Hololive:Parallel   作:一応味醂

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▶4「心情と目的」

――――――激しい攻防を繰り返すノエルと少女。少女の飛ばす青白い火の塊――『怨恨』と、少女が呼んでいたそれを上手くかわしていくノエル。「激しい攻防」そう表したのは表向き。

実際のところはノエルが攻撃をかわしつづける防戦一方となっている。

 

「…くっ!」

 

「邪魔しないで!」

 

次から次へと『怨恨』を飛ばす少女に中々接近できずにいる。幸い、少女の操る女性を団員と船員2人が相手をしていることで少女にだけ集中することができる。

 

「話を聞いて!」

 

「嫌だっ!どうせお前らも皆と同じなんだからっ!」

 

必死にノエルは話し合いでの解決に持っていこうとする。しかし、少女は全くもって耳を貸す素振りを見せない。

 

「…やっぱり何か感じますね」

 

ふと、いつも通りに戻ったと思ったマリンがまたさっきと同じような不思議な表情を浮かべている。

 

「…マリンちゃん」

 

「…。おそらくあの少女は過去に何かありますね。…人間関係で」

 

「え?」

 

ときのそらを見て、少女のことについて話し始めるマリン。

 

「人間関係で?」

 

「そうです。「邪魔しないで」…これが何に対しての邪魔なのかは分かりませんが、少なからず私たちのことを追い出そうとしている気がしますね。これは他の人と関わりを持ちたくないからとも見えるんじゃないでしょうか」

 

そう言ってマリンは少女を見つめる。確かに今のマリン言っている意味はよく分かる。ここへ来た人物に対して、あの少女は歓迎していないことに。

 

「ただこれだけしか分からないですね。もっと核心的な事に気がつけば、もしかしたら耳を傾けてくれると思うんですが」

 

これ以上のことは、現状では憶測にしかならない。

どうしたもんかとマリンが頭を悩ませる。

 

「…ぐっ!!」

 

「ノエル副団長!」

 

防戦一方に思えた戦いに変化が訪れる。

少しずつ『怨恨』の対処で体力が奪われる中、少女の操る『怨恨』の数が増したのだ。それにより、死角からの一撃を受けてしまい、ノエルが軽く飛ばされそのまま尻もちをついてしまう。

 

「ノエル!」

 

マリンもその様子を見てノエルの元へ駆けつける。

 

「あの少女…こっちの話を聞いてくれない…」

 

「とりあえず強行はやめよう。埒が明かないよ」

 

ノエルの考えでは、一発叩き込み少女を大人しくさせて無理に話し合いに持ち込もうとしていたという。

そんなノエルに、マリンが珍しく冷静になるように落ち着かせていた。

 

「…どうするの?」

 

「とりあえずあの少女の話を聞きだすしかないっしょ。船長に任せておきなさい」

 

マリンが立ち上がり、武器もないまま少女の方へと近づいていく。

 

「…どうしてあなたは船長たちを追い返そうとするんですか?」

 

「…うるさいっ!」

 

さっきまでのノエルの問いかけとは若干意味を変え、マリンが少女に対して口を開く。そんなマリンに対しても態度は変わらず、容赦なく『怨恨』を飛ばしてくる。

 

「…ほっ!てっ!…うっ!?」

 

「おりゃあ!…仕方ないからマリンの援護してあげるよ」

 

「ありがとうノエル」

 

華麗に『怨恨』をかわす船長だが、ノエルと違い打ち返すことができないためどうしてもかわしきれない。そんなマリンのカバーに入り、代わりに打ち落としながらノエルがサポートをする。

――出会った直後では思いもしなかったであろうコンビとなっている。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…名前はなんて言うんですか?」

 

「…うるさい」

 

ここ5分程、マリンの問いかけと少女の攻撃が続いている。

マリンはその攻撃を最低限避けつつ、かわしきれないものはノエルがカバーしていく。

しかしこれだけ長い間カバーをするノエルにも疲れが見えてきた。

 

