Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶13「サメとの出会い」

――――――意識が覚醒した瞬間、最初に見えたもの、それは――

 

「…お城?」

 

自然の豊かな土地の中から見える、一際大きな城だった。ピンクの屋根に白い外装と、どう考えても人工物だ。なぜお城があるのかは後で考えることにして、ここへ来たのには理由がある。

 

「…幼龍の、もうひとつの要因」

 

Parallelを飛ばされる寸前、カリオペが放った言葉だった。

あのままでは、あそこの世界を救うことが出来ないという。その原因となっているのが、幼龍による別の世界での被害だ。

 

「…つまりあの時点でもう被害が起きていたってことか」

 

その時から何分、何時間前に飛ばされたのか分からないが悠長にしていられないことは分かる。

 

「…幼龍の能力が影響してるはず。――自分の力を与えるだけじゃなく、与えた人物から力を得ることもできる」

 

これは、ときのそらが立てた予想だった。正確には、力を与える能力は見たため確定だが、人物から力を得ることに関しては分からない。

ただ、最初にココから聞いた「成長を操る」という単語の意味から、間違った予想では無いだろうとも思っている。

 

「だったらここで起こした幼龍の要因を打ち消せばあっちの世界での幼龍が強くなることはない…はず!」

 

少し最後が弱々しいがすぐに行動に移すべき。城が見える位置に転移したことからも無関係とは思えない。

だからこそときのそらは足早に城へ向かって進んでいった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

しばらく歩くと、城目前までやってくる。

 

「…壁」

 

だが近づくと城の周囲を囲うように壁が立っていた。そこまで高くはないが、人が越えるのは難しい高さだ。

 

「…あれ、声?」

 

何やら壁の反対側の声が薄らと聞こえてくる。良くないこととは分かってるが、仕方なく壁に耳を当てて音を探る。

 

「――姫!このままじゃ…っ!」

 

「…やるしかないのら、何としてもこの国を守るのら!」

 

「…ルーナ姫っ!すでに東から攻撃を――」

 

どうやら動きながらの会話だったらしく、途中までしか聞けなかった。

 

「…だけど何となく分かった気がする」

 

この国を襲う者。それが幼龍のもう1つの要因なのではないかと考える。つまり、この国が滅ぼされてしまえば、あの未来に繋がってしまうと。

 

「…ルーナ姫」

 

姫ということからこの国で1番偉いのだろう。最初の目的は姫に接触して協力して敵を倒す――

 

「あれ、これ今接触したら逆に疑われる?」

 

今の状況を考え、自分の行動は逆効果になるのではと思う。

 

「…でも待ってられない!」

 

逆効果と思いつつも信念を曲げず、ルーナと呼ばれた姫に会うためにこの壁の反対側へ抜けられる場所を探して壁沿いを走っていった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

走り回ること数分、正しい道ではないものの、壁の反対側に進む道を見つけ、そこを通り中へと入っていった。

 

「…壁の中にも森林地帯あるんだ…」

 

景色があまり変わらなかったことに対するショックだが、足は止められない。

と、走り始めたところふと視界の端に映ったものがある。

 

「…池?にしては結構広い…」

 

何やらこの場に似つかわしくない池がある。そう思い立ち止まると、その池の付近に人の姿が見えた。

 

「…」

 

さっきの会話のルーナ姫にとって、敵なのか味方なのか。それを確認しようと思い、危険は承知の上でその人物に近づいていく。すると――

 

「…わっ!?」

 

「えっ!?」

 

見えていた人物の傍らにもう1人、誰かが倒れていたらしく、その人物が起き上がって声を上げる。

驚いて声を出すも、こちらには気付いていない様子。

 

「…というより、あれって…ノエル!?」

 

起き上がった人物が自分の知り合いで二重の意味で驚いた。ノエルはマリンと一緒に王国へ用があると言っていたが、何故ここにいるのか。

 

「…ここが王国に近い場所だったり?」

 

そんな考えをしているが、ノエル側の方で話の発展がある。

 

「…な、目覚めてしまった!?起きていても食べれるかな…」

 

最初に見えていた人物も同じく立ち上がるが、その身長はとても小さい。見た目だけで言えば幼子に感じるが、その人物から溢れる異彩なオーラをときのそらも感じ取っていた。

 

「ちょ待って!団長は食べ物じゃ――」

 

「私は今お腹ぺこぺこ!だから食べます!」

 

食べ物に飢えた目付きをして、その小さな少女がノエルに向かって飛びかかる。

 

「まずい…!」

 

ノエルが負けるとは思っていないが、どっちにしろここでの争いは宜しくない。

今は幼龍のもう1つの要因を無くすためにここへ来ている。

ノエルは貴重な戦力だし、あの少女も他とは違う能力があるように思える。仲間になってもらえるなら嬉しい限りだ。

ここで消耗し合うのは良くないと考え、ときのそらは今にも戦いを始めそうな2人の間に割って入る。

 

「ちょっと待ってぇー!」

 

