Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶15「分岐点」

――――――問題を解決し、マリンとルーナの命も救えたことにより、皆して一安心していた。

見知らぬ少女――白上フブキというのが、吹っ飛んだときのそらを助けてくれたらしく、いつか恩を返さなきゃいけないと思う。

だが、ときのそらはまだ喜べない。理由は明白だ。

問題は解決した。解決したのだが――それはまだ1つ目だ。

このParallelへやって来ることとなった理由。それはもう1つのParallelを救うため、カリオペによって飛ばされた世界がここなのだ。

 

「…意味もなく飛ばすはずがない」

 

ならば、ここの世界を救うことで向こうも救われると分かっていたから。だが、生憎とここと向こうの繋がりが分からない。

だから、確かめるしかない。

 

「…あの」

 

一段落ついた所で安堵していた全員に声をかける。一斉に振り向き何事かとときのそらに耳を傾けた。

 

「…この中に森カリオペ、常闇トワ、天音かなた、七詩ムメイの誰かと知り合いって人はいませんか?」

 

ここの世界の人と繋がりを持っている可能性があるとすれば、今名前を挙げたこの4人になるだろう。

この4人と何らかの関係を持っているものがいれば、カリオペがここへ飛ばした理由が分かってくる。

もちろんノエルとマリンを除いたフブキ、わため、ぐら、ルーナに向けて呼びかけた。

そして、声をかけられた4人のうち誰か1人でも反応があれば思った通りとなる。そう思い全員の顔色を窺っていると――

 

「あいつを知ってる!?」

 

「かなたちゃんとトワちゃん?」

 

「…Calliope」

 

「あまねちゃ…?」

 

「――え…えぇ!?」

 

誰か1人――ではなく、全員が名前を挙げた誰かしらと関わりを持っていたのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

あまりの反応の良さに、驚いたときのそらが落ち着くこと数十秒。最初に声をかけ直してきたのはフブキだった。

 

「…それで何で森カリオペのこと知ってるんですか?」

 

「…実際に会ってきたから」

 

ときのそらの発言にノエルとマリン以外の全員が驚いた。

 

「ふむふむ。それで、いきなりそんな話をするということは何かまだあるんですよね?」

 

勘が鋭いフブキ。一から説明をしなくても話が通じてくれた。

 

「今そのカリオペさんと仲間たちが危険な状況で…手を貸してほしいんです!」

 

ここの障害を取り除いたとしても、それだけでときのそらが1人戻って絶対に救えるという保証はあるのか?

可能性を出すなら、ここで助けた仲間を連れて戻るのが最善策。

それでも断られるのなら1人で戻って尽力するしかない。

 

「危険な状況…それは死ぬ可能性があるんですか?」

 

「…はい」

 

「…。分かりました。白上としても行く理由があるので一緒について行きましょう」

 

だが、フブキの発した言葉は協力するといった内容だった。

それも、ほかの皆の顔を見るとフブキと同じように前向きに考えてくれている。

 

「…あまねちゃは友達なのら。だからルーナもいくのらよ」

 

「トワちゃんも友達!」

 

「a〜…私はそらと共にするから、行きます!」

 

「みんな…!」

 

「あの――」

 

快い返事をくれた皆の中、1人反論があるかのように手を挙げる。その人物は意外な事にも、ときのそらの仲間であるはずのマリンだった。

 

「…どうやってみんな連れてParallel行くんです?」

 

「――あ」

 

それはときのそらも考えていなかった――いや、正確にはごく普通の事だが、先の件で考える頭を持ち合わせていなかったのだろう。

とにかくマリンの言う通り、Parallelを移動する手段などこの場には存在しないということが唯一の盲点だったのだ。

 

「…Parallel?」

 

「話が長くなるから今は気にしないで欲しいな。とりあえず、そらちゃんが向かおうとしている所に行く方法ある人いる?」

 

「…だってこれから行くの地獄でしょ?白上1人なら何とか方法はあるけどみんな連れてくってなると…。てっきりそらちゃんが行く方法あるから白上たちみんなを連れていこうとしたのかと…」

 

とんでもない初歩的なところで意見がまとまらなくなってしまった。

確かに、ときのそらに声をかけられた4人側には地獄や天国へ行くといった手段がない。

あるとするなら協力を申し出たときのそらだろうと考えるのは普通のことだ。

 

「いったん戻ってロボ子さんに頼むとか…」

 

「それだと時間が…」

 

ときのそらが恐れていることは取り返しがつかなくなること。カリオペによってここへ直接飛ばされたため、ときのそらからしてみればここの流れている時間とカリオペたちと居た向こう側の時間軸が同じだろうと考えてしまう。

こうしている間にも向こうでは時間が経っている。未来を変える1歩目を踏んだとは言え、これだけで全てが変わるものなのだろうか。

 

