Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶19「唯一の方法」

――――――咄嗟の出来事にカリオペは反応できなかった。突然として予定と違う行動を取ったときのそら、だがそれを叱る権利はカリオペにはない。

 

「…死なないで!絶対に助けますから!」

 

むしろ褒めるべき行動を取ったとも思える。ここでカリオペまでもが自らを投げ出してときのそらたちを助けに降りてきてくれれば簡単だったかもしれない。

だがときのそらは知らないが、ゲートを生み出した本人が強い損傷を受ければその瞬間にゲートが閉じてしまうのだ。

全員がちゃんと天国へと繋がったのか、それを確認する術がない今カリオペは無闇な行動ができない。

故に、一言『助ける』と叫んだカリオペはすぐさまゲートの中へと入っていったのだ。

 

「…大丈夫だから!」

 

助けに来なかった理由が分からずとも、カリオペの今の行動に意味を見出したときのそらは悲嘆することなく、トワとかなたを両の手に抱えたまま深く下へと落ちていったのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…うっ」

 

気を失っていたのか、意識が覚醒し目を開ければ周りは薄暗く、地面が少し濡れているのが布越しに伝わってきた。

 

「…水?――っ、トワちゃんたちは!?」

 

2人を抱えて落下したはずのときのそらだが、手は地面へと付けていて2人の姿が近くに見当たらなかったのだ。

最悪な状況を想定して、急いで探そうと立ち上がり――

 

「落ち着いてそらちゃん」

 

「うわっ!?」

 

目の前から突然声をかけられ、びっくりして再び地面に手をついてしまった。

 

「脅かしてんじゃねーよトワ。とりあえず3人の安否確認はできたな」

 

そのすぐ隣から声をが聞こえてきた。この暗闇の中、ときのそらだけが周りを視認できていないのかと考えたが、次第に暗さに目が慣れてきて2人の顔がはっきりとは言わずとも見えてくるようになった。

 

「2人とも良かった…」

 

改めてトワとかなたの顔を確認して安堵のため息を零す。

 

「ここってどこ?」

 

「地獄の地下世界…って言ってもただ地面の下に大きな空洞があるだけで住んでる奴とかは居ないけどね」

 

ときのそらの疑問にトワが受け答えをした。地上が先に崩れていった訳を聞けば、核の存在している位置に関係しているという。

 

「まぁこの地下もそう長くは持たないけどね。核が壊されたのが本当なら地獄は完全に消滅する」

 

何も悔しさや未練など無いと言ったふうに軽々とトワがそんな事を口にしたのだ。

 

「天国が残ってりゃあ、この地獄は復活させられる…ってカリオペも言ってたしな。優先すべきは天国への帰還だ」

 

トワに続いたかなたの言葉を聞き、まだ諦めるところでは無いと再認識した。

それでいて、前に説明を受けた時のかなたと今のかなたには大きな変化が――良い方向に変化していたことがときのそらにはとても嬉しく思えたのだ。

 

「それじゃ早速ゲートで…」

 

一時はどうなるかと思ったが、2人が無事目を覚ましてくれたことで色々な心配が消え去って行った。

どのくらいの時間経ったのかは分からないが、あくまで勝手な予想としてまだカリオペ達が助けに来ていないことを考えるとそう長い時間は寝ていなかっただろうと思える。

 

「皆に変な心配かけないで済むね」

 

そう意気込むときのそらだったが、それに対する2人の反応はイマイチだった。なぜなら――

 

「えっと、そらちゃん。聞いて欲しいんだけど…実は僕たち能力が使えないんだよね」

 

「…だからゲートも作れないの」

 

かなたとトワから告げられた言葉、それを聞いてときのそらは大きく目を見開いて固まってしまったのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

ときのそらが落ち着いた後、2人から消えて居なくなった後の話をしっかりと聞いたのだった。

 

「…そうだったんだ。でも良かった、2人が無事で」

 

「まぁ倒すのにこっちは全能力制限されちゃったし…無事って言えるのか?無事なのか?」

 

変なところに疑問を覚えたかなたを無視して、トワは改めてときのそらに意見を求める。

 

「とりあえずさっきも言ったようにここももう危ないだろうし。どうにかして天国へ移る方法を探さないとね」

 

「ちょっとした疑問なんだけど…」

 

話の途中、ふと気がついたことがあってトワに確認をした。

 

「地獄が壊れて、そのまま落ちていったらどこに着くの?」

 

初めて会った時の説明から、この地獄はときのそらたちの済む大陸、それのはるか上空に位置しているという。

単純な話、落ちていけば地上に戻るのではないかと考えたのだ。

 

「まぁそう上手くは行かないね。トワたちは問題ないけど、普通の人間が落ちて行けば途中にある特別な大気圏で体が消滅しちゃうよ」

 

「それって…」

 