「えっ!?そらちゃん!?」

 

突然の再会に驚きを隠せない。それも無理はないだろう。ついさっき、ときのそらはParallelへと転移したはずなのだから。

 

「a〜、じゃまものー?」

 

「話を聞いて欲しいの。今ここはとても危険になってるから無駄な争いをしてる場合じゃないの!」

 

「え、危険?」

 

ときのそらの話に言葉を返したのはノエルの方だった。

 

「うんっ、その話は後で詳しく言うね。…とりあえずあなたは誰?」

 

先程からこちらに威嚇をしている少女に、ときのそらは優しく問いかける。

 

「a〜サメです」

 

「…。ん?サメ…?」

 

今の質問に答えてくれたのだろうが、返答が期待していたものと若干ズレており理解するまでに少し時間がかかってしまった。

 

「…被り物、とかじゃなく?」

 

「YESYES.サメです〜」

 

確かに着ている服はサメの形をしたフードがついている、膝上まである長さの服だ。

サメかどうか聞かれたら――

 

「…うーん」

 

――人にしか見えないだろう。それでもとりあえず会話ができていることにホッとしている。

 

「…えっと、サメちゃんはなんでノエルに襲いかかろうとしたの?」

 

単刀直入に聞くのが手っ取り早いと感じストレートに質問をする。

 

「お腹空いてるから!食べようと思った…」

 

「怖っ!?え、ホントにサメ…だったり?」

 

答えがあまりにも人からかけ離れており、流石のときのそらも恐怖を感じてしまう。

 

「…なら、食べ物あげるから代わりに協力して欲しいことがあるの」

 

「え〜疲れるのは嫌です〜」

 

「でも協力してくれないと食事ができなくなっちゃうかもだよ?」

 

「えっ…ホントに?」

 

「ほんと」

 

ときのそらによる言葉に、少しの間頭を悩ませる。

 

「うーん…分かりましたー。手伝います!」

 

「ほんと!?ありがとう!私は時乃 空!よろしくね」

 

協力してくれる事となり、戦力(かどうかはまだ分からないが)が増えて幸先が良い。

このまま、2人を連れてさっきの姫の所へ向かおう。

 

「おーいそらちゃん、団長おいてけぼりなんだがー?」

 

道中でノエルに詳しく説明もしなければいけないと思いつつ、ときのそらは歩き始めた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

思った以上に敷地が広いらしく、目当ての人物が中々見つからない。

 

「…まさか同じ人だったなんてね」

 

と言うのは、ノエルがここへやってきた理由と、ときのそらの目的の人物が同一人物だったからだ。

 

「えっと、サメちゃんって強い?」

 

何気なく隣を歩く少女に声をかける。見た目はかなり小柄だが、背中には三又槍と呼ばれる、槍の先端が3つに別れている――俗に言うトライデントというものを背負っていた。

 

「a〜強いと思う〜」

 

だが肝心の少女は曖昧な返答をするだけ。幼い感じと思えばそれまでだが、今更になって戦闘要員として活躍してくれるのか心配になって来ていた。

 

「まあ心配しなくてもかなり強いと思うよ。さっき対面したときの雰囲気だけど」

 

ノエルが横からそう言うので一応信じてみよう。

 

「そらちゃんの行った世界とここが関係してるって、何か運命みたいだね」

 

ときのそらがここへ来た理由を事細かに説明したことに対するノエルの感想だった。

運命かどうかは分からないが、少なくともルーナも関係者の1人になるのだろうとは思う。

 

「…ルーナ。国王の娘の名前か」

 

ノエルが何度も名前を口に出している。と、その時に不意に大きな音が聞こえた。しかも、すぐ近くでだ。

 

「…っ!」

 

振り返ると、そこには複数の男が立っている。

 

「…こいつらが敵…」

 

ノエルも臨戦態勢へと入る。男たちは何も言わずにこちらへと近づいてくるだけだ。

 

「…こいつらの中には姫は居ないか」

 

「なら殺しても大丈夫だな」

 

「…っ、姫を探してる…」

 

姫を――ルーナを探す男たち。その目的はどう転んでも良い意味には捉えられない。

絶対に会わせては行けないと直感で思った。

 

「…だからここで倒す!」

 

「そうだね!」

 

ときのそらに呼応するかのようにノエルが武器[プラチナメイス]を手に持った。

 

「…ふっ」

 

それに反応してか、敵の1人の男がノエルの目の前へと突っ込んでくる。

 

「おりゃ!」

 

ノエルが目の前の地面へ大きな一撃を叩き込み、土煙を上げる。

 

「目くらましなど効かない」

 

「…っ!」

 

土煙に隠れて男の横へと回ったが、容易く見破られ、男が手に持った剣を突き立ててきた。

咄嗟に武器で防ぐことができたが、その間に他の者に囲まれてしまう。

 

「ノエルっ!…っ!?」

 

「…お前戦えないみたいだな」

 

そんなノエルの元に近づこうとするが、ときのそらの目の前には一際大きな男が立ち塞がる。

 