「何とかして方法を…」

 

そう、ときのそらが強く『願った』時だった。

 

「…何これ」

 

全員がその光景に目を奪われる。それも無理のない事だろう。

――目の前に突然として大きな光の門が現れたからだ。そして、ときのそらはその門に見覚えがある。

 

「これ…」

 

色や形は違えど、その本質はかなたと天国へ戻る時に、ときのそらの目の前に突如として現れた『ゲート』と同じものだった。

 

「…なんですかこれ。もしかしてそらちゃんの能力?」

 

最初に言葉を発したのはフブキだった。その言葉にどう反応しようかと困るものの――

 

「…自発的に発動しないですけどそうです。とりあえずこれに入ってください」

 

あやふやな解答で怪しまれないかと思うが、ひとまずは納得してくれた様子。

 

「…これ入れるのら?」

 

「だったら団長が最初に行くよ。その後で皆ついてきて」

 

不発に終わるかもしれない、そんな不安を解消すべく真っ先に行動したのはノエルだ。

そんな後に続くようにここにいた全員が門に向かって歩き始めた。

 

「――今度こそ、救える…!」

 

 

――――――――――――――――――

 

 

ノエルに続き、残り5人が門をくぐり抜けた。フブキの提案により門を発動させた能力者であるときのそらは1番最後にくぐることとなった。

くぐり抜けた先、一体あれからどう変わっているのか。それを確かめるべく、ときのそらはゆっくりと目を開けた。

そして――

 

「っ!カリオペさんっ!」

 

目の前には傷一つない状態のカリオペが居た。記憶していたものでは、秘龍と戦い、傷を負っていたはずだ。

 

「…早すぎた?」

 

「それは大丈夫です。――ちゃんともう片方を解決してきたのですね」

 

こっちの時間軸やカリオペの記憶について心配をしていたときのそらだが、カリオペの言葉によってその心配は無用となり、ほっと一息ついた。

 

「――もしかしてこちらもお取り込み中ですか?」

 

そんなカリオペに対して先陣切って言葉をかけたのはフブキだった。その威圧するような口調からも、さっきのやり取りからして仲が良い方での知り合いではなさそうに見える。

 

「――。こちらの用を片付けてくれるならもう隠れませんよ、foxさん」

 

「…良いだろう。さっさとこっちも片付けますか」

 

意気込むフブキだが、肝心の秘龍が見当たらないことに周りを見渡すときのそら。

 

「…まだ居ないよ。そっちがやったことでこっちの時間が少しずれたみたいだよ」

 

「…かなたちゃん!」

 

そんなときのそらに不意に声をかけてきた少女が1人、振り向けばそこに居たのは天使の天音かなただった。

 

「丁度さっきカリオペから不思議な話を聞かされてね。…信じ難い事だけど、まぁ信じるしかないって感じだし?」

 

恐らくParallelが変わったことについて、この時間軸にも影響を及ぼしたということなどについて話したのだろう。

確かに何も知らない者からすれば聞いても不思議な感覚だろう。

 

「あまねちゃなのら!」

 

そん2人の会話に割って入ってきたのは、ルーナだった。そのルーナの姿を見てかなたは大袈裟に驚いた。

 

「えぇぇ!?ルーナ!?なんでここにいんの!?」

 

「そらちゃんが連れてきてくれたのらよ」

 

そう説明するルーナに色々と整理が追いついていない様子のかなた。

 

「…さっきまでここに居たのにいつの間に?…ぁ、これがParallelってやつ?――もう訳わかんないよ…」

 

最終的に結論は出たものの、はっきりと理解はしていない感じだった。

 

「トワちゃんとムメイちゃん…それにココちゃんは?」

 

「近くで休んでいるとこ。さっきの戦いで消耗してるからね」

 

恐らく幼龍の手下と戦った時のことを言っているのだろう。

そんな話をしていた時だった。

 

〈――罰ヲ与エル〉

 

「っ…!?」

 

この場にいた全員が声のする上空へと首を向ける。その時にはすでに空から咆哮が振りかざされていた。

 

「いきなりっ!?」

 

「――『シープホープ』!」

 

咄嗟に反応し、わためが能力を発動する。だがそれだけの防壁では全く歯が立たず、威力はほとんど衰えないまま目の前まで落ちてくる。そして――

 

「[闇淵源]――『深嵐壁』!」

 

――間一髪のところで聞きなれた声が、少し離れた位置から聞こえる。そのままときのそらたちの周囲に黒い暴風の嵐が巻き起こり、壁となって落ちてきた咆哮を阻止した。

 

「トワちゃん!」

 

「やっと幼龍のおでましか…」

 

そのままトワがときのそらたちの所へと着地した。隣にムメイも現れ、残りは1人となった。

 

