Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶20「終わりは天国」

――――――久々の再会、その事実に気が緩んだのか今まで退けてきたバケモノとは比にならない強さのバケモノの存在に気が付かなかった。

ここで死にたくはないと思ったが、もしこれでやられても今までの行いのせいなのだろうと割り切っていた。

だが――

 

「そらちゃん…」

 

そのバケモノを倒したのはトワでもかなたでもなく、サポート要員だと自分で言っていたときのそらだったのだ。

 

「――ぁ」

 

一瞬別人のように思えたが、それはあながち間違っていないようで、ふといつものときのそらに戻っていたのだ。

――トワには薄らと見えたが、確かにさっきの行動をしたときのそらの瞳は青く染まっていた。だが、今のときのそらは今までと同じ茶色の瞳をしているのだ。

 

「今が…凄かったねそらちゃん。まるで別人みたいだったよ」

 

そうかなたがときのそらの元へ近づきながら絶賛する。

 

「そ、そうかな。…あれ」

 

照れ隠しをしながら謙遜するときのそらだが、その手に持った木の枝を見て違和感を覚える。

確かに、自分の意思で動いていたわけではないが意識がはっきりとしていた中で――間違いなくバケモノを切ったのは日本刀だったのだ。

だが、そんな物は持ち合わせていなく代わりにこの木の枝を持っている。

 

「…なんかの能力?」

 

自分のことだが自分自身がよく分かっていない。元のMAINへと戻ったあと色々と確認する必要がありそうだった。

 

「ビビっ!」

 

脅威も去ったことで、ようやくトワとビビが再会を果たしたのだ。だが――

 

「…まずい、かなり消耗している」

 

「えっ。それって――」

 

「ゲートを使えない。トワから離れすぎたせいで体力がほとんど残っていないんだ」

 

微かな希望を手繰り寄せたかと思えば、今度は別の角度から希望が失われてしまう。

目線を落として答えるトワに何とかならないかとかなたが声をかける。

 

「…体力を戻す方法は?」

 

「トワの傍にいるってことだけ。どれくらい居れば元気になるかは分かんない」

 

与えられた残り時間はもうわずかだ。それなのに後どれくい待てばいいのかも分からないというこの状況。

他に方法がないか改めて考え直そうとするときのそらだったが――

 

「っ!?」

 

「そらちゃん!」

 

ときのそらの足元の地面が崩れ危うく落下しそうになる。素早く反応したかなたに手を握られたことで落ちずに済んだが、それでも宙に浮いている状態となってしまう。

 

「…もうっ」

 

時間がない。それが3人が同時に認識した事実だった。このままではいずれかなたとトワも落ちてしまう。

これ以上為す術がないと思ってしまったその時――

 

「――そらさん!」

 

――不意に聞こえた女性の声。その声にどれだけ心を救われただろうか。片手をかなたに握ってもらって宙に浮いている状況の中、首だけで声のした方へ振り返りその人物をしっかりと視界に抑えたのだ。

 

「――カリオペさんっ!」

 

その視線の向こうには大きなゲートが現れ、その中から一人の人物――カリオペが姿を見せていたのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「そらちゃーん!」

 

「わっ!?」

 

カリオペの開いたゲートを通じ、3人が天国へと戻った直後、勢いよく飛び込んできたノエルに抱きつかれそのまま尻もちをついてしまった。

 

「良かったぁ…!」

 

「…ノエルちゃん」

 

皆がときのそらのことを深く心配してくれていた、その様子を見ただけで心に来てしまいそうだ。だが今ここで泣くわけにはいかない。

――皆無事に生き延びることができたのだから。

 

「…かなたの能力で地獄を復活させる予定だったけど、まだ使えないのか」

 

満身創痍となっているかなたの傷を癒しながらココがそう呟いた。

カリオペの言っていたようにかなたの持つ[天使の恩恵]にて地獄を復活させることができるのだ。

 

「この能力が使えるようになるまでもうちょいかかっちゃうな」

 

「…ならトワたちはかなたの所にしばらく住まわせて貰おうかな」

 

「しゃーねーな。部屋汚すなよ?」

 

トワがカリオペと自分を指さしながらかなたにそう意見を述べた。

前までの2人の関係ならこんな発言はでてこなかっただろう。今ちゃんと二人がお互いを理解し合えたからこそ言えるのだろうと、ときのそらだけでなくカリオペも嬉しく微笑んだのだ。

 

「…これでここを救えたってことは」

 

ときのそらがParallelを転移する中での絶対条件。それは、過去を改変し仲間を救った時点でMAINへと帰還することになっているという点。

 

「…みんな、あの」

 

その事についてこの場にいる全員に伝えようとするが、それを制して先にココが口を開いた。

 

「ちょっと私たちこの後用事があって戻らなくちゃいけないんです。なのでこの後私たちの所へ来てはくれませんかね?ノエルと船長が案内してくれると思いますよ」

 