「くっ…」

 

「まずはお前だ」

 

大きな男がその拳を振り上げてときのそらへと一気に降ろす。距離と速さを考えれば、ときのそらは避けることができないだろう。

 

「そらちゃん!!」

 

「――a.私を無視されるのは、困りますー」

 

「…っ!!」

 

ときのそらへと振り下ろされた拳。だが、それは間に入った小さな少女の持つ武器、トライデントによって軽く防がれた。

 

「サメちゃん!」

 

「そらが居なくなったらご飯無くなるからー助けます!」

 

「…なんだこのガキっ!?」

 

男の拳を振り払うと、咄嗟にトライデントの突きが男の胸に当たる。

その勢いのまま男は吹き飛ばされ地面に倒れてしまう。

 

「…強いっ!」

 

実際に実力を目の当たりにして、その強さに驚く。

それはときのそらだけでなく、ノエルも同じことだった。

 

「すごい…!」

 

「先にこの女騎士からだ!囲むぞ!」

 

ノエルの周囲に居た敵たちが一斉にノエルへ襲いかかる。だが、いつの間に移動したのか、ノエルの前にはサメちゃんが立って待ち構えていたのだ。

 

「いつの間にっ!?」

 

「――『擬似海域』!」

 

サメちゃんの周囲に大きな水の輪が浮かんだと思うと、一瞬にしてそれは収縮し、サメちゃんの全身に水の輪が纏い始めた。

 

「…ぐはっ!?」

 

その勢いのままトライデントでやって来る敵たちを――予想を遥かに超える桁違いの速度で跳ね返していく。

その威力も格段に強く、たった一突きで大きく吹き飛ばされ、胸から血が溢れるほどの力だった。

 

「…ぁ」

 

たった数秒。10秒にも満たないうちに、襲いかかってきた敵全員がサメちゃんによってやられたのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

その力を見た今でもその少女の体のどこにそれ程の能力が隠されているのか、全く分からない。

ただ、言えることは一つだけ。

 

「…あの時やり合わなくて良かった」

 

ノエルが零す感想。あそこでやり合ってたら、一体どっちが勝っていたかは分からない。

いや、ノエル本人は分かるだろうがそれはあえて口には出さない。

 

「…すごいよサメちゃん!」

 

恐るべき力を発揮した少女だが、今はこちらの仲間なのだ。怖がるより喜ぶ方が正しい感情表現になるだろう。

 

「えっへん。後でご馳走いっぱい貰います〜」

 

「分かった!これは料理頑張んなきゃ…!」

 

胸を張って誇らしげにする様子は、見た目通り無邪気な少女に見える。

 

「…とりあえずあの出方は待ち構えてたかもね」

 

ノエルも気持ちを切り替えて今の状況を把握しようとしていた。

 

「つまりこの付近?」

 

方向感覚はそれほど鈍くはないと自覚しているが、それでも周りが木々だらけでは道標がない限り相当道に苦労するだろう。

生憎と、最初に姫の声を聞いた箇所にあったような壁が薄らと見えるため何とかなっている様子だ。

 

「あと少し――」

 

「気をつけるです!」

 

あと少しで姫を見つけた場所へ戻れると思ったときだ。サメちゃんが大きな声で2人に呼びかける。その意味は――

 

「…なに!?」

 

ノエルがその声に反応し周りを見渡す。だが、何も異変は起きていない。だからサメちゃんがどうかしたのかと、ときのそらはサメちゃんを見る。

――真っ直ぐ上を見るサメちゃんを。

 

「っ!!ノエルっ!上!」

 

「…っ!?」

 

ときのそらの声に今度こそノエルも異変に気づく。

空から無数に降ってくる紫色の光がその正体だ。この国の至る所に落ちているようで、例外なく、ときのそらたちがいる場所にも複数落ちてくる。

 

「――『リフレクト』!」

 

サメちゃんの持つトライデントが光り輝き出した。そのトライデントを落ちてくる紫色の光に目掛けて突き刺す。

 

「…えっ!?」

 

驚きが思わず声に漏れてしまう。ただ光っただけの槍。だがそれに突き刺された光全てが、降ってきた方向――つまり空に向かって跳ね返って行ったのだ。

 

「す、すごい…!」

 

ときのそらたち周辺に落ちてきた光は1つも落ちることなくそのまま跳ね返っていき、誰もその光に打たれずに済んだ。

 

「あっちの方向、いっぱい落ちてた」

 

サメちゃんが指を差した方向、それは皮肉にもときのそらが向かおうとしていた壁の向こう側――姫がいた場所だった。

 

「っ!もしかして!」

 

姫が狙われたかもしれない。そう思った瞬間、ここにずっといられないと2人に声をかける。

 

「早くあっちに行こう!あそこにきっといる!」

 

目的の人物が無事であることを願いながら、真っ直ぐと姫がいた城――つまり、光が落ちてきた中で最も集中していた場所へと向かって走り出した。

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