「まだココちゃんが…」

 

未だに姿を現さないココを心配に思う。だが、そんなときのそらにかなたはそっと近づき――

 

「ココなら大丈夫に決まってるだろ。ゆっくり寝たらすぐやってくるさ」

 

「かなたちゃん…」

 

かなたの言う通りだと改めて考えるときのそら。かなたほどではないにしろ、ココとは長い付き合いだ。

さっきの消耗程度で終わるわけないと分かっている。

ならば考えを切り替えて、目の前の幼龍に意識を向ける必要がある。

 

「…今度は倒す」

 

一度幼龍に滅ぼされかけた、直前までいたParallelの世界。果たしてそことここは繋がっているのだろうか。滅ぼされかけたParallelとは、違うParallelの同じ時間に飛んできたのか、はたまた幼龍が力を蓄える分岐点の前に戻ってきたのか。

真相はときのそらにも、誰にも分からない。

――だからこそ、今いるまだ終わっていないこのParallelを救うために全力を出す必要があるのだ。

 

「…かなた。これが終わったら改めて話を聞いて欲しい」

 

「なんだよ急に。――ちゃんと聞くって言ったろ」

 

目の前に現れた幼龍に向かって、トワとかなたが1歩足を踏み出した。

 

〈――罰ヲ与エル〉

 

再び幼龍が言葉を発し、地面に前脚を思い切り降ろすと、幼龍の周囲から毒々しい色を帯びた木の根が伸びてきた。

その正体は周りに生えている木の根と同等のもの。

 

「っ、自然が…!」

 

「これが『成長』の能力ですか」

 

そのままこちらへと向かって伸びてくる無数の木の根。それに対して1番前線でトワとかなたが迎え撃つ。

その2人をかいくぐって抜けてきた攻撃は後ろに構えるフブキ、カリオペ、ぐら、ルーナによって打ち降ろされた。

 

「…これじゃ近づけないっ」

 

ノエルが攻撃の隙を窺っているが、無数に伸びてくる木の根が邪魔をして幼龍の元までたどり着くことができない。

 

「わためとマリンちゃんで何とか道を作るしか…」

 

「中々にきつそうですね…っ!」

 

幼龍の特殊能力の影響により、木の根だけでなく自然そのものがこちらに牙を向けている。至る所から飛んでくる自然の攻撃が、前線組を突破して後ろにいるときのそらたちにまで届いていた。

それをさばくのはノエル、わため、マリンの3人。ムメイはときのそらを傍で守る方針でいる。

 

「何とか隙をっ…!」

 

ときのそらは必死に考えるが、今の状況を打破するには1つ、攻撃の手が足りなかった。

ムメイを前線にあげれば突破できるだろうが、そうした場合ときのそらがかなり危険な状況に晒されることとなる。

 

「それでも!――ムメイちゃん!前を手伝って!」

 

「――分かった」

 

自分よりも皆を優先したときのそらがムメイにそう指示を伝える。ムメイが加わったことでより前で攻撃をさばくことが可能となり、やがてトワやかなた、カリオペなどの攻撃が幼龍へと届くようになった。

 

〈――鬱陶シイ〉

 

ほんの僅か程度で攻撃が効いているようだが、これではまだ足りない。そう考えるときのそらに――

 

「っ!そらちゃん!」

 

「――っ!?」

 

不意に飛んできた1つの木の根。誰も防御に間に合わない中、ときのそらのすぐ目前にまで伸びてきていた。

 

「――やば」

 

避けないと行けない、そう思うが体が動くより先に、その木の根はときのそらの顔を貫いて――

 

「――ギリギリ間に合ったっすね」

 

――見るも無惨な姿になると思った直前、空から光の柱が降りかかり、木の根は粉々に消滅したのだった。

 

「っ――ココちゃん!」

 

「さあて、こっからが本番っすよ。――『神光』!」

 

幼龍の前脚付近の地面が光輝き、次の瞬間空へとその光が溢れ出して行った。

 

〈――ッ!〉

 

それなりのダメージが入ったのか、幼龍が揺らいで隙が生まれた。

 

「――かなた」

 

「おうよ――間に合ったな」

 

トワとかなたがお互いに手を取り合う。数十分前の2人を見ていたときのそらからは、2人が今した行動がかなり意外に思えた。

それと同時に過去が変わったんだなと嬉しくも思える。

――2人の願いは、今度こそ誰にも邪魔されない。だから発動する。

 

「「――[天魔の恩恵]…『マドロミ』」」

 

2人の声が、呼吸が、行動全てが重なった。まるで雷が2人に落ちたかのように激しい爆音が鳴り響いた後、2人からは想像もできない白いオーラが放たれていたのだ。

――そして、その力が及ぼした影響は、目の前の地形を跡形もなく消し去ったことだった。

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