「ごめんっ、もうちょっと耐えて」

 

「はぁ…はぁ…大丈夫!」

 

この間、一度もマリンは少女に対して攻撃を仕掛けようとはしなかった。

 

「…皆と同じっていう皆は誰ですか?」

 

「…うる…さい」

 

「…はぁ…はぁ…その皆はあなたに何をしたんですか?」

 

「……」

 

ただひたすら、話を聞くよう説得するでもなく、マリンは少女の話を聞こうと――ただ、少女に寄り添ってあげようとしていたのだ。

 

「…あなたは――」

 

「――どうして」

 

合計で20分程だろうか。それだけの攻防を経て『怨恨』が消え、ついに少女が口を開いた。

それと同時に女性も再びその場に倒れ込み、相手をしていた団員と船員2人は少女の方へと目を向けた。

 

「――どうしてあなたは寄り添ってくるの」

 

「――話が聞きたいから」

 

少女の悲痛な問いかけに、マリンは迷わず答える。

 

「――害は及ぼさない。約束する」

 

これから少女が何を語るのか。そう思っていたノエルたちに告げた言葉は、ノエルが必死に求めていたこの屋敷と少女の在り方だった。

 

「…分かった。ありがとう」

 

ノエルがそれだけを残し、少女に背中を向ける。

 

「皆戻るよ。王国にこの屋敷は問題ないって伝えないと」

 

「…」

 

マリンが何かを言いたそうな表情をするが、それを分かっているノエルがマリンに撤退を促してくる。

――今は撤退すべきだと。

 

「…戻るか」

 

最後にマリンは少女の方へと視線を向ける。

少女は下を向き、初めて見た時とはまた違う不思議な表情を浮かべて動かずにいた。

一体何を思っているのか――その心情は少女にしか分からないものだった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「良かったね。…何にもしてないけど」

 

「うっさい!船長のおかげで言質が取れたこと忘れないで貰えますか!?」

 

「はいはい」

 

道中でのトラブルなどもなく、無事【プラチナ聖王国】の中、【白銀聖騎士団聖騎士堂】へと戻ってくる。

意外にも時間がかかり、夕暮れ時となっていた。

王国にも連絡し、王国の端に現れた屋敷【潤羽屋敷邸】のことは一先ず許されたのだ。

そして、団長からマリン達の事を報告すると今回だけという条件で、罰金のみで許された。

 

「マリンも船員たちと一緒にがんばって返してね」

 

金額はそこまで多くはないが、マリンたちもほとんど持っていなかったため王国の仕事の手伝いをして支払うということになっている。

 

「返済期間が無期限で良かったですね」

 

「ありがとうそらちゃん…」

 

「ま、ずっと滞納したら報告するけどね」

 

「はいはい。全くノエルはもう少し労ってもいいんですよ?」

 

「――マリン」

 

他愛のない話の中、ふとノエルが真剣な表情でマリンの名前を呼ぶ。

 

「マリンはこの後どうするの?」

 

「……。もちろん、あの屋敷へ戻るよ」

 

戦いの途中から、マリンが少女に対して何を思っていたのか。

 

「マリンの心情が読めるような力はないからね。止めはしないよ」

 

「ありがとう。ついでに馬車を1台借りてもいい?」

 

「もちろんだよ」

 

2人は淡々と会話を進め、ノエルは馬車の用意をするために一度この場を離れる。

 

「もしかして1人で?」

 

「そうだよ。でもちゃんと戻ってくるから安心してくださいね」

 

どうしてもあの少女の事が放っておけない様子のマリン。

ときのそらに引けを取らないくらいのお人好しなのかもしれない。

それからしばらく待つと、1台の馬車を連れてノエルが戻ってくる。

 

「それじゃあ行ってくるよ」

 

「はい。気をつけなよ」

 

