増していく。

――まさしく、バケモノに成り果てた者となった。

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