「そもそも地獄と天国に来る人間は10割が死んだ奴らだからな。そらちゃんたちみたいなのは例外中の例外だよ」

 

このまま落ちるという選択肢は、2人には問題ないがときのそらが無事では済まないという。それは2人が許さないだろうし、ときのそら自身もここで死にたいとは全くもって思っていない。

 

「ここから天国に行く方法って…」

 

「ものすごくかけ離れている…というか、空飛べないとそもそもたどり着かないからね。飛んで行くかゲートを使うかの2種類だけだね」

 

もちろんときのそらが空を飛べる訳もなく、選択肢は最初から1つ――ゲートを通るのみだった。だが――

 

「2人は能力が使えない…」

 

ゲートが使える者が居ない今、天国へ行く方法がなくなってしまったのだ。

 

「…向こうからゲートを開いてもらえれば、って思うかもだけど。先に伝えるとそれはかなり難しいからね」

 

今まさに同じことを考えついたときのそらだが、それを先回るようにかなたにダメだしをくらう。

そうしてときのそらが驚いた表情を見せると、説明をするかのようにかなたが続きを口にする。

 

「ゲートを出すには地獄と天国の座標に関わってくるのさ。だから特定の人物の元に繋げようとしたら、そいつがいる場所が正確に分かっていないとできないんだよ」

 

今3人がどこにいるのか、それをカリオペが知るはずもない。実際3人も居る場所が曖昧なため伝える手段が例えあったとしても正確に位置情報を言うのは困難だろう。

 

「それじゃあもう…」

 

手段がないのではないか、そうときのそらが呟こうとしたがグッと堪える。ついさっきまだ諦めないと決めたのだ、まだ諦めるのは早いだろう。

何とかして方法がないか思考を凝らして考える。

そう考えるときのそらに、ふとトワが何かを思いついたかのように吐息が漏れた。それを聞いてかときのそらとかなたは同時にトワへと振り向く。その視線に気がついて、一つ呼吸を挟むと――

 

「――1つだけ、限りなく薄いけど方法があるかも」

 

そう、何も宛がないと思っていた2人に告げたのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…核の所に向かう?」

 

トワから告げられた言葉を聞き、かなたがそれに疑問を返す。

 

「そ。カリオペが「狂愛卵」を産み落としたって言ってたんでしょ?ならそいつらが核を壊したのは間違いないと思う」

 

「それがどうしたっての?」

 

「…一緒に、トワのビビも混ざってる可能性がある」

 

そう告げられるビビという名前。初めて出会った時トワの頭に居た帽子型のペットの名前だ。幼龍の異変により、何故かトワの前から姿を消してしまっていたのだ。

 

「…それが唯一の方法?」

 

「うん。ビビはね、トワの命令を受けてゲートを出現させることができるんだよ」

 

初めて聞く情報にときのそらは驚く。もちろん、かなたも同じようにだ。だがその情報がかなり有益な物と感じると希望が見えてきた。

 

「んじゃ早速向かうか。だいたいの方向は分かるし。――って、僕たち能力使えないじゃん。バケモノどうするの?」

 

勢いよく一歩を踏み出して、次の一歩で立ち止まり無視できない問題を疑問にした。

 

「え、それはそらちゃんに戦ってもらうしか…ってそういえばサポート寄りの能力なんだっけ?」

 

「…あれ、そらちゃんゲート使えるよね?それで戻れば良いんじゃない?」

 

トワがときのそらについて知り得る能力の事を再確認し、かなたがふと思い出したかのように能力について問いかけてくる。

2つの質問に答えなくてはいけないが、どちらから答えるかと考えるより先にかなたのした質問にトワが過剰に反応した。

 

「…え?ゲートを…?」

 

この前まではその場の勢いで乗り越えてきたが、今はそんな状況ではない。故にときのそらは、包み隠さず自分の能力と言えるか怪しいものを2人に説明したのだった。

 

「――あの時は偶然か」

 

その説明を受けて、意外にもすんなりと受け入れてくれた2人が互いに納得する。

 

「なら尚更戦える人が居ないか…バケモノとの戦闘を回避してビビにたどり着くしかないか」

 

「そうだな」

 

思った以上に話し合いが素早くまとまり、3人してこの地下空間から上へ出るための通路を探しに動き出した。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

少し遠回りをして地上へと戻った3人。そこはすでに地上と呼ぶべきか怪しい状態だった。

地面はひび割れ、所々が砕けて穴が空いている。その影響で木々は倒されて地面が凸凹しているのだ。

 

「核が壊れたら一番遠いところから崩壊していくから、この辺がまだ大丈夫なら近くにあるって事だな?」

 

「そう。地形が変わってるけどたぶん、だいたいの位置は覚えている」

 

そう指を指し、トワの後について2人も歩き出す。この辺りはまだ地面もなんとか地面としての役割を保っており、道を進むのにそこまで苦労はしない。

それに加えて周辺にバケモノらしきものが今のところ見当たらないのも幸先が良いと言える。

 