「えっ、ノエルが心配してくるとか気持ち悪っ」

 

「お互い余計な一言が多かったようだね!」

 

一時的にだが、共闘を経て仲良くなったと思っていたが前と変わらず、軽口を最後に交わしつつマリンが馬車に乗って【潤羽屋敷邸】へと向かったのだ。

 

「それじゃあ、そらちゃんは今日はもう休んでいいよ」

 

「は、はいっ」

 

ときのそらはマリンの安全を願いながら、宿の中へと戻って行った。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

一人、3回目となる道を馬車に乗って進んでいる。

 

「…」

 

頭で考えていることはあの少女のこと。一刻も早く戻り、少女の気が変わらないうちに話を聞かなければいけない。

あわよくば――

 

「…友達、なれるかな」

 

ふと前を見れば、屋敷のすぐ前にまで来ていた。

その時、近くで大きな爆発音が聞こえてくる。

 

「な、何事ぉー!?」

 

そのけたたましい音に驚き、馬が急停止をする。

 

「うげっ!」

 

慣性の法則により、馬車から外へと飛び出るマリン。

すぐさま起き上がり、音の正体を探るべく周りを見渡す。

 

「…っ!これはバケモノ!!?」

 

未知数の存在で、上位層の人間が生態系を調査するようなモノだ。姿形は人型で、大きさは2mほどとあまりバケモノ感の印象がない。

 

「な、なんで今っ!?」

 

ノエルたちとここを通った際には出くわさなかったバケモノ。一人だからと狙って出てきたのだろうか。

 

「…見た目からしてA-ほどですかね!」

 

マリンが目の前のバケモノをそう格付けて、今度は忘れずに武器を取り出して臨戦態勢に入る。

マリンの持つ武器は取っ手の部分から鎖が繋がっており、先端には船のアンカーのような碇の形状の物が付いている。

 

「この船長の[マリンアンカー]で粉々にしてみせますよっ!」

 

マリンは武器の先端をバケモノ目掛けて投げ飛ばす。筋力はそこそこあるのか、一直線にその頭をピンポイントで直撃した。

 

「よっしゃ当たっ――って効いてないっ!?」

 

武器は弾かれ、バケモノも体勢を崩さないままこちらへと近づいてくる。

 

「こいつ…メタル系?」

 

マリンの知っている知識上では、バケモノは大きくわけて「メタル系」と「マギア系」に分かれている。

簡単に言ってしまえば、「気力」に強いか「魔力」に強いかの違いだ。

「メタル系」は「気力指数」による攻撃に強いのだ。

 

「それってかなーり船長ピンチじゃないですかね?」

 

そう言いながら何度もアンカーを投げ飛ばす。

しかし、それら全ては弾かれて有効打にはならない。

 

「…うぎゃあ!」

 

バケモノによる、振り下ろされた拳を間一髪のところで横へと回避するマリン。圧倒的な強さではないにしても、地面を少し削るほどの威力はあるみたいだった。

 

「…ぐきゃあ!!」

 

アンカーを投げては弾かれ、バケモノの拳を必死に回避。これを永遠と繰り返している。

 

「…ひぃぃ!!…これやばいって!」

 

回避に専念するあまり攻撃の手が緩んできている。

効かなくても一瞬の足止め程度にはなっていたが、攻撃が来なくなってからはバケモノの攻撃の回転率が増している。

いつの間にか馬車は壊され、馬も攻撃に巻き込まれその命を落としてしまっている。

 

「A-じゃないでしょこれ。船長の判断ミスっ!」

 

逃げ回るマリン。来た道を帰るという選択肢は元からなかった。

――少女に会うために来たのだから。

 

「――っ。しまった!」

 

そんなマリンにも絶体絶命の危機が訪れる。バケモノの攻撃により抉られた地面に足を取られ、倒れ込んでしまう。

その際に武器の[マリンアンカー]を手放してしまい、目前にはバケモノが立っている。

 

