Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶3「屋敷邸の少女」

――――――玄関の横には、他の家と同じように表札があった。

 

「――なんて読むのこれ?ナントカはね屋敷邸?」

 

「…潤羽屋敷邸でしょ」

 

漢字が読めずに悩んでいるマリンに対し、代わりに表札を読んだのは聖騎士団副団長のノエルだった。

屋敷へと乗り込むことになったのはマリンとノエル、それからマリンが選んだ屈強な男船員2人。そして、ノエルが世話する担当となっているときのそら、肉付きの良い男団員1人の計6人となった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…あれ。普通に開いてるねこれ」

 

マリンが扉に触れ、軽く引くと鍵がかかっていないのか、言われるがまま扉が開いていく。

 

「どうする?入っちゃう?」

 

「一応ここが危険か調べないといけないからね。入っちゃおうか」

 

どうやらマリンもノエルも行動派なようで、躊躇いも無く中へと入っていく。その様子を見る船員と団員の3人はその行動に呆れていた。

 

「そらちゃん。私のそばにいれば大丈夫だからね」

 

「は、はい!」

 

ノエルがそう呼ぶと、ときのそらは足を早めノエルの横へとやって来る。

 

「そう言えばそらちゃんの指数はいくつなんですか?」

 

「え?…指数?」

 

初めて聞く単語にときのそらは頭を悩ませる。

その反応が意外だったのかマリンも逆に驚いているようだった。

 

「え?…もしかして戦えない系なの?」

 

「隣街から来たらしいよ。だから知らなくてもしょうがないんじゃない?」

 

「あー。…いや、申し訳ないなそらちゃん」

 

ノエルに初めてあった際、自分の出生を聞かれ【ジュエリーショップ】で近くの街からやって来たのかと聞かれた言葉を使い、隣街からやって来たと言ったのだ。

最初の反応は、まるで哀れむような感じだったが次第に色々と手助けをしてくれるようになった。

 

「簡単に説明するよ。指数ってのはその人の強さを表す数値みたいなもんだよ」

 

「そこまで正確かは微妙だけどね」

 

何も分からないでいるときのそらに、マリンが一から優しく説明を始めてくれる。

 

「強さを数値化したってこと?」

 

「そうだよ。で、[気力指数]と[魔力指数]があるの」

 

「両方とも高いほど強いみたいな感じだよ」

 

よくあるゲームでのATKとMPみたいな物だろうか?

マリンの説明をちゃんと聞きながらときのそらは頭の中で整理していく。

 

「他に、「特殊能力」を持ってるのもいたりするんだってさ。あと、指数の数値が4000前後でそこそこの強さ。10000を超えるのは世界で1割くらいって噂だよ」

 

「この前測ったけどマリンは思ったより低かったね」

 

「――って、お前さっきからやかましいわっ!!」

 

マリンの説明に一言付け加えるノエル。限界が来たのかマリンがノエルに怒鳴り散らかす。

 

「…マリンちゃんの指数?」

 

「そう。マリンの「気力指数」は4800、「魔力指数」は1700だよ」

 

ノエルがそう説明をするが、初めての単語を覚えるのに必死なときのそらは数値を聞いてもあまり理解できないでいた。

とりあえず4000前後がそこそこな強さということから、マリンはまあ普通くらいなのだろうと感じている。

 

「ちなみに私は「気力指数」が7000で、「魔力指数」が900だよ」

 

「あー出たよノエルの自慢話。まあ「魔力指数」は船長より低いみたいだけどぉ?」

 

「魔力?いらないでしょ。パワーだよパワー」

 

マリンの挑発に対し、ノエルが脳筋のような言葉を返す。

そんな2人の言い合いのような会話が続いている中、ときのそらは一つ疑問を持った。

 

「…ここ、屋敷の中だよね?どこ向かってるの?」

 

「…ノエル?」

 

「…マリン?」

 

先頭を歩く2人は、ノエルのすぐ近くを歩いているときのそらの疑問に足を止め、お互いを見つめ合っている。

屋敷の扉を開け、中に入った途端から2人の言い合いは始まった。そして、そのまま真っ直ぐ歩いてきたわけだ。

――ここまで屋敷の中にいると思われる人とは誰一人出会ってないことも知らずに。

 

「どうする?もうこのまま最奥の部屋だけ確認して戻る?」

 

「んー。そうだね。一応、最奥の部屋行こうか」

 

マリンの提案を受け、ノエルが決断する。おそらく屋敷の渡り廊下となっている部分を歩いているわけで、両サイドに別れ道や部屋があるであろうなどがついている。

真っ直ぐ前を見れば、一際目立つ扉があるわけで、マリンとノエルはその部屋だけ見ればいいだろうと納得していた。

 