そのココの発言に全員が真剣に聞いている中、一人驚いた声をあげた。

 

「えっ。だってマリンちゃんとノエルちゃんも…」

 

二人も同じMAINの人間だ。ときのそらたちと同様に帰還することになる為道案内を頼めるはずがないと思っていた。

 

「船長たちはParallel移動してないですからたぶんここに残りますよ。大丈夫です!そらちゃんが作った仲間たちとそう簡単にお別れなんてさせないですから」

 

「――っ」

 

ときのそらが恐れていた唯一の懸念をあっさりとマリンが見破った。

前回の――ノエルたちを救ったParallelは同じ大陸上、しかも近い国の中での出来事だった。そのため元の無人島に戻された時も、ノエルたちが別の道を伝って無人島にたどりついたことで奇跡の再会をすることができたのだ。

だが今回は地獄と天国、そして遠く離れた国での出来事。元の場所に戻ってしまえば道を案内させる人物がいない限りもう会うことがないだろうと思っていた。

 

「…ふむ、そらちゃんの住んでるところは気になりますね」

 

「a〜私も行きたいです!」

 

「私も、お礼言う」

 

だから、マリンの言った通り、ときのそらとココの体が白く光りだし今にも元いた場所へと戻されようとしているのにも関わらず、別ルートからやって来たマリンとノエルの体は白く光り出すことはなかったのだ。

 

「…僕たちも能力が戻って地獄を創造し終えたら向かうよ」

 

「…残る皆さんは私のゲートで下へと送り返してあげます」

 

かなたとカリオペがそれぞれ提案すると、この場にいる全員がそれに賛成する。

そして、ときのそらとココを包む光がよりいっそう輝き出すと――

 

「――皆、また絶対会おうね!」

 

ときのそらが強くそう言葉にした瞬間、この場から完全に消え去って行ったのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

このParallel転移の感覚にはすでに慣れてきている。それでも毎回ちゃんと戻れるのか、それを心配してしまう。

 

「――うっ」

 

突然として目の前が眩しく輝き出し、目を細めて辺りを見渡す。

見慣れた自然の中、1つ高い丘のような所に立っている。そして隣には同じようにして戻ってきたココが居た。

 

「…戻ってきましたね」

 

「うん。――ロボ子さんの所に行こっか」

 

戻ってきたという実感をすると、急ぎ足でロボ子さんたちと作った拠点へと歩き出す。

そこまで遠い距離ではないが、1秒でも早く戻って報告をしたいと思うときのそらは歩く速度が徐々に速くなっていく。

そして、拠点の入口付近で何やら作業をしている人物を一人見つける。

 

「ロボ子さん――っ!」

 

「っ!?そらちゃん!?」

 

声をかけられた少女――ロボ子さんが振り向くと、視線の先にときのそらが映り思わず声を上げて驚いてしまう。

 

「ロボ子さん!全部救ってきたよ!ココちゃんの大切な人も!」

 

勢いよく成果を述べるときのそらに待ったをかけて、一度落ち着かせてから改めて話を聞いた。

 

「そうだったんだね。良かったよ…向こうで知り合った人たちはここに来るの?」

 

「うん。マリンちゃんたちに案内させてるからここへ来るよ。…あれ」

 

そこでふと突然として違和感を覚える。マリンたちは王国へ用があると出かけ、その用事の行先がときのそらが転移した2つ目のParallel、【デセール】の国での出来事と被ったのだ。

だが、ときのそらとココがAZKiの力によって転移した先は今の時間軸から3か月ほど前。

 

「――時間軸がおかしい?」

 

何故3か月前の自分が並行移動で転移した先と、3ヶ月後に起きているはずのノエルたちの国への用事――それが同じ期間に起きたのか。

その疑問を思い浮かべたところで、声をかけられモヤモヤした気持ちを抑えながら意識を切り替える。

一度落ち着いてからこの疑問に再び頭を悩ませれば良いと考えたからだ。

 

「そらちゃん」

 

「どうした…えぇ!?」

 

声をかけられた方へ振り向くと今まで以上に大きな声を上げてビックリする。それもそのはず――そこに居たのはつい先程、天国で別れたはずのマリンたちが立っていたからだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

あまり正確な時間は覚えていないが、天国から帰還してから今この状況になるまで小一時間程しか経っていないはず。それなのにもうすでにマリンが帰ってきたことに驚いている。

もちろん、それがマリン一人で帰ってきたのではなく向こうのParallelで出会った仲間たちを全員連れてきたことにだ。

 

「…トワちゃんたちはまだか」

 

天国と地獄の主である、かなたとトワ、そしてその傍付きのムメイとカリオペの姿は見当たらなかったが能力が元通りになるまで1ヶ月程かかると言っていたため当然居ないのが普通だろう。

 

「でも。皆にまた会えて…ホントに良かった」

 

あの時を最後にバラバラになるかもしれない、そんな嫌な予感が頭をよぎっていたが、今この瞬間にそんな思いは綺麗さっぱりなくなったのだ。

 