「はぁ…まだなのか?」

 

「もうちょい」

 

しばらくの間、道とは呼べない道を進んでいく3人。かなたが痺れを切らしてきた頃、ついにその時がやって来た。

 

「っ、あれって…」

 

ときのそらが目の前に見つけた大きな球体。まるで人間の心臓のような形をしたそれは、これまで地上では見ることはなかったのだ。それが今、こうして地上に姿を現していた。

 

「ま、壊された影響だね」

 

「さすがにここはバケモノがいるか」

 

ときのそらが見つけた球体を、2人は「核」と認識し、その周辺には幼龍の産み落とした「狂愛卵」の一部から産まれたであろうバケモノがうろついていたのだ。

 

「トワちゃん!あれ!」

 

ふと視界の端に映ったバケモノではない生き物を見つけ、ときのそらがすぐにトワを呼ぶ。

その声に反応したトワがときのそらと同じ方向を見ると――

 

「っ!――ビビ!」

 

見つけた生き物は、トワの元から姿を消したビビだったのだ。

ビビの体は小さく丸まっており、今にも儚く消えてしまいそうな状態だとときのそらの目にも分かった。

 

「くっ…バケモノが邪魔すぎる!」

 

何とかしてビビの元に近づきたい3人だが、バケモノの隙間をくぐり抜けることは今の3人には出来そうにもなかった。

こうしている間にも地響きは鳴り続け、時折遠くのところで地割れが発生している。

核付近が崩壊するのも時間の問題だろう。

 

「諦めんな!突っ切るぞ!」

 

かなたがそう大きな声をあげて覚悟を決めるように2人を促す。

ときのそらもそのつもりでここまでやってきたのだ。ここで怯んでいる場合ではなかった。

 

「――うん!行こう!」

 

そうときのそらが大きく一歩を踏み出すと、一斉に周囲のバケモノがこちらへ振り返ったのだ。

 

「そらちゃんは僕たちのサポート!トワ!能力が使えないなら地力で退けるぞ!」

 

「あぁもう!やってやるよ!」

 

2人に挟まれる形でときのそらが真ん中に位置し、3人で固まってビビの元へ一直線に突っ走る。

横から飛び込んでくるバケモノたちはまだ産まれたばかりというのもあり知能が低く、能力なしのかなたとトワでも十分に引きはがすことができた。

 

「…お願いっ、なんか!」

 

今までに自分が発動した力。その恩恵が何かは知らないがこの状況でなんでもいいから発動してくれと必死に願う。

そしてその願いは――

 

「っ!これ…」

 

「うおっ…力が溢れてくる!」

 

ときのそらの両端に居た2人をまとう金色のオーラ。それに伴って力が漲ったことによるバケモノへの攻撃――それら全ての行動が示し合わせたかのように、ときのそらが願った直後に起きた出来事だった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

ときのそらの能力の覚醒により、ビビの元にたどり着くまでの間のバケモノは難なく突破できそうだと感じ取れる。

あとわずかでビビに触れられると思ったその瞬間、手を伸ばしたトワの真横から異質なバケモノの影が見えたのだ。

 

「っ!?」

 

そのバケモノから溢れ出るオーラ。今までの産まれたばかりのものとは格が違く、間違いなくこのままではトワはやられてしまうだろう。

バケモノを次々退けたとはいえ、能力柄制限されている2人の集中力はかなり低下していた。かなたもバケモノの存在に気がつくが助けに入るのには間に合わないだろう。

 

「――だめ!私が…助ける!」

 

トワも足を止めてバケモノの方を見たまま動けなくなっていた。そんな2人より先に、自分が――ときのそらが必ず助ける。

そのために、過去に――Parallelにやって来たのだから。

 

「――っ」

 

そう強く意識した瞬間、ふと頭の中に謎の感覚が入ってくる。それがなんなのか確かめること無く、ときのそらは迷いなくその感覚に全神経を委ねた。

強く決心したものの今の力では助けられないから。

何か能力が発動したならそれに賭けるしかないから。

そうして自分の中の別の意識に力を割くと――

 

「…そらちゃん!?」

 

ときのそらの行動にかなたが大きな声を上げる。それは無理と分かっていながらトワの代わりに犠牲になろうと飛び込んだ彼女の姿を見たからか、あるいは――

 

「――っ!」

 

「ガァァッ!?」

 

今までに見たことの無い超常的な速度で動いた彼女の姿を見たからか。

 

「…そらちゃん」

 

トワがぽつりと呟く。目の前で起きた光景は地面に落ちた木の枝を拾ったときのそらがそのままバケモノに突っ込み――気がつけばバケモノの首がきれいに切り落とされていたのだ。

それをしたのは、手に日本刀を持ったときのそら本人だった。

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