「…大丈夫なのかな」

 

ここまでの2人の行動を見て、ときのそらはさっき気力や魔力などと話していた2人のことを、本当に強いのかと変に疑い始めてしまっていた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「ここも開いてるのかな?」

 

最奥の扉の前までやって来て、マリンが扉を開けようと手をかざす。

 

「…!船長、後ろっ!」

 

「…へ?」

 

その時、後ろで船員の一人が声を荒げる。

 

「…っ!?」

 

何事かと後ろを振り返るマリン。そこにいたのは――

 

「――お化けぇ!?」

 

「てぇい!」

 

マリンに襲いかかろうとしていたのは、人型ではあるものの下半身が透けていて宙を漂っている――正真正銘のお化けだった。

咄嗟の出来事に反応できないでいたマリンの代わりに、ノエルが腰にぶら下げていた武器を手に取り、お化けを攻撃する。

 

「――ッ!」

 

「えぇ!?お化けに物理の当たり判定あるの!?」

 

ノエルの一撃をまともに受けたお化けはたちまち姿を消していなくなってしまう。その光景に助けてもらったはずのマリンがツッコミを入れていた。

 

「…マリンもしかして戦えない?」

 

「なわけあるかっ!船長だってちゃんと武器が――」

 

ある、と言いかけて動きが止まる。そしてノエル――いや、他の同行人を見て船長がか細く答える。

 

「――スゥ。船長の武器…馬車に置いてきちゃいました」

 

「…つまり?」

 

「――今回は船長の出番ないですね」

 

その言葉を受け、ノエルが唖然とする。

これではマリンが来た意味の半分程なくなってしまっている。

 

「――お荷物か」

 

「だぁれがお荷物だ!!」

 

辛辣な扱いに対してマリンが抗議する。

しかし今はそれどころではない。

 

「さっきの…お化け?」

 

ついさっき襲ってきたものに対しての全員の答えは「お化け」だった。

 

「お化けっていうにはかなり物騒だったけどね」

 

「…とりあえず中に入ろうか。恐らく誰かいると思う」

 

ノエルがそう言い、自ら扉に手をかけ躊躇いもなく勢いよく扉を開いた。

 

「――えっ?」

 

そして中に誰がいるのかと確認する全員。

その目に映った光景は――

 

「…ほら。ちゃんと食べないとダメでしょ?」

 

長テーブルに座り、食事をとる3人の家族だった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

ついさっき「お化け」が襲ってくるような屋敷の中にしては異様な光景で、唖然とするのも無理なかった。

 

「…あら?お友達さん?」

 

家族の中の母親であろう人物がこちらの存在に気づき、そう言葉を発する。

 

「――あ、白銀聖騎士団副団長の白銀ノエルと言います。今回は突如現れたこの屋敷が王国に害を及ぼすのかを確認に来ました」

 

元々の役目として、害を及ぼすかを確認するためにここに来ている。

遅れながらに思い出し、自己紹介も兼ねてノエルが3人に対して説明をする。

 

「あなたたちはいつからここに?目的は?害は及ぼしませんか?」

 

ノエルが畳み掛けるように質問を繰り返していく。

だが、3人とも無表情のままこちらの質問に応えようとしない。

 

「…どうなのですか?返事をしないのであれば害を及ぼすものと認識します。その場合はここからご退去願います」

 

ここまで話して、ようやく1人の男性――父親であろう人物が立ち上がり、こちらに視線を向けてくる。

その行動に一瞬だけノエルが身構える。

 

「――うるさい」

 

最後まで沈黙を貫いていた10代程の見た目の少女が「うるさい」と、そう呟いた。

――瞬間、立ち上がったはずの父親の姿が消えている。

 

「――っ!?」

 

「副団長!!」

 

咄嗟に団員の1人が片手剣と盾を構えて、ノエルの背後へと回る。

 

「ぐっ…!!」

 

ノエルの背後へと近づいていた父親らしき男性が攻撃を仕掛ける。それに反応し、ギリギリの所で団員の防御が間に合った。

 

「…!いつの間にっ!」

 

遅れながらノエルも気づき、武器を取り出し応戦する。

 

「船長は戦えないのでそらちゃんを守っときますね!」

 

遅れて戦いに参加する2人の船員と、ノエル、団員の1人が男性へと攻撃を仕掛ける。

 

「――邪魔しないで」

 

再び少女が呟く。すると今度は母親らしき女性が姿を消し、ノエルの前へと突如現れる。

 

「…うっ!!」

 

女性の回し蹴りがノエルの腹部を直撃し、後方へと飛ばす。

 