「――やばいっ」

 

マリンを目掛けてバケモノがその一撃を振り下ろして――

 

「グガァァァー!!?」

 

――瞑った眼を恐る恐る開く。自分の体に攻撃を受けた跡がないのを確認し、何が起きたのかとバケモノの方に目をやる。

 

「っ!!あなたはっ…」

 

すると、後ろへ倒れ込んだバケモノとマリンの間には一つの人影が。

 

「…幽霊ちゃんたち。倒しておいで」

 

そこにいたのは、マリンが会うために戻ってきた屋敷の少女だったのだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「ァァァー!!!」

 

目の前のバケモノは「メタル系」だろうと予想していたマリン。その予想は当たっていたらしく、少女の使う「魔力指数」を参照する攻撃を受け、大ダメージを負っている。

そして遂に息絶えたのか、バケモノはその場に倒れて動かなくなった。

 

「ありがとう、ございます」

 

マリンは少女の方を向き、助けてくれたことに礼を言う。

 

「あの――」

 

「――中に入って」

 

少女がそう短く答え、屋敷の中へと戻っていく。

それを追うようにマリンも武器を手に取って屋敷へと入っていった。

 

「…」

 

「――」

 

早速少女と出会った部屋の中へと入り、テーブルに座る2人。少女の操る霊か器用に紅茶を運んで、マリンの目の前へと置く。

 

「なんで、戻ってきたの?」

 

先に口を開いたのは少女の方だった。

 

「…あなたと、友達になりたかったから」

 

「――」

 

マリンがここへ戻ってきた理由。それを端的に、そして心の底から思っていることを、少女の目を真っ直ぐに見て答えた。

それを聞き、少女は目を見開いて驚いた。

 

「…えっ!?」

 

それを聞いた少女がどんな反応をするのか。見つめていたマリンは少女の反応に驚いてしまう。

涙を――流していたから。

 

「え、船長何か、やばいこと言っちゃった系…?」

 

慌てふためくマリンに対して、涙を流しながらも少女は首を横に振る。

 

「…ぐすっ、違うの。…こんなるしあと…こんなるしあの真実を知っても、友達になろうなんて…言ってくれる人が初めてだったから…!」

 

涙で下を向きながらも、マリンに対して少女はそう答えた。

 

「…あなたの、名前は何ですか?」

 

「…潤羽…るしあ」

 

「るしあ。船長はあなたを突き放したりしない。…過去に何があったのか聞いてもいいですか?」

 

潤羽るしあと名乗った少女。その少女の元に近づいていき隣に座ったマリンが過去の話を聞き出す。

一体どれだけつらい想いをしてきたのか。

 

「るしあはね…」

 

ゆっくりだが、少しずつるしあが過去について話し始めてくれた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

潤羽るしあの過去は辛いものだった。「死霊術師」という性質上、お化けや幽霊といったものとの交流が多かったるしあ。

そのため周りから不気味がられて、住む場所を転々として暮らしていた。両親もるしあが小さいうちに死んでしまい、「死霊術」によってあたかも家族3人で暮らしているかのように振舞っていた。

それを見た人達は、るしあに近づこうとしないもの、話そうとしないもの。中には屋敷に入り込み、住む地域から追い出そうとしたものまで。

そんな過去が続いたことで、ついさっきノエルたちがやってきた時も同じものだと勘違いして先手を打ってきたと言う。

 

「…マリンは、裏切らない?」

 

か細く、るしあがマリンに問いかける。

 

「当たり前だよ。簡単にるしあの側を離れませんよ。船長をそんな甘い女だと思わないでくださいねっ」

 

そう言って、マリンはるしあを連れて屋敷の外へ出る。

 

「ノエルたちもきっと歓迎してくれます。…行きましょ!」

 

「うんっ」

 

こうして、マリンはるしあを連れて【プラチナ聖王国】へと戻って行った。

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