「――それじゃ、皆のこと紹介するね!」

 

そうして、このロボ子さんの拠点にて、フレアたちの帰りを待ちながら新しく出会った4人の仲間、ルーナ、わため、フブキ、ぐらについて話すこととなった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「まだあと4人居るのか。ずいぶんと多くなったね」

 

話が終わり、それを聞いていたAZKiの口からそう感想が零れる。

 

「いやぁだいぶ賑やかになったね。これからここに住んだりするの?」

 

意外にも仲間が増えたことをすんなりと受けれいたロボ子さんが、今いる4人にこの後のことについて聞く。

 

「Yes.そらと一緒に居るから〜ここに住みます!近くに良い海もあったし〜」

 

「わためもどこか拠点があると楽だから皆が良いならここに住みたいなぁ」

 

ぐらとわためから肯定の気持ちを受け取るが、残り2人は少し微妙な顔をしていた。

 

「まぁ白上としては今やらなきゃいけない用が終われば良いですけど…とりあえずそれが終わるまでは保留ですかね」

 

「ルーナも迷ってるのら。ここって王国に近いのらよね?パパから離れたくて向こうに国を作ったのらだからちょっと…。それにまだ住人たちが心配のらよ」

 

確かに2人の言いたいことも分かる。だから無理に住まわせる必要はないとときのそらも感じていた。

 

「それなら一応すぐこっちに来れるようにそっちの国とここを転移できるようにしておこうか?」

 

と、ルーナの事を配慮しつつ、仲間との繋がりが途切れないようときのそらのためにもロボ子さんが提案を言い出した。

 

「そんなことできるのら?まぁそれなら…わためちゃやそらちゃと別れるのは寂しいのらから」

 

ロボ子さんの持ち出した案に賛成するルーナ。そうしてこの場にいる者の今後の方針が決まったとき――

 

「――お、いるじゃん」

 

「――えぇ!?」

 

本日2度目となるときのそらの大声が響き渡る。それは、声をかけてきた人物が、天国の住人でありココの親友、天音かなたによるものだったからだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「えっと…」

 

さすがのときのそらもここまでくれば違和感に気づいていた。

そしてそれを問いかけるより先にかなたが切り出してきた。

 

「…分かるよそらちゃん。僕たちが来るのが早すぎるってことでしょ?」

 

「そう!1ヶ月くらいかかるって言ってなかった?」

 

「それはね…僕たちの住む天国や地獄っていうはるか上空に位置する場所――俗に言う【あの世】は今居るここ【この世】と時間の流れが違うんだよ」

 

「時間の流れが…違う?」

 

そう言われ、前にロボ子さんからときのそらの住む現実世界と、このParallel世界での時間の進みは違うと説明を受けていたのを思い出した。

それに加えて現実世界に戻った時に、明らかに時間の進み具合が違かったという経験も思い返す。

 

「こっちの住んでるところは進みがものすごく早いんだ。だから僕たちはちゃんと1ヶ月近く過ごしてきたよ」

 

それを言われたことで、先のときのそらの並行世界の移動と3ヶ月後のノエルたちとの出会いの違和感にも納得したのだ。

 

「トワち〜また会えたねぇ」

 

「そっちからしたら数分の別れだったでしょ。まったく」

 

駆け寄ってくるわためを拒否することなく、トワもわために対して抱き返した。

これで、やっと天国と地獄を完全に救うことができたのだ。

 

「――わぁ、人がいっぱい」

 

一段落ついたところで拠点の奥の方からAZKiが出てきた。

 

「そらちゃんの仲間たちも結構な人数居たんだ。…それなら、ちょっと天国に行ってみない?綺麗な景色があるんだよ」

 

そうかなたがロボ子さんやAZKiたちに声をかけるがロボ子さんの反応が思ったより薄い。

 

「天国かぁ…行ってみたいけどボクはここを離れる訳にはいかないしなぁ」

 

「まぁ、でも景色見るだけなら良いんじゃない?」

 

「そ、そうかな」

 

AZKiに説得され、ほんの少しなら問題ないだろうと了承した。

 

「よっし決まりだな。じゃ、皆で行くということで」

 

「賛成ー!」

 

ここまでのおおにんずうになるとは思わずときのそらも内心驚いている所はある。違うParallelで関係を持ったが、そうした仲間たちが一緒に集まることはとても嬉しく思えた。

 

「――ふふ。なんか楽しいね」

 

誰に言った訳でもないただの独り言。だが、そんな声をこの場にいた全員がまるで聞いてくれたかのように笑みを浮かべる。

 

「それじゃ行こっか!」

 

そう言い、救われた天国の美しい景色を一目見ようと、ときのそらたちは楽しみに進んで行ったのだった。




次回からは3章に入ります。また、3章からは文章の書き方を大幅に変更致します。これからもよろしくお願いします。
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