「ノエル副団長!」

 

吹き飛ばされ、マリンとときのそらの近くで倒れ込む。

すぐにときのそらが駆け付けて心配をする。

 

「だ、大丈夫だよ。勢いは凄かったけど、ダメージはあんまりだから」

 

そう言ってすぐさま体勢を立て直す。

 

「…おそらくあの少女が一番偉いのかもね」

 

未だにテーブルに腰掛けたまま動かずにいる少女を見て、ノエルがそう判断する。

 

「でもこの2人中々強いよ。どうすんの?」

 

マリンの言う通り、戦い初心者のときのそらでさえも2人の強さを何となく感じ取れる。

 

「…直接あの少女に攻撃を当てればいい!」

 

そう言い、ノエルは自分の持つ武器を精一杯の力で地面に叩き込む。

 

「そ、そんなことも出来るんですかっ!?」

 

思わずときのそらは驚いてしまう。

ノエルの叩き込んだ場所から、少女目掛けて衝撃波が飛んで行ったのだ。

近距離型が遠距離技を使えるのは不意打ちなどにも最適だ。そのまま飛んでいく衝撃波は少女の元まで辿り着き――

 

「…ぐうぅ!!」

 

「なっ!?」

 

――辿り着いただけで、少女には当たらずに目の前に姿を表した男性がその攻撃を代わりに受け止めたのだ。

 

「何あれ…両親ともに瞬間移動使えるの?」

 

ときのそらを守る役目にいるマリンが、ここまで見てきてたどり着いた結論を話す。

 

「――いや、違うみたい…!」

 

ノエルの否定を聞き、マリンは再び男性を見る。

その体が透明になり、消滅していくのを。

 

「…っ!?あれも「お化け」!?」

 

「…副団長!!こっちの様子もおかしいです!」

 

女性側と戦っていた団員、船員がノエルたちに向かって叫ぶ。そちらに視線を向けると、女性の体は消えてはいないものの人形の糸が切れたように、崩れ落ちるようにその場に倒れ、動かなくなっていた。

 

「…これって、もしかして――」

 

異様な光景を目の当たりにして、ノエルとマリンが互いの顔を見合わせる。

そして、真実にたどり着いたであろう2人は徐に立ち上がった少女へと視線をずらす。

 

「――るしあの邪魔をしないで」

 

そう声を発した少女からは、凄まじい負のオーラを漂わせてこちらを睨みつけてきた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

少女が片手を体の前へと突き出すと、倒れていた女性の体がその手の中へと引き寄せられるように動き始めた。

 

「――るしあの家族。大切に扱わないとね」

 

自分の傍にまで手繰り寄せた女性の体に触れながら、何かを呟き始める。途端に、女性に触れている掌が淡い緑色に光り始める。

やがて光が消え始めた頃、女性が再びその生命を宿して目の前に立っていた。

 

「やっぱり。あの子は――」

 

「――「死霊術師」みたいだね」

 

ノエルとマリンが真実の答え合わせをする。

この屋敷で出会った男性、女性。それから扉の前にいた「お化け」。

これら全ては目の前の少女が操っていたということに。

「死霊術師」――別名で「ネクロマンサー」とも呼び、主に死者や霊を操る術を使う者とされている。

 

「――なんで皆るしあの邪魔をするの?」

 

そう言い、少女はこちらへ鋭い視線を向けてくる。

 

「…邪魔?別に邪魔なんて――」

 

「うるさいっ!」

 

ノエルの言葉を遮って少女が怒声を上げる。それに呼応するように女性がノエルへ襲いかかる。

 

「ぐっ!!副団長はあの少女を!!」

 

「ありがとう!」

 

女性の攻撃を団員と船員2人が受け止め、その間にノエルは少女の方へと走っていく。

 

「お願いっ、話を聞いて!別に害がなければいいんだよ!」

 

「うるさいうるさいうるさいっ!!」

 

ノエルによる説得はまるで届かず、少女は幽霊のような青白い火の塊を周囲に浮かび上がらせ、それらをノエル目掛けて飛ばしてくる。

 

「――」

 

「マリンちゃん…?」

 

ノエルと戦っている少女のことを見つめて、言葉には表せないような不思議な表情を浮かべるマリン。

そんなマリンを見てときのそらが声をかける。

 

「…いや、大丈夫ですよ。ちょっと気になって」

 

そう言ってマリンは再び視線をノエルと少女の方へと移す。その時のマリンの表情はいつも通りに戻っていた。

 

「…邪魔しないで…か」

 

マリンは一人、少女が何度も発していた言葉を心の中で反芻していた。

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